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第2回シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点(あな)

2021年5月28日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

今回も「シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点」として、定期的に私が何度も遭遇してきた「シナリオの欠点(あな)」について書いていこうと思います。今回取り上げるトピックは・・・

「ターゲットの想定が甘いシナリオの欠点(あな)」

シナリオライターがシナリオを書くとき、にも色々あるのですが、一例として大きく2つに分けるとすれば「企画が決まっていて、その企画に基づいてシナリオを書く」「企画から自分で考案してシナリオも書く」の2つになると思います。

シナリオ執筆未習熟者には、その2つの分け方を考えたことがない人が多く、たいていどちらかを自分に都合よく当てはめてシナリオライターという仕事を考えがちです。東京工科大学メディア学部の学生に多いのは後者です。そもそもシナリオライターと小説家の区別すらついてない場合が多く、それ故に自身の作家性だけで作品を作れる、と思いこんでいるパターンをよく見かけます。

自分が作りたい作品を0から企画して作り始める、という事自体は何も間違っていませんし「自分が作りたい」と思うことは、モチベーションを生み出す何よりの原動力です。それはクリエイターにとってとても重要な要素です。

しかし「自分が作りたい」と思うのは自由ですが「本当に作るべきか」は別な話です。あくまで趣味や日課や暇つぶしでチラシの裏にシナリオを書くのは勝手ですが、実際にそのシナリオで対価を得ようとするなら「どんなターゲットに受け入れてもらえるのか」を考えて、本当につくるかどうかを判断する必要がてきます。

ターゲット想定を考慮せず、「自分が作りたい」と思ったことだけで作ろうとすると「シナリオの欠点(あな)」は発生しやすくなります。

「自分が作りたい」と思ったことだけで作ろうとすると、作っている自分にしか理解できない情報が必ず出てきます。特に本人に取っては「当たり前すぎる情報」がそれに該当します。本人にとっての「当たり前」は、本人以外にとって「当たり前」とは限りません。ささいな情報や常識レベルに思える情報であっても、その可能性があります。

それ故、現実の情報はもちろん創作上の情報であれば、なおさら説明に気を配る必要がありますし、その上で作品が受け入れられて対価を得られか、は決まってきます。なんの配慮もせずに、自分の考えたことや思いついたことを、そのまま文字に起こしていれば、説明不足な箇所は「欠点(あな)」として受け取られることでしょう。そして、そういった「欠点(あな)」の積み重ねは、作品のクオリティを下げてしまいます。場合によっては、たった一箇所の「欠点(あな)」が致命的になることさえあります。

過去に私は「シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その4」で、映画「グーニーズ」を取り上げてこう述べました。

http://blog.media.teu.ac.jp/2020/10/post-13df65.html

『メディア学部の演習「シナリオアナリシス」に参加する学生には、自作のシナリオのターゲットとして「10代の若者」を設定する人が多いのですが、今の「10代の若者」が視聴したとき、彼らが興味をもって楽しむ要素が何なのか把握できていない場合が、よくあります。』

演習の参加者のほとんどは大学生ですから、自分が経験してきた年代かつ記憶にも新しい年齢を設定して「10代の若者」をターゲットに想定したくなる気持ちはよく分かるのですが、それでも「10代の若者」という区分はとても広く、また多感な年齢であることも考慮すると、もっと条件を絞り込んで作品を作らないと、適切な形で受け入れてもらうことは難しいです。自分と年齢層が近かったり、世代的に自分と発想の方向性が近かったりすることが強みであることは間違いないですが、それでもカバーできる情報の範囲には限度があります。

繰り返しになりますが「自分が作りたい」と思う気持ちはクリエイターにとってとても重要な要素です。しかし、自分の作りたいと思ったたことを全部そのまま盛り込んでも理解はされません。それ故に「本当に自分が作りたいことは何なのか」をよく見定めて、優先度の高いものから盛り込んでいくことになります。当然ターゲットも絞られるでしょう。

ターゲットをよく考慮して、できるだけ「欠点(あな)」がないシナリオを作りたいものです。

(文責:兼松祥央)

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