シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その15
2021年2月12日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん,こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。
今回も「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品」を紹介します。
今回紹介するのはこの映画です。
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『ホステル(2006)』
【監督】
イーライ・ロス
【脚本】
イーライ・ロス
【製作総指揮】
クエンティン・タランティーノ
【参考URL】
https://movies.yahoo.co.jp/movie/325467/
【あらすじ】
ヨーロッパへ旅行中のアメリカ人の大学生パクストンは、友人ジョシュと、旅先で意気投合したオリーの3人で、夜の街で遊び呆けていたところ、宿泊中のホステルをつまみ出されてしまった。困っていたところをアレックスという男に助けられた3人は、スロバキアの街にある娼館の話を聞かされ、スケベ心丸出しで向かった。
娼婦たちとの夜を楽しむ3人だったが、翌日ジョッシュの姿が消えていた。パクストンとジョッシュはオリーを探したが見つからず、その晩も娼婦たちと夜を過ごすと、今度はジョッシュまでもがいなくなってしまった。ひとり街中を探すことになったパクストンは、娼婦からふたりが一緒にいるという建物の場所を聞かされて駆けつけたが、待ち伏せていた屈強な男によって拘束されてしまう。
椅子に縛り付けられたパクストンは、見ず知らずの男に、ふとももを幾度となく刺され、左手はチェーンソーで切り落とされた。しかしパクストンは必死の抵抗によって逆に男を殺すと、身を隠し、客の姿に変装して脱出を試みる。その途中、自分と同じように殺されかけていた女性、カナを見つけたパクストンは彼女を見捨てておけず、危険を承知で助け出し、鍵のかけっぱなしだった車を見つけて建物を抜け出した。
パクストンたちが誘い込まれたのは、大金を払うことで殺人を楽しむことができる館を経営している街だった。最初に話をもちかけたアレックスと娼婦たちが談笑する姿を見かけたパクストンは、彼らに車をぶつけて騒ぎを起こした隙に、カナと共に列車の積荷に紛れて街を出ようとする。ところが駅の看板に映った、片目をえぐられ、バーナーで顔を焼かれた自らの姿を見てしまったカナは、絶望のあまり、到着してきた列車に身を投げてしまった。これがまた騒ぎとなって街の警官たちの注意がそれたことで、パクストンは列車に乗り込むことができた。
列車内で客を装いつつようやく一息ついたパクストンの耳に、聞き覚えのある声と話が入ってきた。アレックスが、自分たちの時と同じようにまた誰かをあの街へ誘い込もうとしていたのだ。パクストンは密かにアレックスを尾行し、アレックスが駅のトイレのために下車したところを襲撃。自分と同じように指を切り落とした上で殺害し、復讐を果たした。
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『ホステル』は映画のジャンルでいうと「ホラー」に該当する作品で、もっと絞り込むのであれば「スプラッター・ホラー」にあたります。もともとコアなファンが多いホラー作品ですが、本作の残酷描写は特に生々しく、とても凄惨で、製作総指揮クエンティン・タランティーノの名に惹かれて見に来たファンが視聴を途中で断念した、なんて話もある問題作です。
この作品を何故とりあげるか、というと「私がホラー作品を苦手」だからです。
すでにこのブログでは「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品」として、10本以上のタイトルを挙げてきましたが、その全てが「万人受け」する作品というわけではありません。『見たことのない方は是非一度見てみてください』と締めくくることが多い、このブログですが、人によっては「苦手なジャンル」だったがゆえに、見てこなかった作品もあるでしょう。
ただ「個人の好き嫌い」と「作品の良し悪し」はまったく別の価値観です。「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い」と私が述べる理由は、個人としての「好き嫌い」に関係なく、プロのシナリオライターとして「良し悪し」を見きわめるスキルが重要だと考えているからです。実際、私は今回取り上げた「ホステル」を、だいぶ気分を害しながら見たのですが、様々な発見があり、とても勉強になりました。
特にスプラッター要素として血が流れ、肉が切り刻まれる描写を、拘束された拷問シーンにすることで、痛みと恐怖を想像させやすくしています。スプラッター作品にも色々ありますが、そのへんのシーン作りはとてもさじ加減が難しいところで、一歩間違うとチープで現実味のない作品になってしまいます。
例えば本作中には、ある意味ホラー作品定番の小道具「チェーンソー」がとして出てきますが、定番の小道具になりすぎて、これを振り回す狂人が出てきても、最近の視聴者はそこまで恐怖を感じません。しかし「拘束された状態」となると話は別です。逃げようがありませんから、これほど恐ろしい凶器はないでしょう。
ホラー作品は、いわゆる「B級映画」と呼ばれることになりやすいジャンルでもあります。映画の完成度は、シナリオだけで決まるものではないので、仮に前述のようなシチュエーションを、説得力のあるシナリオとして記述しても、予算の都合で演出が安っぽくなると、やはり一気に台無しになってしまうこともあります。
しかし、それだけに「ホステル」は最後まで緊張感を切らさず、恐怖を与え続けてくる点において優れた作品と言えるでしょう。繰り返すようですが、かなり過激なシーンが続く作品なので、視聴の際は注意が必要ですが、一見の価値はあるかと思います。
(文責:兼松祥央)
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