ディジタルスクラップブックという研究テーマ その2
2020年9月15日 (火) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん,こんにちは.メディア学部助教の兼松です.
前回の私の記事では,私や私が関わる学生が研究でよく取り扱う「ディジタルスクラップブック」について簡単に紹介しました.
前回も書いたように,この研究の軸は簡単に言えば既存の技術・ノウハウのアーカイブです.
デジタルスクラップブックを紹介するとよく誤解されるのは,「既存作品の技術(例えば照明のあて方など)をそのまま使っても,パクリになるだけでは?作品の個性が出ないのでは?」といったことです.
私はシナリオ,キャラクター,演出に関するデジタルスクラップブックの研究・開発に携わっていますが,もちろん作品全てをアーカイブされた情報のみで構成してしまうと,パクリとは言わないまでもどこかで見たことある要素ばかりの作品になってしまいます.
しかし,自主制作でもなんでも映像作品を作ろうとした方は経験があると思いますが,「あの作品のああいう雰囲気を自分の作品でも表現したい」と考えることはよくあります.また,作品制作の打ち合わせや,各工程の担当スタッフへ指示を出す際にも既存作品を例に挙げることもよくあります.そういった際に,該当作品で用いられている技術やノウハウがすぐに調べられることはとても価値があると考えています.映像制作に関する様々な教則本などで既存作品の例が紹介ことと同じですね.
また,デジタルスクラップブックでは,様々なデータをデジタルデータとしてアーカイブしています.したがって,自分で作ったモデルに既存作品の特定のショットの照明をとりあえずあててみて,意図通りになるか,見栄えはどうかなどを簡単に検証することができます.
このように,デジタルスクラップブックはアーカイブされたノウハウを駆使して,自分の作品に適したやりかたをしっかり検討することを支援するために研究しています.
私が一番最初にやったデジタルスクラップブック関連の研究は学部時代の卒業研究です.
[CG映像制作における簡易ライトエディタの研究, 芸術科学会, 第6回NICOGRAPH 春季大会 論文&アート部門コンテストポスターセッション, 2007]
この時はまだデジタルスクラップブックという言い方はしていませんでした.私の初めての学会発表でもあります.
また,この研究の続きとして,
[Research on Digitizing Lighting information from the Movies, 芸術科学会, NICOGRAPH International 2008]
こういった研究も発表しています.こちらは初めての国際会議ですね.
これらの研究では主に,既存作品の人物照明にフォーカスをあててアーカイブしました.被写体・演出対象となるキャラクターの,怒りや悲しみといった感情に合わせた照明方法を検討するためのものです.
余談ですが,私は学部・修士課程のときと,博士課程のときでは指導教員を担当していただいた先生が違います(最初の指導教員の先生が定年退職したため).博士の指導教員の先生とは,上記1つめの学会発表のときに出会いました.
私の発表を聞きに来てくれて,色々と質問などしてくださったのですが,初めての学会発表でかなり緊張していたこともあって,「なんて無茶振りをしてくる人なんだ!」と,若干悪印象があったのを今でも覚えています(笑).今でもお世話になりっぱなしなので,あのときはこんなにも長くお世話になるとはこれっぽっちも思っていませんでした.
(文責:兼松祥央)
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