「私」が出てこない卒業論文
2021年3月 8日 (月) 投稿者: メディア技術コース
メディア学部の大淵です。
今年も我が研究室では4年生たちが卒業論文の執筆に終われています。研究の内容に関わることはもちろん重要ですが、それに加えて、論文らしい体裁を整えるということについても、毎年いろいろ指導をしています。
ここ数年、私が特に注意しているのが、「私」を使わないようにしようということです。できあがった原稿で「私」を検索して、見つかったら片っ端から別の表現に変えていこう、ぐらいのことを言っています。
「私」の何が良くないのでしょうか。英語の論文では"we"や"I"を主語にした表現が良く出てきますが、そんなに違和感はありません。でも、日本語では主語の必要性が英語ほど強くないので、ちょっとした「私」は省略される傾向があります。「We conducted evaluation experiments.」という文はよく出てきますが、日本語の場合「評価実験を行った」と書くことが多いです。では、卒業論文の原稿のどんなところに「私」が出てくるかというと、「私は○○だと思った」とか「私は○○に興味があり」とか「私は○○について調べていたので」のように、ことさらに自分の事情を説明するときなんですね。でも、論文は科学的な事実を書くものですから、個人的な事情は極力排するべきです。筆者が何に興味があろうと読者には関係ありませんが、「近年○○に興味がある人が増えており」ならば客観的事実であり、その事柄について調べる理由として成り立ちます。
「自分の都合ではなく読者の都合を意識して文章を書く」というのは、研究職に限らず、様々な仕事で必要になる技術です。卒業研究で身に付けた文章力が、社会に出てからのいろんな機会に役立てばいいなと思います。
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