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シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その32後編

2021年10月23日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品の32本目「ラストサムライ」について、どこに注目すべきか述べていきます。

今回取り上げる「ラストサムライ」は2003年に公開された、アメリカの歴史スペクタクル映画です。アメリカの映画ですが、モチーフは日本の明治維新まもない頃が舞台で、旧武士たちが政府に反旗を翻した西南戦争を思わせる内容になっています。面白おかしく取り上げられやすい海外の「サムライ」とは異なり、かなりシリアスに「武士道」をテーマとして取り扱っていることでも話題となった作品です。

この作品でシナリオライターとして注目すべき点はどこかといえば、それは「世界観設定の扱い方」です。

冒頭でも軽く触れましたが、海外の映画において日本の「サムライ」「ニンジャ」はとても人気があり、いろいろな形で登場してきます。その多くは、ヒロイックなもので、超能力や人間離れした身体能力をもつキャラクターとして描かれ、特にニンジャの扱う「忍術」は、炎や水や電気を操ることもあり、もはや魔法といってもいい強力な技になっていたりします。

日本人から見ると、こういった要素はとても違和感のある光景に見えたりするのですが、逆に日本人が似たようなことをしているジャンルがあります。剣や魔法やドラゴンが大活躍する世界観設定をもつ「西洋ファンタジー作品」の分野です。映画よりもマンガやゲーム、最近だとライトノベルでよく見受けられるでしょうか。

企画書の段階で、作品のおおまかな設定として「中世ヨーロッパで、騎士道を重んじる主人公が・・・」という説明の書き出しをよく見ます。ただ、実際の中世ヨーロッパについて調べると、前述した「剣や魔法やドラゴン」が登場する作品のキャラクターたちに近い外見を持った人々が登場する時代はもっと後の時代です。しかしながら魔法や武器が物語や伝承で取り上げられている時代としては間違っているわけでもなく、わりとちぐはぐな設定をしているということになります。

海外の作品で、時代と場所をかまわず登場して大暴れするニンジャを見た日本人が思わず笑ってしまうような感覚を、おそらくヨーロッパの方々は日本の「西洋ファンタジー」作品から感じていることでしょう。

少し話がそれましたが、シナリオライターとしては、そういった設定情報が史実や事実と合致しているかどうかは、いちばん大事なことではありません。もしかすると2番目くらいには大事かもしれませんが、それより大事なことがあるのです。

まずなにより大事なことは「その世界観設定を用いて何を伝えたいのか」を明確にすることです。

ニンジャやサムライが大好きになった人には、ニンジャやサムライが大好きになったきっかけの作品があり、「剣や魔法やドラゴン」が大好きになった人には、「剣や魔法やドラゴン」が大好きになったきっかけの作品があるはずで、それらの作品は何の意味もなくニンジャ、サムライ、剣、魔法、ドラゴンが出ていただけでは無いはずなのです。それらの設定を用いることでしか伝わらないテーマやメッセージがあったはずです。そしてそれがあったからこそ、ニンジャ、サムライ、剣、魔法、ドラゴンが大好きになったはずなのです。

「ラストサムライ」は「武士道」の考え方を伝える目的でサムライを世界観の設定に組み込んでいます。「武士道をテーマにしたシナリオを書くぞ」というハッキリとした目的でサムライを出しているので、海外でよくみるような「とにかく強い」「とにかくカッコいい」という、一般的なイメージだけで設定が作られていないことがよくわかります。(余談ですが、この作品において「ニンジャ」にはそういった意図が無いので、わりとステレオタイプなニンジャが登場します。)

シナリオを執筆する上で、最初のきっかけはとても大事なので、「ニンジャを大活躍させたい」や「剣と魔法の世界を描きたい」というきっかけから書き始めることも、なんら問題の無いことです。しかし、結局はそれらを用いて、そのシナリオは何を伝えたいのか、問われることになります。

シナリオライターとしては「ラストサムライ」から、世界観設定に「何を伝えたいのか」を乗せる術を学びたいところです。

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