音に関係する小説 (3)
2020年10月15日 (木) 投稿者: メディア技術コース
少し間があきましたが、「音」の本の紹介を続けます。第3回は、ちょっと捻って「雑音」に関する小説です。
音声や音楽と違って、雑音というのはあまりロマンを感じさせる要素もなく、小説になりにくい題材ですね。そんな中で私が紹介したいのは、1971年に広瀬正によって書かれた「ツィス」という小説です。
ツィスというのはアルファベットで書くと"Cis"で、「嬰ハ」とも呼ばれる音の高さの表記です。とある都市で、耳鳴りのようにこの音が聞こえるという人が現れ、その人数が少しずつ増えていきます。特定の高さを持つ純音ですから、雑音といっていいのかどうかわかりませんが、その音がだんだんと大きく聞こえるようになり、多くの人が不快に感じるのですから、やはり雑音の一種といっていいでしょう。
音の原因はわからぬまま、社会はこの音から逃れる方策を探していきます。その様子は、ウイルスから逃れようとする社会を描いているかのようで、ある種のパンデミック小説として読むこともできるでしょう。古い小説ですが、そういう意味でも2020年にあらためて読み直す価値のある小説ではないかと思います。
(大淵 康成)
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