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発表できなかった発表:不快音は下手にごまかさない方が良い

2020年4月12日 (日) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

発表できなかった発表の2件目は、学部4年生の市川さんの「不快音を生じさせる音響信号に対する文脈効果」です。こちらも「映像表現・芸術科学フォーラム」で発表予定でした。

ガラスを引っかく音や、黒板をチョークで擦る音など、聞くだけで不快になる音ってありますよね。その不快感をなんとかしたいという発想から始まったのがこの研究です。研究テーマの設定までは順調だったのですが、その後は予期せぬ方向に進んでいきました。

最初に考えたのは、現代音楽などで不協和音をたくさん含む曲を聴くとき、不快感を感じてもおかしくないのに、ちゃんとした音楽だと思うと不快感を感じないということでした。だとすると、そういう音楽に耳を慣らした状態で不快音を聞けば、それほど不快だと感じないのではないかと考えたのです。このように、前後の音の印象により間にある音の印象が変わることを、文脈効果と呼びます。

面白いアイディアだと思って実験をしてみたのですが、なかなか予想通りの結果が出ません。というか、むしろ逆の結果が出て、現代音楽に挟まれた不快音の方が、より不快感が高いという結論になってしまったのです。ここで「あー失敗だった」と思えばそれまでですが、きちんとやった実験に失敗ということはありません。予想と逆の結果が出たとしても、それもまた一つの新発見です。実験手順を見直して、間違ったことをしていないことが確認できたら、「よし、この結果を学会で発表してみよう」ということになったというわけです。

「事実は小説よりも奇なり」という言葉がありますが、これは科学にも当てはまります。人間が予想できることなどたかが知れていますが、予想に反した結果が得られたときにこそ、科学的新発見への道が開けてきます。今回の発表では、そんな研究の世界の一端を垣間見ることができたのではないかと感じています。

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