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第8回シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点(あな)

2021年11月14日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

今回も「シナリオ執筆未習熟者の作品に共通して発生する欠点」として、定期的に私が何度も遭遇してきた「シナリオの欠点(あな)」について書いていこうと思います。今回取り上げるトピックは・・・

「実現したいシーンを先行して書いたシナリオの欠点(あな)」です。

シナリオは映像コンテンツの設計図にするため書かれる文章ですので「はじめ」と「おわり」が当然あります。「おわり」を考えずに書き始めて欠点(あな)だらけのシナリオになってしまう問題については、以前このブログに書きましたが、かといって必ず「はじめ」から書き始めなければならないルールはありません。

シナリオライターの笑えない笑い話に「真っ白な原稿用紙が怖い」という”ホワイトショック”なる俗説があるくらい、シナリオを一文字も何も書いていない状態というのは書き出すことに対して躊躇いが生じやすい状態なので、とにかく書けそうなところからシナリオを書くことは大事です。

大事ですが、気をつけなければならないことはあります。きちんとシナリオ全体のストーリーを把握して、執筆したいと思った箇所がどこで、前後関係がおかしくならないか、よく確認することです。

「そんなことは当たり前だ」と思われるかもしれませんが、「はじめ」から書き始めなかった場合、先行して書いた部分はよく問題になります。

書けそうなところから書く、ということは少なからず他のシーンよりも思いついている内容と情報が多いということであり、ライターによってはそのシーンにおけるアクションやセリフに、かねてより思い入れがある部分だったりします。

その気持ちはとても大事なのですが、シナリオはそこだけ気持ちをこめて記述しても映像コンテンツの設計図として機能しません。前述したように「はじめ」から「おわり」までの流れを絶やすことなく示してこそシナリオの存在意義はあります。

以前、私は「シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その19」で、映画「カサブランカ」を取り上げ、こんな一節を書きました。

http://blog.media.teu.ac.jp/2021/03/post-c7c78e.html

『アイディアとしてはオリジナリティのあるセリフだったとしても、いきなりなんの脈絡もなくそういったセリフを登場人物に言わせてしまうと、違和感を与えたり、「クサいセリフだ」と思われたりして、効果的に機能しません。名作と呼ばれる映画のシナリオには、名ゼリフがつきものですが、セリフ単体を考案して執筆しても、決して名ゼリフとしては認識されないものです。』

このときは、特に「セリフ」について指摘をしましたが、決してセリフ単体ではなく、言葉と行動の両面で構成されるシーンの内容、そしてそのシーンに繋がる前後のシーン関係を常に意識して、シナリオライターはシナリオを書く必要があります。

シナリオはどこから書いても良いですし、書けるところから書くべきですが、書きたいところだけ書けばいいというわけではないので、せっかく思い入れがあるシーンであればなおさらシナリオの欠点(あな)として認識されないよう、気をつけて執筆したいものです。

 

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