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ヒトの寿命の異常性を哺乳類の心拍数からひも解く

2019年12月 2日 (月) 投稿者: メディア技術コース

こんにちは。メディア学部健康メディアデザイン研究室の千種です。

今回はヒトの寿命が哺乳類の中で異常であり、それを哺乳類の心拍数という視点で説明してみたいと思います。高校生や大学生の皆さんは大型動物の方が小型動物よりも心拍数が遅いことを知っている人も多いと思います。これに関連して、ローチェスター大学名誉教授の秋山俊雄氏が、哺乳動物の心拍数と寿命の間に興味深い関係があることを分析した米国ハワード・ヒューズ医学研究所のBeth Levine博士の研究を紹介しています。この論文( http://new.jhrs.or.jp/pdf/education/akiyamalecture07.pdf )では、大型動物は小型動物に比べて心拍数が少なく、寿命が長い傾向があるという分析結果を提示しています。

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上図は、横軸に平均寿命、縦軸に心拍数を対数プロットしたグラフです。両者の間には、ヒトを除いて、直線関係の法則があり、心拍数が早い小型動物よりも心拍数が遅い大型動物ほど寿命が長いことがわかります。例えば、体重30gの小型動物のマウスの心拍数は500[bpm](beats per second、一分間あたりの心拍数)以上で、寿命は約 2年になっていますが、30150[t]のクジラの心拍数は1520[bpm]で、寿命は 3032年、56[t] のゾウの心拍数は40[bpm]で、寿命は約70年になっています。

このグラフではヒトだけが例外となっていて、その寿命は大きく右方に位置しています。つまりヒトだけが圧倒的に(異常に)寿命が長いということが分かります。ヒトは文明社会を進化させ、健康管理や医療の恩恵を受けて生活しているので、厳しい自然のなかで暮らす野生動物よりも長生きであると考えられています。つまり、ヒトの進化が寿命の延命化を実現したということになります。また、家猫は、ヒトの家庭環境の中で生きているので、野良猫よりも寿命が長くなる、と同じような意味合いになります。

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下図は哺乳動物の生涯心拍数(Heart beats/Life time)と寿命の関係をプロットしたグラフです。大型動物と小型動物では心拍数は大きく異なっていますが、哺乳動物の一生の間に心臓の脈動の総数を観測すると、それらは (7±5)×10^8 の付近に分布しています。つまり哺乳動物は心臓が約2~12億回程度の脈動ができる寿命の動物であるということが解ります。

これは人生百年時代に近づくとともに健康寿命と平均寿命との差が社会問題化していることに対する新たな気づきになるのではないでしょうか。

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