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2020年度夏学期遠隔授業始末記

2020年9月 8日 (火) 投稿者: メディア社会コース

5月下旬、ようやく2020年度夏学期が開講となりました。先行きが見通せない3月、他大学の開講延期、オンライン実施が伝えられる中、どのような方法が可能なのか、友人、知人の取り組みを参考に模索が続きました。オンライン授業というと、教育テレビや受験予備校等で作成されている映像授業など、本格的なスタジオ設備とスタッフを揃えたものがすぐに思い浮かびましたが、とても教員一人、個人で制作できる代物ではありません。

講義テキストに、教室で解説する内容を細かく書き込む自習教材から始まって、プレゼンテーションでお馴染みのパワーポイントに音声解説を付加する案を経て、ビデオ会議システムの録画機能を利用した案へと至りました。4月半ば、本学部でもオンデマンド方式の遠隔授業実施が決まり、筆者は、基本的にビデオ会議システムによる録画方式に決めました。

ビデオ会議システムでは、もちろん、時間割通りに学生を参加させ、リアルタイムに講義を配信する方法も可能です。しかし、学生、教員とも初めての手探りでの実施であること、ネットワーク環境等不測の事態にも最小限の影響で対処しうることが要件として想定されるため、オンデマンド方式を採用したのです。授業科目、講義/ゼミ/実験等の実施形態、そして個々の教員の個性など、いくつかの要因に応じて適した方法が考えられると思います。

筆者は従来教室で講義するときには、板書を多用します。これは、学生時代にI先生の講義に感銘を受けたからです。I先生は、数式を視覚化した図をコマ撮りのように板書し、20m近くある黒板を何往復もされていました。講義開始後20分ほどは前回の復習に当てていました。解説自体、先生の有名な著作を彷彿とさせる明晰なものでした。しかしそれ以上に、板書の合間にある学生側の考える時間、理解と定着を実感した授業で、筆者も及ばずながら実践しています。

ビデオ会議システムの録画では、板書の再現は簡単ではないものの、表計算ソフトにおける手順や、プログラミングの解説などでは、対面方式と同等に表示できます。さらに、学習者のペースで録画再生を停止できるので、聞き漏らしがないという副産物もあるようです。従来教室では、ノートを取り切れないことに起因する質問をよく受けました。オンデマンドに分のあった事例の一つです。

またゼミでは、従来通りの教室/対面と同様に演習を行うべく、リアルタイムで実施しました。当ゼミでは、もともと、特別な機材/ソフトウェアを使用するわけではなく、また、個別の研究指導が中心であるという特性から、ビデオ会議による、報告/質疑/個別指導、という一連の教育が遠隔でも効果が予想以上に上がっているようです。特に画面共有機能による、各資料を参照しながらの指導は、意志の疎通に遜色がなく、しかも画面と音声以外、意識を遮るものもなく、集中力は高まっている手応えもあります。これも、遠隔に分のあった一例と言えましょう。

(メディア学部 榊俊吾)

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