« シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その32後編 | トップページ | ACM UIST2021 »

授業紹介:「音楽入門」(1年次開講科目)での作曲【解説編】

2021年10月24日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の伊藤(謙)です。

前回の【演奏編】「Sunny Day」をお聴きになったでしょうか? 今回は【解説編】と題して、この曲の成り立ちについてご説明しましょう。

はじめに、授業内で学生に課題を出してから私が作曲・演奏し、その後、曲名が決まるまでの流れを記しましょう。

 (1)第3回授業[5月7日]:
    授業内課題「名前に含まれる音名を探そう!」(音名の抽出)
    ➡︎ドイツ語表記の音名に見なせるアルファベットを自身の名前から抽出し、
     その文字と個数を回答・提出(177名)。
 (2)第5回授業[5月21日]:
    授業内課題「名前に含まれる音名」で作られる音列を選ぼう!(音列の投票)
    ➡︎一覧表に示された177名の回答(音名の並び・個数)を見て、
     作曲に使ってほしいと思う音列を選択[複数可]。
 (3)第6回授業[5月28日]:
    前回の授業内課題で得票数が多かった5つの音列を紹介。
    (各音列の得票数の発表)

    ➡︎177名の中で得票数が特に多かった5つの音列をピアノを弾きながら紹介。
 (4)第7回授業[6月4日]:
    得票数の一覧表と音列の楽譜の配布。(作曲に用いる音列の確定)
    ➡︎177名全員の得票数・得票率を一覧に示し、5つの音列を楽譜化。
     各音列を使ったメロディとハーモニーの一例を紹介。
 (5)作曲[7月23日〜25日]:
    各音列によるメロディとハーモニーおよび楽曲構成を確定させ
    楽譜(手書き)を作成。
(楽曲完成)
 (6)第14回授業[7月30日]:
    作品発表/授業内課題「名前に含まれる音名」で作られた曲の
    タイトルを考えてください!(演奏/曲名の考案)
    ➡︎メディアホールのステージで演奏。演奏後に楽曲解説/
     曲を聴いた印象を踏まえて曲名を各自で考案・提出(148名)。
 (7)曲名決定の発表/楽譜公開[9月19日]:
    ➡︎148名それぞれが考案した曲名および考案理由を一覧にまとめ、
     その中から伊藤が検討した結果、「Sunny Day」が
     曲名に決定したことを発表。曲名が記載された楽譜を公開。


今回の曲に用いられている「5つの音列」(※そのうちの1つは「休符」)と、それぞれの音列から作られたフレーズを以下にまとめました。
Sunny-day__
何となく予想はしていましたが、音名数が10個と最も多い【音名②】が49名の投票を得て第1位となり、全く音名を含まない【音名⑤】も第3位に入りました。【音名②】はご覧の通りEs(ミ♭)とA(ラ)を中心として似た動きが多く、和音づけにかなり苦労しました。無音となる【音名⑤】もどのように扱うか非常に悩みました。試行錯誤の末、【音名④】のフレーズを分断する休符としての役割を持たせることでその存在をアピールできたかと思いますが、皆さんは聴いていかがでしょうか? 曲の冒頭で【音名①】【音名②】の順で現れたフレーズが、Endingでは逆に【音名②】【音名①】の順で組み合わさり、最後は【音名①】のAの音で締め括られるアーチ的な構成に仕上げられたのは、個人的に気に入っている点です。

曲全体の構成は以下の通りです。
Sunny-day_
このように全体は「A(急)-B(緩)-A'(急) 」の大きく3つの部分から成ります。Bの部分はテンポが遅くなるだけでなく調性も変わり、それまでの明るい曲調から雰囲気が一変します。各音列がどのようなフレーズやメロディになっているかだけでなく、そうした曲調の移り変わりも感じながら聴いていただければと思います。

過去の「音楽入門」のブログ記事では音名に関する詳しい説明を行っていますので、興味のある方はそちらもご覧ください。

 ■音名のはなし【その1】:
  「ドレミ」は何語?[2014年8月19日]
 ■音名のはなし【その2】:
  Aが「アー」でEが「エー」?[2014年8月21日]
 ■音名のはなし【その3】:
  人の名前から音楽をつくるって?[2014年8月26日]【音源あり】
 ■音名のはなし【その4】:
  人の名前から音楽をつくってみました[2014年8月27日]【音源あり】
 人の名前から音楽をつくってみました(その2)[2020年8月30日]【動画あり】


私は、この後期は講義科目の「音楽創作論」と演習科目の「作曲演習」を担当しています。どちらの授業もメロディにおける「モティーフ(動機)」を手がかりに、そこからいかに楽曲が作られているか、あるいは楽曲を作るかを学生と一緒に毎回考えています。特に「音楽創作論」では「音楽入門」と同様、毎年、学生にアイデアを出してもらい、それをもとに作曲を行っています。

それらの授業の報告もどうぞお楽しみに!


(メディア学部 伊藤 謙一郎)

コンテンツ」カテゴリの記事

授業紹介」カテゴリの記事

高校生向け」カテゴリの記事

« シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その32後編 | トップページ | ACM UIST2021 »