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2020年4月

発表できなかった発表:目と耳を同時に使う

2020年4月30日 (木) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

発表できなかった発表シリーズの3件目です。今回は、修士2年生の矢島さんの「音の瞬時的前後知覚における不一致視覚情報の影響」を紹介します。発表する予定だったのは、日本音響学会春季研究発表会です。

音がどちらの方向から来ているのかを、人間は2つの耳を使って聞き分けますが、左右方向の聞き分けに比べて、前後方向の聞き分けは難しいということが知られています。矢島さんの研究テーマは、この前後方向の聞き分けが、目から入ってくる情報によってどのように変わるかを調べることです。特に、目から嘘の情報が入ってきたとき、耳はどのように騙されるのかというのが、中心となるテーマです。

これまでの研究の途中経過は、昨年夏の国際学会で発表し、そのときのことはこのブログでも紹介しました。そのときは、視覚の影響が思ったほど強くないという結果だったのですが、そこから実験を重ね、視覚の影響が強くなる条件を見つけての今回の発表です。

前回の実験では、音を発している人や物の映像がスクリーンに現れてから、2~3秒して音が始まっていました。被験者に視覚情報をしっかり意識させてから音を聞かせようという意図だったのですが、今回はそれを変えて、映像がスクリーンに現れるのと全く同時に音が鳴るようにしてみたのです。すると、実験結果に顕著な違いが現れ、被験者が映像に騙されることが多くなりました。一瞬の注意力が視覚に奪われた結果、聴覚がおろそかになったのだろうというのが我々の考察です。

最近では、ヴァーチャルリアリティとサラウンド音響を組み合わせて、様々なコンテンツが作られています。そこにこうした知見を取り込むことで、従来のもの以上の臨場感を、視聴者に感じさせることができるようになるかもしれません。

スローなコンピューティング?(Re:Design of Things)

2020年4月29日 (水) 投稿者: メディア技術コース

ベル稼ぎとリングフィットネスのレベル上げで忙しい毎日ですが(嘘)、大変な状況のなかで通常の行動と異なったことを取らざるを得ない部分が多くなっていますね。生活の指針も、閉塞状態にあっていかに快適にすごせるか、ということに移っているように思います。このような時にあって、コンピューターの使い方を研究している立場から考えることがあります。

 

今のような状況では、通常時に行えることを遠隔で行えるようにするという機能が求められるでしょう。そうでなくても。普段からコンピューターはより便利な機能、より高い性能、より効率の良いもの、を目指すのが普通ですね。Aというアプリに対して、Bというアプリがより高速である、とか、Cというアプリはより機能が多い、などという風に次々と前のものより良い性能のものが現れ、置き換わっていきます。しかしながらどんどん性能があがっていくと、使う側の人間のほうの処理能力がそれに合わせるのが大変になってきます。ところで、コンピューターも仕事に使うばかりではなく、趣味やレクリエーションに用いられるようになったのですが、そうしたものでも性能や機能の追求はアプリ作成の基本的な姿勢として特に意識せずとも前提となっているような気がします(そうでもないか?)。

 

話は変わりますが、食事でファストフードというものがあります。Fast Foodというのは、Fast(早い)という意味ですね。すぐに調理できてすぐに食べることができる料理で、ハンバーガーなどで御存知の言葉だと思います。それに対して近年、スローフードという概念がでてきました。これは、効率を追求したファストフードのような食事でなく、食べると言うことに対してもう一度見つめ直し、材料の吟味から調理の手間、それを家族で楽しみながら食事する、という食事に関する全体をより良いものにしようとする運動です。コンピューターの利用もこれと同じようなことが言えるのではということを感じます(ようやく最初の話題に戻りました)。

 

つまり、効率、高性能、高機能を求めてきた従来の開発基準に対して、スローコンピューティングとでもいうようなアプローチを考えることはできないでしょうか?スローコンピューティングという名前にすると、コンピューターのCPU性能が「遅い」ようなイメージになりそうなので、あまり良くないネーミングだと思いますが、とりあえずスローフードとの連想でそう呼んでおきます(コンピューティングでいいのか?)。例えば、既にそうしたアプリがあるようですが、一日に撮影できる枚数が制限されていたり、撮った画像が見られるようになるまでいくつかの工程を踏まなければならないようなカメラアプリを考えることができるでしょう。昔のカメラはフィルムを使っていたため撮ることができる枚数は限られていました。また、撮影した写真を最終的に確認するには、薬品を使って現像という工程を経る必要がありました。大抵は店にフィルムをだして現像と印刷をしてもらっていたので、一日かそこら待つ必要がありましたね。そうしたことは単に現在のデジタルカメラのような技術がなかったからですが、使う人の気持ちとしては単なる物理的な制約という以上の違いがあると思います。

 

枚数が制限されていると撮影する対象は非常に吟味します。なんでもかんでも撮っていたらあっという間にフィルムが無くなってしまいますから、ここはぜひ撮影したいと感じる場面でなければシャッターを押さなかったと思います。現像されて写真として戻ってくるのを待つ間も、どんな出来だったかを想像する期待に溢れた時間となっていたかもしれません。写真撮影に対してのそうした気持ちは、今のスマホのカメラアプリなどからは消え去っています。他の例では、紙の手紙には、いつ届くのか、返事はいつ来るか、という待つ間の楽しみがありました。そういうことを考えると、届く時間がランダムなメールアプリなんていうのもいいかもしれません。

 

かといって、昔のほうが良かったということではありません。今のように手軽に何枚でも撮れて即時に表示されることはもちろん便利ですし、こういう機能があるおかげでメモ代わりに気がついたものを何でも撮っておいたり、インスタグラムに食べたり見たりしたものを投稿して共有するということが可能になったでしょう。このように、機能の進化によって新しい文化や行動様式が生まれます。それは従来は不可能だった凄いことだったりするわけですね。ただ、いろいろな機能がデジタル化されることで、機能の高度化だけが目標になると、現在のスマホ中毒のように人と技術の主従関係が逆になるようなことにも繋がるかもしれません。コンピューターの使用において、便利さの追求という方向性だけでなく人の経験をサポートするということを指針にしてアプリをデザインするということがあってもいいのだと思います。

 

さて、長文になってしまったでしょうか。最近は少し長い文章だと、もっと短く簡潔にまとめろと叱られる風潮がネットにはあるようです。これも、効率化の考え方なのか、単に長文を読み解く力が弱くなっているためなのか、なんてことを書くとさらに叱られますね。長文失礼いたしました。

 

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荒川の土手近くを散歩しました

 

 

太田高志

行けなかったマルセイユ1: ファロ宮殿(Le palais du Pharo)

2020年4月28日 (火) 投稿者: メディア技術コース

文責:榎本

私はコミュニケーションの分析が専門ですが、コミュニケーションと言えば会話ですよね。たくさんの会話や言語資料(読み上げ音声や新聞なども含む)を集めたものをコーパスと言います。corpus はラテン語で物体、構造、総体というような意味です。百科事典なんかは資料の総体という意味でcorpusになります。今、世界で使われている言語をコーパスとして収集、整形、公開するということを一つの旗に掲げている国際学会にLRECというのがあります。 Language Resources (LRs) と Language Technologies (LT)の評価に関する学会です。

https://lrec2020.lrec-conf.org/en/

2020年はマルセイユ開催予定でした。5月の11日から16日の予定でした。マルセイユへ行きたさのあまり、すごい必死で英語で論文を書いて、無事採択されていたのです。

「NHKの語学講座」というアプリをインストールして、フランス語の勉強も始めていました。

「まいちにフランス語」半年分の音声も購入して、ダウンロード!これで、通勤の合間に音を聞いて勉強しよう!、フランスに行ったら、颯爽とフランス語で話そう!という意気込みです。

会場は、ファロ宮殿(Le palais du Pharo)というところの予定でした。
Palais du Pharo - Marseille.jpg



ナポレオンIII世がウジェニー皇后のために建造した皇居だったそうです。
WikiPediaを訳していきましょう。Googleフランス語翻訳を使ってます。

Le palais du Pharo est un monument marseillais dont la construction fut ordonnée par Napoléon III pour l'impératrice Eugénie dans la deuxième moitié du xixe siècle. Il appartient aujourd'hui à la ville de Marseille et constitue un lieu d'accueil pour des congrès et diverses manifestations.

ファロ宮殿は、19世紀後半にナポレオン3世がウジェニー皇后のために建造したマルセイユの記念碑です。 現在はマルセイユ市に属しており、会議や各種イベントのレセプションの場所となっています。

マルセイユの紹介ページを見ると、さらにこう書かれています。

http://www.marseille-tourisme.com/en/discover-marseille/heritage/palais-du-pharo/

The Pharo promontory was previously called the Tête de More. Pharo is named after the bay further to the west. The “Farot” was the hillock separating the bay from the open sea.

ファロ岬は、以前はテットデモレと呼ばれていました。 ファロはさらに西の湾にちなんで名付けられました。 「ファロット」は湾と外海を隔てる小丘でした。


The decision to build an imperial residence in Marseille was made by Prince-Président Louis-Napoléon who, during his trip in September 1852, commissioned the architect Vaucher to find a location and draw up plans for the palace. Napoleon III’s architect, Lefuel, took on the project and the City decided to donate the chosen land, the Réserve and the Pharo.
The Emperor never stayed here. After Napoleon III’s death, Empress Eugénie, the sole heir of the Pharo, gave it to the city. The inside of the Pharo Palace was then refurbished for its reincarnation as a school of medicine in 1904.

マルセイユに皇居を建てるという決定は、1852年9月の旅行中に建築家ヴォーシェに場所を見つけて宮殿の計画を立てるよう依頼したルイナポレオン王子によって行われました。 ナポレオン3世の建築家、レフューエルがプロジェクトを引き受け、市は選ばれた土地、レゼルヴとファロを寄付することを決定しました。皇帝はここに滞在したことはありません。 ナポレオン3世の死後、ファロの唯一の相続人である皇后エジェニーが都市にそれを渡しました。 ファロ宮殿の内部は、1904年に医学部として生まれ変わりました。

ただ、造られただけの宮殿、だったんですね。皇帝も皇后も来なかったんですね。。。悲しい宮殿。

Après la chute du régime, les opposants à Napoléon III s'attaquent à tous les symboles de l'Empire. En particulier, la foule détruit tous les emblèmes et ornements napoléoniens qui décorent la façade du bâtiment. À la mort de l'empereur en 1873, la ville de Marseille revendique la propriété du domaine et engage un procès contre l’impératrice, alors unique propriétaire légal. Ceci donne lieu a un virulent procès au terme duquel Eugénie décide en 1884 d'offrir le palais et ses jardins à la ville, à condition qu'ils soient employés à des fins d'utilité publique.

政権崩壊後、ナポレオン3世の敵は帝国のすべてのシンボルを攻撃しました。特に、群集は建物のファサードを飾るすべてのナポレオンのエンブレムと装飾品を破壊します。1873年に皇帝が亡くなったとき、マルセイユ市はその地所の所有権を主張し、当時唯一の法的所有者だった皇后に訴訟を起こしました。この激しい訴訟の終わり、1884年にウジェニー皇后は宮殿とその庭園を都市に提供することを決定しました。


Jusqu'à la fin du xixe siècle, l'édifice sert donc d'hôpital et accueille successivement les cholériques et les tuberculeux. Les bâtiments érigés sur la partie latérale de l'esplanade du Palais ont d'abord été occupés par la Faculté de Médecine en 1890. En 1905 l'Institut de médecine tropicale du service de santé des armées, dite l'École du Pharo, y est créé. Depuis 2012, c'est le siège de l'Université d'Aix-Marseille.

19世紀の終わりまで、建物は病院として機能し、コレラと結核の患者を収容し続けました。宮殿の遊歩道の横に建てられた建物は、1890年に医学部によって最初に占領されました。1905年に、ファロスクールとして知られる軍隊保健医療研究所が設立されました。2012年以来、エクスマルセイユ大学の本部となっています。


 

Le palais accueille aujourd'hui un centre de congrès.

宮殿には現在、コンベンションセンターがあります。

 

そこ!そこで会議の予定だったんですよぉおおおお!行きたかったなあ。

いつかまた行くぞ、ファロ宮殿よ!

 

遠隔ペアプログラミングに挑戦します

2020年4月27日 (月) 投稿者: メディア技術コース

 3年次前期の必修科目「メディア専門演習Ⅱ」は約20テーマあります。そのうちのひとつ「イメージメディアプログラミング」は、画像を処理するプログラムを書く授業です。
 
 この演習の大きな特徴のひとつは「ペアプログラミング」を行うことです。プログラミングというと一人で画面に向かって黙々とコードを打ち込んでいく、という印象があります。これに対してペアプログラミングは、二人で一つのプログラムを書いていく過程を一緒に行う開発手法です。プロのソフトウェア開発企業でも実践している手法です。
 
 一人はキーボードでコードを書きます。もう一人はすぐ横で打ち込まれたプログラムを見ながら「そこスペル違う」とか「この変数名はこうしようよ」とか、声に出してツッコミをいれます。もちろん書く役割の人も声に出しながら「この関数呼び出せばいいよね」などと言いながらタイプするのです。
 
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 わざわざ二人で一つのプログラムを書くのですから、生産性が半分になるように一見して思えます。しかし、声に出して議論をしながら書くことにより、長い目で見ればひとりで黙々と書くよりも生産性が高くなります。ひとりで書いても、きちんとしたソフト開発の場合、定期的に上司などがプログラムを一行一行チェックして話し合う「コードレビュー」を行います。
 
 ペアプログラミングは、このコードレビューを究極に頻繁に、つまり常時やりながら開発するのです。プログラムの質が上がる利点はもちろんあります。加えて、生産性も上がります。
 
 さて、専門演習「イメージメディアプログラミング」では、履修生同士がペアを組んでプログラムを書きます。お互いに教え合いながら、試行錯誤もうまくいかない悩みも共有して進めていきます。
 
 以前は一人一人が黙々とプログラミング課題に取り組んでいました。ペアプログラミングをやるようになって明らかに出来上がりの質は上がりました。そして早く完成するようになりました。
 
 一人だと行き詰ったときに固まって時間を無駄にしてしまうのに対し、二人だとボーっとしていてはいけないという気持ちが働いてとにかく考えを進めようとします。どうしても行き詰ったときは教員に質問しようということになります。
 
 実際に、ペアで書くようになってから、演習中の教員への質問頻度は少なく見積もっても三倍ぐらいに増えました。また、毎回の授業ごとに別の人とペアを組むようにします。グループワークの欠点である、成果がメンバーに依存してしまうという弊害もありません。いろんな学生とペアを組むことでお互い教え合うことも当然多くなり、学修効果も高まります。
 
 2020年度前期はオンデマンドの遠隔授業が多くなります。演習を遠隔で行うのは大変な困難を伴うことが予想されます。「イメージメディアプログラミング」は、フルに遠隔授業とする予定です。ペアプログラミングも遠隔で行うことにチャレンジします。
 
メディア学部 柿本正憲

関連記事:
画像のプログラミング演習
専門演習「イメージメディアプログラミング」(オープンキャンパス展示)

キャラクター紹介文の分析

2020年4月26日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん,こんにちは.メディア学部助教の兼松です.
今日は私の研究テーマの一つである,映像コンテンツにおけるキャラクターの分析について少しお話しします.

アニメなどの映像コンテンツにおいて2本の柱ともいえる重要な要素があります.それはシナリオとキャラクターです.
クリエイターは,作品に込めたテーマや表現したい雰囲気,感じて欲しい世界観などを,ストーリーに乗せて表現します.
そしてこのストーリーを視聴者に伝える役割を持つのがキャラクターです.

みなさんが好きなアニメを想像してみてください.毎度毎度「今こういう事件がおきています」「こういう空気が漂っています」とナレーションや文字で表現していないですよね(小説だとやっている場合も稀にありますが).多くの場合,ストーリーはキャラクターの行動やセリフなどで表現しますし,逆に視聴者も,キャラクターの様子から今何が起こっているのかを理解していきます.
したがってキャラクターを作るときには,ストーリーを伝えるという目的において,そのキャラクターがどんな役割を持つのかをしっかりと考えて設計していかなければなりません.
極々簡単にいってしまえば,同じことをさせるにしても「クールで知的」なキャラクターにさせるのと,「明るく元気」なキャラクターにさせるのでは,視聴者に伝わる情報が違うということですね.

そこで私は,クリエイターが様々な目的に沿ったキャラクターを制作しやすくするため,学生たちと一緒に既存作品のキャラクターの調査や分析をしています.
最近では学生の一人が,2000年から2018年の各年度DVD・ブルーレイ売上上位3作品を対象に,公式webサイトに掲載されているキャラクターの紹介文・設定文を全て調査しました.キャラクター数にすると1157人分です.そして,これらの紹介文を分析することで,キャラクターを設定するにあたって,特に頻出する要素などがわかるようになります.

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もちろんこれだけではキャラクター制作の直接的な支援になるわけではないのですが,今回の分析結果を様々な要素と組み合わせることで,面白い支援ができるようになると期待しています.

「谷村皓奎,兼松祥央,三上浩司,近藤邦雄,性格に着目したアニメキャラクターの設定制作支援に関する研究,映像表現芸術科学フォーラム, 2020.3

(文責:兼松祥央)

誰もが経験したことのあるストーリーテリング

2020年4月25日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん,こんにちは.メディア学部助教の兼松です.
昨日「プロジェクト演習 シナリオアナリシス」の紹介をしました.今日はその続きで,私がシナリオ関連の演習や研究に携わっている動機についてお話しします.

皆様は子供の頃,人形やおもちゃを使って何かストーリーを作るような遊びをしたことがありますか?テレビのヒーローやキャラクターになりきって遊ぶ,いわゆる“ごっこ遊び”でも構いません.
大人になってからは黒歴史”を晒すようで,他人に話す人は少ないかもしれませんが,特に男子は身に覚えのある方が多いのではないでしょうか? 私自身は幼少期そんな遊びばっかりしていたように思います.

最近は実家に帰ると,甥がミニカーや人形を使って “劇”を延々と繰り広げている姿をよく目にします.
甥はいかにそのミニカーがすごいのか,どんな大事件が起こっている想定なのかを一生懸命私に説明するのですが,もちろん私には甥の言っていることはよく理解できません.

ただ,私はその“ごっこ遊び”にこそ,究極のストーリーテリングが隠されているのではないかとよく思います.

まだ小学校にも行っていないような甥は,当然文章を書く力も読む力もありません.用意された脚本があるわけでもないですが,少なくとも甥の頭の中には何かストーリーやキャラクターの設定が出来上がっていて,それを頭の外に表現しようとしているのです.
これは別に特別なことではなく,多くの人が幼少期に経験・実践しているはずです.

私の恩師であり,私が大学生だった当時,本学で教授をされていた金子満先生は「絵は誰でも描ける,子供の頃にはみんな描いていたはずだ」と仰っていました.私は絵もそうですが,ストーリーを作ったりそれを表現することも,本来は誰でもできるのではないかと思っています.
ただし,エンターテイメント作品として作るためには,作った本人にしか理解できないものではいけません.多くの人に興味を持たせ,共感を呼ぶ形に整えなければ,一人よがりで終わってしまいます.
このことを実感するきっかけになったのが金子先生の“ヴィジュアルストーリーテリング”という講義でした.これは単にストーリーの面白さを追求したシナリオを書くということだけではなく,映像コンテンツの仕様書として穴のないシナリオを書く,ということを考える授業でした.

現在私が担当しているシナリオアナリシスではこれらのことを土台に,みなさんそれぞれの頭の中にある妄想を,他人に説明できる形に落とし込む力を養うことを重視して実施しています.

(文責:兼松祥央)

【授業紹介】プロジェクト演習シナリオアナリシス

2020年4月24日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん,こんにちは.メディア学部助教の兼松です.

先日に引き続き,今日も私が担当している授業,「プロジェクト演習 シナリオアナリシス」を紹介します.
この授業では,アニメやドラマ,映画を作る際の仕様書とも言える,シナリオの書き方を学びます.
シナリオ,または脚本に要素と言えばまず想像するのが「おもしろいストーリー」ですよね.もちろんこれがおもいつくかどうかは大事です.
ただ,シナリオにとって大事なのはこれだけではありません.
ちなみに「おもしろいストーリー」が思いつかないからセンスがない,書けないというのも,私は違うと思っていますので,これについてはまた後日このブログに書きたいと思います.

さて,シナリオを書く上で注意しなければならないのは,シナリオはそれ単体で完結した作品ではない,つまり小説のようにシナリオ自体を読んで楽しんでもらうものではないということです.
最初にも書いたように,シナリオは映像作品の仕様書です.どのように作品を作るかが書いてある設計図といっても良いです.作品制作に関わる多くの人がこのシナリオを読んでそれぞれの専門性を発揮します.したがって,専門性の異なる様々な人が読んで,同じ画が想像できるように書く必要があります.小説のように「読み手それぞれの解釈の余地があることで楽しめる」ではダメなのです.

シナリオを書き上げるために,一つの物語を作り上げたい!という熱意は大切です.ですがそれだけではなく,人に伝えやすいシナリオ・共感を呼びやすいシナリオには共通の構造や押さえておくべきポイントがあります.
「シナリオアナリシス 」では,ただたくさんシナリオを書いて練習するだけではなく,授業名にもあるように,既存作品のシナリオの構造をしっかりと調査・分析して,ライターそれぞれの頭の中にある”妄想”を仕様書・設計図としてまとめる力を身につけることを目標にしています.
みなさんのご参加,お待ちしてます.

(文責:兼松祥央)

ゲーム機で音楽制作

2020年4月23日 (木) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の伊藤(謙)です。

卒研が佳境を迎えつつある昨年の秋、「持続的な研究活動のためには体力が必要」と『リングフィット・アドベンチャー』を手に入れた卒研生T君(今年3月卒業)。私はかねてから運動不足を感じていたのですが、彼の「これ、結構良いですよ」の一言で即決。年末にゲーム機本体とともにようやく購入しました。が、生来の三日坊主で遅々としてステージは進まず…。ここしばらくリングはおろか、ゲーム機本体にも手を伸ばしていませんでした。

そんな中、T君が私のピアノ曲(※2019年度後期「音楽創作論」で作曲したもの)を『KORG Gadget for Nintendo Switch』に打ち込んでいたことを思い出し、同じソフトを入手して音楽制作してみました(←学生に感化されるタイプ)。このソフトには「ガジェット」と呼ばれる複数の音源が用意されていて、それらを組み合わせることで色々なスタイルの音楽を作れるのですね。やるからにはピアノだけでなくドラムやベースも鳴らしたいもの。

そこで、専門演習「作曲演習」でMIDIデータの入力練習課題曲にしている自作「Eight Bars」を入れてみることにしました。全部で9パートあり、曲名の通り8小節のみの曲で、ループして聴けるようになっています。

まずは、授業で使っているDAWソフト『Cubase Pro』での原曲を。
(※1分ほどの動画です)


そして今回、『Nintendo Switch』で打ち込んだものです。


いかがでしょうか? 原曲の完全な再現には至っていませんが、曲調は割と近づけられたと思います。音の強弱変化(エクスプレッション)や左右の定位(パンポット)の連続的な変化は、今回どうしてもエディットできなかったので今後の課題です。

「短い曲だから簡単に仕上がるだろう」という当初の想像以上に時間がかかり、完成までに延べ3日間、正味15時間ほどを要しました。ゼロから初めて触れたソフトということもありますが、DAWソフトとは異なり、ジョイコンとボタンを駆使しての操作には慣れが必要でした。普段からゲームに親しんでいる方であれば、きっと直感的に操れると思います。音色選びや音色のエディット、各種編集作業にも苦労しましたが、これはこれで新鮮な体験で楽しかったです。ゲーム機本体の画面をテレビに映すようにしてからは、作業ペースが格段にアップしました(若い皆さんは本体の画面でも大丈夫でしょう)。

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ご紹介したDAWのような使い方ができるほか、複数人で一緒に音を並べていって曲を作ったり、手に持ったジョイコンの上げ下げによってリアルタイムに音色を変化させたりもできます。そうしたゲーム的な要素が音楽制作やパフォーマンスに組み込まれている点がこのソフトのユニークなところで、むしろそちらがメインの使い方なのかもしれません。Youtubeなどにそうした紹介動画がいろいろありますね。

次回はそうしたプレイもぜひ試してみたいと思います。あっ、もちろん運動もしますよ!


(メディア学部:伊藤謙一郎)

【授業紹介】デジタルキャラクターメイキング

2020年4月22日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部助教の兼松です。

コロナウィルスの影響で今年度は授業開始が遅れ、新入生のみなさんはいろいろ不安なことも多いかと思います。
こんな状況ですから、いざ授業がはじまると、新入生のみなさんにとっては新しいことずくめで一気に忙しくなるかもしれません。
大学ではどんな授業を受けるのか、自分で選んでいくことになりますので、今のうちから考えておくと良いかもしれません。

ということで、今回は私が担当している授業の1つ、「プロジェクト演習デジタルキャラクターメイキング」を紹介します。
この演習は、簡単に言えばアニメやゲームなどに登場するキャラクターの作り方を学ぶ演習です。
と、聞くと「キャラクターの絵の描き方を教えてもらえる」と感じる方も多いかとおもいますが、そうではありません。
キャラクターにとって外見はもちろん重要な要素です。ただし、ただかっこいい・かわいい絵を描いただけではイラストにすぎません。アニメやゲームのキャラクターは、作品にこめられたテーマやストーリーを視聴者・ユーザーに伝える役割を担っています。したがって、外見以上に内面もしっかり作りこんでいかなければなりません。
みなさんが本当に好きなキャラクターを想像してみてください。人となりや、そのキャラクターの背景にある歴史、ふとしたときの表情や行動など、きっとイラスト的な外見以外のところにも好きな要素が多いはずです。これは人が人を好きになるのとあまり変わらないと私は思っています。キャラクターメイキングは、極端にいえば実際にはいない人物の人生を考えなければならないので大変です。

そこでこの授業では、既存キャラクターがどのような設定で成り立っているのかを分析する「アナリシス」パートと、分析した結果を用いてオリジナルのキャラクターを作る「メイキング」パートで構成しています。

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みなさんの参加をお待ちしています。

(文責:兼松祥央)

令和元年芸術科学会東北支部大会・発表報告(その7・最終回)

2020年4月21日 (火) 投稿者: メディアコンテンツコース

本ブログをご覧の皆様,こんにちは.

メディア学部教授 菊池 です.

本日のブログでは,7回に渡ってお伝えしてきた「令和元年度芸術科学会東北支部大会」での研究発表報告の
第7回目(最終回)になります.

最終回にご紹介するのは,「区画画像から町の特徴を考慮した城下町のプロシージャルモデリング [1]」です.

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図.研究発表中の藤塚君


本研究では,お城の周りに広がる城下町を対象とし,城下町を「武家屋敷エリア」や「町人街エリア」,「寺社エリア」などのように領域を分割・指定することにより,エリアの広さに合わせた建造物モデルをプロシージャルに配置していくことで,城下町モデルを半自動的に生成可能としました.

以下のリンク先より,令和元年度芸術科学会東北支部大会発表報告その1からその6までをご覧いただけますので,お時間のある時にでも目を通していただけると光栄です.
●令和元年度芸術科学会東北支部大会・発表報告(その1)
●令和元年度芸術科学会東北支部大会・発表報告(その2)
●令和元年度芸術科学会東北支部大会・発表報告(その3)
●令和元年度芸術科学会東北支部大会・発表報告(その4)
●令和元年度芸術科学会東北支部大会・発表報告(その5)
●令和元年度芸術科学会東北支部大会・発表報告(その6)


[1] 藤塚 巧,伊藤智也,菊池 司,”区画画像から町の特徴を考慮した城下町のプロシージャルモデリング ”,令和元年度芸術科学会東北支部大会,講演セッション,01-10,2020.


文責:菊池 司 

デザインと学問

2020年4月20日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

学生さんとデザインの話をしている時、「デザインは学問なんです」、「科学なんですです」、と言うと「ピンとこないなあ」という表情をされてしまうことが多いです。

学問の定義や解釈のしかたはいろいろですが、デザイン学はデザイン行為に関係する知を統合し、法則性を明らかにしたり、知識の体系化を目標としている学問です。そしてデザイン科学は、人文・社会科学の問題を自然科学の問題に変換するという行為の本質を明らかにしようという科学です。

私は今も多義化が進むデザインという行為の解明を試みることへのワクワク感をずーっと持ち続けています。

無理にかたーく考えることはないと思いますが、メディア学部の学生さんや高校生のみなさん、一度、学問としてのデザインについて、自分なりの解を出しておくことをおすすめします。

メディア学部 萩原祐志

 

 

 

 

 

 

新聞を再発見しよう! 連載#7「東京新聞」

2020年4月19日 (日) 投稿者: メディア社会コース

こんにちは、メディア学部社会コースの森川です。
本連載最終日の今日は「東京新聞」をご紹介したいと思います。
 
地方出身者にはほぼ馴染みがない新聞でしょう。
私も広島出身なので、東京に出てくるまではよく知りませんでした。
まあ、東京の人が中国新聞と言われて、よくわからないのと同じですよね。
(中には中華人民共和国の新聞だと思う人もいたくらいです…!)
 
そんな東京新聞ですが、実は発刊しているのは中日新聞東京本社なのです。
中日新聞と言えば、愛知県名古屋市を本拠とする東海地方の新聞で、プロ野球中日ドラゴンズの親会社。
つまり、東京新聞と言いつつ、実は名古屋の中日新聞関東ローカル版とも言える新聞と言うわけです。
ただ、最初から中日新聞が立ち上げた新聞だったわけではありません。
創刊されたのは1884年で、当時は「今日(こんにち)新聞」という名前でした。
その後「都(みやこ)新聞」と名前を変え、戦時下の一県一紙体制(このことについては私の「メディア文化と社会」という授業の中でも言及しています)を受けて、「國民新聞」と統合され、「東京新聞」が誕生しました。
中日新聞が経営に参画したのは1963年になってからです。
 
東京新聞の政治的立場は、朝日や毎日と同じリベラル(左寄り)と言われています。
東日本大震災後には福島第一原発の徹底取材を敢行し、反原発を掲げて「原発のない国へ」というサイトも立ち上げました。
東京新聞の原発報道は2012年に一冊の本にまとめられています。
 
他方、現役の新聞記者・望月衣塑子氏の同名ノンフィクションを原案とした映画『新聞記者』が昨年公開され、今年の日本アカデミー最優秀作品賞を受賞したことをご存じの方も多いでしょう。
日本では敬遠されがちな政治をテーマとした作品がここまで高く評価されたことが、大きな話題となりました。
望月氏は中日新聞の社員で、現在中日新聞東京本社(東京新聞)勤務。
日本歯科医師連盟のヤミ献金事件の取材や、準強姦被害を訴えているジャーナリスト伊藤詩織氏へのインタビュー、菅義偉内閣官房長官の記者会見での鋭い質問など、記者として数々の功績を残しています。
彼女については上記『新聞記者』以外にも、昨年、森達也監督のドキュメンタリー映画『i-新聞記者ドキュメント-』が公開されており、現在その活躍が最も注目されている気鋭のジャーナリストの一人と言えるでしょう。
 
そんな人材を擁する東京新聞の記事は、読み応えのあるものが多いと感じます。
私には馴染みのない新聞でしたが、東京に戻ってきて全紙読み比べをした時にほぼ初めてちゃんと読んで、とても驚いたのを覚えています。
ただ、テレビ欄の位置が最終面ではないということに相当違和感がありましたが。
実際どの新聞を取るか、ということになると、紙面構成やフォント、文字の大きさ等も、好みが分かれるポイントになるでしょう。

 

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※ 画像はイメージです。
 
  
【東京新聞購読DATA】
1か月3,700円(税込)。
電子版は別料金で月額3,450円(税込)。
1週間無料ためしよみサービスあり。
申し込みはこちら
  
 
今週は一週間、新聞各紙の紹介をしてきましたがいかがだったでしょうか。
ここで書いた通り、各新聞にはそれぞれの政治的立場があります。
そして、偏った報道も「報道の自由」なのです。
ですから、偏った情報を鵜呑みにしないためには、本来1紙ではなく、数紙を読み比べることが重要です。
しかし、何紙も講読するのは大変ですよね。
だとしたら、自分が読んでいる新聞がどういう政治的立場を取っているのかを、しっかりと把握しておきましょう。
その上で、無料で読める各紙のウェブ版にも目を通してみると良いでしょう。
本連載を通し、少しでも新聞に興味を持ってもらえたら嬉しいです。
 
 
(メディア学部 森川 美幸)

新聞を再発見しよう! 連載#6「産経新聞」

2020年4月18日 (土) 投稿者: メディア社会コース

こんにちは、メディア学部社会コースの森川です。
今日は「産経新聞」をご紹介したいと思います。
 
産経新聞と言えば、フジテレビを思い浮かべる人が多いかも知れませんね。
そうです。
産経新聞社もフジテレビも、同じフジサンケイグループの一員で、他にラジオ局のニッポン放送やレコード会社のポニーキャニオン、出版社の扶桑社等も含まれます。
 
フジテレビはバラエティー番組のイメージが強いので、産経新聞もエンタテインメント色が強い、リベラル系の新聞では?と思う人もいるかも知れません。
しかし、そうではありません。
産経新聞は、もう、バリバリの保守系紙です。
連載#2で読売新聞が右寄りの新聞だと紹介しましたが、産経は読売以上に保守本流のど真ん中に位置づけられると思います。
読売は保守と言うよりも保守政党である自民党寄りですので、政権批判は少ないのですが、産経は国益に適わない政策だと思ったら政権批判記事も書きます。
「モノを言う新聞」というのが同社のキャッチフレーズです。
 
憲法改正には賛成の立場で、創刊80周年にあたる2013年には独自の憲法改正案である「国民の憲法」要綱を発表しています。
同要綱で、産経は天皇を「元首」とはっきり位置づけ、自衛と国際平和に寄与するための軍の保持や、緊急事態における内閣の権限強化を規定しています。
このような主張は左派である朝日新聞とは真逆を行くもので、さらに言えば同じ右派の読売新聞ですら天皇を元首とは位置づけていないことから、極端な保守的思想と言えます。
 
そんな産経新聞ですが、発行部数は他の全国紙に比べて100万部以上少なく、経営的にあまり思わしくない状態が続いているようです。
昨年、大規模な人員削減を実施し、経営のスリム化を図りました。
産経は他紙に先駆けて2002年から夕刊を廃止した新聞でもあります(同社では「夕刊フジ」という夕刊紙を発行していますが、あくまで別の新聞です)。
読者が高齢化し、購読者数が年々減少していく中、どの新聞社も経営体制の見直しを迫られています。
全国紙の中では、産経新聞と、本連載#4で紹介した毎日新聞が、厳しい状況に立たされていると言われています。
今後、印刷版の提供を中止し、デジタル版のみにシフトする新聞社が出てくる可能性は十分あります。
もしかするとその先鞭をつけるのも、産経新聞かも知れません。
 

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1か月3,034円(税込)。
電子版は別料金で月額1,800円(税別)。
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本連載ラストの明日は、東京(関東地方)のブロック紙・東京新聞を紹介します!
 
 
(メディア学部 森川 美幸)

新聞を再発見しよう! 連載#5「日本経済新聞」

2020年4月17日 (金) 投稿者: メディア社会コース

こんにちは、メディア学部社会コースの森川です。
今日は「日本経済新聞」(以下、日経新聞)のご紹介です。
 
これまで紹介してきた読売、朝日、毎日が一般紙であるのに対し、日経新聞はビジネス情報に特化した経済紙(産業情報紙)です。
しかし、購読者数の多さと、社会や政治、スポーツ等、経済以外の話題も多く扱っていることから、一般紙同様に扱われているため、今回このブログでも取り上げることにしました。
 
日経新聞は、とにかく企業情報が豊富です。
他の新聞にはないビジネス関連記事が満載ですので、ビジネスパーソンだけでなく就活生にも大いに役立つでしょう。
見出しを追うだけで、大きなニュースや景気動向がわかる作りになっているため、忙しい時でもざっくりとその日の重大情報をインプットすることが可能です。
ただ、経済やビジネスにあまり関心がないと、とても難しい、つまらない新聞だと感じると思います。
情報量もかなり多いので、興味がなければ全く読む気をなくすかも知れません。
 
政治的立場は保守ともリベラルとも言われることがありますが、中道と言っていいでしょう。
政治的な視点よりも、経済界の視点で政治を見ている感が強いです。
政権寄りの論調になるのは、新聞社として保守の姿勢を表明しているわけではなく、政権が安定すると経済も安定するから、というわけです。
経済界を盛り上げる政策を支持する傾向にあると思います。
 
日経新聞で特筆すべきは「私の履歴書」という最終面に連載されているコラムです。
文化人やビジネスパーソン、政治家、芸能人など、大きな功績を残した人が、生まれた時から現在までのエピソードを履歴書風に語る自叙伝的な内容になっています。
既にリタイアしている高齢の人物が登場することが多く、戦時中の話や戦後間もなくの混乱した時代の話がしばしば語られるので、庶民の昭和史としてもかなり読みごたえがあります。
1956年に始まった長期連載で、同年には松下電器産業の松下幸之助社長(当時)や少年探偵団シリーズで有名な作家の江戸川乱歩も取り上げられました。
2010年以降に登場したのは以下のような人たちです。
  
・細川護熙(元首相)
・蜷川幸雄(演出家)
・安藤忠雄(建築家)
・渡辺淳一(作家)
・王貞治(福岡ソフトバンクホークス会長)
・宮内義彦(オリックス会長)
・豊田章一郎(トヨタ自動車名誉会長)
・ジョージ・W・ブッシュ(米元大統領)
・コシノジュンコ(ファッションデザイナー)
  
蜷川さんや作家の渡辺淳一さんはその後お亡くなりになりましたね。
この連載が貴重な本人の証言になったと思います。
ビジネスや経済に一切興味がない人でも楽しく読めると思いますので、日経新聞を手に取ることがあったら是非読んでみてくださいね。
 

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明日はがちがちの保守系紙・産経新聞を紹介します!
 
 
(メディア学部 森川 美幸)

新聞を再発見しよう! 連載#4「毎日新聞」

2020年4月16日 (木) 投稿者: メディア社会コース

こんにちは、メディア学部社会コースの森川です。
今日は「毎日新聞」をご紹介します。

 
既に紹介した読売新聞と朝日新聞の陰に隠れている感がありますが、何を隠そう毎日新聞こそ、東京で最初の日本語日刊紙なのです!
前身は「東京日日新聞」という名前でした。
ちなみに日本初の日刊紙は「横浜日日新聞」で、その後「横浜毎日新聞」となりましたが、1940年に消滅しています。
そのため、毎日新聞が日本最初の日刊紙と言われることもあります。
 
今でこそ読売・朝日の後塵を拝していますが、1960年代に経営難に陥るまでは朝日と双璧を成す二大新聞社の一つでした。
かの芥川龍之介も在籍していた(正確には当時西日本を管轄していた「大阪毎日新聞」にですが)ことがあり、記事を寄稿していたのです。
それまでは教職に就いていた芥川でしたが、毎日新聞への入社によって、文筆家として生活できるようになったというわけです。
 
さて、そんな毎日新聞ですが、政治的立場としては朝日新聞と同じくリベラル(左寄り)だと言われています。
もともとは政権に対して反対の立場を取ることが多かった新聞ですが、最近では記者によって論調が大きくぶれ、保守寄りになることもあります。
例えば徹底的な憲法改正反対の姿勢を見せたかと思えば、自衛隊の派遣に関しては容認の記事を掲載したりするのです。
とても極端な新聞のように思えるかも知れませんが、記事を読んでいるとあまり大きな特徴は見られません。
正直言って、とがっている部分がどこにもなく、味気ないのです。
しかし、実は毎日新聞は日本新聞協会賞を最多受賞しているほど、時々とんでもないスクープをするんですよね。
去年も4年連続31度目の新聞協会賞を受賞しています。
  
一方で、これまでいくつかの大きな不祥事を起こした新聞でもあります。
2003年には、同紙の記者が“人間の盾”として入国していたイラクから、何を考えたのかクラスター爆弾の不発弾を土産物として持ち帰ろうとし、帰国途中のヨルダンの空港で爆発して1人の尊い命が失われる事件を起こしました。
また、毎日新聞の英語報道メディア「Mainichi Daily News」でも、2008年に前代未聞の不祥事が発覚しています。
「毎日デイリーニューズ」、「WaiWai」等のキーワードで検索をかけると出てくると思いますので、興味のある人は調べてみてください。
 
時々いい方にも悪い方にも突出しますが、普段はあまり特徴が見えない。
ひょっとするとそれが毎日新聞の個性なのかも知れません。
 

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追加料金500円で電子版のすべての機能が利用可能。無料プランもあり。
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明日はビジネスパーソンの必読紙、日本経済新聞を紹介します!
 
 
(メディア学部 森川 美幸)

新聞を再発見しよう! 連載#3「朝日新聞」

2020年4月15日 (水) 投稿者: メディア社会コース

こんにちは、メディア学部社会コースの森川です。
今日取り上げるのは、日本で第二位、世界でも第二位の発行部数を上げている「朝日新聞」です。
 
朝日新聞と言えばリベラル(左寄り)な政治的立場を取る新聞だということを知っている人も多いでしょう。
政権に寄り添う姿勢を見せる読売新聞とは反対に、朝日新聞は批判的態度を貫きます。
リベラルとは、個人の自由や個性を重んじる考え方で、自由主義的な姿勢を取ります。
ですから、昨今注目されている夫婦別姓や同性婚にも寛容な立場です。
一方で憲法改正には批判的です。
 
朝日新聞に関しては、ちょっと調べればさまざまな逸話が出てくるでしょう。
殊に慰安婦報道については、政治問題にまで発展した深刻な誤報として大問題になりました。
しっかりとした裏付けを取らないまま、個人の証言を真実として報道してしまったのです。
1982年からこの報道を始め、結局2014年になって朝日新聞は慰安婦報道に関する検証記事を掲載。
その後、証言は虚偽であったことを認め、一連の記事を撤回することとなりました。
今でも覚えていますが、この時の朝日のバタバタぶりは見るに堪えないものがあり、購読を辞めた読者が相当いたのではないかと思います。
読者フォーラムの「声」欄にも、「ずっと朝日を取り続けていたが、もうやめる」といった投稿が掲載されていたと記憶しています。
 
この問題が明るみになった直後、紙面で月に一度連載していた池上彰氏のコラムの掲載拒否問題が発生します。
池上氏が今回の慰安婦報道の朝日の検証について鋭く切り込んだ内容でした。
朝日はその記事の掲載を見合わせると池上氏に通告。
池上氏は朝日との“信頼関係が崩れた”とし、連載中止を申し入れました。
最終的に、池上氏の記事はそのまま掲載されることになり、一時ストップしていた連載も今では復活していますが、読者にとっても朝日への信頼が失われる一件でした。
 
いろいろと批判はありますが、朝日新聞の記事は振り切っている分、議論に値するものが多いと感じます。
毎日一面に掲載されている「天声人語」というコラムは、入学試験にもたびたび採用されていますし、上記の池上彰氏の他にも、作家の瀬戸内寂聴さんや漫画家の伊藤理佐さんのエッセイなど、興味深い連載が多く読みごたえがあります。
報道に偏りが見られる新聞ですが、そもそも“報道の自由”とはそういうものだと理解した上で読んでみてください。
 

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明日は東京初の日刊紙である毎日新聞を紹介します!
 
 
(メディア学部 森川 美幸)

新聞を再発見しよう! 連載#2「読売新聞」

2020年4月14日 (火) 投稿者: メディア社会コース

こんにちは、メディア学部社会コースの森川です。
昨日のブログに書いた通り、今日から6日間に渡って、東京で購読できる新聞の紹介をしていきたいと思います。
 
今回は、日本国内だけでなく、世界でも第一位の発行部数を誇る「読売新聞」を取り上げます。
多くの皆さんは、読売新聞と言えば読売巨人軍を思い出すのではないでしょうか。
そうです、ジャイアンツの親会社の新聞社です。
かの「ナベツネさん(渡邉恒雄氏)」は読売新聞の社主、つまり読売新聞のトップなのです。
だから巨人軍の運営にも大きな発言権を持っているわけですね。
当然読売新聞のスポーツ欄では、巨人の情報を大きく取り上げます。
もちろん巨人寄りの視点で。
 
ではスポーツではなく政治的な視点はどうかと言うと、読売新聞は保守的(右寄り)だと言われています。
保守というのは、つまり、旧来の風習や伝統を重んじ、保存しようという考え方のことです。
現在の政権与党である自由民主党(自民党)は保守的な政党であり、読売新聞は基本的に自民党に寄り添う立場を取っています。
その象徴とも言える出来事が、2017年に起こりました。
2020年までに憲法を改正して施行したいとする自らの発言について、国会で追及された安倍晋三首相が、具体的な答弁を拒み、「自民党総裁としての考え方は、相当詳しく読売新聞に書いてありますから、それを熟読していただいてもいいのでは」と述べたのです。
確かにその数日前の読売新聞に、安倍首相の単独インタビューが掲載されていました。
政治のトップと、権力を監視すべきメディアがこれだけ密接な関係を築いていることに対し、多くの意見が噴出したのは言うまでもありません。
 
とは言え、読売新聞は大衆紙の代表なだけあって、とても読みやすく作られています。
取り上げるトピックも、話題性のある事件やエンタテインメントネタが多いです。
新聞を読み慣れていない人にとっては、とっつきやすいかも知れません。
朝刊1面の「編集手帳」、夕刊1面「よみうり寸評」、朝刊解説面の「五郎ワールド」など、興味深いコラムも掲載されています。テレビで話題になっている人や芸能人のインタビューがよく載っているのは、グループ会社に日本テレビがあるためでしょう。
 
わかりやすく、楽しんで読める記事が多い新聞ですが、社説や政治面を読む際は、保守の新聞であることを意識した方が良いと思います。
 
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【読売新聞購読DATA】
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明日は読売新聞と真逆の政治的立場を取る朝日新聞を紹介します!
  
 
(メディア学部 森川 美幸)

新聞を再発見しよう! 連載#1

2020年4月13日 (月) 投稿者: メディア社会コース

こんにちは、メディア学部社会コースの森川です。
このブログには約半年ぶりの登場となりました。
この春は新型コロナウィルスの感染拡大予防でさまざまな行事が中止となり、特に新入生の皆さんは何かと残念な思いをされたことでしょう。
さらに授業開始も延期となり、異例づくめの春になってしまいました。
今もまだ大変な状況が続いていますが、それでも新たな気持ちで、大学生活の本格スタートを元気に待っていてもらいたいと思います。
 
さて、大学に入って一人暮らしを始めた(もしくは始める)、という人もいらっしゃると思いますが、皆さん、新聞は取っていますか(または取る予定ですが)?
私は「メディア文化と社会」という科目を担当していて、授業の中で履修生に新聞を読む習慣があるかどうか尋ねています。
すると毎年90%以上が「ない」と答えるのです。
デジタル化が進み、紙の新聞を購読する家庭が減少しているのは日本新聞協会の調査データからも明らかですが(日本新聞協会)、若年層の新聞離れは、ひょっとして新聞を読む面白さを知らないのかも、とも思います。
そこで、今回のブログでは7回にわたって、日本の新聞全国紙5紙+東京ローカル紙(つまり、東京で購読できる新聞)の紹介と比較をしてみることにしました。
具体的には、以下の新聞を取り上げます。
 
1.読売新聞
2.朝日新聞
3.毎日新聞
4.日本経済新聞
5.産経新聞
6.東京新聞

この順番は、発行部数の多い順です(参照はこちら)。
もし気になる新聞があったら、是非手に取ってみてくださいね。
私自身は昔から新聞が大好きで、一人暮らしをしていた大学時代もしっかり新聞を購読していました。
実家が朝日新聞を取っていたため、一人暮らしを始めてからも朝日新聞を取りました。
その後、海外(カナダとドイツ)に計4年ほど行くことになるのですが、カナダでは現地の日系人向け日英バイリンガル新聞の記者をしていました。
ですから、もちろんその新聞は読んでいましたが、現地の新聞は購読せず、たまに買って読んでいましたね。
お気に入りはクオリティペーパーとして名高いカナダの全国紙「The Globe and Mail」でした。
私が住んでいたトロントには、他に「Toronto Star」というローカル新聞もあり、地元ではそちらの方が一般的だったと思います。
あと、カナダでは無料の新聞(「Metro」など)も多く配布されていましたので、新聞購読をしていなくても私の新聞欲は概ね満たされていました。
 
ドイツでも新聞購読はしていませんでしたが、やはり時々買って読んでいました。
とは言っても、私のドイツ語力はすらすらと新聞が読めるレベルではありませんでしたから、気になる記事があったら電子辞書を片手に何とか読解していた、と言った方がいいかも知れません。
よく読んでいたのは「Der Tagesspiegel(ターゲスシュピーゲル)」という全国紙です。
私はベルリンに住んでいたのですが、ベルリン映画祭の期間中には確か会場でこの新聞が無料配布されていたと記憶しています。
また、ベルリンにも「Berliner Zeitung(ベルリナー・ツァイトゥンク)」というローカル紙がありました。
こちらも地元のニュースが知りたい時などに手に取っていました。
 
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海外生活を終え、日本に帰ってきて、まず私がやったのは、東京で買える新聞、つまり上記6紙をすべて買い、比較することでした。
読み比べて、どの新聞を購読するか決めようと思ったのです。
日本にいなかった4年の間に、日本のメディアを冷静に見る目を持つことができたことも大きかったと思います。
読み慣れている、という理由だけで朝日新聞を取るのは早計だと考えました。
読み比べると、各紙の違いが鮮明に見えてきたものです。
この連載で、その一端でもお伝えできればと思います。
 
それでは、明日からの連載、是非お楽しみに!! 
 
 
(メディア学部 森川 美幸)

発表できなかった発表:不快音は下手にごまかさない方が良い

2020年4月12日 (日) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

発表できなかった発表の2件目は、学部4年生の市川さんの「不快音を生じさせる音響信号に対する文脈効果」です。こちらも「映像表現・芸術科学フォーラム」で発表予定でした。

ガラスを引っかく音や、黒板をチョークで擦る音など、聞くだけで不快になる音ってありますよね。その不快感をなんとかしたいという発想から始まったのがこの研究です。研究テーマの設定までは順調だったのですが、その後は予期せぬ方向に進んでいきました。

最初に考えたのは、現代音楽などで不協和音をたくさん含む曲を聴くとき、不快感を感じてもおかしくないのに、ちゃんとした音楽だと思うと不快感を感じないということでした。だとすると、そういう音楽に耳を慣らした状態で不快音を聞けば、それほど不快だと感じないのではないかと考えたのです。このように、前後の音の印象により間にある音の印象が変わることを、文脈効果と呼びます。

面白いアイディアだと思って実験をしてみたのですが、なかなか予想通りの結果が出ません。というか、むしろ逆の結果が出て、現代音楽に挟まれた不快音の方が、より不快感が高いという結論になってしまったのです。ここで「あー失敗だった」と思えばそれまでですが、きちんとやった実験に失敗ということはありません。予想と逆の結果が出たとしても、それもまた一つの新発見です。実験手順を見直して、間違ったことをしていないことが確認できたら、「よし、この結果を学会で発表してみよう」ということになったというわけです。

「事実は小説よりも奇なり」という言葉がありますが、これは科学にも当てはまります。人間が予想できることなどたかが知れていますが、予想に反した結果が得られたときにこそ、科学的新発見への道が開けてきます。今回の発表では、そんな研究の世界の一端を垣間見ることができたのではないかと感じています。

発表できなかった発表:好きな言葉でシンセサイザーの音を作る

2020年4月11日 (土) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

3月は学会のシーズンで、私の研究室でもいくつかの学会発表を予定していました。しかし、新型コロナウィルスの感染防止のため、ほとんどの学会が中止になってしまいました。学部4年生や修士2年生など、卒業までの研究の集大成を発表する予定だった人にとっては大変残念なことですが、こればっかりはどうしようもありません。ただ、どの学会も「予稿の提出をもって発表を行ったものとみなす」という方針を示してくれたので、彼らの発表実績は確かに記録されたことになりました。発表が行われ公知になったことですから、このブログでもぜひ紹介させていただこうと思います。

最初の発表は、学部4年生の木下さんの「感性表現に基づくシンセサイザー用音源選択」で、3月13日の「映像表現・芸術科学フォーラム」で発表予定でした。自由な言葉で音源を探し、シンセサイザーで使いたいというのは、私の研究室で以前から取り組んでいるテーマで、このブログでも成果を紹介したことがあります。今回の木下さんの研究の特徴は、このテーマにSD法という方法を持ち込み、いくつかの形容詞対で言葉の意味を数値化するようにしたところにあります。SD法というのはSemantic Differential法の略で、「明るいー暗い」「派手なー地味な」のように、反対の意味を持つ形容詞を並べて、どちらにどれぐらい近いかをアンケート方式で回答してもらうというものです。用意しておいた音源に対し、あらかじめこのようなアンケートを行い、数値化を行います。ただし、ユーザーがクエリ単語を入力するたびにアンケートを行っていたのでは大変なので、その部分にはアンケートを使わず、Word2VecというAIツールを用いたことが、もう一つの特徴です。

残念ながら、学会会場でデモを見てもらうことはできませんでしたが、とても面白いシステムなので、ぜひどこか別のところで紹介したいと思っています。

卒業研究のテーマ決めに関連して

2020年4月10日 (金) 投稿者: メディア技術コース

外出の自粛要請があるなかで、本大学の教員も自宅勤務の指示がでています。運動はもっぱらリングフィットネスをやっています。結構汗がダラダラと流れるくらいの運動なのですが、最後に表示される消費カロリーがビール缶半分くらいで凹みます。レベルは70を超えたのですが、ウェブの情報によるとまだまだ全然のようですね。

 

ところで、新学期のスタートは遅れていますが、4年生は卒業研究のテーマを決めなければならない時期です。私の研究室ではいつも3年生の終わりには決まるように指導するのですが、それでもテーマを決定できている人は多くありません(むしろほとんどいない…)。一つの理由としては、私の研究室で扱う内容の自由度がある程度高いせいで、かえって決められないのだと思います。しかしながらそれとは別に、卒業研究では独自性のあるテーマが求められることも理由としてあるでしょう。既に行われていて方法も説明されているものをやったとしても、それは研究ではなく演習です。適切なテーマを見つけることは難しいことですから、ある程度、教員がサポートする必要があります。

 

ところで、研究テーマに限らず一般的に新規のアイデアを思いつくための方策に関連して、以下のような文章を見つけました。これは「ゲーデル・エッシャー・バッハ」という本の中で、知能の特徴はどのようなものかということで筆者が挙げていたリストの一部です。新規のアイデアを思いつくための指針ではないのですが、以下の項目は頭の使い方として参考になるのではないかと思います。

 

・ …

・ いろいろな相違によって分離されかねない状況の類似点を発見すること

・ いろいろな類似点によって結ばれている状況を区別すること

・ 古い概念を新しいやりかたで結合することによって新しい概念を構成すること

・ 新奇な着想を思いつくこと

 

「ゲーデル、エッシャー、バッハ」、ダグラス・R・ホフスタッター、白揚社、p.42, 43

 

1つ目と2つ目は、全く違うと思われるものの共通点を見つけだすことと、同じように思われるものの違いを認識するということですね。そうすることで、あるものに有効な手法を別の分野のものに適用するようなアイデアが浮かぶかもしれません。3つ目の項は、新しいアイデアというのは、従来あるものの新しい組み合わせ方を見出すことによって行えるということですね。アイデアというのは無から新しいものが突如として現れるわけではないということです。このような方法で新しいアイデアを思いつくためには、多くの分野のことを知っているほうが有利です。これはメディア学部の学生は得意であってほしい部分ですね。最後の項目はアイデアを考えるための助けにはなりませんが、知能というのはそういうことができるものだ、ということですから、知能を証明できるように面白い発送を是非思いついて欲しいと期待しています。従来の手法の改良というようなテーマも研究としては重要ではありますが、メディア学部としては、多様なものの学習を土台として、新しいアイデアを提案するような研究テーマに是非取り組んで欲しいと思っています。図らずも訪れた休みの期間を利用して、普段興味を持たないような多くのことの知識を仕入れる機会としてみてはいかがでしょうか?

 

 

太田高志

教授会を遠隔でやってみた

2020年4月 9日 (木) 投稿者: メディア技術コース

 大学の学部では毎月教授会という定例会議があります。4月の年度初めは専任教員全員が集まる教授総会を開催することになっています。
 
 COVID-19の影響で在宅勤務が推奨・要請されています。世の中の多くの会社員がやっている遠隔会議をメディア学部教員ができないのではシャレになりません。最近評判の「Zoomミーティング」で教授総会を実施してみました。
 
 遠隔で実施と決まったのが3日前にも関わらず、教員全員が事前にZoomのインストールや登録をしました(そんぐらい当然という声が聞こえてきそうですが)。Zoomホスト初心者のくせにセキュリティのため直前にURLを送ろうと欲張った私が周知に手間取り、出席者が揃ったのが定刻5分遅れと波乱の展開です。連係プレーの協力に助けられ何とか始めることができました。いつもの会議室だと定刻10分前に入る人はほとんどいません。オンラインだと結構早目の時間から何人も集まることは意外でした。
 
 結果として、いつもの教授総会とほとんど変わらない進行ができました。一番大きな理由は、音声の遅れがないことです。私は専門分野の関係で臨場感とかリアリティには詳しい方です。大画面とか画質とかよく言われます。しかし、双方向のやり取りということであれば、臨場感で決定的に重要なのは遅延のない音声だ、ということを痛感しました。
 
 Zoom Video Communicationsは、シスコでWeb会議システムを開発したメンバーが立ち上げた会社です(キーマンズネットの記事)。シスコはインターネットの中継器であるルーターの老舗最大手です。遅延を極力少なくする仕組みはさすがです(ここ数日はセキュリティ上の問題が世界的に取り上げられましたが、対応は早かったです)。
 
 さて、教授総会は何の違和感もなく閉会しました。広い会議室よりもメンバーが近くにいる印象がありました。発言ややり取りの感じもいつも通りかそれ以上に活発です。
 
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 リアルな会議だと終了後に雑談がつきものです。遠隔会議だと終了したら接続が切れるのでそれがないのは難点です。と思いきや、たまたま20分後に入ってみたら若手の先生方が接続したままでした。新任の助手の先生を囲んで雑談をしていました。
 
 今週は学部内の各種委員会やワーキンググループも全部遠隔で実施されているようです。私も学生との研究室ゼミや、他の先生との個別ミーティングをZoomで行いました。
 
 今月中にもう一度ある教授総会はまた遠隔での実施が確定です。その日には、新任教員の歓迎会も「Zoom飲み」で実施する予定です。
 
メディア学部 柿本正憲
 

新1年生の皆さんへ

2020年4月 8日 (水) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

新型コロナウィルスの影響で、本学でも授業の開始が延期されています。本来ならば、今頃は新学期が始まり、いろんな科目の準備に忙しくしていたはずですが、思いがけず時間を持て余すようになってしまったかもしれません。

大学教員として、この状況で普通にコメントするとすれば、「この機会に、高校の勉強をしっかり復習しておいて下さい」「PCの使い方に慣れておいて下さい」「メディア学部のウェブサイトを見て、自分のやりたいことを探して下さい」といった感じになるかと思います。でも、そう言われてもなんか面倒くさいなあ、という気もしますよね。そういう皆さんに、もっと手軽な暇つぶしのお奨めがあります。

この「メディア学部ブログ」のバックナンバーを、ひたすら読んでみませんか。

メディア学部ブログは、2010年10月8日にスタートし、大学で起こる様々な出来事や、教員の雑感、ちょっとした豆知識などをお伝えしてきました。ここ5年ほどは年間365日欠かさず更新を続けており、これまでに数千件の記事が公開されています。

カリキュラムやシラバスなど、大学から公式に提供される情報はもちろん大切ですが、それとは別に、こうした非公式の情報の中に、みなさんの大学生活を楽しいものにするためのヒントが沢山詰まっているはずです。先頭の記事から読んでいけば、きっと有意義な暇つぶしになることでしょう。

メディア学部ブログ・2010年10月

授業が再開できるようになったら、ブログに書けるような楽しい活動を、一緒にやっていきましょう。

肉眼でもボケの見える装置がInteraction2020でインタラクティブ発表賞を受賞

2020年4月 7日 (火) 投稿者: メディア技術コース

情報処理学会のシンポジウムの一つであるインタラクション2020において,本研究室修士2年生の小野龍一君がインタラクティブ発表賞(PC推薦)ならびにインタラクティブ発表賞(一般投票)の2部門での受賞を果たしました.
インタラクションは20年以上の歴史を持つ情報処理学会の中でも大きなシンポジウムであり,今年は20件の登壇発表と223件のインタラクティブ発表(デモやポスター展示)がありました.
コンピュータの新しい操作方法について考えるデモを重視した学会ではありますが,新型コロナウイルスの影響でこの学会も急遽オンライン開催となり,インターネットを介しての参加や発表が行われることとなりました.
小野君の研究のタイトルは「振動モーターによる擬似的なボケの生成と被写界深度変化への応用」というもので,肉眼において,マクロレンズや望遠レンズで撮影したように,被写界深度の浅いいわゆるボケのある映像を見ることができるというシステムです.
振動モーターを用いて,物体を細かく振動させることでブレて輪郭がはっきりしなくなります.この効果を平面上の特定の場にある物体のみに適用することで,レンズのピントがあっていないいわゆるボケのような状態をカメラなどを使わない肉眼でも再現することができるシステムです.
今回のデモでは小さなジオラマを準備し,その一部をボケさせることで肉眼であってもマクロレンズを使って撮影したような一部のみにピントのあった像を見ることができるシステムを構築しました.
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図の(a)は人間の目で直接見た場合のジオラマの様子ですが,振動をコントロールすることによって(B) のように真ん中のカウボーイのいる部分以外はボケてみえるようになります.この効果を写真で撮影したときだけではなく,レンズを通さない肉眼でもはっきりと感じることができるのがこの装置の面白いところになります.
レンズを通さずにレンズのような効果が体験できることが最大の売りである本システムを,カメラを通じてのプレゼンテーションで魅をを伝えることになってしまったのですが,事前の準備を充分にやった成果もあり,二つの賞に選ばれることになりました.
223件のインタラクティブ発表は3日にわけて発表がおこなわれ,毎日70件ほどの発表が行われます.
一般投票賞はこれを見た参加者の投票よよって決められる賞で,もっとも人気のある楽しかった研究といった意味合いがあるかと思います.
こちらは例年1日あたり3件程度が目安となっています.
また,PC推薦というのはプログラム委員のメンバーがあらかじめ選択した研究の発をを見た中で賞を決定するものです.
見た目の楽しさだけではなく研究内容も問われるもので三日間すべての223件の発表の中から,7件が選ばれました.
今後はさらに発展させることで,より細かな制御やボケ映像の定量化などをやっていきたいと思っています.
コロナウイルスの落ち着いたころ,オープンキャンパスでは展示をしたいと思いますのでその時はぜひ見にきてください.
(羽田久一)



こうかとんパンケーキ?

2020年4月 6日 (月) 投稿者: メディア技術コース

こんにちは。テレビ番組で昆虫などの形をかたどったパンケーキを作っている人の紹介を見て、これはこうかとんパンケーキを作るしかないと思って作ってみました。

(1)下図のように自分の中のこうかとんをイメージします。

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こうかにゃん(キャンパスによくいるネコ)との五目並べの対決場面

 

(2)パンケーキ用の粉と水を製品の指示に従って混ぜます。生地に適量のチョコシロップを混ぜたものも用意します。

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(2)それぞれ調味料のボトルに入れます。

Pancake002s

(3)縁取りをチョコ入り生地で書いた後、隙間にプレーン生地を流し込みます。

 Pancake004s

(4)表面が乾いてきたら慎重にひっくり返します

Pancake005s

できあがり。

(5)2枚目を焼きます。焼き加減は良いものの、なんだか微妙な表情になってしまいました。

Pancake006s

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(6)続いてネコ(こうかにゃん)のパンケーキを焼いてみます。ゴーグルをかけているようになってしましました。

Pancake008s

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(7)最後は余った生地で「八王子」を書いてみます。

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(8)裏返すと左右が反転することを考慮していませんでした・・・。

Pancake012s

(9)後日、反省点を踏まえて以下のことを注意して再度作ってみました。

  1. フライパンでは狭いのでホットプレートを使う。
  2. 線をなるべく細く速く書く。後で生地が膨らんできて線が太くなってくるため。
  3. 書き順を工夫する。書きづらい順に線を書くと図形のバランスが悪くなる。

10倍速での作成の様子の動画

 

(11)さらに後日、しぼり口の直径を調整できる生地用の容器を百均で発見し、またもやチャレンジです。

Pancakes_deco_00s

最初のCGをイメージしつつ飾り付けてみました

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今度は「八王子」も読める向きで書けました

以上である程度こうかとんに近づけました。反省点を分析してトライ・アンド・エラーを繰り返す工程は研究にも通じるところがあるのではないでしょうか。

 Trial_and_error

トライアンドエラーのあと

 メディア学術コース 越智

[ 映画コラム-その1 ] コメディ映画の結末

2020年4月 5日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース





今週末は、外出をひかえて家で過ごされる方も多いかと思います。大変な時期となりましたが、みなさん体調に気をつけて、無事に健康でお過しください。

家にこもっていると気持ちもくもりがちになりますが、そんな時は、DVDやネット配信で映画鑑賞はいかがですか? このブログシリーズ[映画-コラム]では、こんな時期におすすめしたい映画や、映画のひとくち知識などについてご紹介していきたいと思います。

今日のテーマは「コメディ映画」です。コメディ映画で気分転換はいかがでしょうか?

「ブルース・ブラザーズ」は、私のイチオシ映画の一つです。ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドというギャグの天才ふたりが暴れ回る音楽映画ですが、ストーリーは単純明解です。自分たちが育てられた孤児院が、破産寸前の危機に直面しているので、それをなんとか助けようと、バンドを再結成してチャリティコンサートを開催するのです。

ドタバタの大騒ぎの末に、稼いだ5000ドルを寄附するまでの展開が、ほんとに面白いですよ。「ブルース・ブラザーズ」の監督はジョン・ランディスという方です。ほかにもエディ・マーフィと組んだ「大逆転」や「星の王子様ニューヨークへ」などの作品がありますね。

ジョン・ランディスと並ぶんで、ジェリー・ザッカーも素晴らしいコメディ映画の名手です。「ゴースト」は至高のラブストーリー、「ラットレース」は著名俳優大集合の豪華なコメディ映画です。どちらも人間の愚かさと素晴らしさの両面を表現つくしていると思います。ぜひこちらもリストにいれてください。

実は、これらのコメディ映画には、共通するテーマがあります。

それは「お金」です。
お金に振り回されて、人生がおかしくなるほど奔走する人間たち。
その姿がおかしいのと同時に、見る人に人生の価値観を教えてくれます。

今日紹介した映画は、基本的には欲得づくの人間たちが、巨額の資金をめぐって右往左往する話なのですが、最後にはある決まった「オチ」があるのです。見る人がスカっとした気持ちになる仕掛けなのです。さて、どんな結末でしょうか?

みなさんもご覧になって、これらの映画の結末を確かめてみませんか?
どんな「オチ」なのか、それは次回のブログに書きますね。お楽しみに...


今回は、コンテンツコース・佐々木 が担当しました。


令和元年芸術科学会東北支部大会・発表報告(その6)

2020年4月 4日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース

本ブログをご覧の皆様,こんにちは.

メディア学部教授 菊池 です.

さて本日のブログは,令和元年度芸術科学会東北支部大会」での研究発表紹介・第6弾です.

本日ご紹介するのは,「日本城郭のプロシージャルモデリング [1]」です.

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図.研究発表中の三浦君


本研究では,日本の建築物の中でも「城郭」を対象としたプロシージャルモデリングの手法を提案しました.
日本城郭は戦国ドラマ,映画,およびゲームなどのエンターテインメントコンテンツに数多く登場します.日本で作成されるコンテンツだけでなく,海外のコンテンツでも頻繁に登場する特徴的な建築物です.
日本城郭は近代建築物とは異なり,独自の特徴を多く有しています.そのため,モデリングを行う際には日本城郭の基本的な知識が必須となり, さらにその上で複数のパターンを作成しなけ
ればならない場合はモデラーに多大なる負荷を要求することになります.

本研究で提案する日本城郭のプロシージャルモデリング手法によって,城郭に関する知識を有せずともモデルを作製することが可能となり,映像業界,ゲーム業界といった様々なコンテンツへの利用が可能となります.

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図.日本城郭のプロシージャルモデリング例


以下のリンク先より,令和元年度芸術科学会東北支部大会発表報告その1からその5までをご覧いただけますので,
お時間のある時にでも目を通していただけると光栄です.

●令和元年度芸術科学会東北支部大会・発表報告(その1)
●令和元年度芸術科学会東北支部大会・発表報告(その2)
●令和元年度芸術科学会東北支部大会・発表報告(その3)
●令和元年度芸術科学会東北支部大会・発表報告(その4)
●令和元年度芸術科学会東北支部大会・発表報告(その5)

[1] 三浦嘉大,伊藤智也,菊池 司,”日本城郭のプロシージャルモデリング ”,令和元年度芸術科学会東北支部大会,講演セッション,01-09,2020.


文責:菊池 司

メディア学部新入生の皆さんへ

2020年4月 3日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
 
 メディア学部の学部長を務める柿本正憲です。
 
 本日は入学式の予定でした。新型コロナウィルス感染防止のため残念ながら式典は中止です。授業開始はひと月遅れで5月7日5月20日の予定です(新入生ガイダンスは4月27日かそれ以降5月15日予定遠隔実施)。
 
 今月は家にこもりがちになることが多いでしょう。規則正しい生活を送ってください。とは言っても、ついつい夜更かしをすることもあるかと思います。それが続いてしまったとき、効果的に正常な生活リズムに戻す方法があります。
 
 人間の身体は、朝の時間に強い光を浴びると16時間後に眠くなるという特性があるそうです。リズムを直したいときは、例えば7時に起き、太陽の光をしばらく浴びてみてください。天気が悪ければ電灯の光を顔に浴びるのでもいいです。そして夜11時すぎに眠くなってきたらそこを逃さずに床につくのです。試してみてください。
 
 大学での勉強に備えてここ1か月何をやればよいか、と思う人には、平凡ですが本を読むことを勧めます。読むことは基本です。入学後に確実に役に立ちます。
 
 基本中の基本は「眼球の動き」です。小さいスマホに慣れすぎていると、読むための眼の筋肉が衰え、読書スピードが遅くなります。大学で学ぶ際、読むのが遅いのは致命的です。眼球の動きを意識して、少し速めのペースで本を読んでみてください。まとまった時間がありますから多読のチャンスです。
 
 一冊だけ、お薦めの本を紹介します。「AI VS. 教科書が読めない子どもたち」(新井紀子著、東洋経済新聞社)です。
 
 新井紀子先生は、東大入試に合格するAIを開発しようとした方です。そのプロジェクトのことを最初に知ったとき、正直私は「何て胡散臭い学者だ」「できるわけないのに」と思いました。「できるわけない」のは当たっていました。
 
 しかし、新井先生は「胡散臭い」とは真逆の方でした。真摯に、かつ熟慮してプロジェクトに取り組んでおられたのです。どういうことかは読めばわかります。
 
 世の中にはAIに関するあまたの本があります。どれも悪くはないのですが、売らんかなの「煽り」の傾向が強いです。正しく深く理解するにはこの新井先生の本が私の知る限り一番です(この本もカバーや帯は煽りに見えますが、中身はまっとうです)。AIが当たり前になる時代に漠然とした不安を抱いている人でも、安心できるとともに、自分が何をすればいいかわかってきます。
 
 新入生ガイダンスでは、元気でかつ眼球を鍛え上げた皆さんにお会いするのを楽しみにしています。
 
メディア学部 柿本正憲
 

神様が博士になった日(遠藤雅伸さん博士号取得)

2020年4月 2日 (木) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の三上です.

東京工科大学はコロナウィルスの影響もあり,卒業式の式典は中止で学位記を研究室ごとに授与するだけとなってしまいましたが,そこで歴史的な出来事がありましたので報告します.

そう,「神様が博士になったのです」.

神様とは,「ゲームの神様」と称される,遠藤雅伸さん.代表作「ゼビウス」や「ドルアーガ―の塔」など,我々の世代では誰もが一度は名前を聞いたことがある作品かと思います.中でも「ゼビウス」は現在ゲーム業界でも話題になる「メタAI」と呼ばれる技術をいち早く取り入れた作品で,最新の論文でも数多く引用されています.

そんな遠藤さんと知り合ったのは,2011年のCEDEC運営委員会に参加してからです.一緒に「ペラコン」を立ち上げていく中で,産業界の中で大変な実績を残された方でありながら,探求心や向学心も併せ持っていました.私のような若者にも気さくにいろいろなお話をしてくれました.欧米のゲーム研究者が自分の作品を間違った解釈していることに立腹されている姿が特に印象的でした.それなら自分のきちんと研究者になって,当時の開発者として,きちんとした理論などを科学的に明らかにしていきたいということで,学位取得を目指されました.

すでに東京工芸大学の教授に就任されており,実務家教員としては大変高いレベルにあった遠藤さんですが,2014年から本学大学院に進学したいと申し出がありました.実はこの裏に「Dの食卓」の飯野賢治さん(故人)が少し絡むのですが,それはまた別の機会に・・・.

当初は,産業界での実績もあるので博士課程からの入学の可能性もありましたが,研究手法をきちんと学びたいということで,修士課程に入学し,その後博士課程に進学しました.

私も社会人大学院生として,修士課程,博士課程に在籍したため,そのメリットと苦労を両方身をもって体験しております.そんな大変な状況の中,着々と研究実績を生まれていきました.中でも芸術科学会で出版されたジャーナル論文は,年度の優秀論文賞を受賞しました.また,ご自身が研究するだけでなく,東京工芸大学の遠藤研究室の学生たちの研究成果も興味深いものが多く,たくさんの若い研究者,開発者に私が刺激を受けることが多くなりました.

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2020年3月,論文誌論文2本(うち1本は出版待ち),著書1件,国際会議査読付き2件と,十分な実績とともに東京工科大学大学院バイオ・情報メディア研究科,メディアサイエンス専攻にて「博士(工学)」を授与されました.

 

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人はいくつになっても研究できることと,産業界や現場で積み上げてきた実績を後世に再現可能な形で残すという,大変素晴らしい実例を示してくれました.

私は,海外の学生や社会人大学院生を広く受け入れるようにしています.それには,私の師匠であった金子滿先生(故人)が本学の大学院立ち上げの時に,モンキーパンチさん(故人),おおすみ正秋さんらのアニメ業界の巨匠たちを受け入れ,彼らの知見を最大限に生かしながら一緒に研究してきた姿が大きく影響しています.また,3月31日で定年退職された近藤邦雄先生の世界中に友達を作る精神も大きく影響していると思います.

私の関連するテーマで現在現場で活躍の皆様,もし,大学院進学などに興味があったらぜひお声掛けください.

 

令和元年芸術科学会東北支部大会・発表報告(その5)

2020年4月 1日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

本ブログをご覧の皆様,こんにちは.

メディア学部教授 菊池 です.
現在,日本では新型コロナウィルスの影響が様々なところに出ております.
皆様の平穏な日常が一刻も早く戻りますように,心からお祈り申し上げます.

さて本日のブログは,この新型コロナウィルスが日本で猛威を振るう以前に開催された
令和元年度芸術科学会東北支部大会」での研究発表紹介・第5弾です.

本日ご紹介するのは,「Neural Responsive Art : BCI を用いたジェネラティブアートに関する研究 [1]」です.

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図.研究発表中の佐藤君


この研究では,脳からリアルタイムで得られるデータに注目し,脳波データから得られるパタメータを利用して circle や square, triangle のような図形の色や形をパタメータにより変形させ,被験者だけの「そのときの絵」を生成しました.
今後は,HMD(Head Mounted Display)を用いた VR への応用や,画像生成だけでなくインスタレーションのような空間演出への応用などを検討しています.

以下のリンク先より,令和元年度芸術科学会東北支部大会発表報告その1からその4までをご覧いただけますので,
お時間のある時にでも目を通していただけると光栄です.

●令和元年度芸術科学会東北支部大会・発表報告(その1)
●令和元年度芸術科学会東北支部大会・発表報告(その2)
●令和元年度芸術科学会東北支部大会・発表報告(その3)
●令和元年度芸術科学会東北支部大会・発表報告(その4)

[1] 佐藤佑哉,伊藤智也,菊池 司,”Neural Responsive Art : BCI を用いたジェネラティブアートに関する研究”,令和元年度芸術科学会東北支部大会,講演セッション,01-08,2020.


文責:菊池 司

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