シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その12
2021年1月20日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん,こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。
今回も「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品」を紹介します。
今回紹介するのはこの映画です。
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『パシフィック・リム(2013)』
【監督】
ギレルモ・デル・トロ
【脚本】
トラヴィス・ビーチャム
ギレルモ・デル・トロ
【参考URL】
https://movies.yahoo.co.jp/movie/344562/
【あらすじ】
太平洋から突如出現した巨大生物カイジューたちによって都市襲撃を受けるようになった人類は、カイジュー撃退のために巨人機械兵イエーガーを開発し、抵抗を試みる。しかし、襲撃のペースを早めるカイジューの前に劣勢を強いられ、イエーガーのパイロットとして活躍するローリー・ベケットも戦いのなかで同じパイロットの兄を失ってしまう。
ローリーは失意のうちにパイロットをやめたが、カイジューによる人類の危機はそんな彼を放っておかなかった。過去最大級のカイジュー出現によって防衛司令官のペントコストから再びパイロットとして招聘されたローリーは、イエーガーの研究者であるマコと出会い、自身のトラウマやマコの抱える問題と向き合いながらタッグを組んで、イエーガーのパイロットに復帰。見事、最大級カイジューを撃退した。
調査によって、カイジューが異次元から太平洋深海の割れ目「ブリーチ」を入り口にして転送されていることを突き止めた防衛司令部は、この入り口を破壊して塞ぐことでカイジューの出現を不可能にする作戦を立案。ローリーとマコの乗るイエーガーと、司令官ペントコスト自らがパイロットとして乗り込むイエーガーの2機によって、作戦は決行される。
作戦を察知したカイジューたちはさらに巨大な個体を3体転送させて、ローリーたちの作戦を妨害しようとする。これに対してペントコストはブリーチ破壊用に搭載していた核爆弾を用い、自らを犠牲にして2体を撃退、ローリーとマコのイエーガーが作戦を実行に移すチャンスを作ると、ローリーたちは残る1体の追撃を必死にしのぎきり、イエーガーの動力炉を機体ごと爆発させることでブリーチの破壊に成功、人類に平和をもたらしたのだった。
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「パシフィック・リム」は、アメリカで製作された映画ですが、作品のエンドロールで監督のギレルモ・デル・トロ監督が「この映画をモンスター・マスター、レイ・ハリーハウゼンと本多猪四郎に捧ぐ」と献辞していることや、敵である超巨大生命体を「KAIJU(カイジュー)」と名付けたことなどからもわかるように、日本の大怪獣特撮映画や巨大ロボット登場作品へのリスペクトとオマージュが散りばめられた作品で、古くはゴジラやマジンガーZにワクワクした世代のファンから現代のロボットアニメファンまで取り込んで話題となった作品でした。
リスペクトやオマージュのシーンをあげるだけでも取り扱う要素に事欠かない本作ではありますが、このブログに載せる以上は、シナリオライターを目指す方々に注目して欲しい点、で書いていきます。
この作品のシナリオで注目すべき点のひとつは「序盤の10分」です。
怪獣や巨大ロボットが登場するSF作品であるがゆえに、非現実の設定にどうしても注目してしまいがちなのですが、この作品で重要なのは、それらの設定そのものより、それら設定の中で、重要かつ優先度の高い情報を「序盤の10分」に簡潔で伝えきっているところにあります。
倒すべき敵が「カイジュー」であること、その強さが圧倒的であることを示すと同時に主人公のローリーが戦う理由としてカイジューが兄の仇になること、主人公の乗るロボットは複数人で動かすもので兄亡き後はパートナーが必要になりヒロインのマコが登場する伏線になっている、などなど数分間のシーンを最大限に活用して、視聴者が作品の非現実な設定を理解しやすくしています。
これは、ハリウッド映画のシナリオ技法の一つとして取り上げられることもある「ファースト10」という特徴で、「映画全体時間の10分の1以内に、基本的な情報は伝えきれ」という定石だったりするのですが、だいたい映画は90分~120分くらいなのでその計算だと冒頭の10分前後が該当することになり、パシフィック・リムはその特徴をお手本のようにこなしている作品なのです。
メディア学部でシナリオの書き方を学んでいる学生の中にも、怪獣やロボットの大好きな人はたくさんいて、そういった作品のために、練り込んだ設定や世界観を考えてくることも多いのですが、あまりにも熱が入りすぎて、作中でその設定を語ろうとしたら冒頭30分くらいを設定の説明に費やすことになって全くストーリーが始まらない、なんてことがよくあります。
優れた作品の設定は、それを簡潔に伝える点でも優れています。パシフィック・リムを見るときは、是非そういう点にも注目してほしいと思います
(文責:兼松祥央)
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