ディジタルスクラップブックという研究テーマ その5
2020年10月31日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん,こんにちは.メディア学部助教の兼松です.
前回に引き続き,カメラワークに関するデジタルスクラップブックについて紹介します.
前回紹介した,
[王 晨,兼松祥央,茂木龍太,三上浩司,近藤邦雄, CGアニメーション制作のためのカメラワークスクラップブックの開発, 映像情報メディア学会・画像電子学会・芸術科学会,映像表現・芸術科学フォーラム,2014.3 ]
では,主にカメラの移動経路に焦点を当てて分析し,カメラワークのデータやカメラワークを試してみるときに使えるテンプレートを検索できるライブラリを開発しました.ただ,これだけでは正直なところ,使い勝手が良くありません.自分の作品を作るときに,結局どう検索していいのかわかりづらいですよね.
そこで,カメラワークのスクラップブックでもライティングのものと同じように,作ろうとしているショットの内容やシチュエーションに合わせて検索できる仕組みも研究しています.
そのうちの1つが「怒っているキャラクターを映すときのカメラワーク(のスクラップブック)」です.
[関口雅史,兼松祥央,三上浩司, 近藤邦雄,キャラクターの怒り要素分析に基づいた演出支援手法の提 案,2016 年度日本図学会秋季大会(東京),P06,pp.123‐124,2016]
[Yoshihisa Kanematsu, Ryuta Motegi, Naoya Tsuruta, Koji Mikami and Kunio Kondo, DIRECTING SCHEME SUPPORT METHOD BASED ON ANALYSIS OF ANGRY CHARACTERS,18TH INTERNATIONAL CONFERENCE ON GEOMETRY AND GRAPHICS, 2018.8.3-7 ]
[高村 侑理華,兼松 祥央,茂木 龍太,鶴田 直也,三上 浩司,近藤 邦雄,敵キャラクター登場シーンにおける恐怖演出支援システム,映像表現・芸術科学フォーラム 2018(Expressive Japan),2018.3 ]
[Yoshihisa Kanematsu, Yurika Takamura, Ryuta Motegi, Naoya Tsuruta, Koji Mikami and Kunio Kondo. Composition design support system for shot of enemy character appearance in horror movies, 2019 ADADA+Cumulus, 2019.11.27 ]
最近はVRで楽しむ映像なんてものも普及してきていますので「全ての映像コンテンツにおいて」とは言えなくなってきましたが,従来型のモニターやスクリーンに映し出して楽しむ映像では,実はカメラワークのバリエーションはそこまで多くありません.実写であってもCGであっても,最終的には2次元の画として表現されるわけですから,細かな違いはあれど,大きなくくりでは表現方法の種類には限界があります.もちろん,これはカメラワークのみに絞って考えればということです.ライティングをはじめ,その他の要素との組み合わせを考えると無限のバリエーションがあるのは言うまでもありません.
そういった無限のバリエーションの中から自分の作品に適した,個性のよく出ている手法を検討するため,怒っているキャラクターを撮影する際によく使われるカメラワークを分析したのが上記の研究です.
余談ですが,学生がライティングにしろカメラワークにしろ,特定の感情にフォーカスした分析をしようとしたり,題材にして話をする場合,「怒り」を題材に持ってくる学生が比較的多いような気がします.まぁ,演出も感情を誇張されているのがわかりやすいものが多いですし,表情としてもセリフなどでもわかりやすいですしね.ただ,分析するとなると,それこそ数百,数千の怒っている顔をみなければならないわけで,もうちょっと笑顔とか,見てるだけで癒されるような画の分析もいいんじゃない?と思ったりもします.
(文責:兼松祥央)