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ACC受賞作にみる広告の仕事の幅の広さ(メディア学部藤崎実)

2019年11月 3日 (日) 投稿者: メディア社会コース

今年も10月に、ACCによる「ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS」が発表されました。
ACCとは、「All Japan Confederation of Creativity」の略。このACCが日本の広告業界におけるスタンダードな広告賞になります。

例えば、このそのカテゴリーの幅の広さを見るだけで広告業界の仕事の幅がわかるのではないでしょうか。例えば、TVCMなどとは違う部門に目を向けると・・・

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◆◆◆
「マーケティング・エフェクティブネス部門」での「総務大臣賞/ACCグランプリ」受賞作は、TBWA\HAKUHODOによる「注文をまちがえる料理店」です。
こちらは世界的に増えつつある認知症の患者への理解を得るために作られたレストランです。

おわかりでしょうか?
認知症の患者への理解を得るために、ポスターやCMを作るのではなく、認知症の患者さんたちにホールスタッフとして働いてもらうレストランを期間限定で開業するというものです。

「注文をまちがえる料理店」というネーミングのレストランにすることで、注文を間違えても良いことを前提とし、認知症患者との会話やふれあいを通じて、認知症患者の方々とのコミュニケーションの大切さを理解してもらうという試みです。

この取り組みは多くのニュースや報道でも取り上げられて、大きな話題になりました。

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(画像の出所:コンセプトビデオ「rest mis order conceptV JP re」のカットより)

こうしたコミュニケーションデザインは、広告コミュニケーションのあり方やこれからの可能性を示していますよね。

詳しくはコンセプトビデオを是非ともご覧ください。きっとこころが動かされることでしょう
→ 「rest mis order conceptV JP re」

審査委員長の小和田審査委員長は、審査講評として次のように述べています。
「どの作品も素晴らしい中で、特にグランプリになった要因としましては、ソーシャルグッドだったからではありません。現在、SNSを含めちょっとした間違いやうっかりした発言も許さず炎上してしまうというような社会の中で、寛容な空気をつくるといった素晴らしいクリエイティブに より、認知症になっても諦める事なく働くことができるといった変革がおこせたこと、またそれが日本の中でこれからも広がることが期待できるという点で高く評価をしました。AI時代に人だからこそできるマーケティング、今後の一層の拡がりに期待しております。おめでとうございます。
 → http://www.acc-awards.com/festival/2019fes_result/me.html

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【公式】注文をまちがえる料理店

◆「認知症のスタッフを起用「注文をまちがえる料理店」が生む笑顔」(ダイヤモンド社によるビジネス情報サイト「ダイヤモンド・オンライン」の2018.3.26 の記事)

◆注文をまちがえる料理店【特別動画】 (こちらの動画も是非ご覧ください。「できなくても、間違えても、もう一度やればいい」社会のみんながそう思えば、社会全体がもっと良い社会になるのではないか、そう思えてきます。)


◆◆◆
最後に「ACCクリエイティブイノベーション部門」での「ACCシルバー」受賞作をご紹介しましょう。

近年の広告業界は、商品やアプリの企画・開発も企業に提供しています。
受賞作のこどものやる気を引き出すために開発されたIoTペン「コクヨ 宿題やる気ペン」は、企業と生活者(この場合は子どもや保護者)の間を結ぶアイテムとして、広告コミュニケーション的な発想のもと開発された商品です。

このペンによって子どものやる気と勉強習慣が高まれば、保護者もうれしいですし、何より子どものためになりますよね!

こちらも「広告を作って商品を売る」のではなく、そもそもあったら「便利なペンを開発」することで、企業が前進するためのお手伝いをする、という好例だと思います。こうした企画・開発にも広告業界の知恵が結集しているのです。

こうした発想が可能なのは、広告は「コミュニケーション」だからです。

「人の気持ちを動かす、人と人をつなぐ、人と人を結ぶ」というコミュニケーションに関するプロフェッショナルが広告人なのです。

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(画像の出所:コクヨの商品サイトより
 https://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/yarukipen/

◆(コンセプトムービー)「コクヨ しゅくだいやる気ペン」

◆コクヨ しゅくだいやる気ペン 製品の使い方

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(画像の出所:コクヨの商品サイトより https://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/yarukipen/


いかがでしょうか。
広告は商品を売るためにある、とお思いの方が多いと思いますが、今や広告会社が商品開発も行う時代になっているのです。
プロトタイピングデザインというジャンルも広告業界の取り組みのひとつとして、大きな流れになっています。

広告業界は常に拡張しているのです。
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【今回は広告業界について全7回の連載でした。どれも興味深い内容ですので他の記事も是非ともご覧下さい】
↓ ↓

>広告業界の仕事の実態は、なぜ、あまり知られていないのでしょうか(メディア学部藤崎実)
>「広告」と聞くと不快なものを思い浮かべる人へ(メディア学部 藤崎実)
>広告業界からのゲスト講義①/データクリエイティブ/SOOTH吉澤貴幸さん(メディア学部 藤崎実)
>広告業界からのゲスト講義②/広告映像のおもしろさ/AOI Pro.加藤久哉さん(メディア学部藤崎実)
>広告業界からのゲスト講義③/ファンと一緒に行うアンバサダーマーケティグ/東京工科大OB吉田慎さん(メディア学部藤崎実)
>広告業界からのゲスト講義④/新時代の広告クリエイティブ/東急エージェンシー野澤直龍さん(メディア学部藤崎実)
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(メディア学部 藤崎実)

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