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シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その13

2021年1月23日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん,こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

今回も「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品」を紹介します。
今回紹介するのはこの映画です。 

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『トイストーリー(1995)』

【監督】

ジョン・ラセター

【脚本】

ジョス・ウィードン

アンドリュー・スタントン

ジョエル・コーエン

アレック・ソコロウ

【参考URL

https://movies.yahoo.co.jp/movie/28621/

 

【あらすじ】

デイビス家の少年アンディが所有するおもちゃ達には秘密があった。彼らは人間たちに見つからないところで自由に活動出来るのだ。カウボーイ人形のウッディはそんなおもちゃたちのリーダーだった。 

事件はアンディが誕生日に起きた。アンディにプレゼントとして送られた宇宙ヒーロー人形バズ・ライトイヤーが、新たにおもちゃ達の仲間になると、最新の技術を披露して、おもちゃたちの関心を一気に集め、ウッディのリーダーとしての立場が危うくなったのである。

まもなくデイビス家は引っ越しをする事になっており、環境の変化に焦りと苛立ちを覚えたウッディは、バズに恥をかかせようと、軽いイタズラをしかけた。するとこれが予想外の大事になる。ウッディがバズを部屋の窓から転落させてしまい、バズを亡き者にしようとしている疑惑が、おもちゃ仲間たちに広がることになったのである。

そんな矢先、デイビス家の外食に連れられたウッディをバズが尾行したことがきっかけで、ウッディとバズは口論となり、アンディとはぐれることになってしまう。なんとか追いつこうとするふたりだったが、隣の家の少年「おもちゃ殺しのシド」に見つかり、持ち去られてしまった。

引っ越しの日時が近づいており、ふたりは一刻も早くシドの家から脱出しようとするものの、逆に目をつけられてバズは花火をくくりつけられてしまい窮地に陥る。しかしウッディがシドのおもちゃたちの協力を取り付けて脱出に成功。大急ぎでデイビス家に戻ろうとするふたりだったが、あと一歩のところで引っ越しの車が出発してしまった。

それでも諦めないウッディは、バズに取り付けられた花火を使うアイディアを思いつき、ロケット花火の勢いを活用して引っ越しの車に追いつき、おもちゃ仲間と再会を果たすと共に、協力し合ったバズと熱い友情を確かめあうのだった。 

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今でこそ珍しくなくなったフルCGアニメーション映画ですが、長編劇場用作品として公開されたのは「トイストーリー」が世界で最初です。そのインパクトと話題性は大きく、当該年度の興行収入世界1位を記録、アカデミー賞の各賞にノミネートと受賞を果たしました。その人気は高く、続編が何本も作られています

では、シナリオライターを目指す方々に注目して欲しい点はどこでしょうか。

それは「大人も子供も楽しめるシナリオになっている」というところです。

CGアニメーションを活用したコミカルな動きや演出が本作の魅力であることは言うまでもなく、映像を見た人が大人だろうと子供だろうと楽しめる、という点では改めて言うことでもないのですが、その映像がない状態、つまりシナリオしかない状態だったとしても、「大人も子供も楽しめるシナリオになっている」ことはわかるのが本作です。

それを可能にしているのが「ウッディ」と「バズ・ライトイヤー」という二人の登場人物の存在です。

ウッディは、デイビス家のおもちゃたちのリーダーという「過去を持った登場人物」として描かれます。これは「大人の視点」をもった登場人物です。それに対してバズ・ライトイヤーは、新発売されたばかりのおもちゃで、「過去を持っていない登場人物」ということができ、振り返るほどの過去や経験のない「子供の視点」をもった登場人物に該当します。

つまり、この作品を親子で見たとすれば、親御さんはウッディに共感する形で、お子さんはバズ・ライトイヤーに共感する形で視聴することが出来るシナリオになっているのです。

シナリオを執筆する上で「どんな人達に楽しんでもらうか」という、ターゲット設定は重要で、ビジネス展開などを考えると「大人も子供も楽しめる」というフレーズは、定番でもあるため、つい使いたくなるのですが、シナリオのどういった部分で大人が楽しめて、どういった部分で子供が楽しめるのか、書いた本人でも説明できないシナリオは多いです。 

もちろん、シナリオの制作時点で想定した通りに必ず受け取ってもらえるとは限りませんが、まったく何も想定せずに「親子で楽しんでほしいなぁ」「家族で楽しんでもらえるはず」という願望や希望的観測だけでは、シナリオにOKが出ることはありません。特に巨額の制作費の動くアメリカの映画製作において説得力のないシーンは容赦なく切り捨てられます。

当時の年間興行収入1位を記録し、アカデミー賞脚本賞にノミネートされているだけに、かなり緻密に作り上げられていることがわかる作品が「トイストーリー」と言えるでしょう。是非見てみてください。

(文責:兼松祥央) 

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