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[シリーズ難聴-8]「手話」の演習(その3)

2019年11月22日 (金) 投稿者: メディア社会コース

前回は、メディア専門演習「聴覚障害理解とコミュニケーション支援」で行っている手話講座の1日目についてご紹介しました。「あいさつ」「天候」「家族」といった、日常的によく使う言葉や言い回しを覚えました。今回は、手話講座の2日目についてお伝えします。「仕事」「趣味」自己紹介」についての手話を学び、最後にこれまで学んだ手話をいろいろ組み合わせて、より自然な会話を練習します。

最初に「仕事」についての手話を学びました。「会社員」という手話は、昔の証券取引に由来して、両手を頭の横で動かし、片手で「OK」と同じ形を作って胸に当ててバッジのようにして「員」を表します。今の学生が昔の証券取引をイメージするのは難しいかもしれませんが、このように由来している事柄が古いものは多々あります。「大学生」の手話は、アメリカの大学で卒業式にかぶる四角い帽子の角をイメージして、頭の近くで親指と人差し指を2回摘み「大学」を表現します。その後、親指と人差し指を上下に動かして、ランドセルの肩掛けを表現し「学生」を表現します。これらを組み合わせて「大学生」となります。ランドセルの表現の他にも、昔の「はかま」の紐を結ぶ様子で「学生」という表現もあります。これも、今の学生にはなかなかイメージするのが難しいですね。

次に「趣味」についての手話を学びました。「映画」「読書」「旅行」などの手話を覚えました。「旅行」は「SL機関車」のような仕草と「遊ぶ」の手話を組み合わせて「旅行」となります。これもまた「SL機関車」という古い乗り物が由来となっていますが、今であれば「飛行機」と「遊ぶ」を組み合わせて「飛行機で旅行に行った」と表す方が分かりやすいかも知れません。

最後に、「自己紹介」についての手話を学びました。手話では上の苗字を手話で表現し、下の名前を指文字で表します。例えば、「田中」は両手の中央3本の指を重ねて「田」という漢字を作り、次に片方の手の親指と人差し指で「コ」の字をつくり、もう片方の手の人差し指でそれを串刺しにして「中」という漢字を表します。「鈴木」は最初に「鈴」を鳴らす仕草をして「鈴」を表し、次に両手の親指と人差し指を広げて下から上に伸びている様子を表現して「木」を表現します。ちなみに、私の名前である「吉岡」は、鼻が伸びている仕草で「良い」を表し、「けいがまえ」を両手で描いて「岡」と表現します。自分の苗字がどんな手話なのか、一度調べてみると楽しいと思います。

さて、2回という短い演習で沢山の手話を覚えました。その前に学んだ指文字と合わせて、ペアになって手話コミュニケーションをよりスムーズに行う練習をしました。台本は図の通りです。

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図:手話コミュニケーション練習の台本

最初は少し恥ずかしいので表現が小さくなっていましたが、最後には慣れて来た様子で、口話と同じように気持ちを込めて手話を表現することが出来るようになってきました。棒読みだと気持ちが伝わらないのと同じで、手話で伝える時は表情や体の動きも重要な要素となります。

さて、いよいよ発表です。まず全員耳栓をして、ほとんど聞こえない状態にします。やはり聞こえてしまうと、反射的に声を出して音声に頼ってしまうからです。見ている人も、聞こえないことで、発表者の手話に集中することが出来ます。発表後の学生の感想として、「手話はとても難しかった」「手話が通じた時は嬉しかった」「少しだけろう者の気持ちが分かったと思う」「話についていけなくなって困った」などがありました。コミュニケーションの難しさを実感することで、聞こえることを前提とした私たちの社会において、聴覚障害者の方々がどんなことで困るのかを想像することに繋がると期待しています。

次回は、補聴器と人工内耳についてお伝えします。

 

 


メディア学部 吉岡 英樹

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略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在のコンテンツビジネスイノベーション研究室は2020年度にて終了し、聴覚障害支援メディア研究室として新たなスタートを切る。

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