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どんな数ですか (7・最終回)

2021年1月17日 (日) 投稿者: メディア社会コース

数の歴史は、拡張の歴史でした。

昨日、書いたような理由で、複素数までの拡張で、数の体系は、一応、完結しています。

これ以上、どう拡張するのでしょうか。また、その必要があるのでしょうか。

複素数は、実数と虚数のそれぞれに数直線を当てて、2次元平面の点としてあらわされます。この平面を大学では複素平面といいます。

複素数がこのように平面の上の点としてあらわされるということは、一直線上に並ぶ実数と異なり、順番に並べることができないということです。複素数の間では不等号 < が使えない場合が出てくることです。

つまり、複素数への拡張は不等号の使用をあきらめておこなったわけです。

このように、数のもっている何らかの性質をあきらめることで、数を拡張することがおこなわれます。そして、あきらめた性質以外の利点を手にするわけです。

複素数の場合は、不等号が使えなくなった代わりに、すべての代数方程式の解を得ることができたのです。

こう考えると、複素数の性質の何かをあきらめて使わないことにすると、他にいいことがあるように拡張できるのではないかと思えてきます。

実際に、そのような拡張は、いくつも考えられています。

ここでは、四元数(しげんすう)というものがあることを紹介しておきます。
これは複素数の積の可換性をあきらめ、虚数単位のようなものをあとふたつ加えたものです。

積の可換性は、2かける3と、3かける2が等しくなるということですが、四元数の中には、これが成り立たない組合せが出てくるのです。

それに気を付ければ、四元数は、普通の数と変わらず計算でき、
3次元空間の回転をあらわして計算するのに便利なので、
現在、物理学やコンピュータ・グラフィックス、ゲーム制作に用いられています。

現代では、四元数以外にも、目的によって使いやすい数などをつくることがおこなわれます。
研究をしていけば、みなさん自身が、自分の目的にあった数をつくることになるかもしれません。

ここまで、数の歴史についてお付き合いいただきありがとうございました。

今回はごく簡単でしたから、高校生のみなさんには、さらに発展した話を聞いていただけること、こうした知識を利用していただけることを、メディア学部でお待ちしています。

(小林克正)

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