身近にひそむ数学(1): 白銀比(大和比)
2021年8月 9日 (月) 投稿者: メディア社会コース
数学はいまや体系化された学問ですが、その発展のきっかけは常に自然や日常の中にありました。ここからの7回の記事では、特定の比や数字を取り上げ、身近な数学に触れてもらいたいと思います。初回は、白銀比(大和比)について紹介します。
デジタル時代に入り、ペーパーレス化が進んでいますが、それでも紙の書籍(教科書、雑誌、文庫本等)に触れる機会は多くありますよね。また、授業や試験の際には、紙の配布資料があります。さて、これらの書籍や配布資料の紙サイズの縦横比について、皆さんは考えたことがありますか?
例外はありますが、日本における標準的な本や印刷用紙のサイズはA?判かB?判です。まずは、国際標準規格であるA判を取り上げます。このA判の中でも主流のA4判は、短辺が210mmで、長辺は297mmです。この比ですが、短辺:長辺≒1:√2(ルート2)です。A判の用紙では、短辺の長さがaのとき、長辺は必ずa×√2となります。これは、B判にも通ずる話です。この比が白銀比(大和比)です。白銀比には実はもう一種類あるため、それと区別する意味で大和比という別呼称を併記しています。もう一つの白銀比については、次回お話をします。
さて、なぜこの比が生まれたのでしょうか? これは、An判(n=0,1,2,3,…)を一つの等比数列モデルとして考えるのに都合がよい値(美しい値)であるからです。A判はA0(841mm×1189mm)から始まります。ちなみに、このA0判の面積はおよそ1平方メートル(1辺が1000mの正方形の面積)です。このA0を半折りにしてできるサイズがA1です。さらに、それを半折りしてA2ができ、そのA2を半折りするとA3となります。下の図で、それとなくイメージは沸きますよね。
すなわち、数列を一つ先に進む際には半折りにして切る(1/2倍)、数列を一つ戻る際には用紙を2枚並べて繋げる(2倍)、という操作がA判のサイズを規定しているのです。一応、A12まであります。
次に、B判ですが、こちらは国内規格です。A判との関係は、An判の対角線を一辺とする相似な長方形がBn判です。下の図は、A4とB4の関係です。なお、B判もB0からB12まであります。先ほど、A0判の面積が1平方メートルと記しましたが、B0判の面積はおおよそいくつでしょう? 中学生でも解けるレベルの問題です。暇なときに考えてみてください。
身近な本のサイズを確認しましょう。例外はありますが、教科書や参考書の多くはA5判、文藝春秋などの大衆雑誌はB5判、小説などの文庫本はA6判、マンガなどはB6判です。なんとなくピンときましたか?
さて、最後に、大和比と呼ばれる所以についてです。諸説ありますが、大和(現在の奈良の辺り)の地に建立された法隆寺に、白銀比がいくつか見られるというのが有力です。法隆寺の金堂の2階の台座の幅と1階の台座の幅が、ほぼ白銀比の関係にあります。また、同じ法隆寺内の五重塔の5階の屋根の幅と1階の屋根の幅も、ほぼ白銀比の関係にあります。当時はもちろん白銀比という概念はなかったわけですが、美しさを追及していったら、自ずとこの比になったのかもしれせんね。ロマンを感じます。
文責: メディア学部 松永 信介
(2021.08.09)
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