シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その3 「アンハッピーエンド作品」
2020年9月16日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん,こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。
前回は「主人公が最後に死ぬ作品」として「グラディエーター」を取り上げたのですが「主人公は最後に死なないが悲劇的な結末を迎える作品」のシナリオを作りたい、という学生さんもまた数多いです。
そこで今回紹介するのはこの映画です。
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『ローマの休日 (1953)』(ROMAN HOLIDAY)
監督
ウィリアム・ワイラー
脚本
イアン・マクレラン・ハンター
ジョン・ダイトン
ダルトン・トランボ
参考URL
https://movies.yahoo.co.jp/movie/25599/
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あらすじをまとめますと・・・
「とある王室の王位継承者であるアン王女は、各地の訪問業務を精力的にこなしていたが、過密スケジュールによるストレスから、ある日の晩、宿舎を密かに抜け出してしまう。疲れから無防備にベンチで眠ってしまったアンは、偶然通りかかり、心配して声をかけた新聞記者のジョーのアパートで宿を借りることになった。
その後、アンはジョーと共にローマの街を思うままに散策し、自由な時間を楽しんだ。やがてふたりは強く惹かれ、互いに恋心を抱き始めるが、ほどなくしてアンの総索員に追われることになってしまう。ふたりはなんとか逃亡を続けたものの、ジョーを危険に晒し続けるわけにはいけないアンは、王室の業務へ戻っていった
アンは王女として復帰し、記者会見に出席すると、いち新聞記者としてジョーも姿を現した。アンはジョーの取材質問に対して、複雑な思いを抱きつつも、毅然とした対応をしてみせた。ふたりの恋は成就しなかったが、アンは王女として大きく成長をとげたのだった」
とても古い映画ですが、そのタイトル名は誰もが一度は聞いたことがあるのではないか、と思います。そして、この作品はラブロマンスの代表作としても広く知られていますが、あらすじに書きましたように「最後に恋は成就しない」作品です。
男女の恋愛を描く作品なら、基本的には最後には結ばれて欲しいと願うのが視聴者側の心情ですが、この作品ではそうならなくても消化不良感がありません。これは主人公のアンが、恋愛を通じて自分の責任を強く認識するようになり、王女として自立する姿を描いているからです。
冒頭で「悲劇的な結末の作品のシナリオを作りたいという人は多い」と述べましたが、とにかく「主人公が最後に死ぬ」だけでは視聴者に満足を与えられないように、「主人公の恋が成就しない」だけでは、視聴者に満足を与えることができません。そして視聴者が満足できない作品は、最悪の場合、方々からお金を返せとクレームが来ることになり、大問題となるでしょう。
悲劇的な結末のことを「バッドエンド」と表することがありますが(言葉の定義次第ではあるものの)厳密には「バッドエンド」と「アンハッピーエンド」は別物です。「バッドエンド」の中には、辻褄が合わないエンディング、伏線投げっぱなしのエンディング、唐突すぎるエンディングが含まれます。一方、「アンハッピーエンド」は単純に悲劇的な結末のことを指すので、「ローマの休日」は、恋愛としては「アンハッピーエンド」の作品ですが、主人公が成長を遂げたエンディングになっているので、納得できない「バッドエンド」の作品ではないのです。
今回は、だいぶ古い作品を紹介しましたが、映像的な派手さはないものの、ストーリーの作り方や満足感の与え方で、参考になる作品は数多くあるので、古い作品も是非観て欲しいと思います。
(文責:兼松祥央)
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