プロジェクターとスライドと
2019年8月17日 (土) 投稿者: media_staff
技術コースの羽田です.
ちょうどお盆休みということもあり,学生に向けてすこし昔の話を書いてみます.
学生のみなさんはスライドというと,大型モニターやプロジェクターでスクリーンに写し出されるPCで作られたものを思い浮かべるのではないでしょうか.
とはいえ,何が「スライド」なのかというと,もともとフィルムを使った写真に使われていた言葉である「スライド」からきています.
スライドとはこの写真のように,銀塩写真のフィルムを1コマづつ切り離して,専用の枠に納めたものです.
これをスライド映写機というフィルムの後ろから光をあてて拡大投影する装置にかけてスクリーンに表示します.
映写機はこの枠ごとのスライドを何十枚かカートリッジに納めて,順番に投影することができるのです.いわばコマ送りだけの映画だと思えばいいかとおもいます.
まだPCが普及していなかったころに写真や図表を大きく表示するにはこの方法がメジャーな手段でしたし,PCからこのスライドの原稿を作成して,フィルムに焼き付けるための装置というのも30年ほど前には存在していました.ただ,コストが非常に高かったため大学院生だった私はその恩恵を受けるには至りませんでした.
90年代前半は手書きのポスターでなければ,OHP(オーバーヘッドプロジェクタ)と呼ばれるA4くらいの透明なフィルムの裏から強い光を当てて投影する装置を使うが一般的でした.この装置は今はあまり使われていませんが,東京工科大学でもいくつかの教室には残されています.
OHPの難点はスライドと異なってフィルム1枚づつを人の手で入れ替えて投影する必要があるところと,フィルムが想像以上に重いことでした.100枚ほどシートを用意するとノートパソコンのようにずっしりとした重さになります.利点は写真フィルムのように画面が小さくないので,その場で上からサインペンなどで書き込みを行い,プレゼンテーションをインタラクティブにすることができた点になります.
このOHPシートも最初は手書きしたり,印刷した文書や画像を切り貼りしたものをコピーして作っていたのですが,パワーポイントのようなアプリケーションによりPC上で作成してそのままプリンタから出力できるようになりました.こちらは写真スライドに比べて安価だったこともあり大学院生のころにはよくお世話になりました.ノートパソコンと液晶プロジェクタの普及によりこれが,PCだけで作れるようになったのは多くのところでは90年代の終わりのころかなとおもいます.とはいえたった10年ほどでプレゼンテーションのための環境も大きく変化したことになります.
今ではPCのVGAあるいはHDMIといった外部出力から直接プロジェクタに画面を出力することが一般的になり,画像と文字だけではなく動画までもプレゼンテーションに利用することが可能となっています.こんな風にPCの発展とともにスライドという現物は忘れ去られてしまいました.
とはいえ今でもパワーポイントの機能でスライドショーというと,PC画面で写真を1枚づつめくるように作成した「スライド」を見ていくものを意味しています.今や実物のスライドを見ることはなくなったのですが,このスライドショーのように名前としてはしっかり残っているのが面白いところですね.
(羽田久一)
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