各シーンが持つストーリー的な意味の分析
2021年5月30日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん,こんにちは.メディア学部助教の兼松です.
そろそろ5月も終わり,前期の授業も約半分まで来ましたね.
今期は4月末の休校の影響で授業開講日が一部後ろにずれたり,5月31日以降の授業についても先日アナウンスがありました.状況に合わせて日々情報がアップデートされていますので,学生ポータルや学内サイトを定期的なチェックをお願いします.
さて,私が担当しているプロジェクト演習シナリオアナリシスもそろそろ折り返し地点です.前期ということで,最初の3回ほどは座学中心でシナリオ執筆を取り巻く環境や歴史,執筆・分析手法などを説明しました.そして今は既存作品のシナリオ分析のパートに入っています.
この分析パートでは,昨年度以前から継続的に受講している学生には(ある程度の制限はかけていますが)自分で作品を選んでストーリーを分析し,授業時間に分析結果を発表,ディスカッションを行っています.この分析ではメディア学部の研究の中で開発したテンプレートを使用しています.既存作品を見ながらこのテンプレートを埋めることで,その作品が持つストーリーの構造や特徴を捉えるおとができるように工夫されています.
継続受講生のみなさんはさすがにこのテンプレートの扱い方はだいぶこなれてきていると感じています.ただ,このテンプレートは,単に埋めるだけであればそこまで難しいことではないと思いますが,物語の構造を捉えるためにはしっかりとストーリー的な意味を理解して埋めなければならず,これは誰にでもすぐにできることではありません.
例えば,恋愛もののストーリーによくある「意中の人に告白する」シーンを思い浮かべてください.
分析に慣れていない受講生によくあるパターンとしてはこのシーンを,「夜景の見えるレストランにヒロインを呼び出した主人公.主人公はなかなか本題をきりだせずにいたが,ついに意を決し,ヒロインに告白する.」といったように映像をみたままに書いてしまう場合がよくあります.これでもどういうシーンなのかはおおよそわかります.しかし,この文章はほとんどがシーンの描写を書き出したにすぎません.”夜景の見える”,”なかなかきりだせない”,”ついに意を決し”といった要素は,あくまでもこのシーンをより印象的に,よりロマンチックにするための要素であり,ストーリー的に重要な意味があるわけではない場合が多いです.
ストーリーの構造を考える上では,この「告白」がストーリーのオチをつけるためにどんな意味を持つのかを考える必要があります.多くのラブストーリーでは「主人公がヒロインと結ばれる」というオチに対して,「結ばれる(オチをつける)にあたって障害となっていた問題の排除の瞬間」になることが多いでしょう.
ただし,この作品が単なるラブストーリーではなく,「口下手な主人公の成長物語」だとしたらどうなるでしょう?
もしこれをきっかけに度胸がついた主人公が,だんだんとコミュニケーションがうまくなっていくとしたら,「問題の排除」ではなく「解決の糸口」ということになるかもしれません.
このように,一見するとわかりやすい告白のシーンであってもストーリーの構造・展開によってはシーンがもつ意味・役割が大きく異なります.したがって,単にシーンを見たままに書いただけでは分析にならないのです.
とはいっても,はじめは見たままにしか書けなくてあたりまえです.プロ演シナリオアナリシスではこのあたりを,学生と教員で分析シートを見ながらしっかりディスカッションするのが特徴になっています.
(文責:兼松祥央)
「コンテンツ」カテゴリの記事
- あにめたまご2019「文化庁若手アニメータ等人材育成事業」(2019.03.12)
- 学会紹介:ADADA Japan学術大会と情報処理学会EC2019(2019.03.09)
- 大学院授業:プロシージャルアニメーション特論の紹介(2019.03.08)
- ゲームの学会?!(2019.03.07)
- 香港理工大学デザイン学部の紹介(2019.03.04)
「在学生向け」カテゴリの記事
- チュラロンコン大学からのインターン学生との再会(2019.03.14)
- あにめたまご2019「文化庁若手アニメータ等人材育成事業」(2019.03.12)
- タイの提携校、キンモンクット大学トンブリに短期訪問しませんか?(2019.03.11)
- 学会紹介:ADADA Japan学術大会と情報処理学会EC2019(2019.03.09)
- 大学院授業:プロシージャルアニメーション特論の紹介(2019.03.08)
「授業紹介」カテゴリの記事
- トップレベルの論文を読み込む「CG技術特論」(大学院授業紹介)(2019.03.13)
- 大学院授業:プロシージャルアニメーション特論の紹介(2019.03.08)
- 専門演習「空間インタラクティブコンテンツ」2018後期(3)(2019.02.22)
- タンジブルインタラクションデザイン最終発表(2019.02.13)
- 専門演習「空間インタラクティブコンテンツ」2018後期(2)(2019.02.12)
「高校生向け」カテゴリの記事
- チュラロンコン大学からのインターン学生との再会(2019.03.14)
- 大学院授業:プロシージャルアニメーション特論の紹介(2019.03.08)
- ゲームの学会?!(2019.03.07)
- 香港理工大学デザイン学部の紹介(2019.03.04)
- 香港理工大学デザイン学部を訪問し、学部長Lee先生にお会いしました!(2019.03.03)