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身近にひそむ数学(5): フィボナッチ数列を体験して理解する?

2021年8月13日 (金) 投稿者: メディア社会コース

これまで4回に渡り、黄金比やフィボナッチ数列などについ話をしてきました。ここからの3回は、これらに関連するよもやま話をしたいと思います。今回の話はそれほど固い内容ではありません。数式も出てきませんので、ブレーク(小休憩)にちょうどよいでしょう。

さて、電車に乗るのに急いでいて、駅の階段を大股で1段飛ばし(2段で1歩)で上った経験はありませんか? ただ、階段が長いと、体力的にもたずに途中で1段になったりしますよね。

Stairs

その日の急ぎの度合いや体力によって、その上り方は違うことでしょう。例えば、20段の階段に対して、

2段・2段・2段・2段・2段・2段・1段・2段・2段・2段・1段”

という日もあれば、

2段・2段・2段・2段・2段・1段・1段・2段・1段・2段・1段・1段・1段”

という日もあるでしょう。では、毎日異なる上り方をするとした場合、何日必要でしょう? これは、数学的には「20を、12のみの和で表現するときにできる式の場合の数を求める」という問題になります。この問題はそれほど難しくはなく、高校1年で習う順列と組合せの概念だけで十分に解けます。

元の20段の階段の問題に話を戻しますが、駅で実践するのはやめておいた方がよいでしょう。というのも、問題の答えは10946日で、約30年かかるからです。先ほど数学の問題に置き換えましたが、それであれば机上計算で10分もあれば解けると思います。トライしてみてください。

ここで、短い階段階段で考えてみましょう。1段の階段(?)では、1段1歩しかないので1通りです。2段の階段の場合、“1段ずつ2歩”か“2段1歩”の2通りです。3段の階段の場合、“1段ずつ3歩”、“最初の1歩が1段で次の1歩が2段”、“最初の1歩が2段で次の1歩が1段”の3通りです。あと4段と5段の階段の場合だけ考えますが、これ以降は*歩という表現は省き、1歩ごとの段数を+の記号を使って連ねる形で表現します。4段の階段の場合、1段+1段+1段+1段、1段+1段+2段、1段+2段+1段、2段+1段+1段、2段+2段の5通りです。5段の階段の場合、1段+1段+1段+1段+1段、1段+1段+1段+2段、1段+1段+2段+1段、1段+2段+1段+1段、2段+1段+1段+1段、1段+2段+2段、2段+1段+2段、2段+2段+1段の8通りです。というわけで、元の階段の問題に照らし合わせれば、5段の階段の場合は8日間必要ということになります。もっとも、数分あればその場ですべてのパターンを試せますが…。

今一度整理すると、1段の階段では1通り、2段の階段では2通り、3段の階段では3通り、4段の階段では5通り、5段の階段では8通りとなりました。ちなみに、6段の階段では13通り、7段の階段では21通りです。……… どこかで見覚えのある数が並んでいませんか? そう!フィボナッチ数です。実は、フィボナッチ数列の第2項以降の値が、ここでは階段の上り方の場合の数になっています。一般的に記すと、n段の階段を11段か12段かで上るときの場合の数(順列)は、フィボナッチ数列の第(n1)項の値となっています。ですので、先ほどの20段の階段の問題の際に出てきた10946は、実はフィボナッチ数列の第21項の値です。フィボナッチ数列は、本当にミステリアスですね。

文責: メディア学部  松永 信介
2021.08.13

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