「広告」と聞くと不快なものを思い浮かべる人へ(メディア学部 藤崎実)
2019年10月29日 (火) 投稿者: メディア社会コース
「広告」と聞くと、みなさんの多くはスマートフォンの中で、自分が見たいものを邪魔してくる嫌な存在を思い浮かべることでしょう。
代表的な例がYouTubeが始まる前に邪魔をしてくる動画広告ではないでしょうか。
私がお願いしたいのは、そうした経験だけで広告という存在そのものを判断しないでいただきたいという事です。
本来広告とは人に楽しんでもらったり、受け入れてもらったりすることが目的です。また広告は企業からのコミュニケーションですので、そもそも人に嫌われることは望んでいません。嫌われるコミュニケーションはその時点で失敗なのです。
ではなぜ邪魔で不快な広告が目につくのでしょうか?その理由のひとつとして、みなさんがスマートフォンと接する時間の長さが関係しているかも知れません。
人がスマートフォンに向き合うようになったのはつい最近です。つまり、みなさんが身近に接しているスマートフォンをメディアにした広告は、まだまだ発展途上という現実があります。ちょっと考えるとわかると思いますが、スマートフォンの狭い画面の中で、できるだけ人に見てもらいたいと視界を遮る広告はまさに「看板広告」「立て看板」の考え方です。
看板広告といえば広告の原点として挙げられる原初的な手法のひとつです。つまりそれは、江戸時代の「御触書」と同じ発想というわけです。
そう考えると、人の視界を遮ることで存在感をアピールする広告手法は、まだまだ発展段階の未熟なものと考えるのがいいかも知れませんね。(学生のみなさんがスマホの中で視界を遮る広告を見て不快な思いをするのはよくわかります。なので、そうしたタイプの広告は過渡期と考えて、まあ大目に見てあげて頂きたいというのが私の気持ちです)
一方、スマートフォンの中で邪魔してくる広告が広告の全てではないという点には注意が必要です。
◆◆◆
現代の広告は長い歴史のもと、世界中の広告人が知恵を絞り、広告のあり方そのものが成熟した発展を遂げています。
えっ、これって広告だったんですか? 広告ってこんなこともやっていたんですか?
私の授業を受講した学生の多くが、こうした感想を述べます。多くの方がこうした思いを抱くのはある意味当たり前です。現代の広告はみなさんが想像している以上に概念を拡張させているのです(詳しくは【前回のブログ】をお読みください)
現代の広告は劇的に変化・発展しています。成熟した現代の広告はすでに広告というカタチをしていないので一見、広告人の仕事とわからないものばかりです。
例えばこの10月に発表された日本を代表する広告賞・ACC賞で、シルバー(ブランデッドコミュニケーション部門 Dカテゴリー)を受賞した広告に駅のドラえもん化という広告コミュニケーションがあります。
◆「小田急登戸駅 ドラえもん化」
これは小田急線「登戸駅」をドラえもんサインに変えてしまうというプロジェクトです。
(画像の出所)株式会社JDNのサイト(デザイン情報サイト[JDN] >広告事例>小田急線 登戸駅 ドラえもんサイン計画)より
いかがでしょうか。「どこでもドア」の前で写真を撮りたいと思う人は多いのではないでしょうか。
ちなみにこちらは「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」の広告です。
これからミュージアムに行こうと最寄駅についた時からドラえもんワールドが待っているというわけです。こうしたコミュニケーションに接した来場者は、駅に着いた時点からワクワクすることと思います。ちょっと面白いと思いませんか?
こちらはさまざまな記事として紹介されました。一例を挙げると例えば…
◎駅がドラえもん一色に!小田急登戸駅に行ってみた(鉄道新聞)
◎「小田急線登戸駅 ドラえもんサイン」が「2019年度グッドデザイン・ベスト100」を受賞
◎「2019年度グッドデザイン・ベスト100」 受賞
◆◆◆
先ほどご紹介したACC賞のマーケティング・エフェクティブネス部門では「サントリー公式バーチャルYouTuber 燦鳥ノム」も、ACCシルバーを受賞しています。
(画像の出所)YouTube公式チャンネル「燦鳥ノム - SUNTORY NOMU -」より
サントリーの企業サイトにプロフィールが出ていますが、燦鳥ノム さんは、なんと年齢は119歳で、趣味は「短歌」、好きなものは「飲み物」、嫌いなものは「直射日光」だそうです。なんだかすごいですね!
◎サントリー公式バーチャルYouTuber 燦鳥ノム特設ページ
◎【自己紹介】はじめまして、燦鳥ノム(さんとりのむ)です
◎君にルムウム/燦鳥ノム【オリジナル曲】
燦鳥ノムさんは、ツイッターでも活躍しています。
(画像:出所)ツイッター「燦鳥ノム 公式ページ」より@suntory_nomu
(画像:出所)ツイッター「燦鳥ノム 公式ページ」より@suntory_nomu
毎週なんらかの情報発信をしている燦鳥ノムさんのコミュニケーション活動は、大変現代的だと思います。
ユーザーやファンからの反応も良いようなので、こうした広告の作り手は、次はどんなチャレンジをしようか、大変ですがやりがいのある企画作業になっていることと思います。
(メディア学部 藤崎実)
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