« スローなコンピューティング?(Re:Design of Things) | トップページ | 発表できなかった発表:さあ、音ゲーを作ろう! »

発表できなかった発表:目と耳を同時に使う

2020年4月30日 (木) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

発表できなかった発表シリーズの3件目です。今回は、修士2年生の矢島さんの「音の瞬時的前後知覚における不一致視覚情報の影響」を紹介します。発表する予定だったのは、日本音響学会春季研究発表会です。

音がどちらの方向から来ているのかを、人間は2つの耳を使って聞き分けますが、左右方向の聞き分けに比べて、前後方向の聞き分けは難しいということが知られています。矢島さんの研究テーマは、この前後方向の聞き分けが、目から入ってくる情報によってどのように変わるかを調べることです。特に、目から嘘の情報が入ってきたとき、耳はどのように騙されるのかというのが、中心となるテーマです。

これまでの研究の途中経過は、昨年夏の国際学会で発表し、そのときのことはこのブログでも紹介しました。そのときは、視覚の影響が思ったほど強くないという結果だったのですが、そこから実験を重ね、視覚の影響が強くなる条件を見つけての今回の発表です。

前回の実験では、音を発している人や物の映像がスクリーンに現れてから、2~3秒して音が始まっていました。被験者に視覚情報をしっかり意識させてから音を聞かせようという意図だったのですが、今回はそれを変えて、映像がスクリーンに現れるのと全く同時に音が鳴るようにしてみたのです。すると、実験結果に顕著な違いが現れ、被験者が映像に騙されることが多くなりました。一瞬の注意力が視覚に奪われた結果、聴覚がおろそかになったのだろうというのが我々の考察です。

最近では、ヴァーチャルリアリティとサラウンド音響を組み合わせて、様々なコンテンツが作られています。そこにこうした知見を取り込むことで、従来のもの以上の臨場感を、視聴者に感じさせることができるようになるかもしれません。

研究紹介」カテゴリの記事

« スローなコンピューティング?(Re:Design of Things) | トップページ | 発表できなかった発表:さあ、音ゲーを作ろう! »