研究紹介:流量推定を用いたラテアートシミュレーション手法(学生奨励賞受賞)
2021年3月31日 (水) 投稿者: メディア技術コース
助教の戀津です。
今回は、3/18~20にオンラインで開催された、情報処理学会全国大会での発表のご報告です。
情報処理学会では、多くの投稿の中から似たジャンルの研究を10件前後まとめて、セッションという名前で発表会を行います。
そして、セッションごとに座長の選ぶ学生奨励賞というものがあります。およそ5~6件に1件程度選ばれるという形です。
私は柿本先生と一緒に卒研ゼミを担当していますが、情報処理学会は柿本・戀津研の研究内容と親和性が高く毎年何件か発表を行っています。
今年は2件の発表を行い、そのうち中村哲平君の『流量推定を用いたラテアートシミュレーション手法の提案』という研究が学生奨励賞を受賞しました!
去年は佐藤君と白崎君、一昨年は渋谷君が学生奨励賞を受賞しており、私の着任前から合わせるとなんと6年連続の受賞です。
研究内容は、タイトルの通りラテアートについてです。
ラテアートはエスプレッソコーヒーにフォームしたミルクを注ぎ、その注ぎ方によってカップの液面上に模様を作るというものです。
流体力学によるシミュレーションをしたり、CGでラテアートの再現を行う研究は多くされていますが、今回はラテアートを習得する際の練習過程に着目しています。
実際にラテアートを練習する時は、水を使って練習します。本物のエスプレッソとミルクを使いカップに注ぐと混ざってしまい回収ができず、一回ごとに材料費がかかってしまうためです。(また、材料を無駄にしないために毎回飲まないといけないですね)
しかしもちろん、水をカップに注いでもラテアートの模様は描けません。そこで、この研究では水を使って練習しながらラテアートの模様を描くことで練習効果の向上を目指しています。
ラテアートの練習という目的に対し、当初次のような方法を検討していました。
ピッチャー底部認識法と名付け、ゼミで検討をしていました。スマートフォンの画面に向かって注ぎ込むイメージで、実際のピッチャーを傾けるものです。
ピッチャーの底に円形のマーカーをつけ、内側カメラでマーカーがどのくらい楕円になって見えているかを検出することでピッチャーの傾きを検出、どのくらいミルクが注がれたかを計算するというものでした。
しかし、実際にこの方法を試行錯誤していたところ、意外とマーカーがうまく写らないことや、空っぽのピッチャーで注ぐ動作だけするのはイマイチといった欠点が見つかりました。
画面に向かって注ぐというのは大変直感的で魅力的ではあったのですが、本体が下にあることによって実際の水が注げないというのは大きな欠点でした。
そこで、中村君が新たに次のような方法を考えてくれました。
新しい手法では、カップに向かって実物の水を注ぐという実際の動作に大変近い形を取りながら、カップ上部に据えたスマートフォンの画面上にラテアートの模様を描画できるというものです。
フレキシブルアームを使う必要が出てしまいましたが、スマートフォンが上に来ることによって実際に水を注ぐことができるようになりました。
これは当時柿本先生も私も想定していなかった新しい着眼点でした。学生本人が自身の研究について一番時間を使い、考えてくることで教員の発想を超えてくれるのが卒業研究指導の一番嬉しい時と感じます。
これを実現するには、画像処理を使った水の流量推定やリアルタイムなシミュレーション、カップ上への描画など解決すべき課題が大変多く、残念ながら今年度内の研究では練習手法までの完成には至りませんでした。
しかし、流量推定実験の結果までをまとめたことと、このアイディアが研究の肝となり、冒頭に書いた通り学会でも評価していただけました。
研究室で引き継いで研究を進め、いつか完成させたいと思います。