パソコンのキーボード並びの謎
2021年8月23日 (月) 投稿者: メディア技術コース
ちょっとB級な感じの映画「ガンズ・アキンボ(2019)」で主人公がパソコンに向かってネットの書き込みをする場面があります。この主人公、プログラマーという設定なのに、やたらにキーボードのタイピングの手つきがぎこちないので気になってしまいました。もう21世紀でいろいろな機器が発達していく中、まだこの“キーボードをタイピングする”という技術がすたれずに現役だというのも不思議な気がします。
スマホ慣れしている皆さんだと、文字を打つとき指をずらして文字を選択するフリック入力の方がなじみが深いでしょうか。フリックでも結構な速度で文字を入力することができますが、キーボード入力の利便性はまだまだ勝っています。
本学では1年生の前期の「情報リテラシー演習」の最後にタイピングのテストを行います。タイピングはきちんと練習すると(そして位置を覚えると)、両手の各指の打鍵の範囲がムリなく決まるため、結構早く文字を入力することができるようになります。
さて、タイピングを練習する上で、ちょっと嫌なのが、このキーボードの“キーの並び”でしょうか。キーのアルファベットの配置の仕方は、よく見ると謎が多く、覚えるまで苦労します。この一見ランダムな配置、実は最初はある規則に則った並び方だったモノが、その後に利便性を求めて変更を重ねることで、今の”よくわからない”配置になった経緯があります。
そもそもタイプライターが発明されたのは19世紀中ごろ(1800年代)ですが、商業的に量産され始めるのは、20世紀初めくらいで、タイピングの効率化(要は当時使いやすいように)を図るうちに、最終的に1882年に作られたQWERTY配列が採用されたようです。現在のパソコンのキーボードもこれに準じた配列になっています(なので、機械的なタイプライターの制約から生まれた並びが残っている所もあります)。
このキー配列の基本は上段にAEIUOの母音を配置して、残りをアルファベット順に中段は左から右に、下段は右から左に並べた形になっています。ただし、この基本形から、当時の年号である、19XXや18XXが打ちやすいように数字の8,9の近くにI(数字の1と兼用)を配置したり、モールス信号の解読結果を打鍵しやすいように、Z,S,Eを並べたり、さらに下段からTQPRYが上段にうつったり、英語だと“RE”という並びが単語によく出てくるので、並べて配置したり…、といろいろな経緯で変更が行われ、現在の並びになっています。
なので、現代のキーボードを眺めて見ると、一見ランダムな配置に見えますが、中段は左から右、下段は右から左にアルファベット順に並んでいるのが(おぼろげながら)観察できると思います。
その昔の映画「スタートレックIV 故郷への長い道(1986)」では未来から1980年代にタイムスリップしたクルーが、音声入力ではないコンピュータ(当時最新のMacintosh Plus!)のキーボードを見て「キーボードとは面白い(”Keyboard, how great””)」と意気込むような場面がありましたが、21世紀でもこの形のキーボードは長く活躍していきそうです。
参考:
https://kotobaken.jp/qa/yokuaru/qa-35/
https://www.typewriter.be/timeline.htm
(以上文責 メディア学部「情報リテラシー演習」担当 永田)
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