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小さな数を表す十進体系

2020年1月23日 (木) 投稿者: メディア社会コース

前回は大きな数の十進体系の話をしましたので、今回は逆に小さな数の十進体系がどうなっているのかを、昔の単位などを紹介しつつ、綴りたいと思います。

なお、小さな数だからといって、負の数に話が及ぶということはありません。まず、ここは大前提です。1を基軸とし、その110の冪(整数乗)で整理される10進体系は、いくら値が小さくなっても、0を下回る(負の数になる)ことはありません。このことは、この先の話でそれほど意識する必要はないのですが、念のため補足しておきます。

ところで,大きな土地や建造物の大きさを捉える際に、東京ドームやテニスコートを例えとして、それの何個分というような表現をしたりしますよね。受け手側としては、そのドームやコートの広さの認識がないとその例えは意味のない情報ですが、知っていれば規模の相対感覚を作用させ、イメージ構築は機能します。

一方で、小さなものに対する例え表現というのはあまり多くありません。細い繊維素材に対して、髪の毛の100万分の1というような表現を通販などで聞いたことがありますが、そもそも髪の毛の太さの感覚が身近な情報なのかどうかという根源的な問題があるように思います。

さて、前回のブログでは、一、十、百、千、万という10進体系がまずでき、その後、大数表現の効率化としての万進法(億・兆・京・垓…)が誕生したという話をしました。

実は、小さい方向の10進単位も少しマイナーではありますが、分(0.1に相当)、厘(0.01に相当)、毛(0.001に相当)、…という一連の漢字表記の体系が存在します。“分”は誰もが日常で馴染んでいるものです。体温を測ったときに、378分(8ブ)と言いますよね。また、厘や毛というさらに下位の単位は、とりわけ野球好きな方は、打率表現などで用いられるので馴染みがあることと思います。

さて、日本では江戸時代に「塵劫記」という和算書が編纂されました。この中で、小さい方の10進単位についての言及があります。そこでは、分、厘、毛、糸、忽、...が紹介されています。興味深いのは、さらに少し先に進んで、10-9の単位として使用される“塵”や10-10の単位として使用される“挨”です。これらは日本語ではチリとホコリです。掃除のために入念に部屋を遮断しても入ってくる塵と挨は、今も変わらず小さな厄介者ですね。

以上

文責: メディア学部  松永 信介

2020.01.13

 

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