遅延聴覚フィードバック
2021年5月15日 (土) 投稿者: メディア技術コース
メディア学部の大淵です。
聴覚についての授業で、私がよく紹介する実験のひとつに、遅延聴覚フィードバックというものがあります。これは、自分が発した声を、ちょっとだけ遅らせて再生して聴かせる実験なのですが、遅れを0.1秒ぐらいにして、ヘッドホンでしっかり聴かせるようにすると、びっくりするほど話しにくくなります。突然、呂律が回らないようになって、まわりで見ている人は「何が起こったんだろう?」と思うほどです。
2012年には、この現象を指向性スピーカーと組み合わせた「スピーチジャマー」という装置で、産業総合研究所の栗原さんと塚田さんがイグノーベル賞を受賞されました。
この遅延聴覚フィードバックが、コロナ禍の中で以外なところに登場しました。感染が少し落ち着いていた頃、オンラインのミーティングを部分的に対面で行うことになり、会議室に集まった人たちがそれぞれ自分のパソコンでZoom会議に参加することにしたのです。会議室にいながら、Zoomにも繋いでいるのですが、この状態で発言すると、自分の声が他の会議参加者のマイクからZoomに入り、通信回線を経由して自分のヘッドホンから聞こえてきます。このときどうしても少しだけ遅延が生じるので、スピーチジャマーのように、なんとも話しにくい状態が発生してしまうのです。
この1年、いろんなところで、音声や聴覚の研究の大切さを痛感しています。遅延聴覚フィードバックの影響を簡単に低減させるというのも、ちょっとした研究テーマになりそうですね。
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