シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その22
2021年5月26日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん,こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。
今回も「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品」を紹介します。
今回紹介するのはこの映画です。
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『ブルース・ブラザース (1980)』
【監督】
ジョン・ランディス
【脚本】
ダン・エイクロイド
ジョン・ランディス
【参考URL】
https://movies.yahoo.co.jp/movie/20555/
【あらすじ】
強盗の罪で懲役5年のところを、3年の刑期で出所してきた兄ジェイクは、迎えに来た弟エルウッドと共に、兄弟の育ての親である孤児院の院長に出所の報告へ向かった。するとふたりは、その孤児院が近日中に大金5000ドルの納税をしなければ、取り潰されることを知らされる。
なんとか孤児院を救うための方法を考ええていた二人は、馴染みの教会で礼拝に参加している最中、かつてブルース・ブラザースの名で活動していたバンドを復活させることで大金を手にすることを思いつく。
かつて一緒にバンドを組んでいた仲間たちは、ジェイクの服役中に新しい生活を始めており、全員がそう都合よく同意してくれはしなかったが、ジェイクとエルウッドによる、手段を選ばぬ無茶苦茶な勧誘によって参加を余儀なくされ、強引に再結成を果たした。
納税期日が迫る中、ジェイクとエルウッドは大ホテルの会場を無理やり押さえ、孤児院の子供たちまで動員して、大急ぎの宣伝を展開すると、演奏当日、観客は大入り満員状態となったが、それまでの強引すぎるやり方が祟って、会場には警察が二人を逮捕するべく包囲をかためていた。
コンサートは大盛況で、楽屋を訪ねてきたレコード会社から10000ドルの契約金を受け取ったふたりは、半分をこれまで協力してくれた仲間たちに渡すよう指示した後、密かに会場を抜け出し、シカゴの本庁舎納税局へ向かうと、追ってきた大勢の警察をなんとか振り切って、孤児院の固定資産税5000ドルの納税に成功すると、その後はおとなしく逮捕されたのだった。
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「ブルース・ブラザース」は1980年に作られたミュージカルあり、アクションありのエンターテイメント性全開の映画ですが、前身はアメリカのTVバラエティ番組内にあった同名の人気コーナーです。その流れを組んでいることもあって、世界的に有名なミュージシャンたちが要所要所で客演していることでも知られた作品です。日本での人気も高く、主人公の兄弟二人を象徴する「サングラスに黒のスーツと帽子」という容姿は、公開後は映画だけでなくドラマやアニメ、ゲームなどにもオマージュ的によく見られるようになりました。
この作品でシナリオライターとしてどこに注目すべきか、といえば「ストーリーをシンプルにして、ライブシーンやアクションシーンに注力させている」という点です。
今回の作品のあらすじは、ここ数回の作品紹介の中でも、かなり短くまとまっているのですが、それもそのはずで、あまりストーリー上の工夫や伏線などに凝った作品ではなく「主人公二人の兄弟が、バンドで大金稼いで、孤児院を救う」という一節程度でも説明が付くほど単純な内容です。
有名ミュージシャンが出演していることは前述しましたが、ジェームズ・ブラウン、レイ・チャールズ、アレサ・フランクリンなどは、出演するだけでなく、ストーリーに関連する一曲披露するほど強調された出演シーンになっています。こういった特徴はえてして、そこばかりが注目されたりするのですが、本作は決してそんなこともなく「警察に追われる身になりながらも目的達成を目指す」、ある種の逃亡劇シナリオとして成立しています。
若干、ご都合主義的な展開も見られますが、サウナに入っているのに帽子を外さなかったり、そもそも昼でも夜でもサングラスを掛け続けていたり、コメディ的な要素も満載なので、それほど気にはなりません。
シナリオは映像コンテンツの設計図ですが、シナリオの内容が決まるより先に優先事項が決まることもよくあり、例えば本作のように「有名ゲストを登場させることが決まっている」とか「特定のキャストを全面に押し出したい」とか、そういった思惑が絡むことはよくあります。そういった制約があることを前提に、それでも作品のクオリティを保ったシナリオに仕上げるにはどうすればいいか、という観点で見ると、本作はまた興味深いと思います。是非一度見てみてください。
(文責:兼松祥央)
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