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ゲーム技術に関する学会発表 (2)

2020年12月16日 (水) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の渡辺です。みなさんこんにちは。

前回 に引き続き、NICOGRAPH2020 でポスター発表を実施した 4 件の研究を紹介します。

修士2年の山本馨加君は、「カメラ距離に応じた多重解像度の地形の生成」という題目で発表を行いました。
近年のゲームには「オープンワールドゲーム」という広大なマップ上を自由に動き回ることができるゲームが大変盛んに発表されていますが、そのようなゲームでは広大な地形を高速に効率的に表現することが求められます。今回の研究では、「テッセレーションシェーダー」と呼ばれるやや特殊なグラフィックス技術を用いて、そのような広大な地形描画を高速に行うための研究です。基本的に地形データは、細かな部分まで全てデータとして格納しておく必要があるため膨大なデータになりがちなのですが、山本君の研究では「パーリンノイズ」と「グレゴリー曲面」という2種類の理論を組み合わせて、GPU内で自動的に地形を生成することでデータ量を削減します。

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山本君の発表の様子

学部4年の栗原亨輔君は、「アイトラッキングを用いたVR空間上での照準補助手法の提案」という題目で発表を行いました。
広大なバトルフィールド内で様々な武器を駆使して戦うシューティングゲームは大変人気があります。このようなゲームでは、銃の照準を合わせる技術(ゲーム用語で「エイム」と呼ばれます)が非常に重要なのですが、ヘッドマウントディスプレイを被った VR 空間では頭の動作とカメラが同期するため、非常に難しい技術となります。栗原君は、「アイトラッキング」と呼ばれる視線追跡機能を用いて、狙ったターゲットに弾道がある程度自動追尾を行うことで、初心者にも快適なゲームプレイを実現するという手法を発表しました。実は栗原君は昨年の NICOGRAPH2019 でもこの研究の初歩的な段階を発表しており、今年はさらに発展した内容となりました。

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栗原君の発表の様子

同じく学部4年の我彦拓磨君は、「密集を避ける行動をするための群衆行動シミュレーション」という題目で発表を行いました。
今年初めより大いに感染が拡大してしまった COVID-19 (コロナウイルス) ですが、いわゆる密集した状態は感染の可能性が高くなると言われています。我彦君は、多数の人が一斉に移動する様子をシミュレーションする「群集シミュレーション」という理論に対し、いわゆる「密」な状態を避けるような行動を考慮した動作を念頭に置いた理論を提案しました。このシミュレーションを利用し、例えば駅や店で密状態を避けるための効果的な配置構成などを検討することができます。

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我彦君の発表の様子

最後に、学部3年の吉田涼真君の研究「D*Liteを応用した新しい道ができたときの動的経路探索」を紹介します。
「経路探索」は、ゲームやカーナビなど多くの分野で応用されている技術であり、古くから研究されている領域なので理論もかなり発展しているのですが、まだまだ研究の余地が多くの残されています。実際、多くの経路探索の理論では「出発地と目的地の両方が変更となった場合、再度の経路探索には多くの処理が必要となる」という問題があります。ただ、ほとんどの応用目的ではこの「出発地と目的地の同時変更」という状況があまりないので問題にはならないのですが、ゲームにおけるキャラクターAIの追跡行動においてはまさにこのようなケースが生じることが多く、問題となります。吉田君は、このような状況において現在の有効な理論である「D*Lite」という手法に着目し、その理論でも欠点となる部分の改善方法を提案しています。

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吉田君の発表の様子

(メディア学部教授 渡辺大地)

 

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