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「作曲演習」の遠隔開講での取り組み(その後)

2020年8月26日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の伊藤(謙)です。

6月4日のブログ記事「『作曲演習』の遠隔開講での取り組み」でお約束した授業の進捗報告ができないまま前期授業が終わってしまいました。

そこで本日は、その後の授業の様子と、学生が作曲した曲の一部をご紹介いたします。

この授業では毎期、4音から成る音列を素材として作曲するのですが、今期のお題は「ミ−ファ−ソ−レ」でした。曲の中に現れるいくつかのメロディのうち、いずれかはこの音列が冒頭に置かれていなければなりません。また、単に音列を用いるだけでなく、適度に反復・変化させる必要があります。このような作曲技法に関しては、以前のブログ記事に楽譜を交えて詳しく説明していますのでご覧ください。

クラスを4グループ(各グループ4〜5名)に分け、4名の指導スタッフが毎週ローテーションして各グループを担当し、作曲のレッスンはマンツーマンで行いました。この点は通常の対面授業とほぼ同じ対応ができて良かったです。

また、MuseScoreで表示される「楽譜」は、具体的な視覚情報によって、創作上の問題点や改善方法を学生と指導スタッフとの間で共有するのに大いに役立ちました。ただ、直感的・感覚的に音を探るには扱いづらい面があり、特に楽譜が苦手な学生は苦労したようです。それでも最終回の数週間前には作品が完成した学生も多く、音楽の経験や知識の度合いによって作曲の進捗に大きなバラツキが生じることを実感した次第です。

最終回の授業では作品発表を行いました。事前に提出されたオーディオファイルを楽譜を見ながら聴き、各自がそれぞれの曲にコメント(感想やアドバイスなど)しました。楽譜を見ながら曲を聴くことができたのは非常に有意義だったと思います(※これまでは作品発表のあとに楽譜を完成させていたので)。MuseScore自体が楽譜ですし、特別な作業をしなくとも、オーディオファイルやPDFファイルに一瞬でエクスポートしてくれる機能はとても便利でした。何より、指定音列の音符をカラーで表示できるのは、どのように素材を用いて展開しているかを把握するのに役立ちました。

遠隔開講に即して授業方法や目的を変える必要があると考えていましたが、蓋を開けてみると、さほど大きな違いはありませんでした。授業後のアンケートで学生から寄せられた声も好意的なものが多く、当初抱えていた遠隔授業の懸念は杞憂に終わりました。しかしながら、「ソフトウェアなどの説明動画をより充実させてほしい」「学生同士でディスカッションする時間がもっとあると良かった」などの意見も寄せられたので、これらを参考に、より良い授業を行うために改善を図っていきたいと思います。

さて、最後に今回の授業で学生が作曲した作品の一部をご紹介しましょう。

まずはIさんの曲です。

クラリネット3本による軽快なリズムが特徴的な曲です。「ミ−ファ−ソ−レ」の音列を含むフレーズが第7小節に第1クラリネットに現れます。この曲は「ミ−ファ−ソ−レ」の音列を原形として、その反行形(桃色)逆行形(青色)逆行の反行形(緑色)、そして拡大形などリズムの変形を随所に散りばめつつ、相互に組み合わせている点も注目して聴いてください。


次はI君の曲です。

この曲は、冒頭から「ミ−ファ−ソ−レ」の音列によるフレーズがストリングスで現れます。アウフタクトのリズムをにもとに、音型を変形させながらメロディを形作ります。このイントロののち、Aメロがシンセサイザーで奏でられますが(リハーサルマークA)、それに続くサビのメロディはイントロの「ミ−ファ−ソ−レ」 のフレーズを伴って現れます。


どちらも指定の音列から作ったフレーズやメロディをうまく展開させつつ、全体的にまとまりある曲に仕上げられています。同じ音列を素材に用いながら、このように曲調が大きく違う点も面白いですね。ほかにもユニークな曲がたくさんありますが、紙面の都合で紹介できないのが残念です。

今後もこの「作曲演習」からどのような作品が生まれるかとても楽しみです。


(文責:伊藤謙一郎)

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