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2021年3月

研究紹介:流量推定を用いたラテアートシミュレーション手法(学生奨励賞受賞)

2021年3月31日 (水) 投稿者: メディア技術コース

助教の戀津です。
今回は、3/18~20にオンラインで開催された、情報処理学会全国大会での発表のご報告です。

情報処理学会では、多くの投稿の中から似たジャンルの研究を10件前後まとめて、セッションという名前で発表会を行います。
そして、セッションごとに座長の選ぶ学生奨励賞というものがあります。およそ5~6件に1件程度選ばれるという形です。

私は柿本先生と一緒に卒研ゼミを担当していますが、情報処理学会は柿本・戀津研の研究内容と親和性が高く毎年何件か発表を行っています。
今年は2件の発表を行い、そのうち中村哲平君の『流量推定を用いたラテアートシミュレーション手法の提案』という研究が学生奨励賞を受賞しました!
去年は佐藤君白崎君、一昨年は渋谷君が学生奨励賞を受賞しており、私の着任前から合わせるとなんと6年連続の受賞です。

研究内容は、タイトルの通りラテアートについてです。
ラテアートはエスプレッソコーヒーにフォームしたミルクを注ぎ、その注ぎ方によってカップの液面上に模様を作るというものです。
流体力学によるシミュレーションをしたり、CGでラテアートの再現を行う研究は多くされていますが、今回はラテアートを習得する際の練習過程に着目しています。

実際にラテアートを練習する時は、水を使って練習します。本物のエスプレッソとミルクを使いカップに注ぐと混ざってしまい回収ができず、一回ごとに材料費がかかってしまうためです。(また、材料を無駄にしないために毎回飲まないといけないですね)
しかしもちろん、水をカップに注いでもラテアートの模様は描けません。そこで、この研究では水を使って練習しながらラテアートの模様を描くことで練習効果の向上を目指しています。

ラテアートの練習という目的に対し、当初次のような方法を検討していました。

La1

ピッチャー底部認識法と名付け、ゼミで検討をしていました。スマートフォンの画面に向かって注ぎ込むイメージで、実際のピッチャーを傾けるものです。
ピッチャーの底に円形のマーカーをつけ、内側カメラでマーカーがどのくらい楕円になって見えているかを検出することでピッチャーの傾きを検出、どのくらいミルクが注がれたかを計算するというものでした。

しかし、実際にこの方法を試行錯誤していたところ、意外とマーカーがうまく写らないことや、空っぽのピッチャーで注ぐ動作だけするのはイマイチといった欠点が見つかりました。
画面に向かって注ぐというのは大変直感的で魅力的ではあったのですが、本体が下にあることによって実際の水が注げないというのは大きな欠点でした。
そこで、中村君が新たに次のような方法を考えてくれました。

La2

新しい手法では、カップに向かって実物の水を注ぐという実際の動作に大変近い形を取りながら、カップ上部に据えたスマートフォンの画面上にラテアートの模様を描画できるというものです。
フレキシブルアームを使う必要が出てしまいましたが、スマートフォンが上に来ることによって実際に水を注ぐことができるようになりました。
これは当時柿本先生も私も想定していなかった新しい着眼点でした。学生本人が自身の研究について一番時間を使い、考えてくることで教員の発想を超えてくれるのが卒業研究指導の一番嬉しい時と感じます。

これを実現するには、画像処理を使った水の流量推定やリアルタイムなシミュレーション、カップ上への描画など解決すべき課題が大変多く、残念ながら今年度内の研究では練習手法までの完成には至りませんでした。
しかし、流量推定実験の結果までをまとめたことと、このアイディアが研究の肝となり、冒頭に書いた通り学会でも評価していただけました。
研究室で引き継いで研究を進め、いつか完成させたいと思います。

メディア学部専門性マップ

2021年3月30日 (火) 投稿者: メディア技術コース

こんにちは。今日はメディア学部の教員の専門性を二次元の図にしてみました。方法は以前コンテンツコース教員で図示したものと同じです。つまり、教員紹介ページにある各教員の専門についてのキーワードをAIで数値化(ベクトル表現)して教員間の距離を計算したうえで、その距離を反映するような二次元の図に落とし込んでいます。

結果は以下の通りです。兼松先生と三上先生、レンツ先生と柿本先生など近い先生が分かりますね。

Blog_ms_all

右上を拡大すると以下の通り。

Blog_ms_all_kakudai

顔を知らない人のためにローマ字表記(長い名前は一部省略)で示したものは以下です。

Blog_ms_all2

コンテンツ、技術、社会のコースで色分けしていますが、必ずしもコースが同じ人ばかりが近いわけではないところがおもしろいですね。

メディア技術コース 越智

映像表現・芸術科学フォーラムでの発表 [環境音編]

2021年3月29日 (月) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

少しあいだがあいてしまいましたが、引き続き「映像表現・芸術科学フォーラム」での研究発表を紹介させていただきます。今日は「環境音編」です。

大学院生の佐塚大樹さんは「ツーリング動画の自動音響シーン分析」という発表を行いました。バイクのツーリングのときに、バイノーラルマイクと360度カメラで音と映像を収録し、ツーリングの記録を作ろうということを目指しているのですが、動画を何時間も垂れ流しで再生しても、退屈なものになってしまいます。人間が編集してコンパクトにまとめれば良いのですが、編集というのもなかなか面倒な作業です。そこで、自動音響シーン分析と呼ばれる技術を使って、動画を様々なシーンに分割し、簡単に編集できるようにしようということを目指しています。今回の発表では、走行・停止・トンネルといった簡単な分類から始めて、一定の成果が得られることを示しました。

学部生の小松紗雪さんは「立体音響のヘッドホン再生に与える暗騒音の影響」という発表を行いました。この研究は、「バイノーラル録音のリアルな音をヘッドホンで聞かせたら、あたかも部屋の中で音がしたかのように騙すことは可能だろうか?」という疑問から始まったのですが、予備実験の被験者から「ヘッドホンから音が流れるときは、ザーッという暗騒音が流れるので、それでヘッドホンからだとわかってしまう」というコメントをもらったところで、研究の方向が変わりました。最初は単なる失敗実験だと思ったのですが、よくよく考えると、そういう現象は実際のコンテンツ制作の現場でも起きているはずであり、詳しく調べる価値があるということに気付いたのです。実際にいろんな条件で実験をしてみると、対象となる音の種類によって暗騒音の影響が異なるなど、興味深い現象が見つかりました。

騒音や環境音などを対象とした研究は、声や音楽の研究に比べると地味ですが、実生活に根ざした役に立つテーマが多いです。引き続きこういった分野にも力を入れていきたいと思っています。

 

シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その19

2021年3月28日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん,こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

今回も「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品」を紹介します。
今回紹介するのはこの映画です。

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『カサブランカ(1942)』

【監督】
マイケル・カーティス

【脚本】
ハワード・コッチ
ジュリアス・J・エプスタイン
フィリップ・G・エプスタイン

【参考URL】
https://movies.yahoo.co.jp/movie/4450/

【あらすじ】

ときは第二次世界大戦の最中。フランス領モロッコのカサブランカは、ナチスドイツ侵攻の影響からアメリカへ亡命しようとする人々で溢れていた。

そんなカサブランカで連日賑わうバーを経営するアメリカ人のリックは、ある日のこと、ウーガーテという男から、とある書類を少しの間預かるよう頼まれた。ウーガーテは出国ビザ高値で売りつける商売をしている男で、まもなくその取引をリックの店で行う予定になっていた。取引の相手はナチスの収容所から脱走してきたチェコ人の大物活動家ラズロー。しかし、その両者の取引は警察署長ルノーによって察知されており、一悶着の末に店内でウーガーテが警察に取り押さえられたことで実現しなかった。

そんな事情を知らず店にやってきたラズローが様子のおかしい事に気づく一方、ラズローに連れられた妻イルザは、バーのピアニストのサムに見覚えがあり、声をかけた。そして思い出の曲「時の過ぎゆくまま」をリクエストする。これを聞きつけ、演奏をやめさせにきたリックは、イルザと顔を合わせることになり、ふたりは驚愕する。リックとイルザはかつてパリで離れ離れになった恋人同士だったのである。

その後、亡命のための書類がウーガーテからリックに渡っていたことを突き止め、合わせてリックの素性を調べたラズローは、リックのもとを訪ね協力をもとめた。リックもまたかつては活動家として弱者のために戦ってきた闘士だったと知っての頼みだった。しかし、リックはこれを拒否し、理由はラズローの妻イルザに聞くよう、はぐらかした。

亡命の書類がリックから得られなかったこと、意味深なはぐらかされ方をしたことをラズローから聞かされたイルザは、意を決し、独りでリックの店を訪れると、銃を突きつけてリックに書類を渡すよう迫った。しかし、全く抵抗しようとしないリックに対し感極まったイルザは銃を下ろし、パリでの別れの真相を語る。

もともとラズローの妻だったイルザは、ラズローがナチスの収容所に囚われ、脱走の失敗で死亡したと聞かされ、絶望していたときに出会い、惹かれたのがリックだった。しかし、ラズローの生存を知らされたイルザは、リックにもナチスの手が及ぶことを懸念して姿を消したのだった。

話を終えたイルザが、せめてラズローだけでも亡命させてほしい、と頼みこむと、リックはラズローの分の亡命書類だけを渡し、イルザのことは渡さない、と伝えて彼女を帰らせた。すると今度は、ラズローがリックのもとにやってきて、同じ女性を愛したよしみで、リックがイルザと亡命し、彼女を守って欲しい、と頼んできた。

亡命の飛行機の出発の日、飛行場に姿をみせたラズローとイルザに対して、リックはふたりとも飛行機に乗るよう指示した。困惑するイルザとラズローだったが、リックはイルザもラズローもお互いが必要な存在であり、ここで別れては後悔するだろう、と伝え、説得すると、そのままふたりを送り出し、見送ったのだった。

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「カサブランカ」は1942年に制作された、かなり古い映画です。見たことがない人も多いかもしれませんが、タイトルや内容はまったく知らなくても、作中に出てくるセリフ『君の瞳に乾杯!(Here's looking at you, kid.)』だけは聞いたことがあるのではないでしょうか。

このセリフはあまりにも有名になりすぎて権利関係が複雑化し、原作での発言『Here's looking at you, kid.』こそ変わっていません(変えられません)が、各種メディアの字幕や吹き替えでは「君の瞳に乾杯!」という言葉を見聞きできなくなっていたりします。

さて、この作品でシナリオライターとしてどこに注目すべきかといえばやはりセリフまわりであり「強い印象が残るセリフにつながる巧みなシナリオ」だということです。

映画カサブランカを知らなくても『君の瞳に乾杯!』は知っている人は多いだろう、と前述しましたが、今やこのセリフは様々な作品で使われることがあり、しかもその使われ方のほとんどは「キザなセリフ」としてであり、場合によっては、本気なのかそうでないのか分からない男性が、冗談めかして女性を口説くような使われ方をします。むしろ、そういうときのためのセリフだと思っている人も多いです。

しかし、元ネタであるこの「カサブランカ」におけるこのセリフは、決して冗談めかした使われ方はしておらず、むしろ作中の要所要所で象徴的に使われており、しかも、同じセリフながら主人公リックの置かれた状況ごとに違った心情を汲み取ることができるようになっています。

ふたりの恋人たちの未来に期待して『君の瞳に乾杯!』
ようやく取り戻した愛する女性に対し『君の瞳に乾杯!』
これからの将来に幸多からんことを願って『君の瞳に乾杯!』

作中だとこんなところでしょうか。それぞれのセリフを口にするまでのシーンのお膳立てが、かなりしっかりシナリオになっているので、ステレオタイプ的「キザなセリフ」のイメージは感じません。

東京工科大学メディア学部でシナリオを学び、実際に執筆する学生のなかで、よくある失敗の一つが「言わせたいセリフを唐突に盛り込んでしまう」ということです。アイディアとしてはオリジナリティのあるセリフだったとしても、いきなりなんの脈絡もなくそういったセリフを登場人物に言わせてしまうと、違和感を与えたり、「クサいセリフだ」と思われたりして、効果的に機能しません。

名作と呼ばれる映画のシナリオには、名ゼリフがつきものですが、セリフ単体を考案して執筆しても、決して名ゼリフとしては認識されないものです。タイトルよりもセリフが有名になってしまった「カサブランカ」を一度見て、どうしてそこまで有名なセリフになったのかを、考えてみるのはいかがでしょうか。

(文責:兼松祥央)

三上・兼松研の学生も無事卒業していきました!

2021年3月27日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部助教の兼松です。

先日の萩原先生の記事でも紹介されていましたが,八王子キャンパスでは19日に卒業式が行われました.三上・兼松研の卒研生たちも無事卒業していきました.
もう耳タコな話だとは思いますが,今年度の卒研は遠隔中心ということで,かなり例年とは違った1年になりましたね.ゼミや普段の研究を遠隔中心でやることについては,人それぞれ感じ方が違うと思います.
ふとしたときに研究室にいる仲間と話したりできないといったことはもちろん,仲間の様子をみてモチベーションを高めたり,何かしらの締め切りに対する危機感を抱くといったことが,例年よりしづらかったといったこともあったと思います.
そんな大変な環境の中,今年度の三上・兼松研の卒研生たちは,私が当初考えてたよりもずっと仲間とうまく協力しあって,例年の卒研以上に毎週こつこつと進捗を出せていたように感じます.

今の状況が落ち着いたとしても,おそらくは今年嫌というほど体験した遠隔でのやりとり,遠隔を取り入れた仕事・生活はより一層身近で,重要なものになっていくと思います.
卒業生のみなさんは,メディア学の学士として認められたわけですから,今後も自分の専門性としてメディアをうまく活用し,社会で活躍してくれると信じています.

また,私自身のこととしては,今年度は私自身が指導教員を務めた学生を初めて送り出す年になりました.
研究の過程では一波乱も二波乱もあり,今思えば私自身もうまく導いてあげられなかったと感じる部分もありますが,まだまだ教員としては未熟な私の考えをよく汲んでくれて,かなりの成長を見せてくれたと感じています.
卒業式後に研究室で学位記を渡すのも初めての体験でしたが,正直ちょっと泣きそうになったのは秘密です.

(文責:兼松祥央)

卒業研究「プロダクトデザイン」の4年生も無事に卒業されました。

2021年3月26日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

3月は卒業式の時期ですね。どこの大学でもコロナ禍の中、卒業式は実施か中止か、それとも延期か、いやいやオンラインリアルタイムを活用か等々、いろいろな選択肢があったことと思います。本学では319日に、分散時短で基本、例年通りの方法で実施することができました。

卒業式も時代や大学の特長が反映されたものになります。華やかな感じ、厳かな感じ、お洒落な感じ、落ち着いた感じ、まあいろいろで、どれもよしだと思います。

今回の本学の卒業式で感じたのですが、空間構成という観点からは個人的にはよい雰囲気を感じました。卒業生は理事長・学長からいただく祝辞にじっくり耳をかたむけながら、4年間の風景を思い起こし、そして卒業後のビジョンに思いを馳せているよう見えました。そうした雰囲気は、参加する人びと、着席する椅子などのモノ、会場となるの体育館、つまり人・モノ・空間の関係が影響したのかと思います。あくまでも私見ですが、心地よい素敵な時空共有になったと思いました。

式後には卒研室に戻り、卒業生とお話しました。4月からの新入社員研修は対面、リモート、その他、入社先によっていろいろのようですね。メディアの卒業生はカリキュラムの特徴でもある広い視野からの学びが身についているので、心配なさそうですね。

卒業研究の成果を表現したポスターは、またブログで紹介してまいります。今回の卒業生も全員、紹介に快諾してくださっておりますので。

ご卒業おめでとうございます。

メディア学部 萩原祐志

一流テクノロジー企業が使うツールをマスターしよう!

2021年3月25日 (木) 投稿者: メディアコンテンツコース

こんにちは。伊藤彰教です。

学生・高校生のみなさんは、大学に何を期待しているでしょうか。

  • 「充実した設備」
  • 「友達との楽しい生活」
  • 「高度な学習内容」

さまざまにあると思います。そんな中でやっぱり気になるのが「就職」のこと。できるなら「少しでも有利な状況で臨みたい…」というのがホンネなのではないでしょうか。

 

「そういうのって結局がんばっても学歴フィルターとかさ…」

 

なんて諦めてしまっている人もいるかもしれません。でも昨今は企業も生き残りをかけていますので「いい人だったら学歴など関係なくとりたい」という方向に急速にシフトしてきています。実力主義ですね。

 

「どうやって実力ってのを示せばいいんだ?」

 

いろいろな方策はありますが、まずはなんといっても「仕事で使うツールを学生のうちから使いこなしている」というのが、企業からするとありがたいところ。入ってから研修とかさせなくてすみますしね。 

そんな「一流テクノロジー企業が使っているツールのひとつ」としてMATLABがあります。

  • サウンドプロセッシング
  • 画像処理
  • 機械学習
  • 商用ソフトのプラグイン開発

などなど、MATLABでは様々なことができ、国内外の多くの企業で研究開発に活用されています。MATLAB自体が高額な商用ソフトな上に、使い方にコツがいるので、学生が自分で買って独学で…とはいきません。だからこそこれを使える学生さんは企業からも重宝される…というわけです。

 

「で、メディア学部となんの関係が?」

 

メディア学部に限らず、東京工科大学ではこの高額なソフトウエアを一括契約して学生・教職員が無料で使えるプログラムに2020年度から参加しました!

Matlabtut

 

メディア学部でもすでにいくつかの演習で使っていますが、伊藤彰教が担当する演習は「MATLAB音声音響演習」です。シンセサイザやエフェクタの開発・空間音響の研究などに応用可能な内容の演習です。

 

「就職のことを考えると、ミュージシャンやクリエイター狙いだけじゃなくて理工系のスキルも必要だよなぁ…」

 

そのとおりですね。

MATLABの情報は多くが「コンテンツクリエイションとは無関係に見える」ものばかりですが、メディア学部ではコンテンツ関連業界にも応用可能な教育プログラムを独自に作成して学部生に演習を提供しています。

 

たとえば楽器メーカーやアミューズメント設備系、情報通信(動画配信)の企業に就職した先輩方の多くから「入学したてのころは音楽家になりたくて理工系は興味がなかったけど、MATLABの演習を受けて就活で大きく有利になった」との話を伺っています。自らがミュージシャンになるだけが幸福な未来ではありません。こうした先輩方は「あこがれのエンタテインメント業界」に、理工系のスキルで潜り込むことに成功したわけです。大物ミュージシャンやレコーディングエンジニアと毎日のように仕事をしているようですよ♪(もちろんエンタテインメント関係の企業だけではなく一般の大手テクノロジー企業であればなおさら有利です)

 

オンライン授業で「授業料うんぬん…」という話題もよくききますが、このMATLABの包括契約はみなさんの貴重な貴重な授業料から契約をしています。1名でも多くの方がプロジェクト演習「MATLAB音声音響演習」を履修してもらい、少しでも授業料の元をとって卒業していただきたい…と、担当教員としては願っています♪

M1パワーを引き出すには

2021年3月24日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

こんにちは。伊藤彰教です。

最近、AppleのNotePCに関連して「Apple Silicon」「M1チップ」というキーワードを目にすることがあると思います。

 

「どうやら動画やアニメがグリグリと高速で動くらしい」

 

ということくらいは雰囲気で分かる人も多いと思いますが、じゃあそういうコンテンツやアプリをどう作ればいいか…となると皆目見当がつかない人が大半でしょう。それもそのはず。この高性能チップをフルに活用するには、日本語では有益な情報がまだまだ少ない「Metal」というテクノロジーの理解と、「Swift」という言語の理解が必須です。

 

「えーなんだか難しそう…」

 

そんなみなさんのために、メディア学部では、プログラミングやグラフィックの初心者からゆっくりじっくり取り組めるプロジェクト演習「クリエイティブ・アプリケーション」が準備されています!

 

プロジェクト演習「クリエイティブ・アプリケーション」では、日本におけるMetalテクノロジーの第一人者である渡邉賢悟氏を演習講師に迎え、一般の大人向けセミナーでは何十万円もかかってしまうような内容を学費内で受けられます。

どんな高度なテクノロジーでも「はじめの一歩」はあります。初めての人でも取り組みやすい教材として「Lily Playground」を活用して行います。

Lilypgheader

 

「あれ?でも推奨機ってWindowsOSなんじゃ…」
 

東京工科大学八王子キャンパスでは、いままで全くPCに触れたことがない人向けに「とりあえず」Windows機をオススメしている状況ですが、先輩たちの中には一定数「すでにMacのNotePCを持っています」という状況で入学する人もいます。

 

そういった先輩方にお話をうかがうと「メディア学部の授業でMacOSで特に困ったことはなかった」とのこと。(デザイン学部ではMacOSも推奨機の選択肢に入っていますね。メディアもそうならないかなぁ…。)

 

台数は限られていますが、プロジェクト演習「クリエイティブ・アプリケーション」を受講してくれた学生さんには、少しでもMacを触ってもらえるような環境も準備しています。もし手元に「Macがない」という方は(というよりそういう学生さんこそ)クリエイティブ・アプリケーションの門を叩いてみてください。歓迎します♪

 

♪インターカレッジソニックアーツフェスティバル2020に参加しました♪

2021年3月23日 (火) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさんこんにちは。伊藤彰教です。

2021年2月21日・22日にかけて、国内の音楽大学・芸術大学・理工系大学で音楽や音響作品を制作している学生の全国規模の作品展「インターカレッジソニックアーツフェスティバル2020」がオンラインにて開催されました。メディア学部からは、伊藤彰教研究室「exSDプロジェクト」に所属する学生3名が作品出展を実現いたしました。

Icsaf2020

メディア学部は研究論文を書くだけでなく、電子・ディジタル音楽の創作や音響アート作品制作も研究活動として取り組むことができます。本日はその一端をご紹介いたします♪

下のリンクから、作品解説や実際の作品を視聴できますが、どうやら期間限定とのこと。アクセスはぜひお早めに!
 

<テクノトラックメイキングと数理アルゴリズム>

Icsaf2020_20210321195301

4年生町田拓斗さんのテクノミュージックですが、世の中にあるものと一味違うと思います。それもそのはず。こちらでは音色を時事刻々変化させるために「遺伝的アルゴリズム」を用いていて、それを実現するプラグインを自分で開発してDAWに挿して使っています。だれにも作れないオリジナルの音色変化が常に隠されています。こちらは情報処理学会でも技術論文として発表しました。

 

<レーザーハープ&アナログシンセ >

Icsaf2020_20210321195401

3年生の川合雄佑さんのパフォーマンスです。センサーを用いたレーザーハープを自作のうえ、アナログシンセサイザと繋いで即興演奏を行っています。この演奏はちょっと聞くと「カラオケ」のようにも聞こえますが、この演奏は自動演奏トラックは一切ありません。全ての音をレーザーハープでリアルタイムで操作しています。

 

<立体音響&バイノーラル作品>

Icsaf2020_20210321195501

4年生の山之下朝陽さんの作品です。本来であれば観客を取り囲むように多くのスピーカーでプロジェクションすることを意図した音響作品ですが、コロナ禍ということで急遽イヤフォンなどで聴ける「バイノーラル」という技術に挑戦した意欲的作品です。ぜひリンク先ではイヤフォン・ヘッドフォンでお楽しみください。この創作過程の様子は「学生・若手のためのAESジャパンフォーラム2020」にて学術発表をしました。「オンラインでのポスター発表」&「立体音響作品」ということでプレゼンテーションの方法も苦心したようですが、360度動画とバイノーラル技術を用いた「作品でもあり学術プレゼンでもある発表資料」という素晴らしい方法を編み出してくれました。いままで世の中に存在しない方法に果敢に挑戦した例として発表でも高い評価をいただきました。

メディア学部では「アート&テクノロジーが融合したメディア作品の制作」も推奨しています。この記事のように全国的にアピールできる発表の場も準備されています。在校生のみなさん、高校生のみなさん、そしてサウンドとテクノロジーの未来を描きたいみなさん。わたしたちと一緒に伸び伸びと創作・研究活動を楽しめることを心待ちにしています♪

3/26(金)〜29(月)「バーチャルオープンキャンパスDAY」のご案内

2021年3月22日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

皆さん、こんにちは!

3月26日(金)〜29日(月)に「バーチャルオープンキャンパスDAY」が開催されます。

 特設HPはこちら➡︎ https://jyuken.teu.ac.jp/jyuken/index.html#spcontent

動画配信・LIVE配信による大学紹介や各学部の紹介ほか、リアルタイムでのキャンパス見学会「コウカ散歩LIVE」など、オンラインならではの魅力溢れるイベントやコンテンツが目白押しです。配信は、4日間を通してのものと特定の日時のみのものがあります。また、事前申し込みが必要なものもありますので、タイムテーブルをご確認の上、ご視聴ください。

メディア学部に関連する配信は下記の通りです。

 ◆「模擬授業」【オンデマンド動画】3/26(金)〜29日(月) 各日9:00〜24:00/27日(土) 13:00〜14:00/28日(日) 14:00〜15:00
  ・メディアコンテンツコース:『視覚でデータを分析する』竹島由里子 教授]
  ・メディア技術コース:『AIが創る顔写真』藤澤公也 講師]
  ・メディア社会コース:『メディアとSDGs』吉岡英樹 講師]

 ◆「研究(室)紹介」【オンデマンド動画】3/26(金) 〜29日(月) 各日9:00〜24:00/27日(土) 13:00〜14:00/28日(日) 14:00〜15:00
  ・『メディア学部の研究室とは/五感を操るテクノロジー(羽田研究室)』羽田久一 教授]

 ◆「大学・学部紹介(八王子)」【オンデマンド動画】3/27(土)・28(日) 10:00〜12:40
  ・大学と各学部の魅力を、学長と4学部の学部長が紹介します。


皆さまのご視聴・お申し込みをお待ちしています!

(文責:伊藤謙一郎)

鷗外と漱石(その2)

2021年3月21日 (日) 投稿者: メディア社会コース

本日は、漱石の作品における個人と社会との関係についてみてみよう。漱石の作品の中でも、その関係が正義を盾に戦っている作品として描かれているのは「坊っちやん」と「野分」である。坊っちやんも白井道也君も吾が道を行き、悔いることのない点で共通している。「吾輩は猫である」の苦沙味先生は胃痛に悩みながらも意地で権力に抗っているようである。漱石初期の作品は、社会、権力、特に「金」を向こうに回し、ユーモアに包みながら、痩せ我慢をして、潔い。

しかし、「三四郎」を境に漱石の小説は自己の存在をめぐり内に内に向かう。「三四郎」は美禰子との青春の一面を刻んだような牧歌的な物語にも見えるが、繰り返される「迷羊(ストレイシープ)」は、その後の自己と社会との関係を模索していく端緒のようである。漱石は、自己を突き上げるように内に向かい、社会との関係を、その最も近い男女のいくつかの関係に還元し、解き明かそうと苦悶する。

「三四郎」に続く三部作の、「それから」の主人公代助は、互いに好意を寄せていた三千代を友人に譲ってしまう。しかし不幸な三千代に再会したことから、親兄弟の庇護の元に保障された経済的基盤を失いながらも、不義に進む決心をする。「門」では、友人の許嫁を奪い、社会の一員たることを許されない境遇に身を置き、その暴露に怯えながら日々日陰に暮らしていく宗助と御米がいる。そして「こころ」では、自らの利己的な声に従い、騙し討ちのようにお嬢さんと結婚した先生は、Kの自死に直面して自己の存在を問い、否定してしまうのである。一方これらに登場する女性の存在と自我は、不思議なことにこの順番に背後に隠れていき、影のようになってしまう。

近代的な自我と自立の象徴、ヒロイン美禰子もまた旧来の秩序に組み込まれて終わる。美禰子は「われは我が咎を知る。我が罪は常に我が前にあり」と呟き、三四郎と別れる。これは、大野淳一氏「岩波書店、漱石文学作品集7の注」によれば、「『旧約聖書』詩篇第五十一篇中の詩句。その『咎』とはイスラエルの王ダビデがその部下ウリヤの妻バテセバと通じ、バテセバを奪うためにウリヤを戦死させたことである。」三四郎は最後に一人「迷羊(ストレイシープ)、迷羊(ストレイシープ)」と繰り返す。自己と他人、社会との関係に悶える、その後に続く作品を暗示している。

さて、わが稚拙な文学評論も以上で終われば、一応首尾一貫した見解が示せていると思う。しかし、こんな単純ではない。三部作と「こころ」にかけての時代には、「彼岸過迄」、「行人」、「道草」という長編がある。「道草」は漱石の自伝的作品と言われ、幼少期の養家との金銭的な葛藤が綴られた小説である。自身の生活が、時代を背景とする「家」の持つ因習によって思うに任せない。その意味で個人の存在と社会との関係をやや迂回しながら論じた感がある。

「彼岸過迄」は、同じ登場人物が交錯する短編からなる、やや異色な長編小説である。しかし、本作に通底するのは、「高等遊民」を自認する叔父を背景にした、自己の存在である。「行人」では、妻の真意を信じられない、語り手である主人公の兄の苦悶が、もはや小説ではなく哲学の論文のように綴られている。兄は弟と妻の関係を疑う。最後に兄は、妻という他者との関係に一筋の光明、安息を見出して閉じられるが、その後に書かれたものが「こころ」である。

遺作となった「明暗」では、妻お延を通じて初めて女性の視点が前面に出たように思う。為政者鷗外は女性の自立を支援していたが、公職に自ら距離を置いた漱石の小説では、登場する女性が主人公に呼応する存在であった。お延という「存在」は、初めて自らの意思で家族、知人を通じた人間関係、社会に対峙している。そして、未完に終わった「明暗」には、水村美苗氏による「続明暗」がある。漱石が完成させていたら「続明暗」になっていたかは知らない。しかし、苦悶の内に再び光明と安息を見出した漱石が見える。傑作である。

余談であるが、昨年度末に筆者の書いたブログの一つに、「2019年度 思い出す事など」がある。これは、漱石の同名の随筆の名を借りたものである。誠に畏れ多い次第である。

(メディア学部 榊俊吾)

鷗外と漱石

2021年3月20日 (土) 投稿者: メディア社会コース

ブログといえども、専門外の領域で素人の稚拙な見解を披瀝するなどは慎むべきである。しかし、今日学生諸君から文学は疎か読書の話さえも聞かないことから、本に目を向けるきっかけになればと、ここ数年改めて読み始めた鷗外と漱石について記してみたい。

二人は、改めて言うまでもなく、わが国近代文学を代表する文豪である。その著作は多岐に渡り、筆者の総覧できるものではないが、主題の一つに自己を通した個人の存在と社会との関係があるように思う。鷗外が、多様な思想、価値観の中に自己を相対的に、経時的に捉え、いわばシステムとしての社会の中に個人の存在を位置付けるのに対して、漱石は、自己を突き上げるように内に向かい、社会との関係を、その最も近い男女の関係に還元しているように思われる。

まず管見によれば、鷗外近代小説集(全6巻、岩波書店)から気づくことは、鷗外には、事実及び歴史に対して真摯、従軍あるいは大逆事件という時代の渦中にあって思想信条の自由と正義を組織の中から訴える勇気、そして自身の文芸活動に対する社会の批判に応える寛容が見られる。

鷗外初の長編小説に「青年」がある。鷗外は、主人公小泉純一に自身のことを「竿と紐尺とを持って測地師が土地を測るやうな小説や脚本を書いてゐる人」と言わせている。ここに鷗外の創作上のいわば設計思想があるように思う。すなわち、社会の中に現に存在する、価値観、規範、習慣、因習、風俗、法制度、経済活動、そして生活などを事実として観察、記録し、小説という構築物に創作している。現に鷗外は日々これら社会の動きを克明に日記に残し、近代小説の中の多くの作品は、現実の社会の事実をもとに、というより事実そのものの中に構築されていると言って良い。

いわゆるドイツ三部作の、「舞姫」、「うたかたの記」、「文づかひ」には、留学中の体験、社会事情の正確な記録である「独逸日記」に基づき、作中の人物を通じて、当時の王侯貴族、学生、市井の人々の生活が活写されている。いずれも文語調であるが、かえって浪漫と異国情緒が醸し出されている。

「うたかたの記」では、バイエルンのルートヴィヒ二世の溺死事件を物語の背後に置き、一方「文づかひ」には、実際に出入りのあったドレスデン王宮を舞台にドイツ貴族社会の伝統に抗うイイダ姫の自立が描かれている。そして「舞姫」エリスとの悲恋物語は、ベルリンを舞台に展開される。鷗外自身との直接的な関係の真偽はさておき、主人公太田豊太郎の、

(これまでの勉学を振り返り)余が幼き頃より長者の教えを守りて、学の道をたどりしも、仕の道をあゆみしも、皆な勇気ありて能くしたるにあらず、耐忍勉強の力と見えしも、皆な自ら欺き、人をさへ欺きたるにて、人のたどらせたる道を、ただ一条にたどりしのみ。余所に心の乱れざりしは、外物を棄てて顧みぬ程の勇気ありしにあらず、唯々外物に恐れて自ら我手足を縛せしのみ。」

(免官の身から帰国の望みを前にして)余はおのれが信じて頼む心を生じたる人に、卒前ものを問はれたるときは、咄嗟の間、その答の範囲を善くも量らず、直ちにうべなふことあり、さてうべなひし上にて、そのなし難きに心づきても、強て当時の心虚なりしを掩い隠し、耐忍してこれを実行すること屢々なり」

は、エリスとの関係と社会的存在の承認要求との間で切り裂かれる、痛切な告白である。

それでも鷗外は、「測地師が土地を測るやうな小説や脚本を書いてゐる人」である。自己の生来の性質について、小説「百物語」の中で「僕は生まれながらの傍観者である。(中略)僕は人生の活劇の舞台にゐたことはあつても、役らしい役をしたことがない。高がスタチストなのである。さて舞台に上らない時は、魚が水に住むやうに、傍観者が傍観者の境に安んじているのだから、僕はその時尤も其所を得てゐるのである。」と語らせている。鷗外の小説は、現実社会の鳥瞰図になっているのである。

鷗外にとって自己の存在は、社会との関係によって規定されている。鷗外は、軍医として官僚機構の中枢に身を置き、近代日本の行く末を見据えて日々政策の遂行や制度設計に勤しんできた能吏であり、科学者である。したがって、鷗外にとって自己の存在は、為政者の敷く法制度、近代化の中で声高に主張を始める経済活動、歴史の作り出してきた規範、因習、風俗、習慣からなる社会の諸相の中で、様々な現実的な問題として問われることになるのである。

鷗外は軍医総監を退官後も、帝室博物館(現東京国立博物館)館長、帝国美術院(現日本藝術院)院長を務めるなど栄達を極め、その活躍の舞台は、社会の中枢にあって、医学に限らず、夥しいほどに多方面に渡っている。しかし、鷗外は「余は石見の人、森林太郎として死せんと欲す」と遺したのである。

(メディア学部 榊俊吾)

2020年度卒業研究最終発表会

2021年3月19日 (金) 投稿者: メディア社会コース

今回は、学内の活動を紹介しましょう。去る21日(月)に、2020年度卒業研究の最終発表会が実施されました。当報告会は、4年次卒業研究の成果発表、そして大学生活総仕上げの、文字通り最後の学事になります。今年は下記、9名の学生が臨みました。当日のプログラムは以下の通りです。

10:00 A君       日本映画産業の現状と発展

10:15 S君        個人による動画配信によるビジネスについての研究

10:30 S君        日本国内でのesports業界のイベントについて

10:45 S君        デジタルオーディオプレーヤーの現状と今後

11:00 H君       アニメ業界の現状と展望

11:15 休憩       --           --

11:30 M君      オリンピックの経済効果について

11:45 Y君       アニメ業界の現状と課題と解決策

12:00 Kさん    遊園地の現状と課題

12:15 H君       5大総合商社の現状と今後

当日は、コンテンツコースの安原先生がレビューアーとして臨席され、全学生の報告に対して一人づつ非常に丁寧なコメントをしていただきました。どの学生も日頃の研究成果を落ち着いて報告できました。この1年、遠隔ながら対面と同等以上の充実した研究活動の経験を踏まえ、もう間近に迫った社会人としての歩みを自信を持って進めてほしいと思います。

(メディア学部 榊俊吾)

社会情報学会中国四国支部会第2回研究発表会

2021年3月18日 (木) 投稿者: メディア社会コース

本支部会では、例年高知大学まで遠征していましたが、今年は2021 227 () 13:3016:50に、遠隔で実施しました。当ゼミからも、Y君が報告しました。

http://www.ssi.or.jp/committee/commit14.html

当日は、香川短期大学のN先生の基調講演を皮切りに、明治大学のG先生の実験経済学に関する招待公演、関東学院大学のH先生をはじめとした研究発表など計6件の研究報告が行われ、大変充実した研究発表会でした。

Y君の報告テーマは以下の通りです。

「アニメ業界の現状と問題点と解決策」

Y君の後に報告した島根大学の大学院生の研究テーマもアニメの聖地巡礼に関するものであったため、指導教官の野田哲夫先生からも質問、コメントが相次ぎ、活発な議論が行われました。

 

(メディア学部 榊俊吾)

社会情報学会中国四国支部会第1回研究発表会(島根大学)

2021年3月17日 (水) 投稿者: メディア社会コース

本支部会では、例年島根大学松江キャンパスまで遠征していましたが、今年は2020 12 19 () 13:0017:50に、島根大学および遠隔で実施しました。当ゼミからも、A君、S君の二名が報告し、小生も招待講演として参加しました。

http://www.ssi.or.jp/committee/2020pdf/commit14_20201130.pdf

島根大学の藤本晴久先生による基調講演「取引ネットワーク構造に基づく山陰地域企業の類型化とその地域経済牽引力の検証」を含め全体で8件の報告が行われるなど、例年と変わらない盛況ぶりでした。両名、並びに小生の報告テーマは以下の通りです。

A君「日本映画産業の現状と発展」

S君「デジタルオーディオプレーヤーの現状と今後」

筆者「会計的意思決定と最適成長」

また当ゼミ演習講師のH先生も常連として、下記の報告を行いました。

「都道府県の情報公開制度における不服申し立てに関する審査会答申の公開の現状」

(メディア学部 榊俊吾)

令和2年度ビジネス科学学会全国大会

2021年3月16日 (火) 投稿者: メディア社会コース

当学会は毎年6月に開催されてきましたが、今年は9月にいったん延期、そして12月に再延期し、例年同時期に開催されている九州支部会と合同で、125日(土)に福岡中村学園大学および遠隔で実施されました。当ゼミからも過去4年間に毎年学生が参加、報告していましたが、今年は、筆者だけ遠隔で参加しました。プログラムは以下の通りです。

  20210217-114111

例年に比べると、学生セッションが設置されず、やや小規模な大会になりました。来年度は6月に福岡中村学園大学で開催を計画しています。

(メディア学部 榊俊吾)

卒業研究:経済経営調査研究2020の歩み:情報文化学会第28回全国大会

2021年3月15日 (月) 投稿者: メディア社会コース

本日より連投で、2020年度秋冬学期の研究実績を中心に報告しましょう。

今年度は、新型感染症の世界的な流行の煽りを受け、授業ばかりでなく、学会も遠隔実施を余儀なくされました。当ゼミでも例年ほどの参加実績を達成することはできませんでしたが、それでも半数ほどの学生諸君が参加、報告を行いました。例年学会会場では、学生諸君も大変緊張するのですが、遠隔には過度の緊張、敷居の高さを緩和する効果もあった気がします。

例年本郷で実施されている情報文化学会全国大会は、10月17日(土)9:5016:00に遠隔で実施されました。例年にはない小規模の大会になりましたが、本学の非常勤も務めてくれているH先生が実行副委員長として、遠隔開催を成功裏に運営してくれました。当ゼミからも、H君、S君の二名が報告を行いました。

http://jouhou-bunka.jp/wordpress/wp-content/uploads/2020/09/nl67.pdf

両名の研究発表は以下のとおりです。

H君「アニメ業界の現状と展望」

S君「個人による動画配信サービスを用いたビジネスについての研究」

遠隔ではありながら、多くの参加者から大変貴重な指導を受けることができました。

(メディア学部 榊俊吾)

オンラインポスターセッションシステムの公開

2021年3月14日 (日) 投稿者: メディア技術コース

助教の戀津です。

これまでに何度かお話した、オンラインポスターセッションシステムを公開しましたのでお知らせです。
過去記事: (太田先生ご紹介ありがとうございます)

TeleAgora -テレアゴラ- こちらからアクセス可能です。

TeleAgora(テレアゴラ)はオンラインポスターセッション用システムです。
昨今の情勢により、多人数が一堂に集まり代わる代わる会話をする形であるポスターセッションの開催は困難となりました。
しかしながら、研究の発展においてポスター発表の持つ役割は大きく、どうにかオンラインで行えないかと考えこのシステムを開発しました。

さっそく、3/8に行われた映像表現・芸術科学フォーラム2021でのポスターセッションに利用していただきました。
学会終了後にお願いしたアンケートでは運営の皆様、参加者の皆様よりご好評をいただき、また改善案もいくつかいただけましたので更にブラッシュアップしていければと思います。

これまでに発表会で利用した際は、発表者と参加者向けの部分のみ開発し、発表会主催者向けの機能はありませんでした。
そのため、発表会を行う時には発表者リストからポスター情報の登録をしたり、実際のディスカッションの場となるGoogleMeetのアドレス作成を私自身が行う必要がありました。
私自身の負荷の高さや、主催者の方が内容をコントロールできないという問題がありましたが、今回主催者向け機能も実装できたので公開です。

乱立を避けるため発表会そのものの作成機能は公開していませんが、ご連絡を頂ければオンラインでのポスターセッションを行えるようにできますので、学会関係者の方や研究室での発表でポスターセッションを検討している方は是非ご連絡ください。(連絡先はTeleAgoraページ下部に記載してあります)
多数の発表者/参加者間での成果物共有・ディスカッションができるというものなので、学会等だけでなく個人的な仲間うちでの発表会等でも利用できます。お気軽に問い合わせください。

ちなみに、システムを公開するにあたり結構苦労したのが名前をつけることでした・・・。
TeleAgoraはギリシャ語のTeleとAgoraをあわせた造語です。Teleは『遠くの』、Agoraは『広場』を指す言葉です。
広場は古代ギリシャの都市国家において、学術交流の場としても利用されていました。広場を囲むようにストアと呼ばれる柱廊が多数建てられ、そこで学術交流が行われました。
TeleAgoraではこれになぞらえ、アゴラ(個人ページ)からストア(研究発表会)に参加する形にしています。
実際に人々が集まる広場はまだしばらくの間困難ですが、テレアゴラが多くのストアで賑わい、研究発表会での交流が盛んに行われると幸いです。

学会発表報告

2021年3月13日 (土) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の寺澤です。

3月9日から12日まで電子情報通信学会総合大会が開催されました。今回は全面オンラインでの開催となりました。私の研究室の修士課程1年の北村亮太君が9日にポスター発表を行いましたので、報告します。学会の情報・システムソサイエティの学生ポスターセッションで「3DCNN発話分類モデルにおける日本語単語読唇への発話形態の影響」というタイトルで発表いたしました。オンラインでポスター発表というのは様々な方法があるようですが、今回はZoomを使ってブレイクアウトセッションで行うということ以外は形式の指定が緩く、スライドを使った発表となりました。

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北村君の研究は「読唇」という、人が何を話しているのかを音声で聞くのではなく口の動きで読み取る、ということを深層学習を用いた画像認識で行おうという研究です。最近ではスマートフォンに自分の声で音声メモをしたり、iPhoneのSiriやAndoroidスマホのGoogleアシスタントなどの機能で音声で指示や操作ができるようになっています。しかし、周囲がうるさかったり、あるいは逆に静かで声を出せる状況や場所ではないときなどは音声に頼ることはできません。それに代わって、いわゆる口パクでも画像で認識できないか、あるいは音として聞き取れなくても口の動きで言っていることを認識できないかというのがやりたいことです。深層学習の精度を高めるには大量のデータが必要です。しかし、既存の研究用データセットや、動画サイトなどにある映像はほとんど有声のものですから、それらを使って研究を進めることができるのか、あるいは自前でデータを大量に用意する必要があるのかをまず確認することが必要でした。

彼は学部4年生の時から修士課程の2年間と合わせた3年計画でこの研究に取り組んでおり、卒業研究では、最初の段階として、声を出して話しているときと声を出さない時では違いがあるのかということの確認を行いました。具体的には、有声、ささやき声、無声(口パク)の3種類の「発話形態」で被験者に数種類の単語を繰り返し発話してもらい、それを録画したものを使って深層学習を行います。有声データだけで学習したモデル、ささやき声だけで学習したモデル、無声だけで学習したモデルの3種類を作り、それに対し、評価データとしてやはりこの3種類の発話形態のデータを与えます。海外での日本語ではない先行研究では、この時、モデルと評価データの発話形態が一致しているときの認識精度が最も高いという結果が出ています。日本語ではこの確認は行われていなかったので、まずそれを行いました。卒業研究の時は3種類の単語を数名の学生に発音してもらったデータで挑戦しましたが、データ数が少なすぎるせいか、結果に対して明確な結論を出すことが困難でした。そこで修士課程に入学してからも単語の種類や被験者を増やし、試行錯誤しながら進めてきた結果を今回発表しました。今回もデータは自前で用意しているため、十分に大量のデータというわけにはいきませんでした。その影響もありますが、結果に影響を与えるいくつかのポイントを見出すことができました。

今回発表した範囲以外にも並行して他の手法で進めていることもあり、成果がまとまりつつあります。これらをいったん論文誌に投稿する予定です。そのうえで、彼の本来の修士論文の目標である、文レベルでの読唇認識手法の研究に重心を移していきたいと考えています。

(メディア学部 寺澤卓也)

学会発表(映像表現・芸術科学フォーラム 2021)

2021年3月12日 (金) 投稿者: メディア技術コース

3月8日、学会(映像表現・芸術科学フォーラム 2021)が開催されました。今年度の例に倣って、オンライン開催となりました。メディア学部の複数の研究室から多くの学生が発表していたので、他の先生も記事をかかれるかと思いますが、口頭発表とポスター発表の二種類の発表形式がありました。私の卒研室からは一名が口頭発表部門への参加、と今年度はちょっと寂しい状況でしたが、それに加えて私が担当する先端ゼミという講義を受講している2年生がポスター発表に参加しました。「学会発表」というとものものしい感じがするかもしれませんが、2年生でもやる気があれば発表することができるのです。

 

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2年生の学生が発表した内容は、デジタル時代における新しい伝言板を提案するというものでした。伝言板というのは、携帯やスマートフォンが無かった頃に駅においてあったもので、誰でも自由に伝言を書き込むことができる黒板です。当時は一旦家から出てしまえば、互いに連絡を取る手段がなかったため待ち合わせに会えなかった場合などに伝言板を利用したのです。当然ながら、スマートフォンがあれば、そんなものを利用する必要は無いわけですが、伝言板の、不便だからこそもたらしていた情緒が失われたように思えます。例えば、メッセージが実際に通じて目的が達成されるまでの心配や、達成されたときの喜び。手書きのメッセージが示す、その人が直前にその場にいたことを感じられるようなことです。ここで提案したのは、デジタルな仕組みによっても、あえてそのような感じが得られるようなデザインを考えた、新たな時代のメッセージ伝言ツールです。情報技術は物事を効率化するためだけに使わなければいけないわけでは無いでしょう。あえて不便さをデザインとして取り込むことで、より豊かな体験をもたらすこともできると思います。この研究はそんなアイデアに基づく提案でした。

 

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4年生は卒業研究の成果を口頭発表で行いました。テーマは遠隔授業ツールのデザインです。今年度はコロナのせいで大学の講義はほとんどがネットによる遠隔授業になってしまいました。そのさい利用されたのが、ZoomやMeetといったネット会議用のツールでしたが、これらは授業用途を想定されて作られたものではありません。今年度は、そうした、そもそも講義目的には設計されていないツールを組み合わせることによってなんとか授業をしてきたと言えるでしょう。そこで、本研究では、講義を念頭においたリモートツールをデザインしました。特に課題として考えたのは、学生が顔を出すのを嫌うため教員が講義中の反応を確認できないことです。これに対して、この研究では教員と学生のそれぞれに異なる画面を提示し、学生の顔は教員からだけ見られるようにしました。学生側の画面から見られるのは他学生の後ろ姿で、ちょうど教室の後ろに座ったようなデザインを提案しています。卒業研究の期間においては、実際に使用できるツールを開発するまでは至らず、インターフェースを確認するためのプロトタイプを用意するに留まりましたが、アンケートによる聞き取りでは好評であったようです。

 

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最後に、この発表は優秀発表賞をいただくことができました。学会の初めての発表は大分緊張しますし準備も大変だったと思いますが、その努力が報われたのは嬉しい成果でした(良かったですね)。このように、対外的な評価が得られるとすごく自信になると思いますので、多くの学生に学会発表をチャレンジして欲しいと思います。実際に現地に赴けるようになるかはわかりませんが、次は海外での発表に是非挑戦してみて欲しいですね。

 

 

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太田高志

 

 

 

映像表現・芸術科学フォーラムでの発表 [歌声処理編]

2021年3月11日 (木) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

こちらの記事でも紹介されている「映像表現・芸術科学フォーラム」で、私の研究室から7件の発表を行いました。件数が多いので、何回かに分けて紹介させていただこうと思います。第1回は「歌声処理編」です。

大学院生の津留紀陽さんは「声質に適した音楽ジャンルの自動推薦システムの研究」という発表を行いました。ユーザーの声を聞いて最も適した歌のジャンルを教えてくれるアプリを作るという研究なのですが、ポイントは、歌声ではなく話し声を入力するということです。歌声を入力して分析するなら話は簡単でしょうが、アプリに向かって歌うというのは結構な抵抗があるものです。そこで、普通の話し声を入力するだけで分析ができる方法を考えました。肝となるのは、大勢の人の話し声と歌声のデータを収録したパラレルコーパスと呼ばれるものの存在です。このコーパスを分析することにより、話し声と歌声の関連性を推測することができるというわけですね。

学部生の齋藤奏さんは「歌唱データと歌詞のアラインメントのための非歌詞音声自動検出手法」という発表を行いました。カラオケで曲の展開に合わせて字幕の色が変わっていく機能がありますが、あれを自動でできるようにしようという研究です。この研究を進めていくうちに、歌詞カードに書かれていない歌声(コーラスなど)の存在が、推定精度を大きく劣化させてしまうという問題に気付き、そこから研究の深掘りが始まりました。非歌詞音声の自動検出というサブテーマに絞って研究を進めることで、中身の濃い研究ができたのではないかと思います。そしてこの発表は、学会から優秀発表賞として表彰していただきました。

どちらの研究も、人間の生活に不可欠ではないものの、あると生活がより豊かになる、そんなところを目指しています。そんな研究をしてみたいという高校生の方は、ぜひメディア学部を目指して下さい。

 

「しゃべりの間合い」間合い研究会のご案内

2021年3月10日 (水) 投稿者: メディア技術コース

文責:榎本美香

2021年3月7日(日)に開催されます間合い研究会のご案内です。参加費無料ですので、学生さんたちも是非のぞいてみてください。

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日本認知科学会い研第18回分科会のお知らせ
日本認知科学会の研究分科会「い-時空インタラクション」い研)
は,実生活のあちらこちらで遭遇・体感する「い」という,曖昧模糊とした
現象を対象に,身体知・コミュニケーション・アフォーダンス・共創システム
など(これらに限られるわけではありません)のさまざまな学問分野の考え方を
持ちより,アプローチすることを目指して発足した分科会です.
第18回研究会では,「しゃべりのい」というテーマを設け,
岡本雅史氏(立命館大学)と片岡邦好氏(愛知大学)に招待講演をお願いしています.
多くのご参加をお待ちしております.
※ご参加いただくには参加申込が必要です.下記の方法で申込をお願いいたします.
[テーマ趣旨]
 「しゃべり」は人々の日常的な営みである。そこにもいは満ちあふれて
いる。会話時に話し手が交替する際、相手の発話にいの手をはさむ際、沈黙
をやぶる際など、さまざまな機会に参与者でのいの駆け引きがある。漫
才や落語などの「しゃべり」を技能として観せる芸能では、演者と観客の
いも重要である。魅力的な政治演説や研究発表は、内容のみならず聴衆と
の絶妙ないが重要な要素となっている。ヒップホップのMCや、ライブのコー
ルアンドレスポンスなども聴衆とのいを顕在化するある種の「しゃべり」
である。さらに、実況中継やYouTubeなど、眼前に聴衆がいない状況でも、目
に見えぬ聴衆とのいをうまく作ることでコンテンツのおもしろさは決まる
のではないだろうか。
 本企画では、日常のさまざまな場面での「しゃべり」を対象として、そこに
見られるさまざまないについて議論したい。
(企画者:伝康晴(千葉大学))
・日程:2021年3月7日(日)13:00-17:50
・場所:オンライン開催(Zoomを使用)
・参加申込:必要(参加をご希望の方は,以下のフォームからお申し込みください.
 後日,参加方法をメールでお送りします.)
・参加申込締切:2020年3月5日(金)23:59(これ以降も可能な限り受け付けますが,
 できるだけこの期日までに参加申込をお願いいたします.)
・参加費用:無料
・テーマ:「しゃべりのい」および一般
・招待講演:岡本雅史氏(立命館大学)
      「漫才のテンポからみる対話のい―インタラクションリズムの重層性の解明に向けて―」
      片岡邦好氏(愛知大学)
      「政治演説における「」を考える――オバマ/トランプ演説における自己抑制をもとに――」
プログラム
13:00-13:05 開会挨拶・事務連絡・テーマ趣旨説明
伝康晴(千葉大学)
13:05-14:30 テーマセッション「しゃべりのい」(1)
13:05-13:45
「会話の「」の多様なる意味と役割 -映画「セトウツミ」を題材として-」
熊谷啓孝(慶應義塾大学),諏訪正樹(慶應義塾大学)
本研究では、日常会話で我々が暗黙的に理解している「の意味が何によって
規定されているかを模索する。手法として、高校生の日常を描いた映画「セトウ
ツミ」を題材に、作中で登場した「」を観察し、その意味や、会話における役
割をもとに36の小分類と5つの中分類を作成した。この分類を元に「」の意味
が非言語行為としての身体動作や前後の文脈によって規定されることを論じる。
13:50-14:30
「「ガヤ」とは何か —バラエティ番組の二人称的解釈に基づきwho/what/how条件を探る—」
浮田翠(慶應義塾大学),諏訪正樹(慶應義塾大学)
本研究は、ガヤの事例分析によりガヤの条件を探究し、「ガヤとは何か」に迫る
ものである。会話の参与者や視聴者は、ある発言がガヤか否かが身体でわかるの
に、ガヤの定義や条件を述べることは難しく、ガヤは暗黙知の最たるものだと捉
えた。本研究では、ガヤの事例収集した後、who/what/howの観点で精査し、条件
の仮説を見出した。ガヤの認識には状況依存的な要因があり、ガヤの必要十分条
件を定めることは困難だという考えに至ったが、ガヤの必要条件や、ガヤになら
ない充分条件を見つけ、ガヤとは何かということに迫ることができた。
14:45-15:45 招待講演1
「漫才のテンポからみる対話のい―インタラクションリズムの重層性の解明に向けて―」
岡本雅史氏(立命館大学)
キャッチボールが無意識にボールを投げるテンポを協調させて一つの滑らかなリ
ズムを相互構築する志向性があるように、対話もまた参与者のリズム生成に対
する無意識な志向性があると考えられる。本講演では、こうした協調的リズムへ
の志向性を日常会話より明確に示す漫才対話に着目し、リモート漫才と対面漫才
の比較から、演者がどのようなストラテジーを用いてテンポの良い対話リズムを
創出・維持しているのかを考察することで、非言語情報も含めたインタラクショ
ンリズムが重層的なリズム構造を有する可能性を示す。
16:00-17:00 招待講演2
「政治演説における「」を考える――オバマ/トランプ演説における自己抑制をもとに――」
片岡邦好氏(愛知大学)
本発表では、政治演説における演者と聴衆との相互行為の中で、演説中の「
がどのように生起し、利用されているかを考察する。その実例として、第44代お
よび第45代アメリカ大統領であったバラク・オバマおよびドナルド・トランプ両
氏による支援者集会での演説に焦点を当て、従来プロンプターを用いて「脚本で
演じた」オバマ氏と、しばしば「即興で演じた」トランプ氏の演説が、どのよう
な「」取りの差を生むのかを、マルチモーダル分析により考察する。
17:10-17:50 テーマセッション「しゃべりのい」(2)
17:10-17:50
「国会指名におけるい」
宿利由希子(東北大学)
本研究は,歴代衆議院予算委員会委員長4名(鹿野氏,中井氏,河村氏,棚橋氏)
の「指名発話の長さ」「指名発話中の」「前後の発話〜指名発話の時的隔たり」
の関係を調べた.その結果,鹿野氏,中井氏,棚橋氏の指名発話中のと長さの
に正の相関が認められた.また棚橋氏のみ,これらと前後の発話〜指名発話の
的隔たりとのに正の相関が認められた.この結果は,棚橋氏の指名発話の
が長い時、棚橋氏が指名するのも答弁者が答弁するのも遅いということを意味
する.
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AIとの対話ライブコンペ優勝^ ^;

2021年3月 9日 (火) 投稿者: メディア技術コース

文責:榎本美香

先日ご紹介いたしました人工知能学会 言語・音声理解と対話処理研究会(SLUD)第90回研究会(11/30-12/1)で、開催されましたAIとの対話ライブコンペで、私とAIの対話が優勝してしまいました。

【ライブコンペ3】6. シチュエーショントラック 演舞1&対話1
https://youtu.be/jHoH0gfz5hQ

の対話1の対話者が私です。

演舞というのは模擬対話で、AI作成者がこうなるといいなという感じで模擬演技でやったバージョンです。

これに対して、対話というのは学会本番に、AIと対話者(人間)が実際に話した内容です。話すと言ってもテキストのチャットですが。

で、最終的に参加者が投票で一番良かったAIシステムを選ぶというものです。

 

いや、見事にAIシステム作成者の思う壺通りに会話をしてしまいまして、ものすごく自然な中身に仕上がっております。

それを見ていた参加者から、「演舞とまったく同じこと話してたで」と指摘されてしまいました。優勝といっても、私がまんまとこう言えばこう返すだろうというのを読まれたわけで、汗顔の至りです。

大学の後輩(シズカ)に同窓会の幹事を卒業した先輩(私)が頼む、という設定で話します。シズカが断ってくるので、こちらは何とか引き受けてもらうよう説得する、と事前に言われています。で、このシステムのすごいところは、こういえばああいうという対話の規則を使って、こちらが答えの選択肢が1つしかないようにしてくる、というところです。例えば、自己卑下されるとそれを否定する、というような対話の対ですね。

で、優勝の理由は、会話が破綻すること無く、最後には何となく幹事を引き受けさせるところまで行っているというものでした。

 

以下に、公開されていますので、ご興味のある方はぜひ見てみてください。

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【ライブコンペ3】1. 趣旨説明
https://youtu.be/HkJ_u6ExitQ

【ライブコンペ3】2. オープントラック 対話1
https://youtu.be/e4eraejSTTs

【ライブコンペ3】3. オープントラック 対話2
https://youtu.be/lRyV6Gw1yyM

【ライブコンペ3】4. オープントラック 口頭発表1
https://youtu.be/dhTz8O2DJ4A

【ライブコンペ3】5. オープントラック 口頭発表2
https://youtu.be/-abWpYoVfEQ

【ライブコンペ3】6. シチュエーショントラック 演舞1&対話1
https://youtu.be/jHoH0gfz5hQ

【ライブコンペ3】7. シチュエーショントラック 演舞2&対話2
https://youtu.be/Oeh1eN3B-I0

【ライブコンペ3】8. シチュエーショントラック 演舞3&対話3
https://youtu.be/7u3IZy5IHWI

【ライブコンペ3】9. シチュエーショントラック 口頭発表1
https://youtu.be/3R-sIJdbylg

【ライブコンペ3】10. シチュエーショントラック 口頭発表2
https://youtu.be/tZNGXLzhR6s

【ライブコンペ3】11. シチュエーショントラック 口頭発表3
https://youtu.be/lTxxMMHIEhs

「私」が出てこない卒業論文

2021年3月 8日 (月) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

今年も我が研究室では4年生たちが卒業論文の執筆に終われています。研究の内容に関わることはもちろん重要ですが、それに加えて、論文らしい体裁を整えるということについても、毎年いろいろ指導をしています。

ここ数年、私が特に注意しているのが、「私」を使わないようにしようということです。できあがった原稿で「私」を検索して、見つかったら片っ端から別の表現に変えていこう、ぐらいのことを言っています。

「私」の何が良くないのでしょうか。英語の論文では"we"や"I"を主語にした表現が良く出てきますが、そんなに違和感はありません。でも、日本語では主語の必要性が英語ほど強くないので、ちょっとした「私」は省略される傾向があります。「We conducted evaluation experiments.」という文はよく出てきますが、日本語の場合「評価実験を行った」と書くことが多いです。では、卒業論文の原稿のどんなところに「私」が出てくるかというと、「私は○○だと思った」とか「私は○○に興味があり」とか「私は○○について調べていたので」のように、ことさらに自分の事情を説明するときなんですね。でも、論文は科学的な事実を書くものですから、個人的な事情は極力排するべきです。筆者が何に興味があろうと読者には関係ありませんが、「近年○○に興味がある人が増えており」ならば客観的事実であり、その事柄について調べる理由として成り立ちます。

「自分の都合ではなく読者の都合を意識して文章を書く」というのは、研究職に限らず、様々な仕事で必要になる技術です。卒業研究で身に付けた文章力が、社会に出てからのいろんな機会に役立てばいいなと思います。

 

キャラクターのデザイン原案に関する研究

2021年3月 7日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部助教の兼松です。

これまでこのblogの私の記事では,過去に私がやってきた研究のうち,主にライティング,カメラワークに関する研究と,シナリオに関する研究について紹介してきました.今回はキャラクター関連の研究を紹介します.

[兼松 祥央竹本 祐太茂木 龍太鶴田 直也三上 浩司近藤 邦雄, ロボットアニメーションにおけるポーズ制作支援システムの開発, 画像電子学会誌, 46巻 1 号, pp.165-169,2017]

我々がやっているキャラクター関係の研究としては,ここまでに紹介しているデジタルスクラップブックという考え方の他に,キャラクター原案制作支援という考え方で研究しているものがあります.この研究も原案制作支援に類するものです.
また,一昨日紹介した巨人キャラクターの研究もデジタルスクラップブック的な要素も含みますが,どちらかといえばこの原案制作支援に類するものです.
このキャラクター原案制作支援は,簡単に言えば既存キャラクターをたくさん調べて特徴などを分類し,新しいキャラクターのビジュアルを作るときの土台となる原案を作ろうというものです.

原案なので,みなさんがよくアニメやゲームで見るようなクオリティの高いキャラクターモデルや2Dデザインが完成するわけではありません.そう聞くと,あまり重要そうではないように聞こえるかもしれませんが,そもそも我々が研究しているキャラクターメイキングとは,なんとなくカッコよく見える・可愛く見えるイラストがかければ良いというものではありません.

作品のストーリーやテーマを伝える,世界観を表現するためのキャラクターは,そのビジュアルにもしっかりと設定を反映し,説得力がなければなりません.そして,往々にして設定を考える人と,実際に絵を描く人は違います.そのため,ディレクターをはじめとするそもそもの企画や大枠を考える人や,ストーリーを考えるシナリオライター,そして実際に絵を描くデザイナーなど,様々な役割のクリエイターが相談しながらデザインを詰めていきます.したがって,そこには誰かが頭の中で想像した物・形を他人に正確に伝えなければならない難しさがあります.

そこで私たちは,このデザインの相談をする段階での叩き台として,既存キャラクターの分析結果を用いて手軽にデザインの原案を作れる手法やデータのアーカイブを続けています.

最初にあげた研究では,特にロボットのポーズに着目して分析を行ったものですが,この前身となる,ロボットの原案制作システムに関する研究なんていうものもありますので,また別の記事でご紹介します.

(文責:兼松祥央)

映像表現・芸術科学フォーラムで研究発表があります2

2021年3月 6日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部助教の兼松です。

昨日の記事では,3月8日(月)の映像表現・芸術科学フォーラム(Expressive Japan)2021にて三上・兼松研から発表を行う研究について2件紹介しましたが,他にもまだまだあります.

口頭発表:
石 佳立,兼松祥央, 三上浩司,『ロ』:アニメーションにおける「枠」の空間性についての表現 

ポスター発表:
韓 晨イ, 兼松祥央, 三上浩司, スマートフォンにおけるアバター感情表現システム 
関 竜太郎, 兼松祥央, 茂木龍太, 三上浩司, アニメーション作品における変身シーンの演出設計支援システム 
林 祐希 兼松祥央, 茂木龍太, 三上浩司, シルエット分析に基づく巨人キャラクターの制作支援手法 
鈴木柚香, 兼松祥央, 茂木龍太, 三上浩司, 建築様式を考慮した神社の鳥居と社殿の制作支援システム 
伊藤颯爽, 兼松祥央, 茂木龍太, 三上浩司, モバイルアプリにおけるアバター髪型のウェーブ, カール編集システム 
劉 夢言, 兼松祥央, 三上浩司, キャラクターの心情演出のためのメークアップシミュレーションシステム 

それぞれの研究の中身については,発表後にこのblogでも紹介しようと思っています.
また,三上・兼松件以外にもメディア学部から多数の発表がありますので是非発表を聞きに来てください.

(文責:兼松祥央)

映像表現・芸術科学フォーラムで研究発表があります

2021年3月 5日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部助教の兼松です。

先日竹島先生の記事でも告知がありましたが,3月8日(月)に映像表現・芸術科学フォーラム(Expressive Japan)2021が開催されます.
この学会のポスター発表で,三上・兼松研からも何件か発表を予定しています.
その中でも「シルエット分析に基づく巨人キャラクターの制作支援手法」と「アニメーション作品における変身シーンの演出設計支援システム」は,このblogでも何度かにわたって紹介しているディジタルスクラップブック関連の研究です.

もともとメディア学部(大学院メディアサイエンス専攻)でのデジタルスクラップブック関連の研究としては,私の演出に関する博士論文と,プロジェクト演習デジタルキャラクターメイキングとシナリオアナリシスで演習講師を務めていただいている茂木龍太先生のキャラクターに関する博士論文があります.それぞれの博士論文の中で演出・キャラクターに関するデジタルスクラップブックを取り扱っていますが,今回発表する2つの研究は,この派生系ともいえるものです.

おおよその内容はタイトルからなんとなく想像していただけると思いますが,それぞれたくさんの既存作品を分析し,単なるスクラップブックではなく,しっかりとシステム開発まで行っています.
ご興味のある方は是非ポスター発表を見に来ていただければと思います.

 

(文責:兼松祥央)

シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その18

2021年3月 4日 (木) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん,こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

今回も「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品」を紹介します。
今回紹介するのはこの映画です。

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『ファインディング・ニモ(2003)』

【監督】
アンドリュー・スタントン
リー・アンクリッチ

【脚本】
アンドリュー・スタントン
ボブ・ピーターソン
デヴィッド・レイノルズ

【参考URL】
https://movies.yahoo.co.jp/movie/241078/

【あらすじ】

カクレクマノミのマーリンは、妻のコーラルとの間で子宝(たくさんの卵)にも恵まれ幸せな日々を過ごしていた。しかし、凶暴な魚に新居を襲われ、妻コーラルと卵の殆どを飲み込まれてしまい、残ったのはたった一つの卵だけだった。その卵から生まれた子供はニモと名付けられ、マーリンによって大事に育てられた。

マーリンは自身の経験から、海の怖さをニモに強く言い聞かせてきたが、それに反発したニモはある日、うかつにもダイバーのボートに近づいてそのまま連れさられてしまい、そのままどこかの歯医者の水槽で飼われる身となった。

マーリンは必死にボートを追ったが追いつけるわけもなく、絶望しかけるが、そのボートの行方を知るというナンヨウハギのドリーと出会い、共にニモの後を追うことになった。ドリーは呑気な上に物忘れが酷く、マーリンは苦労するが、ダイバーの残したゴーグルに書かれていた住所をドリーが思い出したことをきっかけに、ウミガメ達の協力を得て海流に乗ってシドニーへ向かうことになる。やがてマーリンたちの旅路はウミガメ達によって冒険譚として海中の話題となり、それをたまたま聞きつけたペリカンのナイジェルによって、歯医者の水槽にいるニモのもとに伝えられた。これに勇気づけられたニモは水槽から脱出する機会をうかがった。

様々なトラブルを乗り越えてシドニーまで辿り着いたマーリンとドリーは、ナイジェルにくわえられてニモのいるクリニックに辿り着くも、タイミング悪く、脱出のために死んだふりをしていたニモに出くわしてしまった。マーリンは絶望と失意のショックでその場を去って海へ戻ると、ドリーにも別れを告げて去っていってしまう。

そこでニモは、同じ水槽で仲良くなった仲間の力を借りて下水へ脱出。海へ出て必死にマーリンの後を追うと、ドリーと出会うことに成功。漁師の網によってまた捕らえられそうになる危機もあったが、マーリンとニモはついに再会を果たし、自分たちの家へと帰っていった。

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ファインディング・ニモは、2003年にディズニーとピクサーで共同制作されたフル3D作品で、ピクサーの長編アニメーションとしては5作目となります。同年の第76回アカデミー賞では長編アニメ賞を受賞しています。すでに過去のブログで「トイ・ストーリー」や「カーズ」を取り上げているので、このブログを読み続けている方には「ピクサーの作品を取り上げる率が高いのでは?」と思われるかもしれませんが、それだけシナリオライターとしては見ておいたほうがいい作品が多いということでもあります。

ではこの作品でシナリオライターとしてどこに注目すべきか、というと「親子愛という、普遍的だが難しいテーマを扱ったシナリオになっている」という点です。

同じピクサーの作品であるトイ・ストーリーを、このブログで取り上げた際には、注目すべきポイントを「大人も子供も楽しめるシナリオになっている」と指摘しましたが、ファインディング・ニモは、それと似ているようで違います。

マーリンに共感するか、ニモに共感するかによって大人でも子供でも楽しめる、という点は共通していますが、この作品は「親であるマーリン」が「子であるニモ」を助け出すストーリーになっているので、両者は大人と子供というだけでなく、親と子の関係でもあります。トイ・ストーリーにおけるウッディとバズの関係とは全く違うのです。

親と子をテーマにした作品の強みは、共感を得やすいことです。そして単純な話、親子で楽しめる作品になっていれば、映画を見てくれる人も多くなります。ビジネス的に、これほどわかりやすく、都合のいい話はありません。

しかし、それゆえに難しい点もあります。「ありきたりな親と子」の関係では、映画を見てもらえるほど興味関心を惹かないのです。共感しやすいテーマであるがゆえに、目を引く特徴や独自性をもった内容でなければ、わざわざ時間とお金を費やしてまで注目しようと思われません。

その点をファインディング・ニモは「海で捕らえられた魚(カクレクマノミ)が再び海へ生還する」という脱出劇の側面をシナリオに組み込むことで、最後までどうなるか分からないハラハラ感を出して、楽しませる作りになっています。

特に、作品の舞台は人間の言葉を話す生き物がいる以外は、ふつうの現代社会なので、そこで一度捕らえられた魚が再び海へ帰ることなど、ほぼ不可能に思わせるあたりも巧みで、さらにその不可能を可能にしてみせる原動力が「親子愛」として描かれている点で、かなり練り込まれたシナリオだと言えます。

シナリオライターは、クライアントから割と気軽に「幅広く親子にウケるシナリオ書いてよ」と言われたりして、頭を悩ませたりするのですが、そんなに簡単に扱えるテーマではないことを認識する上でも、実際にそういうオーダーがあったときのためにも、「ファインディング・ニモ」は見ておいたほうが良い作品でしょう。

(文責:兼松祥央)

2020年度デジタルキャラクターメイキングを終えて

2021年3月 3日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部助教の兼松です。

大学はある意味1番慌ただしい卒業論文・修士論文の締め切りを超えて、私自身も少しホッとしたところです.
前回は私が担当しているプロジェクト演習のうち,シナリオアナリシスの今年度を終えた感想を書きました.
今回はもう一つのプロジェクト演習,デジタルキャラクターメイキングの今年度をまとめてみたいと思います.

デジタルキャラクターメイキングはシナリオアナリシスとは少し状況が違い,後期は例年よりも受講生が少ない状況でした.
もともとシナリオアナリシスとキャラクターメイキングは半年ごとに受ける演習を変えるという継続受講の学生もいるため,多少偏ったということもあるかもしれませんが,主に文章を扱うシナリオよりも,少なからず絵を描いたりする内容が含まれるキャラクターのほうが,より対面を望まれているということもあるのかもしれません.
デジタルキャラクターメイキング自体は今年度後期もハイブリッド(対面でも遠隔でも受講できる)での実施でしたが,6限なのでなかなか他の遠隔授業との兼ね合いで現地参加は難しいといったこともあるかもしれませんね.

さて,そんな今年度後期のデジタルキャラクターメイキングですが,受講生は少なかったものの,演習の成果としては例年以上に良かった,良いものができたと感じています.
まず受講生が少なかったことから,普段よりも受講生1人あたりと話せる時間が長かったですね.あくまでも授業ですので,いつもは毎回やることを計画し,それに沿って受講生に課題・作品制作をしてもらう流れになっています.ただ,今回は受講生が少なかったこともあり,完全に受講生一人一人のやりたいこと・伸ばしたいことを集中的に練習する方針で演習を行いました.そのため,受講生それぞれがやっていることが毎回違うという,授業としてはちょっと特殊な形になったかなと思います.
また,今回は受講生一人一人のモチベーションも高く,毎週の進捗報告がものすごく濃いため,ディスカッションが非常に面白かったです.
受講生がそれなりにいると,一人一人別のことをやってもらうのはなかなか大変ですが,今回の感触を来年度以降もうまく取り入れていきたいと思っています.

最後に余談ですが,遠隔授業をやっていて困る点として,学校で学生に話しかけられても,その学生が誰だかすぐにわからないことがあります.我々教員は遠隔授業も顔出ししてやっていますが,学生のみなさんはカメラオフが基本ですからね・・・.話しかけられても誰だかわからないのはとても心苦しくて,何か良い方法はないものでしょうか.

デジタルキャラクターメイキングでも同じで,作っているキャラクターの姿は知っているけど,本人の顔がわからない(会ったことがない)というケースが多いです.
特に面白かったのは,今年度後期はVTuber用のキャラクターを作った学生がいて,最終発表もVtuberの姿で参加してもらいました.そのため,本人の会話に合わせて動いたり,リアクションしたりするキャラクターは見ていますが,本人の顔はしらないという事態が発生しました.

もういっそのこと,リアルで会っても「バーチャル体」で姿が見える研究を誰かしてください(笑)

(文責:兼松祥央)

映像表現・芸術科学フォーラム(Expressive Japan)2021

2021年3月 2日 (火) 投稿者: メディアコンテンツコース

来る3月8日(月)に映像表現・芸術科学フォーラム(Expressive Japan)2021が開催されます。
毎年、様々な大学から発表があり、もちろん、メディア学部からも数多くの発表がなされます。
(メディア学部からの発表が断トツで多いです(笑))

プログラムは、下記サイトから見れます。

http://www.ji.u-tokai.ac.jp/qlab/expressivejapan/index.html

例年は、いずれかの大学で現地開催でしたが、今年はオンライン開催です。
また、学生は聴講のみであれば参加費も不要です(ただし、参加登録は必要です)。

わざわざ足を運ばなくても、メディア学部の先輩がどのようなことを研究してきたのか、
また、他大学の人たちはどのような研究をしているのかを知れるいい機会です。
ぜひ、参加してみてください。

そして、ぜひ、質問をしてみてください。
これって、くだらない質問かな?見当違いなこと聞いちゃってないかな?なんて心配は必要ありません。
質問してもらえるということは、発表者にとっても、自分の研究に興味を持ってもらえたということでうれしいことなので。
ガンガン質問しましょう!

参加登録は、3/3(水)〆切です。

奮ってご参加ください!

(文責:竹島)

シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その17

2021年3月 1日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん,こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

今回も「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品」を紹介します。
今回紹介するのはこの映画です。

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『マトリックス(1999)』

【監督】
ラリー・ウォシャウスキー
アンディ・ウォシャウスキー

【脚本】
ラリー・ウォシャウスキー
アンディ・ウォシャウスキー

【参考URL】
https://movies.yahoo.co.jp/movie/85186/

【あらすじ】
いちプログラマーとして会社に勤務する傍ら、天才ハッカーとして活動するネオは、日々の生活が夢心地になる違和感を覚える日々に悩んでいた。そんなある日、謎の女性トリニティから、彼女の所属する組織のリーダーであるモーフィアスを紹介され、「この世界は仮想現実である」告げられたことで、違和感の正体に納得し、彼らと共に現実世界に目覚める決断をする。

ネオが覚醒した現実世界は、コンピューターに支配された人間たちがコンピューターの動力源として培養されている荒廃した世界だった。そしてモーフィアスとトリニティたちの正体は、そのコンピューター支配の打倒を目指す戦士だった。彼らがネオに接触したのは、ネオこそがコンピューターの支配から人類を救う「救世主」だから、だという。ネオはそんな彼らの期待に応え、特訓を経てみるみる強くなり、モーフィアスに匹敵する戦闘力を身に着けていったが、それでも「救世主」と呼べるほどの力がないことは、ネオ自身が一番理解していた。

それでもネオを救世主だと信じるモーフィアスによって、ネオは「預言者」のオラクルに引き合わされることになった。恐る恐るネオはオラクルから話を聞くと「あなたは救世主ではない」と告げられてしまう。ネオはその事実を仲間たちに伝えようとしたが、本拠地でモーフィアスと彼の信じる救世主ネオにはこれ以上従えないというメンバーによる裏切りが発生。モーフィアスは拘束され、支配者コンピューターのエージェントに投降してしまった。

ネオはトリニティと共にモーフィアスの救出へ向かい、モーフィアスの囚われたビルを強襲、激戦を征してネオはモーフィアスを助けだすが、脱出の間際にエージェントからの猛攻を受けたネオは倒れ、息絶えたことで自身が救世主でないことを示してしまった。しかし、トリニティはネオの遺体に「自分(トリニティ)が愛する者こそが救世主である」という予言を受けていたことを告白。するとその直後にネオは復活を遂げ、救世主と呼ぶにふさわしい、圧倒的な力に覚醒して敵エージェントを打ち破る。

戦いに勝利したネオは、その力で人間と支配コンピューターの戦争に終止符を打つことを誓うと、すぐさま次なる戦いへと向かっていくのだった

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マトリックスは1999年に制作されたアクション映画で、当時の最新技術を用いたVFXが作り出す斬新な映像が話題になり大ヒットしました。特に、主人公ネオを演じるキアヌ・リーブスの周囲360度に多数のカメラを配置し、身体を仰け反らせながら敵の銃撃を避ける様をぐるりと撮影してみせたシーンは「マトリックス避け」などと呼ばれ広く知られるようになり、その後、様々な作品に影響を与えています。

さて、それらのシーンは大変特徴的で印象深いですが、シナリオライターとしてこの作品の注目すべき点はそこではありません。有名なシーンはどれもあくまで映像上の演出を含めての評価です。映像化される前の、文字媒体だけの存在である「シナリオ」だけで評価すべき点がこの作品にはあります。

それは「作品の中核となる設定に説得力のあるエピソードをつけている」ということです。

あらすじに記述しましたが、この作品では最初から最後まで「救世主」という設定が出てきます。しかし、ある日突然「君は救世主だ」と告げられた主人公の心境は、「何故、救世主と言い切れるのか」という点で、視聴者と共有されます。その後、前述したVFXを用いた演出によって、その「救世主」と思しき現実離れした力が表現されていきますが、それでもそれは主人公が「救世主」である理由の答えにはなりません。

そのモヤモヤ感を解決するのが、ヒロインであるトリニティによる「愛の告白」でした。ネオは最初から救世主だったわけではなく、トリニティに愛される存在となったときに救世主になる、という理屈を判明させるストーリーになっている点が、この作品のシナリオの優れた点です。

東京工科大学メディア学部でシナリオを学び、執筆する学生さんたちの中には、「救世主」ではないものの、「伝説の勇者が・・・」とか「最強の暗殺者が・・・」とか、仰々しい設定をもったキャラクターをシナリオに登場させてくることがあります。

しかし「いったいどんなエピソードが伝説になっていて、どんなことができるから勇者と呼ばれているのか?」「どんな敵と戦い、どんな勝ち方をすることによって最強で、暗殺者がそこまで大きな力を持つことができる理由と、それだけの力があるのに暗殺者をしているのは何故か?」といった質問に答えられない場合が多々あります。

揚げ足を取るような質問に思われるかもしれませんが、シナリオライターであれば、その質問には、どんな形であれ、答えられるようにしておかねば、後々シナリオを読むことになるスタッフはもちろん、最終的な作品を鑑賞することになる視聴者にも納得してもらうことができない、不完全な作品になってしまいます。

マトリックスにおける「救世主」という設定の実現が、完璧な形で説明できている、とまでは言いませんが、ストーリーの序盤では満たしていなかった条件を、最後に全部満たしたことによって、実現されるようになっている、という論理性は説得力のあるものです。

「伝説の勇者」や「最強の暗殺者」の登場するシナリオを書きたい方は、是非一度マトリックスを見て「設定をこういう形で実現するのか」という感覚を味わっていただきたいです。

 

(文責:兼松祥央)

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