身近にひそむ数学(3): フィボナッチ数列と黄金比
2021年8月11日 (水) 投稿者: メディア社会コース
前回、黄金比について触れましたが、今回はそれと深い関係のあるフィボナッチ数列{Fn}についてお話しします。このフィボナッチ数列は、数々の非常に興味深い性質をもっています。黄金比との関係は最後に回すとして、まずはこのミステリアスな数列の基本について見ていきます。
その数列は、“1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,233,377,610,987,1597,2584,4181,6765,…”と続くものです。最初の20項だけ記しましたが、何か規則性が見えますか? 実は,この数列は次のような漸化式で表されます。
初項と第2項を1に設定し、それ以降の項は直前の項ともう一つ前の項の和で定めています。例えば、第4項の3は1+2(第2項+第3項)として,第7項の13は5+8(第5項+第6項)としてそれぞれ表現されていますね。この数列上に現れる数は、フィボナッチ数と呼ばれます。
そもそも、フィボナッチとは何かというと、12~13世紀にかけて活躍したイタリア人数学者の名前です。この数列の概念が最初に登場したのは、1202年に発刊されたフィボナッチ著の『算盤の書』の中です。この数学書は、彼が影響を受けたアラビア数学の内容を中心にまとめられているのですが、「ウサギの問題」という項目があり、そこにフィボナッチ数列の誕生秘話が記されています。架空のウサギの繁殖シミュレーションによるのですが、非常に面白く興味深い内容です。これについては、次回ご紹介します。
次に、フィボナッチ数列を幾何学的視点で見てみましょう。下の図は、いくつかの正方形を敷き詰めてできている長方形です。各正方形の中の斜字体の数字は、面積ではなく、その正方形の一辺の長さです。
では、どのように敷き詰められているのかというと、まず初めに一辺が1の正方形を2つ横に並べ、その上に一辺が2の正方形が並び,さらにその左に一辺が3の正方形が並び,…という規則に基づいています。この説明は厳密性を欠いていますが、図からどのように長方形が拡張していっているのかはわかると思います。この長方形をさらに拡張するのに必要な次の正方形の一辺の長さは?またその位置は? これらの質問に答えられれば、規則はおそらく理解できていることでしょう。
すでに気付いていると思いますが、次々と登場してくる正方形の一辺の長さはフィボナッチ数列を形成します。ここで、各長方形の縦横比(長辺/短辺)を考えます。最初は、一辺が1の正方形2つが並んでいる状態です。これは2/1=2です。次の一辺が2の正方形が追加された状態では、3/2=1.5となります。さらに次の一辺が5の正方形が追加された状態では、5/3≒1.666…となります。もう、おわかりですね。F(n+1)/Fnを次々に計算しているのです。最初の正方形が1つのときも含めて整理すると、次のような表ができあがります。
下段の比の値は、増減を交互に繰り返していますね。しかも、その増減の振れ幅が徐々に小さくなっていることに気付きます。実は、この比の数列は黄金比に向かっています。数学的に言えば、黄金比に収束するということす。式で表すと、次のようになります。
意外や意外、フィボナッチ数列が黄金比を特徴付けているのです。黄金比に美があったように、フィボナッチ数列にも自然美が関係しています。次回は、ウサギの問題の話とこの自然美について紹介します。
文責: メディア学部 松永 信介
(2021.08.11)
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