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研究紹介 - 足から伝える情報

2020年2月28日 (金) 投稿者: メディア技術コース

今回は、博士課程の学生の研究について紹介いたします。この研究は、情報を足から伝えようというものです。どういうことかというと、そこに立っていたり歩いている人に道路の表面を振動させて、その振動のパターンの違いによって多様な状況がわかるようにしようとする試みです。このような仕組みができると何がいいかというと、例えば、目の不自由な人が交差点を渡ろうとしているところを想像してみてください。その人が交差点に来たときに、どうやって信号が青に変わったことがわかるでしょうか?ところによっては音によって知らせる信号がありますが、騒音の激しいところで聞き分けるのは大変でしょうし、十字路であったとしたらどちらの方向が青信号になっているかを判断するのも大変そうです。

 

そこで、信号が変わったときに、道路を振動させることで情報を伝えてみようと考えたのです。道路の表面を使えば、目が不自由なかたも含めてそこにいる人に特別な装置やアプリの使用など無しに情報を伝えることができるでしょう。スマホに夢中になっている人にも状況が変わったことを伝えることができます。また、音が常に鳴っているような状態をさけることができます。

 

足から情報を伝えるということでは、駅などに、凸凹の黄色のタイルがあってホームの縁や方向を知らせているものがあります。これらは特定の状況を伝えますが、状況の変化を伝えることはできません。波のように特定の方向に進むような動きを道路の表面に作ることができれば、その方向を変えることで、どちらの信号が青になっているかを直感的に感じられるものとして伝えることができるのではないでしょうか?

 

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ところで、そうは言っても本当にそんなことが可能かどうかはわかりません。しかし、わからないことを試してみるのが研究です。また、どうやったら実現できるだろうかと工夫をしていくのも研究です。ということで、現在、大学院生が研究をして、それを試してみようとしているのです。まず、波を作って情報を伝えることが可能なのかどうかをテストするために、検証用の装置を作っています。

 

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この装置は、複数のタイルを格子状に並べ、それぞれの上下運動を独立して制御できるようにしたものです。これをコンピューターで制御して、色々なパターンの運動を作れるようにしました。また、そこに足を置いて、実際にそれらの動きを感じることができるかどうかを試しています。これは実際に稼働して、振動を足で感じられることは確認できました。きちんと情報を伝えられるようにするためには、タイルのサイズや数、どのような速度で動きを与えるかなど細かく検証する必要があります。その実験のために、サイズ調整が可能な二つ目のプロトタイプも作成中です。

 

この研究は、デジタル機能をスマホなどのデバイスから利用するのではなく、生活環境の中に統合させたデザインを考えようとするアプローチの一つです。そうすることによって、スマートフォンを常に持ち歩き、アプリを操作して自分から情報を取りに行かなくても、便利な機能を利用できるような社会を作ることができるのではないでしょうか?今後の研究の発展に期待しています。

 

 

太田高志

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