Zoom でプレゼンタイマーを実現する
2021年8月 5日 (木) 投稿者: メディア技術コース
渡辺です。みなさんこんにちは。このブログではしばらくご無沙汰してしまいました。
さて、今回は Zoom でプレゼンタイマーを利用する方法について説明します。先日、大学院の中間審査会が実施され、その際に私が Zoom のタイマーを担当したのですが、複数の先生から「あれってどうやるの?」という問い合わせがありました。実際にはそこそこ設定が面倒で、簡単には説明できなかったので、今回このブログを通じてやり方を記しておくことにしました。
画面共有を使えばいいのでは?
Zoom には「画面共有」という機能があり、これを使えば PC 上の画面を簡単に他の利用者に見せることができます。これを使えば簡単にプレゼンタイマーを実現できるように思えますが、これがなかなか都合が悪いのです。まず、画面共有機能は通常は1名しか行えません。この共有をプレゼンタイマーで使用してしまうと、実際の発表者が画面共有が行えなくなります。複数人が共有する設定にすることもできるのですが、このときに発表者の画面を表示していると、プレゼンタイマー側の音声が聞こえなくなってしまうんです。このように、画面共有機能の利用はかなり使い勝手としては悪いものになってしまいます。
では、画面共有ではなく、通常のカメラとマイクのかわりにプレゼンタイマーと音声を流せるようにできればと思うのですが、Zoom の標準機能だけではできないんですね。Zoom では、カメラやマイクは OS 側が「カメラ」「マイク」として認識しているデバイスしか受け付けません。
こういったことから、Zoom の中でプレゼンタイマーを快適に利用するのは中々に難しいわけです。
仮想カメラ・仮想マイクの利用
そこで、仮想カメラと仮想マイクという概念を用います。仮想カメラは「OBS Studio」というソフトウェアを、仮想マイクは「VB-Audio Virtual Cable」というソフトウェアを利用します。これらを使えば、通常のアプリケーション画面や PC の音声出力を「カメラ」や「マイク」からの入力として OS 側に流し込むことができます。
インストール
まずは、以下のソフトウェアをインストールしましょう。
OBS Studio (https://obsproject.com/ja/download)
「ダウンロードインストーラ」をクリックし、インストーラーをダウンロードして実行して下さい。
VB-AUDIO Virtual Audio Device (https://vb-audio.com/Cable/)
この中の「VBCable_Driver_Pack??.zip」という名前のインストーラーをダウンロードし、解凍して「VBCABLE_Setup_x64.exe」を実行して下さい。
Ear-Trumpet (https://www.microsoft.com/ja-jp/p/eartrumpet/9nblggh516xp)
マイクロソフトストアから入手してインストールして下さい。
OBS の初期設定
全てインストールしたら、OBS を起動してみます。OBS は、アプリケーションの画面や音声を一旦統合し、場所を再配置するなどして外部出力するためのソフトウェアです。Youtuber や VTuber のような生配信を行う際の標準的な編集ツールとなっており、聞いたことがある人も多いと思います。
OBS をはじめて起動すると、どういう使い方をするかのダイアログが出てきますが、とりあえず「仮想カメラのみ使用する」を選んで下さい。次に「ファイル」→「設定」を選んで、以下のように設定して下さい。
- 「出力」→「映像ビットレート」: 800 Kbps
- 「出力」→「エンコーダ」: ソフトウェア (x264)
- 「出力」→「音声ビットレート」: 128
- 「映像」→「基本(キャンバス)解像度」: 1920x1080
- 「映像」→「出力(スケーリング)解像度」: 1920x1080
- 「映像」→「縮小フィルタ」: バイキュービック
- 「映像」→「FPS共通値」: 30
これで初期設定は OK です。
OBS での画面取り込み
次に、OBS の仮想カメラに映す画面を取り込みます。事前にブラウザを表示しておきましょう。その後、OBSの「ソース」というウィンドウの下にある「+」記号を押し、「ウィンドウキャプチャ」を選択し、「新規作成」を選びます。すると、どのウィンドウをキャプチャするかのダイアログがでてきますので、対象のウィンドウを選んで「OK」を押して下さい。あとは、「仮想カメラ開始」ボタンを押せば、そのウィンドウが仮想カメラデバイスに出力されるようになります。
OBS 側のウィンドウキャプチャを調整すれば、表示サイズを縮小したり、逆に特定部分だけを拡大して表示することも可能ですので、色々試してみて下さい。
VB-Audio による仮想マイク
次はマイクです。まず、サウンドの出力を「CABLE Input (VB-Audio Virtual Cable)」に設定します。すると、スピーカーからは一切音声が流れなくなります。ボリュームは一旦小さめに設定しておくとよいでしょう。
Zoom の設定
ここまできたら Zoom を起動します。まず、カメラを「OBS Virtual Camera」に設定して下さい。その次に設定の「オーディオ」を開き、以下のように設定します。
- 「スピーカー」: 「システムと同じ」
- 「マイク」:「CABLE Input (VB-Audio Virtual Cable)」
- 「自動で音量を調整」: OFF
- 「背景雑音を抑制」: 低
- 「ミーティング内オプションを表示」: ON
- 「高忠実度音楽モード」: ON
- 「エコー除去」: OFF
- 「ステレオオーディオ」: OFF
これで PC 上で何か音を鳴らしたときに、Zoom のマイク側の音量計で反応があれば成功です。
EarTrumpetによる音量ミキサー
この方法で PC 側の音が Zoom のマイク音声として認識されるようになりましたが、入って欲しくない音まで入るようになってしまいます。例えば USB の接続音や、メールやメッセージの通知音なども入ってしまいます。これを抑制するため、EarTrumpet を利用します。EarTrumpet のアイコンをインジケーターから選択すると、アプリケーションごとに音量を設定できます。これを使って、ブラウザ以外の音は全て切っておきます。
プレゼンタイマーの用意
私は、プレゼンタイマーとしては Time Keeper (https://maruta.github.io/timekeeper/) をよく利用しますが、このあたりは好みで好きなページを利用してもらえれば良いですし、なんならブラウザではなくアプリでも構わないと思います。以前はプレゼンタイマー用のアプリは多く公開されていたのですが、最近はあまり多くないようですね。
まとめ
今回は、Zoom 会議に参加する PC とタイマー用 PC は別に用意することを念頭に解説を行いました。しかし、OBS を駆使すれば 1 台で会議とタイマーの両方を切り替えて使用することもできなくもないです。(個人的には、別々の PC にした方が快適だとは思いますが。) OBS を使えば様々な応用が考えられますので、色々活用してみてはどうでしょうか?
この内容、実は半年ほど前に一度ブログの記事にしようと思っていたのですが、その時期にはちょうど大学も全学的に対面授業を実施するようになり、このようなノウハウはお蔵入りするのではと思いお蔵入りにしました。しかし、今になって改めてコロナ感染が拡大してしまい、当面はまだまだ遠隔での発表の機会は増えそうです。本記事の内容が、Zoom でプレゼンを管理する人達に少しでも役立てば幸いです
(メディア学部教授 渡辺大地)
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