シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その21
2021年5月 8日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん,こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。
今回も「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品」を紹介します。
今回紹介するのはこの映画です。
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『トップガン(1986)』
【監督】
トニー・スコット
【脚本】
ジム・キャッシュ
ジャック・エップス・Jr
【参考URL】
https://movies.yahoo.co.jp/movie/15997/
【あらすじ】
アメリカ海軍のマーヴェリックは、相棒のレーダー要員グースと共にF14トムキャットを操縦するパイロットである。その操縦技術は卓越したものがあり、突然出現した国籍不明機ミグ28の襲来によってパニックを引き起こした同僚パイロット機を救った上に背面飛行を決めて挑発をするほどだった。しかし、度重なる危険な操縦や命令違反が許されるはずもなく、グース共々、エリートパイロット養成校「トップガン」行きを命じられてしまう。
「トップガン」に配属となっても一向に態度を改める気のないマーヴェリックは、初日から先輩エース・パイロットのアイスマンを挑発し、歓迎パーティ会場で見かけた初対面の女性、チャーリーを熱烈に口説くなど、やりたい放題。まもなく飛行訓練も開始となり、教官ジェスターとの模擬戦に臨んだマーヴェリックとグースは、ジェスターに撃墜されそうになるピンチを咄嗟の機転で一転させて勝利する。だが、その操縦は規律に違反するものであり、上官でマーヴェリックの亡き父とも親しかったヴァイパーに呼び出されたマーヴェリックたちは咎められることに。
マーヴェリックが危険を顧みず勝とうとするのは、同じくパイロットとして類まれなる才能を持っていた父の影響で、その死の真相は今なお機密情報として明かされていなかった。なりふり構わず勝ち続け、昇進することで父の死の真相を知ろうとするマーヴェリックだったが、相棒のグースですら身の危険を感じており、グースには自身に妻子がいることも考えてほしい、と自重を促されてしまう。
それでもマーヴェリックはアイスマンと、エースパイロットの座を巡って競争を続けていたある日のこと、突然の悲劇がマーヴェリックを襲った。突如発生したジェット気流によってマーヴェリックの機体は制御不能となり、マーヴェリックとグースは緊急脱出を試みるも、グースだけは不幸にも機体のキャノピーに頭部を打ち付けてしまい、死亡してしまったのである。
その後の調査委員会の決定によって、マーヴェリックは罪に問われなかったが、グースを失ってしまったショックはあまりにも大きく、これまでのような操縦は全くできなくなってしまった。トップガン最優秀成績は結局アイスマンとなったが、もはやマーヴェリックには、そんなことなどどうでもよく、海軍すらやめてしまおうかと悩んでいた。
そんなマーヴェリックを見捨てなかったのは、ヴァイパーだった。ヴァイパーは機密漏洩の罪を承知でマーヴェリックの父の最期について教えてくれた。マーヴェリックの父はベトナム戦争の最中、友軍機3機を救うために奮闘した後、撃墜されていた。それは軍事境界線を越えた戦いであり、公になれば問題になるため機密事項となっていたのである。マーヴェリックはこの話を聞かせてくれたヴァイパーに感謝すると、自身も父のようなパイロットになるべく再び立ちあがった。
そして迎えたトップガン卒業式当日。もう現れないと思われていたマーヴェリックが、会場で周囲を驚かせた矢先、緊急出撃の命令が下る。またもや国籍不明機のミグ28の接近反応があったのである。成績最優秀者アイスマンと、それに次ぐ優秀パイロットのハリウッドが出撃し、マーヴェリックはバックアップとして待機したが、出現したミグ28はなんと5機で、劣勢を強いられたハリウッドは撃墜されてしまう。
すぐさま出撃することになったマーヴェリックは、アイスマンの救援に駆けつけたが、5機の敵機が巻き起こしたジェット気流に飲み込まれてしまう。それは奇しくもグースを失ったときと同じ状況だった。恐怖が蘇ったマーヴェリックは、一瞬逃げ出そうとしたがグースの形見として持っていたドッグタグを見て思い直すと、なんとか機体を持ち直して、再びアイスマンの救出へむかった。
マーヴェリックは、被弾しながらも単独で1機敵を撃墜したアイスマンを援護する形で、3機の撃墜、残る1機を逃走させることに成功した。
無事帰還を果たしたマーヴェリックは、仲間たちから称賛された後、ひとり甲板に姿を現すと、これまでの迷いを断ち切るように、グースのドッグタグを海へと投げ入れたのだった。
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トップガンは、実在するアメリカの海軍戦闘機兵器学校を舞台に、若きエリートパイロットを描いた作品です。とても有名な話ですが、この映画の製作においては、当時のアメリカ海軍が全面協力しており、登場する戦闘機、空母、さらには基地や各種施設は、実際のアメリカ海軍に許可されて撮影したものです。CGのなかった時代ですから実際に撮るしかないのは当然といえば当然ですが、逆に今なら機密事項が複雑に絡み合うので「CGで何とかしろ」と言われて実現が難しいことでしょう。それだけに作中の映像が描き出すリアリティは圧巻で、本作に感銘を受けて、当時は海軍への志願者が増え、中には本当に戦闘機のパイロットを目指した人までいた、と言われる作品です。
では、この作品でシナリオライターとしてどこに注目すべきか、というと「登場人物の役割が明確」という点です。
役割、と言われて誰もがまっさきに思いつくのは「主人公」ではないでしょうか。もちろん「主人公」も含まれますが、東京工科大学メディア学部での演習「シナリオアナリシス」「デジタルキャラクターメイキング」では、それ以外の登場人物の役割を、先行研究や既存作品分析から次のように分類しています。
「1主人公」
「2協力者」
「3敵対者」
「4犠牲者」
「5依頼者」
「6援助者」
「7対抗者」
この分類が絶対的に正しいというわけではありませんが、シナリオであればこれらの役割を登場人物に割り当てることで、穴のない(失敗のしにくい)シナリオを作ることができます。実際に、トップガンの登場人物を割り当ててみます。
「1主人公」マーヴェリック
「2協力者」グース
「3敵対者」ミグ28(のパイロットたち)
「4犠牲者」グース
「5依頼者」トップガンの教官・司令官たち
「6援助者」ヴァイパー
「7対抗者」アイスマン
このブログの冒頭では、この作品の詳細なあらすじを記述していますが、それはこれら7つの役割をもとに、かなり簡略化した本作のあらすじを述べることができます。
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【簡略化したトップガンのあらすじ】
主人公マーヴェリックは、協力者のグースを相棒に、
敵対者の戦闘機ミグ28と戦っていたが、
その過程でグースが犠牲者となってしまい落ち込んでしまい、
依頼者であるトップガンの教官たちによるエースパイロットの訓練を乗り越えられなくなりそうになるが、
援助者ヴァイパーの助言によって立ち直り、対抗者アイスマンにも負けない、パイロットになった。
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これだけでトップガンの内容をすべて語れるものではありませんが、優れた作品のシナリオは上記の役割を確実に抑えて作ってあり、理解しやすい構造を持っている、といえます。シナリオを書く上では、当然、役割以外にも押さえるべきポイントはたくさんあるのですが、押さえるべきポイントを押さえることで、本作最大の魅力である、貴重な撮影シーンの数々は活きています。
後年、トップガンの影響を多分に受けて、戦闘機を題材にした作品はたくさん作られましたが、中には「とにかく戦闘機が空を飛んでいればいいだろう」という安易な構想しか見て取れず、失敗に終わった作品が数多く存在します。そういった作品は、まさに押さえるべきポイントを押さえていないが故にそうなった、と言うこともできます。
今では作中の戦闘機F-14トムキャットはアメリカで退役しているので、単純に当時の勇姿を見るだけでも楽しめると思いますので、是非一度「トップガン」は見てほしいと思います。
(文責:兼松祥央)
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