どんな数ですか (6)
2021年1月16日 (土) 投稿者: メディア社会コース
現実の計量で出てくるのは実数ですから、それだけなら昨日までの歴史で数の話は終わっていたはずです。
しかし、そういうことにはなりませんでした。しかも、それは数学の中だけのことではありません。
普通の2次方程式の解には虚数も出てきます。習っていない人もいるかもしれませんが、実数の解はないという場合には虚数の解があります。
実数という言葉は、もともと、この虚数に対して、通常の数という意味で作られたものです。
虚数と実数を合わせて含むのが複素数です。
虚数や複素数は、それが現実の計量の結果を表しているとしたら、意味がありません。したがって、もともとは無視されていました。
しかし、その後、計算のための利便性から複素数は広く利用されることになりました。
一方、上で、普通の2次方程式という意味は、係数が実数の2次方程式ということで、つまり、係数が実数の2次方程式の解は複素数になります。
これは、ある方程式の解が係数の範囲を飛び出してしまうことを意味しています。
2次方程式がそうなのですから、係数が実数でも3次以上の方程式では、複素数の範囲も飛び出してしまうかもしれない心配が出てきます。係数が複素数ならば、さらにその心配がふくらみます。
19世紀の数学者ガウスの結果によって、こうした心配は杞憂であることがわかっています。複素数が係数の代数方程式は複素数の範囲内で解をもつのです。
この意味で、複素数は自己完結しています。大学以前の数学で複素数までを学ぶのは、これがひとつの理由でしょう。
複素数は、現代では物理学でも使われ、量子論や宇宙論では、計算の利便性のためでなく、本質的に不可欠なものとなっています。
実数だけの時代でなくて幸いでした。今後も複素数によって、数学や物理、ひいては宇宙について解明されることになっていくでしょう。
明日に続きます。
(小林克正)
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