第6回シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点(あな)
2021年7月30日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。
今回も「シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点」として、定期的に私が何度も遭遇してきた「シナリオの欠点(あな)」について書いていこうと思います。今回取り上げるトピックは・・・
「明確な結末を決めずに書き始めたシナリオの欠点(あな)」です。
シナリオは、基本的に映画、ドラマ、アニメなど、映像コンテンツの設計図として書かれる文章です。
そして、設計図であるがゆえに、どう始まり、どう終わり、全部視聴するにはどのくらい時間がかかる作品なのか、分かるように書かねばなりません。
特にTVドラマ、TVアニメなら60分、30分など放送枠が決まっているので、短すぎても長すぎても問題になります。
シナリオ執筆未習熟者にはそういった時間の計算ができずに「書きたいことを全部シナリオに盛り込もうとする」傾向が見受けられます。
作品に盛り込みたいアイディアがたくさんあるのは良いことですし、それを意欲的に取り入れようとする姿勢も素晴らしいです。
しかし、前述したように、シナリオは決められた時間内に収まる内容が求められますし、
あれもこれも全部入れたいからどのくらい時間がかかる作品になるかわからない、では設計図にならないのです。
シナリオ執筆未習熟者は未習熟であるがゆえに、シナリオに組み込むアイディアや情報の取捨選択と優先順位の判断が、うまく出来なかったりします。
特にありがちなのは、勢いよく書き始め、練りに練った独自の設定を持つ舞台設定について書き始め、さらにシナリオライター渾身の思い入れのあるキャラクターを登場させ、その魅力を説明するシーンを記述し・・・それだけでかなりの時間を費やしてしまって「なにも話が進まない」というパターンです。
これも繰り返しになりますが、シナリオは設計図であるがゆえに、どう始まり、どう終わりが訪れるのか、示す必要があるので、延々と「始まり」に関する情報だけを提供するわけにはいかないのです。たくさんのアイディア、こだわりの登場人物は、作品の核となる大事な要素ですが、それだけを語って「終わり」にはなりません。
では、こういったシナリオ執筆未習熟者の陥りやすい問題には、どう対処すべきでしょうか。
それは、実は単純なことで「まず結末(終わり)を明確に決めて、それから発端(はじまり)について書く」ことです。
シナリオ執筆未習熟者の多くは、不思議なくらい共通して「始まり」から書こうとします。書きたいところから書いていく、ということが悪いわけではないですし、心境的にもいち早く自分のアイディアを表現したいという気持ちに共感する部分はあるのですが、その気持ちが強すぎると、取捨選択と優先順位の判断を鈍らせます。
そこで「結末(終わり)から書く」という手順を踏むことで、結末(終わり)を迎えるために優先すべき情報が何なのか、優先順位をつけて情報の取捨選択ができるようになるでしょう。
さいごに・・・
この「シナリオの欠点(あな)」に関する記事は、基本的にシナリオ執筆未習熟者に多く見受けられる欠点(あな)として取り上げていますが、実を言うと今回の内容は、シナリオ執筆未習熟者だけでなく、かなりのシナリオ執筆熟練者であっても発生させやすい欠点(あな)だったりします。自分が経験を積んでいるがゆえに、自分が思いついたアイディアは全て適切に組み込めている、と思い込んでしまうからです。
シナリオライターには常に柔軟な思考と客観的な視点で、映像コンテンツの完成イメージをもって、執筆することが求められます。意欲的に取り組む作品であればあるほど、気をつけたいものです。
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