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シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その20

2021年4月16日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん,こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

今回も「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品」を紹介します。
今回紹介するのはこの映画です。

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『マスク(1994)』

【監督】
チャールズ・ラッセル

【脚本】
マイク・ワープ

【参考URL】
https://movies.yahoo.co.jp/movie/22113/

【あらすじ】

エッジシティの銀行に勤めるスタンリーは、愛犬のマイロと暮らし、アニメを見ることぐらいしか楽しみのない、平凡で冴えない男だった。そんな彼はある日、一人の女性に一目惚れする。

その相手は地元ギャングの経営するナイトクラブの歌姫「ティナ」で、その出会いは、よりにもよってギャングのドリアンが銀行強盗の下見につきあわされている最中、という最悪のタイミングだった。

そんなことなどお構いなしでスタンリーはティナへの想いをふくらませて帰宅する途中、
河辺で怪しげな仮面を見つけ、吸い寄せられるようにそれを顔につけてしまう。

次の瞬間スタンリーは、緑の肌をした怪人「マスク」に変貌。およそ人間とは思えぬ動きと、ふだん見ていたアニメさながらの奇抜な能力で、夜の街に繰り出して大暴れする。

翌朝、我に返ったスタンリーは仮面の力が恐ろしくなり、ティナに近づくために、もう一度だけその力を使ったら、仮面を捨てる決意をした。

かくして再び怪人マスクへと返信したスタンリーは、ティナのいるナイトクラブへ向かったが、ドリアンがいよいよ銀行強盗の決行中だったので、マスクの力でなんなく大金を横取りしてからクラブ入りし、情熱的なダンスでティナを魅了した。

後日、スタンリーはティナを呼び出すと、彼女に「怪人マスクに合わせてあげる」と約束し、ためらいながらも変身して正体を明かした。しかし、銀行強盗の一件で怪人マスクに恨みを抱くドリアンの手によって、仮面は奪われてしまう。

仮面の力を手に入れ、大暴走を始めたドリアンを止めるべく、再びナイトクラブに向かったスタンリーは、マスクのない非力なままでも勇敢にも立ち向かい、愛犬マイロとティナの力を借りてドリアンから仮面を引き剥がした。

この活躍によりドリアンは警察に逮捕され、スタンリーとティナは晴れて結ばれることになった。もはや仮面のちからに頼らなくていいと気づいたスタンリーは、仮面を再び河へ投げ入れ、手放したのだった。

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「マスク」は、アメリカン・コミックスを原作とした1994年の映画です。SFXを駆使した映像技術を用いて、実写とカートゥーンアニメを組み合わせた演出がなされており、特にタイトルにもなっている怪人「マスク」が大暴れする様は、現実的要素と非現実的要素を織り交ぜた、印象に残るインパクトのあるシーンに仕上がっています。

この作品でシナリオライターとしてどこに注目すべきか、というと「マスクの非現実的な特殊能力の数々を現実的なシーンにうまく盛り込んでいる」という点です。

マスクはアカデミー賞の視覚効果賞にもノミネートされていますので、特殊能力の描写に優れていることは言うまでもないのですが、それらはあくまで最終的に完成した映像上のことであって、シナリオの段階では単なる文字情報でしかなかったのですから、そこをうまく記述するには、相応のテクニックが必要です。

シナリオライターと呼ばれる職業は、どんな作品でも文字で執筆できる、と考えられがちで、たしかにそういった万能なシナリオライターが高く評価される部分もありますが、それでも個人ごとに得手不得手はありますし、例えば実写のシナリオライターとアニメのシナリオライターとでは、得意とする執筆内容に大きく違いがあります。

もしかすると、アニメのシナリオライターなら、宇宙も地球も、現実も非現実も執筆できるから、自由で楽だと思われる方も、いるかもしれませんが、非現実な描写や、現実であっても簡単に行き来できない宇宙の描写を、文字だけで人に伝えてイメージさせることは、とても難しく、自由ではあっても決して楽なことではありません。

映画「マスク」。の中では、怪人マスクに変身した主人公はまさに無敵で、銃で撃たれようが爆弾で爆破されようが無傷でピンピンしています。しかし、そんなキャラクターが描かれる世界の、怪人マスク以外の住人たちは、至って普通の人間であり、銃で撃たれれば死ぬし、爆弾が爆発しても死んでしまいます。ギャグ漫画のように、次のシーンで何事もなく生きていたりはしないのです。

作中では、必ずしも銃や爆弾のような派手で攻撃的な手段に限らず、さまざまな力を発揮してピンチをくぐり抜けるシーンがあり、中には「歌と踊りでその場にいる人間を楽しくさせてしまい、集まった警官たちすらもダンスに興じてしまう」なんてこともあって、あえて現実的な描写手段も絡めるなどして、違和感を抱かせない工夫が見られます。

昨今、CG技術の発達によって、映画「マスク」が制作された時代よりも、非現実的な要素を描写することが容易になっている時代ではありますが、安易にそういった要素をシナリオに記述しても、効果的には機能しません。

シナリオライターを目指す人であれば、映画「マスク」を見て、どんなタイミングで、何度くらい、どのくらいの長さで、非現実てきな要素のシーンを用いているか調べるだけでも、かなり勉強になると思います。是非一度見てみてください。

(文責:兼松祥央)

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