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鉄道好きの人生(その3)「幻のEF58 4号機を見た。」

2020年9月12日 (土) 投稿者: メディア社会コース

その2を掲載してから、随分と時間が経ってしまった。筆者にとって、国鉄時代の思い出は尽きない。その中で最も古い記憶の一つを紹介しよう。1963~4年ごろの記憶である。

当時千葉県松戸市に住んでいた親戚宅を訪問した帰り、常磐線松戸駅の改札口越しに、通過していく電気機関車が見えた。幼い筆者は、「ミストラルだ!」と叫んだのである。ミストラルとは、フランス国鉄(SNCF)の誇る花形急行列車ル・ミストラルで、牽引機としてCC7100型電気機関車が有名である。

筆者は、愛読書の交通図鑑に出てくる、濃淡二色の緑色に上下塗り分けられたCC7100を、限りない憧れを持って眺めていた。CC7100は、試験走行で時速331kmの世界最高記録を長らく保持していた(CC7100の記録は326km/hで、当時の世界最高速度331km/hは、同じくフランス国鉄の機関車BB9004が翌日記録したものであることを最近になって知った。不覚にも50年以上誤解していた。)

同じ頃、鉄道模型に出会った。両親がどうせなら丈夫で長持ちするものをと、買い与えてくれたものがカツミのOゲージ、EB58であった。この機関車は国鉄EF58を2軸に小型化した、実在しないモデルである。しかし、Oゲージならではの重厚感、そして何より、4号機と同じ塗装に心奪われたのである。EF58 4号機は、1956年の東海道本線全線電化に先立ち、試験的に塗装された4両のうちの1台である。4号機は濃淡緑二色の塗装で、あのフランス国鉄CC7100などをモデルにしたと言われている。

しかし、わがEF58 4号試験塗装機は、ネット情報あふれる現在でも謎に包まれている。その実態を確認できるのは、1956年の東海道本線全線電化の記念切手で、歌川広重の由井薩埵嶺を背景につばめを牽引する姿だけと言って良い。ただし、実際につばめを牽引していたのかは、不明である。つばめ、はとの牽引に正式に採用されたのは、俗に青大将と呼ばれる、微妙に異なった単一淡緑色塗装のEF58である。時代を画す名機には違いないが、chic4号機には如かずと思う。

4号機の試験塗装が、晩年の青色にいつ塗り直されたのか、確かな記録はまだ世に出ていないようである。青大将が1956年に登場していることから、鉄道に詳しい人たちの間では、遅くとも1960年までには再塗装されているというのが定説のようである。4号機の確かな記録、写真、映像にはお目にかかっていないが、その勇姿は、埼玉県大宮にある鉄道博物館の模型に名残を留めている。しかし、1960年生まれの筆者は、松戸駅を疾走する、EF58 4を確かに見たのである。

(メディア学部 榊俊吾)

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