感染症までの数理 (5)
2021年7月23日 (金) 投稿者: メディア社会コース
感染というのは、ウィルスや細菌が人間のからだに入り、増殖することで起きます。
一方、人体には、それに対抗する免疫がありますから、その増殖を抑え、絶やすことで、やがて回復します。
それだけでなく、ウィルスや細菌の種類にもよりますが、回復した人は、獲得免疫ができて、感染しなくなります。
これは、ごく簡単ですが、感染の経過を表しています。
そこで、感染していない人、感染している人、回復した人の3つに分けて、それぞれの人数の時間変化と関係をモデルにします。
これは疫学の区画モデルという種類に入り、 SIR モデルと呼ばれています。
S は感染していない人の数で、感染する可能性があるという意味の Susceptible、I は感染している人の数で、その意味の Infected、R は回復者の数で、回復したという意味の Recovered から来ています。
ひとりの人は S、I、R の順で区画を移っていきます。
このモデルは、きのう述べた PP モデルと少し似ています。S が被食者、I が捕食者に対応しています。
感染していない人 S が減っていき、感染している人 I が増えていく部分で、PP モデルと似た動きをします。
ただし、それ以外は、挙動がまったく違います。PP では周期的に動きます。SIR モデルでは、S、I、R の合計は常に一定なので、感染していない人数 S は減少していき、感染している人数 I は途中でピークに達したあと、減っていき、時間が経つと、回復した人 R だけになっていきます。
こうして、感染のモデルができあがると、これにデータを与えて、パラメータ(補助になる変数)を算定し、それによって、再現、予測をすることができるということになります。
SIR モデルは単純ですが、条件が合えば実際の感染症の流行を再現できることが知られています。
しかし、ふつうの感染症に対しては、もう少し工夫が必要です。
どのような工夫がされてきたのかは、明日に続きます。
(メディア学部 小林克正)
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