シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その11
2020年12月13日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん,こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。
今回も「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品」を紹介します。
今回紹介するのはこの映画です。
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『オール・ユー・ニード・イズ・キル(2014)』
【監督】
ダグ・ライマン
【脚本】
クリストファー・マッカリー
ジェズ・バターワース
ジョン=ヘンリー・バターワース
【参考URL】
https://movies.yahoo.co.jp/movie/348085/
【あらすじ】
人類が宇宙から襲来した、謎の侵略者「ギタイ」によって多大な被害を被っていた近未来。
主人公のウィリアムは防衛軍の報道官として巧みに立ち回り、危険な任務を回避してきた。しかし、前線の現地取材の任務を命じられた際に保身のあまり判断を見誤り、将軍の不興を買ってしまう。安全な地位を剥奪されて危険な任務につく一般兵として戦地に送られたウィリアムは、右も左もわからず、協力者も得られないまま、敵であるギタイに惨殺された。
間違いなく死亡した自覚のあるウィリアムだったが、目を覚ますとそこは出撃直前の前線基地。ウィリアムは玉砕直前に相打ちへと持ち込んだギタイの体液を浴びたことで、死んでも出撃前の時間にタイムリープする体質になっていたのである。ウィリアムは、何度も死ぬことを繰り返すなかで、経験を蓄え、対策を練っていくことで成長していく。ウィリアムは、かつて自分と同じ力を得て活躍して防衛軍の英雄となった女性リタと、ギタイの研究者で、ウィリアムとリタの時間跳躍力を信じてくれたカーター博士の協力を得ることに成功し、ギタイのリーダー個体「オメガ・ギタイ」を倒さねば、戦いに終わりが訪れないことを知る。
ウィリアムは幾度となく死んでは生きかえり、戦い続けることに孤独を感じ、一時は自暴自棄になって諦めかけるが、それでもまた立ち上がり、最大の武器とも言える死に戻る体質を犠牲に、正確なオメガ・ギタイが潜伏する本拠地の情報を掴んだ。もはや復活の許されない状況の中、それまでの経験によって得た戦闘技術と、信頼できる仲間たちの協力をもって、オメガ・ギタイを撃破。人類を勝利へ導いたのだった。
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「オール・ユー・ニード・イズ・キル」は、日本のライトノベル「All You Need Is Kill」(桜坂 洋)を原作とした映画です。当時すでに日本では定番コンテンツとして浸透しつつあったライトノベルですが、世界的にはあまり知られていなかった状況だったため、かなりの快挙として注目を集めました。キャッチコピーとしては言い古された感もありますが「日本のライトノベルを原作に、世界的スターのトム・クルーズが主演する」というふれ込みはなかなかのインパクトです。
そんなこの映画のどこに、シナリオライターを目指す方々が注目して欲しいか、というと、それはもちろん「日本のライトノベルが原作」という部分です。
何しろこの作品”原作とストーリー展開が全く違います”。
そう書くと、なんだかチープなB級作品のように思えてしまう人もいるかもしれませんが、シナリオ自体はとても良くまとまっており、最初は小物臭ただよう身勝手な主人公が、自分の運命を受け入れて、たくましく成長し、圧倒的逆境を跳ね除けて勝利を掴む、
エンターテイメント作品として満足度の高い仕上がりです。
また、あくまでストーリー展開が違うだけで、作品根本の特徴ともいうべき「何度も死んでは生き返る」というアイディアや、そのための世界観設定などは、しっかり抑えてあります。
シナリオライターを目指す方々が、どういう動機と目標をもってシナリオライターを目指すかは、人それぞれかと思いますが、少なくともシナリオライター自身が立案した企画に基づいてシナリオを執筆する機会は殆どありません。どちらかというと、何らかの企画や原作がすでにある状態から、それにふさわしいシナリオを書くために声をかけられる機会の方が圧倒的に多いです。
そういった現実を考えた時、「オール・ユー・ニード・イズ・キル」のように、うまく原作の持ち味を活かしつつ、観客が満足して映画を見終えられるようにするか、はとても難しい技術が求められる仕事になります。場合によっては、原作のファンから恨まれることもあるでしょうし、実際そういった例に挙がる作品は数知れません。
原作ライトノベル版、映画版、どちらも大変満足度の高い作品ですので、是非両方見てみてほしいと思います。
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