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第5回シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点(あな)

2021年7月29日 (木) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

今回も「シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点」として、定期的に私が何度も遭遇してきた「シナリオの欠点(あな)」について書いていこうと思います。今回取り上げるトピックは・・・

「サプライズを狙おうとして発生するシナリオの欠点(あな)」

一般的に、シナリオライターが完全オリジナルのシナリオを書く機会というのは意外と少ないのですが、プロデューサーやプランナーが、シナリオライターを兼任していて、新企画の立案用にゼロからオリジナルのシナリオを書くことはよくあります。

厳密にはシナリオというより「あらすじ」「プロット」「シノプシス」などと呼ばれる、おおまかなストーリーをまとめた程度の文章を作成する感じですが、企画の内容を検討する際はそのあたりをひっくるめてシナリオ、として扱うわけです。

完全オリジナルですから、原作小説や原作漫画を前提とした内容ではありませんし、当然まだ誰も知らない内容になりますが、そのオリジナル作品の内容を書き起こす際に、シナリオ執筆未習熟者がよくやりがちなことがあります。

「サプライズの内容を書かない(隠す・教えない)」

これをやってしまう人は、ほぼ間違いなく「新たに立案する作品において結末で大きな秘密や衝撃の事実を明かすつもり」の人です。

謎の人物の正体や、作中でなかなか明かされない秘密など、それらが判明したときに驚愕してほしい、意外な事実を知って喜んでほしい、との思いからそうするようですが、それをやるのは企画の立案上、基本的にNGです。

どんな意図であろうと、結末が不明で全貌がわからない作品では、何も判断ができませんし、何も決定することができません。

「あっと驚くサプライズ要素で観客を楽しませたい」という意図は悪くないですが、作り手側はその内容が本当に観客を楽しませるものかどうかの判断を、念入りに検討した上でくださねばならなりません。

そもそもアイディア自体、シナリオライターが「サプライズ要素として機能して、観客を喜ばせることができる」と勝手に思い込んでいるだけの可能性もあります。シナリオライターだけで判断することは大変危険なのです。

以前、私は「シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その8」で、映画「シックスセンス」を取り上げ、こんな一節を書きました。

http://blog.media.teu.ac.jp/2020/12/post-6edc3c.html

『「シックスセンス」は、1999年の公開当時、監督のM・ナイト・シャマランと主演のブルース・ウィリスの連名で「この映画にはある秘密があります。まだ映画を見ていない人には、決して話さないで下さい」と前置きされたことが話題となり、その「秘密」を確かめようとする観客たちによって大ヒットした映画です』

ここで述べている秘密とは「ずっと作中に登場してきた主人公は、実はすでに死亡している」というものであり、その事実が明かされたときの驚きと衝撃が、「シックスセンス」を観客に楽しんでもらう上で重要であることは、企画の段階でも示されていたと思います。

そして、そのアイディアが間違いなく、効果的に機能する、と判断されたから予算も人員も投入が決まったわけで、その秘密が明かされないまま制作にGOサインが出るなんてことは、まずなかったでしょう。

もしかすると、企画段階で全貌と重要なアイディアを明かしてしまっては、誰かにそれらの構想を奪われてしまうかもしれない、という恐れがあって、「隠そう」と思うに至ることがあるかもれませんが、それは守秘義務など、契約上の問題なので話が別です。

観客として映画を観ていた際に、サプライズ要素で喜びと感動を覚えた経験から、
作り手側になったときに、自らもそういうギミックをシナリオに組み込みたい、という構想を持つ人は少なくありません。

しかし、本当にそれを実現したいと思うのなら、その意図があることはもちろん、その実現タイミングは詳らかにして、
かつての自分と同じような喜びと感動が得られるかどうかを、客観的に判断してもらうことが大事です。

シナリオはネタバレ全開かつサプライズ隠しも無しで書きましょう。

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