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「音楽創作論」での作曲(その2):曲が完成しました!

2021年2月10日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の伊藤謙一郎です。

前回の記事で「作曲予定」とお伝えしていた曲が完成し、授業の最終回でお披露目しました。その際、履修生たちが視聴したMuseScoreの楽譜を動画にしましたので、ぜひご覧ください。
(※下の画面内、あるいは時間表示の左側の▶︎をクリックすると再生が始まります)


メインのメロディ冒頭の動機(モティーフ)は履修生のE君とT君によるもので、この動機が作られるまでの過程も前回の記事に詳しく書いていますので、お読みいただければと思います。

曲を作るにあたって、お二人からの要望は次のようなものでした。

 【E君】
 ・テンポはBPM=120
 ・曲調はフュージョンっぽく

 【T君】
 ・最初の動機(第1動機)に続く第3〜4小節の動機(第2動機)の形態はA´


上記3点を念頭に、まずは曲のスケッチに入りました。以下はそのスケッチの全貌です。(※あくまで自身のための作曲メモなので、お見苦しい点はご容赦ください)
Sketch01


このスケッチをもとに、イメージを膨らませながらMuseScoreに音を埋めていきました。最終的に次のような楽曲構成になりました。

Next-step

ご覧の通り、E君とT君が考案したフレーズが含まれる「Aメロ」と、私が独自に作った「Bメロ」「Cメロ」の3つのメロディ、そしてイントロと2つの間奏(※どちらもイントロを転用したもの)から構成されます。また「´」の記号は、元のメロディが部分的に変化していることを示します。

これらの各セクションを踏まえて俯瞰すると、「Aメロ」と「Bメロ」の組み合わせで構成される部分(AおよびA')と、「Cメロ」と間奏で構成される部分(B)に区分され、A−B−A' という大きく3つの部分から構成されていることがお分かりいただけると思います。また、ちょうど中間の「Cメロ」はゆったりとした静かな曲調で、前後の部分と大きなコントラストがつけられています。テンポはBPM=120のままですが、リズムの基本音価(音の長さ)を2倍にとることで、あたかも半分のテンポ(BPM=60)になっているような効果を生み出しています。

次に、各メロディの冒頭の動機について説明しましょう。


まず「Aメロ」です。

Motif_1

すでに説明した通り、第1〜2小節はE君とT君それぞれが作った部分動機から構成されています。跳躍進行で上行するE君のフレーズに対して、T君は逆の要素、つまり順次進行で下行するフレーズを考えました。一方、共通点としてはどちらの部分動機も強拍(第1拍)が休符になっている点が挙げられます。この動機を「第1動機」としましょう。

この「第1動機」を踏まえて、次のような「第2動機」(第3〜4小節)を作りました。

Motif_2

T君が希望した形態は「A´」でしたので、第3小節はE君のフレーズにしつつ、第4小節に変化を入れてみました。順次進行で下行する流れは第2小節に似ているものの、表拍に16分休符、裏拍に16分音符が置かれたシンコペーションのリズムによって、躍動感や切迫感はさらに増しています。


次は「Bメロ」です。

Motif_3

複数のメロディを作る際の常套手段ですが、ここでは前のAメロと対比的な要素や、無かった要素を盛り込みました。Bメロの「第1動機」の始まりには、順次進行で下行するフレーズが置かれています。跳躍進行で上行するAメロとは真逆ですね。しかも出だしは強拍から始まっており、この点は特に大きなコントラストになっています。

また、「第1動機」と「第2動機」の音の方向性(上行・下行)に注目すると、互いに相反していることがお分かりいただけると思います。この「第1動機」を「原形」とすると、「第2動機」は「反行形」になります。桃色の点線で示したようにリズムは完全に一致しており、こうした点も「Aメロ」には無かった構成と言えるでしょう。

ところで、先ほどの動画をご覧になって、「Bメロ」が鳴っているセクションで「Aメロ」の断片が部分的に組み合わせられていることに気づかれた方も多いのではないでしょうか? つまり「Bメロ」は、メロディの形態としては「Aメロ」とコントラストを持ちつつ、「Aメロ」と垂直的に違和感なく結合する親和性も持っているのです。このように、独立的なメロディを複数組み合わせつつ音楽的に調和させる技法を「対位法」と言います。

なお、楽曲構成の説明の便宜上「Bメロ」としましたが、セクションとしては「サビ」のような雰囲気を醸しています。実際、曲の終盤では繰り返しがあったり演奏パートが増えたりして大きな盛り上がりを作ります。


次は「Cメロ」です。

Motif_4

「Aメロ」「Bメロ」のように上行・下行といった音の進行の方向性を持たず、水平的な動きが中心です。また、全音符から始まるメロディは、これまでの躍動感あふれる音楽からの移行を強く印象づけるものでしょう。前述の通り、セクション全体でリズムの基本音価(音の長さ)を2倍にして、半分のテンポ(BPM=60)になっているような効果と相まって、ゆったりとした浮遊感に満ちた部分です。このセクションでも「Aメロ」の断片が顔を覗かせます

ちなみに、「Cメロ」のフレーズは当初から計画していたものではなく、コード進行を当てはめていく中で徐々に形になっていきました。しかもそのコード進行は、この曲を作る数ヶ月前にふと思いついて以下のように五線紙に書き留めていたもので、今回の作曲とは一切関係ありません。

Sketch02

曲の中間部分に大きな展開を入れたいと考えながら、なかなか良いアイデアが浮かばず悶々としていたところに、ふとこのメモが目に留まりました。そこで何気なく間奏のあとに入れてみたらセクションの繋がりや曲調の変化が意外と良かったので、コードを足していきながらメロディを並行して考えていったというのが「Cメロ」成立の秘密(でもありませんが)です。まれにこういうこともあるので、メモやスケッチは捨てずに保存しておくと良いですね。


以上の楽曲構成やメロディ構成のほか、楽器編成や音色の選択、各パートのコンビネーション、音楽表現上の工夫…などなど、書きたいことはたくさんありますが、今回はこのくらいにしましょう。

MuseScoreは楽譜作成ソフトなので一般的なDAWソフトのように細かいエディットができず、その点、出音としては必ずしも満足しているわけではありませんが、それでもMuseScoreの機能のみである程度、作品に仕上げられることを自ら体験でしたのは収穫でした。

なお、最終回の授業ではこのほか、メロディパートを除いたMuseScoreファイルを再生し、メロディ部分を私がピアノで演奏してMuseScoreとコラボレーションするパフォーマンスも行いました。その後、履修生たちに曲を聴いての感想とともに曲名を考えてもらい、寄せられた102の曲名案から私が選んだのが「Next Step」です。

ちなみに、感想で多く見受けられた単語は「ゲーム(特にマリオ系)」「街」「夜」「ドライブ」「ダンス」「パーティー」というものでした。このブログで曲を聴いた皆さんはどのようなイメージを持ちましたか?


(文責:伊藤謙一郎)

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