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オンラインでの学会発表(1)

2020年9月 4日 (金) 投稿者: メディア技術コース

技術コースの羽田です.今日は先週行われた学会についてのお話です.

先週末の  8/29(土)から8/31(月)の3日間で情報処理学会エンタテインメントコンピューティングという学会が開催されました.このご時世ですから,今年の学会はオンライン開催となったわけですが,その中で本研究室の学生も5件の発表を行いました.学会全体では44件の発表があったので,よく考えるとその1割以上になる一大勢力となっていました.

初日の発表は嶋田さんの「生き物の気配のする箱」という発表です.この研究では,姿が見えない箱の中に生き物がいるとするとどのような感覚があれば「生き物が確かにその中にいるのか」ということに焦点を当てて,開発を行いました.今回は身近に存在する動物である犬を題材に,犬の気配として「鼻息」に着目しました.鼻息の特徴として生暖かさを表現するためにお湯をつかって湿度の高い空気をつくり,鼻先を模した形状のデバイスから吹き出すことで生暖かい空気を出しています.今後は本物の鼻息のように強弱をつけて息を出すことや,それ以外の動物の気配として何を取り入れるかというのが課題になっています.

学会での発表でも「気配」の本質はなにかという議論がチャット上で非常に盛り上がり,今後の研究の参考になったと思います.

二日目には残り4件の発表が行われました.一つは大学院生の白須君の発表で,「嗅覚刺激による塩味調味料を使用した風味変容の検討」という研究です.この研究は彼が大学院に入る前から研究している,視覚や嗅覚によって人間が感じる味が変化するのか,というテーマです.最初はかき氷を使って,甘い味にレモンやイチゴといったフルーツの香りを付与することで,レモン味,イチゴ味といった味に感じさせることができるのかという研究を行い,よい結果を出すことができました.そしてその延長として今回は塩味とすこしの旨味のあるスープを用いて,醤油や味噌といった調味料の香りと一緒に食べることで,感じる味に変化があるかということを調査したものです.

コロナウイルスの影響もあって,実験が十分にはできなかったのですが,醤油,味噌といった特徴のある香りとともに塩味のスープを飲むことで,醤油や味噌といった味を感じさせることができそうであるという結果を得ることができています.しかし,味噌の場合にはすこしその効果が弱いのではないかということもわかりました.この研究も発表後の質疑では薄味であっても味を強化できるのか?といった話や醤油との違いはないかといったあたりが話題になりました.彼もあと半年で卒業なのですが最後によい結果が出るまで頑張ってほしいものです.

今回の学会発表の報告は長くなってきたので,VRのセッションで発表された3つについては次の機会に報告します.

この,エンタテインメントコンピューティングは論文も学会員でなくとも無料で公開されていますし,登壇発表の様子は今年のオンラインのものも含めて,YouTubeで見ることができます.もし,このような「エンタテインメント」に「コンピュータ」を利用する研究が面白いと思うのであれば,ぜひ一度ビデオを見てみるとよいのではないかとおもいます.

論文集はこちら

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(羽田久一)

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