研究紹介:話数を基にした伏線分布の可視化(優秀発表賞受賞)
2021年4月22日 (木) 投稿者: メディア技術コース
助教の戀津です。
少し前の話になってしまいましたが、3/8に行われた芸術科学フォーラムでの発表のお話です。
芸術科学フォーラムはメディア学部の各研究室と親和性が高く、例年多くの研究が発表されます。
私の関係では、今年度は卒研からではなく先端メディア学の活動内容と、私自身の研究成果の発表を行ってきました。
『TVアニメーション作品における話数を基にした伏線分布の可視化』と、『力学モデルを用いたキャラクター同士の絡みの可視化』というタイトルです。
この2件が、それぞれ優秀発表賞を受賞しました!本日は一つ目の伏線分布の可視化について紹介します。
この研究は、私の開講する先端メディア学「コンテンツビジュアライゼーション」を履修していた、一年生(昨年度後期時点)の飯田琴美さんの分析結果を私がまとめたものです。
コンテンツビジュアライゼーションでは、受講者それぞれの興味を主軸にして映像作品の分析・可視化を行っています。
今回飯田さんは伏線について興味があるということで、まずは伏線を多く含むTVアニメーション作品を視聴しながら事例の抽出をしてもらいました。
伏線と思われる内容を列挙し、その性質を検討した結果「張り」「回収」「部分回収」「フェイク」の4種類に分類することができました。
また、伏線を抜き出す際に、第何話で描写されたという情報も一緒に記録してもらいました。
TVアニメーション作品は通常12~13話程度で制作されますが、その中で伏線の描写がどのように分布しているかを可視化してみるためです。
結果は次のようになりました。
ネタバレになってしまうため作品名は伏せておきますが、TVアニメーション作品2つの可視化結果です。(学会では作品名も書いてます。聞いていた方はネタバレしてすみません・・・)
横軸方向に話数をとって、張りから回収に至るまでの一連の内容を線で繋いで縦方向に列挙しています。
張り、回収、部分回収、フェイクそれぞれを描写された位置にアイコンで示しています。
1つめの作品は全12話、2つ目は全13話で、それぞれ前半はメインストーリーを進めながら伏線を多数散りばめています。
1つ目の方は中盤から回収が始まり、終盤にかけて次々と謎が解けていくよう演出しています。
一部偽の情報で回収したようにミスリードしたり、回収したと思いきやまだ隠された情報が残っていたというパターンもありました。
2つ目の方は終盤で一気に回収する回があり、その後メインストーリーの決着をしていて特に伏線は絡んでいません。
ただし、「張り」のような描写が追加され、最終回を迎えても回収されないという事例も見つかりました。
まだ2作品なのでサンプル数が不足していますが、伏線に関して演出方法に差がみられるという興味深い結果が得られました。
学会ではその点が評価されたのか、優秀発表賞(ポスター)を頂くことができました。
この研究をするにあたり、始めはまず抽出だけのお願いだったのですが、結果を見ながらディスカッションを進めていくうちに上記のような分類や分布の可視化というアイディアが生まれてきました。
元々の想定では、本来はまず半期かけて抽出と分析、その後また半期かけて分析方法の見直しと実行、結果の可視化・・・くらいのスケジュール感でした。
しかし、飯田さんの抽出作業が大変早く、充実したディスカッションが行えて昨年度後期の半期だけで結果の可視化までできたため、芸術科学フォーラムに投稿できました。
頑張り次第では一年生のうちから面白い研究ができ、学会発表までできるという素晴らしい事例になりました。
飯田さんとは引き続き伏線の研究を進める予定です。また面白い結果が得られたら報告します。
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