研究紹介 - 音楽の塊: Soluble Concrete Music
2020年2月 6日 (木) 投稿者: メディア技術コース
ミュージックコンクレートとという音楽の分野をご存知でしょうか?楽器ではなく、生活音や騒音、川の流れや鳥の音などの自然の音を使って創作される音楽?のことです。ビートルズやピンク・フロイドといった有名なバンドも、そのような手法で曲を創っています。コンクレート(フランス語、英語ではコンクリート、って両方日本語(カタカナ)か…)は「具体的な」という意味です。ところで、英語のコンクリート(concrete)という言葉にはもう一つ、「固体の…」という意味があります。ここで紹介するのは、音楽の塊(固体となった音楽、Concrete Music)を創ろうというものです。
「音楽の塊」は、色々な形の固体物で、一つ一つが異なる曲に対応しています。これを水に落とすと、泡をだしながら曲が溶け出してきます…というものを創ろうとしているのです。ですから、溶ける音楽の固体ということで、Soluble Concrete Musicとなりました。まだ、この研究は試作段階ですので、とりあえず適当?ないくつかの固体を造ってみました。
これらは、3Dプリンターを使って作成しています。この物体に空洞を用意し、そこに入浴剤など水に溶けて泡を出すものを仕込んで音楽の塊を用意します。これを水に落とすと、光と音が溶け出してくる様子が次の画像です。用意されている瓶に塊を落とすと、溶けて泡がではじめます。それに合わせてその固体となっていた音楽が映像とともに、瓶から溢れてきます。溶ける部分が無くなったらそれとともに音も映像も消えていきます。
いったい何でこんなことをしようとしているのでしょう?実はこの研究の目的は、新しい音楽との出会いをデザインしようという意図があるのです。現在では、ネット上のサービスで曲名を指定することで、いくらでも希望の音楽を簡単に聴くことができます。「ジャケット買い」という言葉がありましたが、曲を知らないけど、アルバムの表紙が格好いいので買ってしまうというような音楽との出会いかたがありました。そうして入手した音楽をはじめて聞くときのドキドキ感が、現在のネットを中心とした音楽の聴き方では得られなくなっているように思います。そうした音楽との初めての出会いを、色々な物体から、その形状のデザインだけで曲を想像して選び、いったいそれはどんな曲なのだろうと期待するような体験を創ろうということを考えているのです。
さて、このようなことを実現するのには、大きく分けて二つのことを実現しなければなりません。一つは、音楽の塊を水に落としたことを感知し、その形状から対応する曲を特定して、曲と映像を流すインタラクティブなシステムを作成しなければなりません。もう一つは、曲の一つ一つから、それに対応する塊の形状を自動的にデザインする方法が必要です。これらを組み合わせることで、上で述べたような体験を創り出すことができるでしょう。
これは、修士課程の研究として行っているもので、現在1年目の準備段階が終わったところです。ですから、上に挙げた実現に向けての作業はこれから進めていかなくてはいけません。とりあえず現状までの内容を、3月に行われる「映像表現・芸術科学フォーラム」でポスター発表する予定です。
太田高志
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