セリフ自由入力機能によるRPGの主人公とプレイヤーの乖離防止
2020年5月17日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん,こんにちは.メディア学部助教の兼松です.
今日ご紹介する研究は,「セリフ自由入力機能によるRPGの主人公とプレイヤーの乖離防止効果」です.
近年,ゲームはグラフィック関連の技術向上も相まって,美しい映像や豊かなキャラクター表現とともに映画のような映像表現を用いるものが増えています.特にキャラクタービジネスが盛んな日本では,魅力的なキャラクター同士の掛け合いなどを楽しみにしているプレイヤーも多いかと思います.
一方で,ゲームではプレイヤーの没入感を高めるため,「主人公=プレイヤー」の構図を崩さないよう,主人公キャラクターを無個性なキャラクターとしてデザインされているものも多いです.
有名どころだとドラゴンクエストやHalf-Life,Skyrimなんかもそうですね.
こういったゲームでは主人公がセリフを喋ることはほとんどありません.セリフを話してしまうと,そこからキャラクター像・印象にバイアスがかかってしまいますからね.ですので,こういったゲームでは,他のキャラクターとのコミュニケーションを表現する場合でも「はい」「いいえ」の選択肢程度に留めているものが多いです.ただ,この仕組みだと掛け合いの面白さの表現は難しい上,「プレイヤーは嫌々”はい"を選択した」にもかかわらず「ノリノリで肯定してくれたことを前提に会話を続ける他キャラクター」のような,食い違った状態になることもめずらしくありません.
そこでこの研究では,いわゆるNPCからの問いに対してプレイヤーが自由にセリフを入力して返答する機能を実装,その効果を検証しました.また,ただセリフを自由に入力しただけでは「はい」「いいえ」選択と同じように会話の掛け合いが食い違ってしまいますが,この研究ではセリフを入力する際,「主人公がどんな感情で返答するのか」を選択させる機能も実装しています.これによって,会話の食い違いを防ぐ工夫をしているわけです.
近年の日本アニメだと,さもゲームの世界に入り込んで生活,活動しているような表現がされているものも多いですよね.ただ現実的にはあそこまでの没入感を得るためには,超えなければならないハードルが山ほどあります.
しかし,こういった研究がすすむことで,将来的にはより”リアル感の強いロールプレイ”ができるようになるかもしれませんね.
[大橋優輝,兼松祥央,三上浩司,セリフ自由入力機能によるRPGの主人公とプレイヤーの乖離防止効果,日本デジタルゲーム学会第10回年次大会,2020.3]
(文責:兼松祥央)
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