ゲーム技術に関する学会発表 (1)
2020年11月29日 (日) 投稿者: メディア技術コース
メディア学部の渡辺です。みなさんこんにちは。
11/1〜3 に開催された「NICOGRAPH2020」という学会にて、私の研究室の学生のうち2名が口頭発表、4名がポスター発表を行いました。今回は口頭発表した2名の研究を紹介したいと思います。
修士2年の阿部明梨さんは、「人生シミュレーションゲームにおける関係変化イベント提示による共感性向上に関する研究」という題目で発表を行いました。
「人生シミュレーションゲーム」というのは、プレイヤーが能動的にキャラクターを操作するのではなく、様々なキャラクターが街中で生活を送り、それぞれの人生や人間関係が変化していくのを楽しむというジャンルで、代表的なタイトルとしては「The Sims」や「トモダチコレクション」などがあります。こういったゲームは、各キャラクターがゲーム開始時に自動生成され、人によってまったく異なる状況でプレイできることに新鮮な楽しみを見出せるのですが、最初からキャラクター設定がしっかりしている RPG 等のゲームと比べると、人間関係の変化がやや唐突に感じられてしまうという特性があります。阿部さんは、その感覚の差について考察し、印象が変化するイベントの有無が重要であるという仮説のもとに検証を行いました。
阿部さんの発表の様子
同じく修士2年の古川真帆さんは、「ゲームAIにおける評価関数による最終目標達成保証と局所問題回避の両立の実現」という題目で発表を行いました。
ゲーム AI を実現する手法には様々なものがありますが、そのうち評価関数を用いて行動を決定する「ユーティリティベースAI」と呼ばれる種類の AI についての研究です。このユーティリティベース AI は、キャラクターに設定された目標(例えばゴールに到達するとか、敵を全滅させるなどの)に対し、うまく設計しないといつまでも達成できなくなる可能性があります。そこで、目標達成を保証する「ゴールベースAI」という手法を用いることも多いのですが、この設計も非常に困難なものであるという問題があります。古川さんは、「疑似ラプラシアン」という数学理論をこの評価関数に適用することにより、AI設計者が作成した任意の評価関数で目標達成を保証する理論を提案しています。
古川さんの発表の様子
実は阿部さんと古川さんは NICOGRAPH は 2018, 2019 とそして今回の 3 年連続で発表しています。2018 はポスター発表、2019 はショートペーパー口頭発表、そして今回はフルペーパー口頭発表ということで、1年経つごとにランクアップしていきました。2名とも着実に成長していることがこのような形で示されたことに、指導教員としてとても嬉しく思っています。現在は修士論文の執筆をするかたわらで、論文誌投稿を目指しています。
(メディア学部教授 渡辺大地)
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