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2021年12月

この1年を振り返り

2021年12月31日 (金) 投稿者: メディア技術コース

皆さん、こんにちは。

今日は大みそかです。いつもこのブログを見ていただいている方、ありがとうございます。私は学部を代表するような立場ではありませんが、たまたま本日の記事を書いているので、メディア学部のこの1年を勝手に振り返ってみたいと思います。

2021年は新型コロナウィルス感染症のいわゆる第3波の中スタートし、東京都は1月7日には2回目の緊急事態宣言が出され結果的に3月半ば過ぎまで続きました。2020年の後期には少し状況が落ち着き対面授業も一部再開されていましたが、年明けの学期末にこの状態となり、予定していた対面期末試験も一部はレポートに切替えとなったり、卒業研究や大学院の最終発表会等もオンライン化されました。3月の学会シーズンも多くの学会発表会がオンライン開催となりました。

幸い4月には2021年度新入生を無事対面で迎え入れることができ、良いスタートが切れたと思ったのもつかの間、ゴールデンウィーク前には再び状況が悪化し3回目の緊急事態宣言となりました。それでも2020年度とは違い、新年度を対面で始められたことは、特に新入生にとって重要だったと思います。開講スケジュールが変更になり連休明けから6月末まではメディア学部はオンライン授業主体になりました。東京はいったん解除となったのち7月半ばには4回目の緊急事態宣言となりましたが、6月末から再開された対面授業主体の方針のまま期末試験まで走り抜けました。

夏の東京は緊急事態宣言が解除されないままオリンピックが開催されました。ワクチン接種が始まり、さまざまな社会活動も感染防止対策を徹底して行われ、徐々に落ち着きを取り戻してきました。本学でも職域接種を行いました。オープンキャンパスは高校生の皆さんをキャンパスに受け入れて実施するのは1度だけとなりましたが、教職員と在学生の皆さんが協力して、リアルタイムオンラインでのオープンキャンパスを数回実施しました。総合型選抜などの年内入試の面接も対面で実施できました。また、オンライン主体でしたが、学会発表も活発に行われ、AnimeJapanや東京ゲームショウへの出展なども従来通りおこないました。

後期の授業は9月末まで延長された緊急事態宣言の影響で最初の3週間がオンライン主体でしたが、10月18日以降は対面主体の授業となりました。八王子キャンパスは職域接種の2回目が後期授業開始直後となったため、副反応対応で臨時休校が2日あり、またも開講スケジュールが変更となりましたが、幸い、台風等による休講が無かったことで、おおむね、順調に授業ができてこの年末を迎えています。

この2年間、このブログでもたびたび紹介されているように、メディア学部ではオンライン授業への対応で先生方が様々な工夫を凝らされ、結果としてスキルも鍛えられました。今年は対面授業が可能となってもオンライン授業を同時に行うハイフレックス対応や、対面授業の録画を後から公開するなどの対応を自主的にしている先生方もいらっしゃいます。演習授業に関しても、様々なテーマで独自の工夫で教育効果を上げてきました。研究活動や研究指導についてもオンラインのメリットも分かってきました。メディア学部では教員の会議もハイフレックスや一部はオンラインです。

今後の大学の姿は大きく変わっていくことは間違いありません。オンラインでもかなりのことができ、効果もあることが分かった一方、対面でなければ難しいこともいろいろわかってきました。教員も学生の皆さんも両方を体験して、それぞれのメリットが何かわかっています。これまでのノウハウを活用し、一層効果を高めながら、効果的な教育・研究を進めていきたいと思います。また、オンラインで学生生活をスタートせざるを得なかった現2年生には特にきめ細かい対応が必要と考えています。来年は3年生になり、それぞれの専門分野を定め進路のことを考える大切な時期です。これまでの支援が十分であったか自問していますが、これからできることに目を向け支援していきたいと思います。

(メディア学部 寺澤卓也)

先端メディアゼミナールの学生さんの研究発表その3: 研究内容

2021年12月30日 (木) 投稿者: メディア技術コース

文責:榎本

 

橋本さんの発表が時間通りに始まります。あんなに来なかったのが嘘のように、冷静に発表しています。

私の居室に来てもらったので、発表の様子を後ろで聞いているという状態です。発表はとても素晴らしく、落ち着いた口調なのに着々と話すべきことを話しています。さて、少しだけその発表の内容をご紹介しましょう。

 

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みなさんも大勢で話しているとき(例えば飲み会とか)、会話のグループがいくつかに分かれることがありますよね。これを専門用語で「分裂」と言います。

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橋本さんが着目したのは、何きっかけで分裂が起こるのか?そして何きっかけでもとに戻るのかです。後者については全く研究がないので、完全なオリジナルです。「統合」と名付けます。

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分裂の事例を分析していくと、その共通点として、分裂を引き起こす人(S)がある聞き手(H)を違うグループに巻き込むために、Hに質問して答える義務を生じさせる、今の質問はあなた(H)に向けたものですよというのを視線や身体の向きで明示する、という2点がありました。つまり、確実に分裂につきあってくれるようSが発話をデザインしているということです。

 

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統合の事例の共通点としては、何か分裂中に話していたことが終わって新たな会話の流れができるときに生じるという点がありました。

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つまりは、分裂も統合もそれを開始する話し手が、分裂したり統合したりするように発話をデザインしているのだ、ということが言えます。

まだ2年生とは思えない、オリジナリティ溢れる、そして研究分野に新たな知見を打ち立てる内容でした。

オーディエンスの先生方からもたくさんお褒めの言葉をいただきました。

 

発表風景は以下です。

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先端メディアという授業は1年生や2年生のうちに、その先生の専門の研究を始めるという制度です。卒研(4年生)から始めると残り1年しかないわけですが、先端で1年後期から始めると残り3年半とかあるわけです。是非、みなさんも先端の授業が受けれるように頑張ってくださいね。

先端メディアゼミナールの学生さんの研究発表その2: 橋本さんが居ない!

2021年12月29日 (水) 投稿者: メディア技術コース

文責:榎本

 

先日こちらの先端メディアゼミナールの橋本さんという2年生の学生が今日のお昼すぎに研究会で発表します!という記事を書きました。

 

当日の続きです。

橋本さんの発表するセッションは13:50-15:05までで3件の発表があります。橋本さんは2番目なので、14:15-14:40ということになります。

オンライン開催でしたので、セッション開始時に3人の発表者がそれぞれ機材チェックをする(画面共有できるか、音声は出ているかなど)という時間があります。前の方がテスト終えられて、次は橋本さんの番です。司会者の方が「橋本さんお願いします」と言えども、橋本さんから反応がありません。あれ、ログインすらしてないぞ、と。開始時間については事前に確認していて、この日は授業を休んで参加してくれるとのことで、居ないはずはないんですが、居ないのです。慌てて、私もマイクをオンにして「LINEで本人に連絡します!先に進めててください!」と言いました。セッション頭に機材チェックがあるって知らされてなかったのか?私も言わなかったしな。。。

 

榎本:今どこ?

橋本:図書館です。

榎本:早く研究棟にきて〜!

 

橋本:どこか空いている教室はありませんか?

榎本:いや、卒研室から接続するはずじゃ?

橋本:なんか卒研室で先輩が実験をはじめて、1時間で終わるからと言われたのですが、まだ終わらないみたいです

(この時点で14:00ぐらいでした。)

榎本:急いで私の居室に来て〜!!!

(しばし待つ)

(14:10ぐらいに橋本さんやってくる)

榎本:急いでネットに接続して。パスワードはこれ。

橋本:何か大学のネットワークに繋がってますね。

榎本:良かった。じゃじゃじゃ速く研究会サイトに入って〜!

橋本:入りました。

(14:12ぐらい)

 

いや、ギリギリすぎるやろ〜。


何が起こっていたのか解説しましょう。

わたしと橋本さんの事前の打ち合わせでは、卒研室はいつも空いているから、時間になったらそこから接続して話してもらえばいいねということになっていました。
あまり対面にならないように私は自分の居室から接続するからと。

で、13:00頃に橋本さんが卒研室で待機していると、4年生の先輩がやってきてこれから会話実験をすると。
なので、その間席をはずしてほしいと言われたそうです。1時間で終わるからと。

1時間ということは14:00には終わるということです。それなら発表時間の14:15-14:40には間に合うので、席を外して、図書館で待つことにしたそうです。いや、図書館は歩いて10分以上かかるんですけどね。

で、13:50の機材チェックのときにはログインせずに図書館で待機していたと。そこに私からLINEが来たわけです。

榎本:今どこ?

橋本:図書館です。

私としてはそれまでの事情がわからないので、「え〜どうしてそんな所にいるの〜?図書館じゃネットは入っても話せないじゃん!」と思うわけです。

 

研究棟にもどってきた橋本さんは、まだ先輩の実験が終わっていないことを確認します。

橋本:どこか空いている教室はありませんか?

と。

 

いやぁ、冷や汗をかきました。

学生にお勧めする本展(工科大図書館)

2021年12月28日 (火) 投稿者: メディア技術コース

文責:榎本

 

2021年12月20日より、工科大図書館で「学生にお勧めする本展」を開催中します。(2022年1月31日まで)

https://www.teu.ac.jp/lib/4259/osusumehon_2021.html

ダウンロード - e69cace5b1952.pdf

 

その中で、私がお勧めしているのは以下の5点です。

 

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No. 書名 著者名 出版社 ISBN 定価
1 会話分析基本論文集 西坂仰 訳 世界思想社
978-4-7907-1501-6
 
書評 会話分析の創設者Sacksらの難解な英語論文の翻訳集
2 講座日本語コーパス 3 話し言葉コーパス 設計と構築 小磯花絵 編 朝倉書店
978-4-254-51603-6
 
書評 日本語話し言葉コーパス(CSJ)の集大成
3 基礎からわかる会話コミュニケーションの分析法 高梨克也 ナカニシヤ書店
978-4-7795-1073-1
 
書評 会話研究を始めるための初歩を網羅的に紹介
4 発話の権限 定延利之 編 ひつじ書房 978-4-89476-983-0  
書評 言語学者の大御所である定延氏が編著している最新刊
5 新敬語「マジヤバイっす」社会言語学の視点から 中村桃子 白澤社
978-4-7684-7979-7
 
書評 言語学者の観点から、若者言葉「マジヤバイっす」に含まれる親密さと丁寧さの共存を解説した書籍。自分たちの利用する言葉の意味を改めて考える機会になる

 

私が選書して、図書館が購入してくれるというシステムです。ですので、皆さんは図書館に行けば借りられます。

 

今回、特に強調したいのは1版の「会話分析基本論文集」です。社会学の一派である会話分析という分野があるのですが、その創始者であるSacks, Jefferson, Schegloff という3人が共著で書いた、伝説的な論文2本の日本語訳が収録されています。翻訳したのは、日本の会話分析の大家である西阪仰先生(千葉大)です。発刊は2010年で、これが売り出された当初、大学院生であった私は狂喜して本屋に走りました。なぜかというと、Sacksたちの英語が高尚すぎて難解すぎて、読むのに膨大な時間を要していたからです。さらに、日本語の論文に引用するのに、訳そうとするとさらなる甚大な時間がかかっていました。それが、西坂先生の訳で読めて引用できるわけです。

ちなみに、収録されているのは以下の2本です。

Harvey H. Sacks, Emanuel A. Schegloff and Gail Jefferson(1974). `A simplest systematics for the organization of turn-taking for conversation(会話のための順番交替ー最も単純な体系的記述).' Language, 50(4), 696-735.

 

Emanuel A. Schegloff, Gail Jefferson and HarveySacks(1977). `The preference for self-correction in the organization of repair in conversation(会話における修復の装置ー自己訂正の優先性).' Language, 53(2), 361-382. 

この書籍の定価は2,530円です。

https://sekaishisosha.jp/book/b353891.html

 

で、図書館で購入してもらおうとしたところ、情報サービス課(図書館)の千手さんという方から連絡がありまして、「絶版」(売り切れ)で購入できませんと。Amazonで調べたところ、

https://www.amazon.co.jp/%E4%BC%9A%E8%A9%B1%E5%88%86%E6%9E%90%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E8%AB%96%E9%9B%86%E2%80%95%E9%A0%86%E7%95%AA%E4%BA%A4%E6%9B%BF%E3%81%A8%E4%BF%AE%E5%BE%A9%E3%81%AE%E7%B5%84%E7%B9%94-%E4%B8%96%E7%95%8C%E6%80%9D%E6%83%B3%E3%82%BC%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%83%AB-H-%E3%82%B5%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9/dp/4790715019/ref=sr_1_13?qid=1639713853&s=books&sr=1-13

Amazon

中古で、最安値で24,650円、高値だと81,331円のプレ値がついてます。

これは買えないとのこと、では諦めましょうという話になりました。

 

ところが数日後また千手さんから連絡が来て、「実は所蔵しておりました」と。

なぬ〜!

「展示いたします」と。

うちの研究室ではよく卒研生に引用してもらっていて、絶版前に図書館で買ってもらっていたんですね。

 

ということでね、工科大の皆さん、

「学生にお勧めする本展」是非見に行ってください。

 

 

 

RGB範囲外の色を人工的に再現することは可能でしょうか?

2021年12月27日 (月) 投稿者: メディア技術コース

 RGBの三つの数値(光の三原色の強さ)は、コンピュータのディスプレイで表示する画像の各画素の色を指定するのに使います。数値の範囲は[0,255]の整数ですが、計算時には[0,1]の範囲の実数と想定する場合もあります。
 
 標題の質問は、メディア学部2年生向け講義「CG数理の基礎」での「色の表現」の授業回で履修生から出されたものです。結論から言うとその答えはYesです。
 
 RGBの値は特定のディスプレイが再現できる色です。ということは、ディスプレイ以外の光源であればその範囲外の色が出せる場合があります。もっとも典型的な例はレーザー光です。ほぼ単波長の光と言ってよい、純度の高い特定の1色が出せます。
 
 レーザー光と違い、液晶ディスプレイの光源である蛍光灯やLEDは多くの波長が含まれた光です。そのような光源からRGBを取り出すカラーフィルタは、絞り込んではいるもののやはり多くの波長を通す特性があります。結果的に、ディスプレイが再現できるRGBの範囲はレーザー光を含むことができません。
 
 図に示すxy色度図は、RGB範囲外の色も含め物理的に存在する可視光のすべての色の種類を含む模式図です。もちろん、ディスプレイに描いたxy色度図が本当にすべての色を表示しているわけではないです。だから模式図と呼びました。
 
 Xy
 
 RGBが再現できる色の種類は色度図の中の三角形で示される範囲(sRGBという標準)に限られます。レーザー光のような純粋な単波長の色は色度図の曲線輪郭部分(逆v字型)のスペクトル軌跡と呼ばれる線上に対応する色となります(波長の数値が小さく付してあります。単位nm)。各色がもっとも鮮やかになる部分です。内部に入るほど多くの波長が混じり合い、中央部は多くの色が混じった白となっています。
 
 ということはレーザー光をディスプレイのRGB光源として使えばかなり広い範囲の色を再現できそうですね。検索してみると確かに研究開発事例がありました。
 
[新倉栄二, 2016, RGBレーザーバックライト液晶ディスプレイ, ITUジャーナル, 46(2), 32-35.]
 
 タイトルで検索すればPDFが入手できます。この論文では色度図としてxy色度図ではなく、CIE1976 UCS色度図というのを使って説明しています(下図)。色度図上のどの場所でも距離の違いが人間の感じる色の違いに近い色度図です。
 
 Niikura2016rgblaserbacklight
  上記文献[新倉2016]より引用

 BT.709で示した三角形が前のxy色度図のsRGBの範囲に相当します。この研究で実現したレーザー光を使ったRGB(RGB LD Backlit)がより豊かな色を再現できていることがわかります。BT.2020というのがこのような高色域のRGBの世界標準として定められていて、これに準拠したディスプレイはこの研究以外でも開発されています。
 
 とはいえ、RGBの3原色でディスプレイの色を表現する限りは色度図の全部をカバーすることはできません。純粋なレーザー光(スペクトル軌跡)はほぼすべてRGBの範囲外にあるということになります。
 
メディア学部 柿本正憲

卒業生の活躍とメディア学部のカリキュラム(表現と技術を駆使して『劇場版 呪術廻戦 0』のCGを統括するCGディレクター)

2021年12月26日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の三上です.

今日は公開から早くも興行収入100億越えの評価を受ける『劇場版 呪術廻戦 0』でCGディレクターという要職で活躍する私の研究室の卒業生「木村謙太郎」氏の話をしたいと思います.

このCGディレクターという仕事は作品におけるCGの統括をする仕事です.作品によって,3DCG監督,CG監督,CGチーフなど様々な呼び名で呼ばれます.監督が作品全体の統括をする立場とすると,CGに関連する領域を監督をサポートしながら統括するという大変重要な仕事です.最近のアニメ作品はCGなしでは成立することは困難です.そのCG表現を一手に引き受け監督と2人3脚で表現していく仕事は,メディア学部の教育の集大成でもあり,実にメディア学部らしい仕事といえます.

大学で学部を作るときに大事とされる3つのポリシー「アドミッションポリシー」(入学者選抜,求める入学者像),「カリキュラムポリシー」(教育の指針),「ディプロマポリシー」(卒業要件,卒業時に求める力)があります.それらを作るときに,ディジタル技術を用いた映像制作におけるプロデューサーやディレクターなど,統括する役職を生み出すことを念頭に議論が進みましたので,まさにそれが具現化された形です.

プロデューサーやディレクターは経験職であり,コンテンツ業界に就職したうえで,さらに経験を積み,周囲の信頼を得てようやくたどり着く役職です.メディア学部のOBでは,劇場公開作品『劇場版 誰が為のアルケミスト』のプロデューサーの木村将人氏や『ガールズ&パンツァー』の劇場版やTVシリーズの3監督の柳野啓一郎氏,劇場版『スタードライバー THE MOVIE』のCGI監督の太田光希氏,『君の名は。』『天気の子』,といった新海誠監督作品の3Dチーフを務める竹内良貴氏などが活躍しています.(ほかにもたくさん活躍している人がいます)

CGディレクターという仕事は,CGに関する表現はもちろん,新しい技術の探求やそれを作品に利用する際の検証などの技術的側面,そしてチームを統括しながら監督や他の部門との調整を図るコミュニケーション力と,まさにメディア学部の各コースの能力が終結したようなスキルが要求される仕事です.メディア学部の学びをある意味具現化してくれる卒業生が数多く生まれていることは大変喜ばしいことですし,元祖メディア学部が今でも最前線のメディア学部であることの証でもあります.

さて,木村君ですが,学部時代からチームでの映像制作やゲーム制作などを通じ作品制作のスキルを高めてきました.作品制作のスキルもさることながら,卒業研究の成果も映像表現・芸術科学フォーラムという学会で「トラックアップに対応した散点透視図法の3DCG表現の提案 」として発表しています.CGは空間を正確に描写しますが,絵画などでは消失点が複数ある複雑なパースを作成して制作することがあります.このような映像をCGで作り出しただけでなく,カメラの動きに対しても破綻なく表現する手法を開発しています.表現と技術の融合によってなせる研究です.

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このようにメディア学部では,コンテンツを作るだけでなく,その表現を高度化するための技術,そしてその技術を多くのスタッフが結集する実際の作品において円滑に実現するためのマネージメント力を手に入れることができます.専門学校や美術大学,理工系大学では学べないこの広がりが重要です.

これこそが東京工科大学メディア学部が数あるメディア学部の中で元祖でもありつつ20年以上も先進し続け,多くの人材を生み出している理由だと思います.

よりリアルなロードバイク(競技用自転車)体験を目指したVR研究【WISS2021 学会発表】

2021年12月25日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部三上です.

今日は大学院在籍中の学生渡邊拓人君がWISS2021(第29回インタラクティブシステムとソフトウェアに関するワークショップ)においてデモ発表した,「競技自転車ゲームにおける操作・知覚提示に関する研究について紹介します.

コロナ禍で多くの学会がオンラインで開催される中,インタラクティブなテクノロジーの発表のために,万全の感染症対策を施し,人数を限定し対面とオンラインのハイブリッド開催にて実施されました.

この研究は,ロードバイクのVRコンテンツの試作版を体験した渡邊が感じた課題(違和感)を解決するために,よりリアリティにこだわった体験システムを開発したいという欲求からスタートしました.(ちなみに渡邊君は自転車屋でバイトする自転車好きで,私も3年ほど前から自転車が趣味に加わりました)

ハイスピードで疾走するロードバイクは,コーナリングの際にハンドルを切るのではなく,ロードバイクや体を傾けながらバランスをとって曲がります.そして,その傾け方ですが,ロードバイクと体を一体的に傾けることもできますし,体だけは起こしてロードバイクを倒すなど様々な倒し方ができます.このような体やバイクの傾きなどをコンテンツに反映させたり,プレイヤーにきちんと知覚させたりすることに課題があるため,新しいデバイスの開発をしようということになりました.

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そもそも,実際の走行中と同じようにロードバイクを傾けたり戻したりすればいいのですが,そのためには大変大きな力が必要になり,テーマパークや大規模なアミューズメント施設でしか利用できません.また,安全性の配慮も課題になります.そこで,渡邊君はハンドルを車体と独立させてハンドルだけを傾けることで,プレイヤーは傾きを感じるのではないかと考えて装置と連動するシステム(とそのコンテンツ)を開発しました.

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開発したシステムは安全性も考慮し鉄パイプで周りを固めました(それでもまだ強度が足りなかったので改良中).
参加者は普段ロードバイクを乗らない方から,競技用自転車の経験者まで様々な方がおり,興味を持って体験してくれました.

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いろいろなフィードバックを得ることができたので,これからどんどん改良していきます.

 

二年目のオンライン開催となった「東京ゲームショウ2021」

2021年12月24日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の三上です.

少し間が空いてしまいましたが,9月30日から10月3日にかけて,「東京ゲームショウ2021」が開催されていました.コロナ禍で昨年に引き続きオンラインでの開催となった今年のTGSですが,学生たちは先輩の経験をうまく生かし早くからオンラインでの情報発信を見据えて準備をしてきました.

まずは東京工科大学全体とそれぞれのチームが各作品のTwitter アカウントを作り情報発信を始めました.

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各作品のTwitterはこちらです

Four Legs Chiken

Mischief Mystic

Gravarior

餅っ兎!らびべんちゃぁ!

Cyber++

Re:mover

コトバシーン!!!

そして,開発の期間中や追い込みの段階では,Discordというグループウェアを使って,メンバーがチャットしたり画面共有したりしながら開発を行いました.普段ならキャンパスにみんな集まって,直前のテストプレイやレビューを行うのですが,遠隔でのテストプレイとフィードバックを行いました.ギリギリにはなりましたが何とかTGS2021開催日までには各チームの作品が出そろいました.

これらの作品を発表する場として,昨年に引き続きバーチャルSNSのClusterというサービスを利用しました.

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東京ゲームショウ開発期間中にはこのCluster 内で実施したイベントを企画し,その様子を特別番組としてYouTube Live!を通じて配信していました.こちらの番組はアーカイブされていますので今でも市長が可能です.

TGS2021はバーチャル開催になってしまいましたが,その後「デジゲー博」というイベントに,Four Legs Chikenのチームが出展しました.

また,ちょうど直後に応募可能であったコンテスト「ゲームクリエイター甲子園2021」に作品を投稿しました.結果は各作品の紹介と合わせて別の機会に紹介したいと思います.

 

海外提携校と取り組んだ「GAMELABプロジェクト」

2021年12月23日 (木) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の三上です

コンテンツ分野は東京工科大学の中でも特に海外の大学との提携の多い分野です.その中でもゲームやアニメといった日本の特徴が大きく出ている分野は海外の大学から注目されることも多く,様々な大学との提携が進んでいます.中には,日本から短期で開発プロジェクトのために来訪したり,先方から交換留学生として来訪したり,教員同士の交換などもあります.昨今のコロナ禍で物理的な移動が難しい状況になっていますが,逆にオンラインでの環境が整ったおかげで,遠隔での授業実施や研究相談,講演,そして共同制作など実に様々な取り組みが本格化されています.

その中でも,今回2021年1月より本格的にスタートしたプロジェクト「GAMELABプロジェクト」の集大成として,AFGS2021という学会にてその取り組みを紹介しましたので報告します.

このプロジェクトは,ポーランドのUniversity of Silesiaが中心となり,ドイツ,チェコ,ベルギー,日本,メキシコ,アメリカの7か国の大学が共同で実施しました.参加大学は以下の通りです.

Poland — Design of Games and Virtual Space at the University of Silesia in Cieszyn — project leader
Germany — Harz University of Applied Sciences
Czech Republic — University of Ostrava
Belgium — LUCA School of Arts
Japan — Tokyo University of Technology, School of Media Science
Mexico — Benemérita Universidad Autónoma de Puebla
United States — School of Art at Northern Illinois University

各大学はその大学の特性に合わせたプロジェクトを立ち上げ,そこに各大学の学生が応募して参加するというスタイルを取りました.東京工科大学には,ポーランド,チェコ,アメリカの学生が参加し,「Sci-Fi Wabi-Sabi(『わび』『さび』を意識したゲームアセット制作)」,「キャラクターメイキング」,「ゲームデザインとサウンドデザイン」の3つのチームに分かれて研究を進めました.

20211226gamelab01SciーFi Wabi-Sabi

20211226gamelab02キャラクターメイキング

20211226gamelab03

Game &Sound Design

 

教員としては,安原先生,伊藤彰教先生,川島先生,さらには2020年に退職された近藤先生にもメンターとして学生の指導をいただき実施しました.そのほか,定例の発表会には渡辺先生や太田先生にも参加いただき多くのアドバイスをいただきました.

日本から参加した学生も各国のプロジェクトにそれぞれ散らばり,主に英語でのレクチャーやワークショップを行い,作品制作や研究を進めました.また,東京工科大学でのプロジェクトに特別に参加してくれた学生もいました.

現地に行って交流が再開できるようになるのは少し先かもしれませんが,メディア学部にはこのような海外の大学と共同で実施するプロジェクトが数多くあります.手を伸ばせばそこに世界が当たり前のようにある.それが最先端を行くメディア学部のコンテンツの学びの自然な姿です.

 

専門演習「コンピュータビジュアリゼーション」:インフォグラフィックス

2021年12月22日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

 インフォグラフィックスとは、Information + Graphicsを合わせた造語で、インフォグラフと呼ばれることもあります。
その名の通り、単純なグラフィックスではなく、何らかの情報に基づいて作成されたグラフィックスです。

今日は、専門演習「コンピュータビジュアリゼーション」で作成してもらった、インフォグラフィックスの例を紹介します。

この演習では、新型コロナウイルス感染者のデータ(2020年11月30日まで)を用いて、インフォグラフィックスを作成してもらいました。

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いずれも同じデータを提供して、その中から自分が何を伝えたいのか?を考えて作成してもらいました。
同じデータであっても、着眼点が違うので、いろいろな見方ができますね。

徐々にオミクロン変異体の感染者も報告されてきているのでなかなか気が抜けませんが、体調に気を付けて元気に年を越しましょう!

(文責:竹島)

シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その36後編

2021年12月21日 (火) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。

プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品の36本目「ターミナル」について、どこに注目すべきか述べていきます。

今回取り上げる「ターミナル」は2004年に公開されたアメリカの映画です。コメディ色が強いですが、ラブロマンスの要素も含むシナリオになっています。タイトルに有るように「空港(ターミナル)」が舞台で、アメリカ、ジョン・F・ケネディ国際空港をモチーフにしているものの、すべて新規に作られたセットである点は圧巻のリアリティがあります。

この作品でシナリオライターとして注目すべきは「場所がほぼ変化しない点」です。

前述しましたように、この映画は「空港(ターミナル)」の名の通り、基本的に主人公は空港から移動しません。ラストに主人公がニューヨークにたどり着く描写こそありますが、基本的に作中で起きる出来事はすべて空港内でのことです。

シナリオの執筆において、理論とまでは言いませんが、ノウハウ的に言われていることの一つに「縦(時間)の動きと、横(場所)の動きをテンポよく変化させる」というものがあります。観客というのは意外と飽きを感じやすいもので、一つのシーン時間が長く経過することも、場所が切り替わらないことも「飽き」の大きな要因となります。この傾向は日本よりも海外のほうが顕著で、日本では「間(ま)」として情感を抱かせたり、余韻に浸らせたりするシーンが、海外では「冗長だ」と評されたりします。

その点で「ターミナル」は、場所を変えにくい、という制限を最初から背負った作品といえるわけで、他の要素をうまくシナリオに組み込まないと、観客はすぐに飽きてしまうということになります。

もっとも、実際のところ空港というのは、それなりに広いので視覚的に変化に乏しいとは感じないのですが、それでもストーリー上「空港から出られない」という軟禁状態は窮屈で窒息感を抱かせるには十分なので、かなりのハンデがあるシナリオにならざるを得ないです。

ではそんな制約をこの映画のシナリオではどう工夫して処理しているか、というと、まずは主人公が作品全体を通して解決する中心的課題「セントラルクエスチョン」の設定が見事です。空港という舞台を先に考えたのか「母国にも帰れないしアメリカにも入国できない」を先に考えたのかは、シナリオライターに確かめるしかありませんが、少なくとも、「空港から脱出できるのか?」という問題は、観客が直感的に理解しやすいセントラルクエスチョンです。観客は何度となく「自分だったら、この危機を乗り越えられるのか?」と思うことでしょう。そう思わせることは、飽きさせないために、とても重要なことです。

そして、そのためには徹底して他の要素をサブ要素にする優先順位をつけています。そもそも常識的に考えも悪役ディクソンの対応は入国管理のプロとは思えないものですが、彼が登場人物にいることによって、常時危機的な状況が生まれ、観客は緊張感を感じることができます。とても効果的な存在です。

また、アメリアはとても魅力的なヒロインであり、主人公が鬱屈した状況に置かれ続けるなかで、前向きかつ積極的に行動するモチベーションを与えてくれる存在として、これまた効果的に機能する登場人物ですが、この作品のセントラルクエスチョンは「彼女との恋を成就させられるか?」ではないので、主人公は彼女と結ばれず、あくまで空港からの脱出に協力してくれた存在でしかありません。

他にも、主人公がセントラルクエスチョンを解決するために散りばめられた要素はたくさんあるので、ぜひ一度実「ターミナル」を見て欲しいと思います。

シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その36前編

2021年12月20日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。
今回も「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品」を紹介します。
前編とのなるこの記事は、あらすじのまとめが中心です。後編ではその内容をもとに注目すべきポイントを述べますので、そちらも読んでいただけると嬉しいです。
取り上げる映画は次のタイトルです。
『ターミナル(2004)』
<監督>
スティーヴン・スピルバーグ
<脚本>
サーシャ・ガヴァシ
ジェフ・ナサンソン
<あらすじ>
クラコウジア国から、片言の英語しか話せないまま空港に降り立った男、ビクター・ナボルスキーは到着早々、入国取締主任のフランク・ディクソンによって拘束され、ディクソンの部屋でその理由を説明される。その内容は、ビクターが渡航中にクラコウジア国でクーデターが勃発し、ビクターのビザは無効、アメリカ政府はクラウジア人の入国を認めず、クラウジア国への帰還も不可能になっている、というものだった。通訳もおらず、一方的に説明をうけたビクターは事態をまったく理解できなかったが、テレビに写った母国の戦争状態を知り、空港内から出られなくなったことは自覚できた。ビクターはやむをえず、改装待ちのゲートロビーを見つけ寝床をつくり、空港内での生活を始めた。
ビクターが空港内で生活していると真っ先に気づいた清掃員のグプタ、入国制度を理解せず毎日訪れるうちに顔見知りになった受付のドロレス、そのドロレスに惚れ込んでいる職員食配達員エンリケなど、次第にビクターは知り合いを増やしていく。さらに荷物移送用のカートを指定の返却場所に戻せば25セント戻ることに気づいたビクターは、放置されたカートをかき集めて日々の生活費を得て食いつないでいき、さらには売店の本屋で購入した本で英語を上達させていった。
これに驚いたのは入国取締のディクソンで、ビクターが空港に居座るとは思っても居なかったため、なんとか空港の責任とならないよう追い出そうと画策する。ディクソンは警備員を手薄にして空港からビクターが出ていくよう誘ったが失敗。生活費を断つべくカート回収を妨害したが、エンリケにドロレスとの仲を取り持ったお礼で食事にありついたビクターは食いつないで失敗。業を煮やしたディクソンはビクターに亡命申請をさせて移民局送りにしようとするが、ビクターに「亡命したいわけではない」ときっぱり断られて失敗。どれもうまくいかなかった。
そんなおり、ビクターは既婚者の不倫相手に振り回されて、泣き崩れていた女性アメリアと知り合う。見かねたビクターがハンカチを差し出したことがきっかけだったが、彼女はファーストクラス担当のキャビンアテンダントだった。意気投合した二人だったが、食事代を支払えないことはもちろん、空港から出られないビクターはアメリアからの食事の誘いを断るしかなかった。次に会ったときには空港内での食事に誘うべく仕事を探すビクターは、たまたま改装中のゲートロビーを(勝手に)補修しているところを勘違いされて建設作業員にスカウトされ、一転して高給取りになった。
もはや放っておけないと判断したディクソンによってビクターは拘束されるが、空港内で騒ぎを起こして立てこもった男との交渉ができる通訳がビクターしかいなかったことから、協力を要請されて開放される。おりしもディクソンは昇進の査察官を招いていたタイミングで、スムーズな解決を図ろうとしたのだが、ビクターが機転をきかせて穏便に事を収めたことで、銃すら向けさせていたディクソンは評価を落とし、逆にビクターは空港内のスタッフから英雄と評されるようになった。
ビクターはすっかり協力者となった、空港内の友人たちの協力を得ると、帰国してきたアメリアを食事に誘う。しかしその後ビクターとアメリアの関係に気づいていたディクソンは、事前に彼女を呼び出すと、ビクターの正体や素性をバラし、自分に協力するようせまっていた。不信感募るアメリアとの再会を果たしたビクターは全てを話し、自身がアメリカに来た本当の理由も話す。それは亡き父の悲願である、ジャズ演奏者のサインを得ることであり、そのために今まで空港で生き延びてきたのだった。
翌日。すでにビクターが空港で過ごしてから数ヶ月がたっていたこともあり、事態は急変。クラコウジア国内の戦争は終結を迎えた。するとアメリアは早速ビクターに1日だけの入国ビザを届けにやってきた。それでニューヨークにいるジャズ奏者の元へいくようすすめるアメリアだったが、そのビザ入手については、アメリアが不倫相手の元に戻ることによって成し遂げられたもので、ビクターは複雑な思いでビザを受け取り、彼女を見送ることになった。
いざ空港を出ようとするビクターに対し、ディクソンは空港内の友人たちを別件で罰して捕まえるぞ、と脅しをかけてきたが、最も長い付き合いとなったグプタが自ら捕まったことで、ディクソンの脅迫は明るみとなり、空港内のスタッフから不興を買い、一転してビクターは空港内のスタッフから協力を得て送り出された。
空港を出たビクターは、念願のサインを得ると、ようやく帰国の途についたのだった。
・・・次回は、この作品でシナリオライターとしてどこに注目すべきか、について述べていきます。どうぞお楽しみに。

スマホアプリ「Vocagraphy!」Android版リリースに向けて

2021年12月19日 (日) 投稿者: メディア社会コース

6月のブログで私が開発したアプリ「Vocagraphy!」がNHKで紹介されたお話をしました。その後多くの方にダウンロードして頂き、聴覚障害児だけでなく発達障害のあるお子さんの療育や、脳梗塞などで失語症になった方のリハビリに使って頂けているそうです。

前回のブログはこちらです。

スマホアプリ「Vocagraphy!」のこれから
http://blog.media.teu.ac.jp/2021/06/post-4aa01e.html

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放送後のお問い合わせでAndroid版が欲しいと言う声を沢山頂いたので、開発に協力して頂ける方を探していたところ、旧友が声をかけてくれました。現在、9割以上完成しており、年内か年明けにはリリースできそうです。これで、ようやく日本中の方に広く使って頂けるようになりますので、今後は動画による解説やワークショップなどを開催していきたいと考えています。協力して頂いている皆さまに本当に感謝します。

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ちなみに、先日娘の小学校で漢字テストがあるということで、分からない漢字を全てアプリに入れ毎日予習をしました。すると、漢字テストで見事満点をとることができました!アプリでやる一番のメリットは「楽しいこと」です。これは不思議なのですが、子どもはスマホだと喜んで取り組んでくれるんですよね。同じ勉強なんですが、楽しくなるようです。正解した時のニッコリした絵文字だけでなく、不正解の時の悲しい絵文字も自分で楽しそうに選んでいます。全てがニッコリになったら、もちろん大喜びです。

これまで「出来ない」と言われていたことが、新しいツールにより「出来る」ようになります。これからも情報技術のアップデートにより、「誰ひとり、残さない。」取り組みをしていきたいですね。

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メディア学部 吉岡 英樹

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略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在は聴覚障害支援を専門としており、メディア専門演習「聴覚障害理解とコミュニケーション支援」、聴覚障害支援メディア研究室 を担当している。


 

エンデミック移行後の大学にできること

2021年12月18日 (土) 投稿者: メディア社会コース

来年は新型コロナがパンデミックからエンデミックに移行するという話があります。ワクチンが今以上に普及し、治療薬も普及すれば、確かにあり得る話ですね。では、来年度の大学生活はどのようになるのでしょうか。

おそらく選択肢は、コロナ禍の前の状態に戻るか、コロナ禍に始めた新しいスタイルを取り入れるかの2つでしょう。コロナ禍の前に戻るのはとても簡単ではないかと思います。しかし、せっかくコロナ禍に新たなスタイルが生まれたのであれば、それらをどのように活用するかを、さらに模索していくべきではないかと考えています。

その一環として、今年からハイブリッド授業を活用することを目的とした学内プロジェクトを始めました。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

対面とオンラインの両方で行うハイブリッド授業を活用して、多様性に対応する教育の仕組みを実現したい!
https://www.teu.ac.jp/gakubu/2021.html?id=118

このプロジェクトは昨年後半から今年の始め、つまり東京に感染拡大の第3波が来ている最中に構想を練りました。この時期はコロナ禍で初めて対面と遠隔のハイブレッド・ハイフレックスによる授業が試されていた頃で、その後のワクチン摂取や治療薬が期待され始めていました。まさにエンデミック移行後の大学のあり方を想像しながら企画をしたのでした。

では、新型コロナ感染への脅威がなくなったとした場合、リアルタイムにオンラインで授業を配信する意義は何でしょう。私は以下の3点が挙げられると考えています。

・障害のある学生への配慮の一部となること

・小中高の生徒に向けて授業を配信することで学びの範囲が広がること

・いわゆる生涯学習として社会人の学び直しの場となること

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さらに、動画配信に字幕をつける意義は何でしょうか。

・聴覚障害や発達障害のある学生への情報保障になること

・障害がなくても視覚優位の学生の情報補助になること

・多言語化できるため、留学生への情報保障になる

・海外にいる他大学の学生と連携ができる

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これまで変えたくても変わらなかったことがコロナ禍には一気に変化しました。これまで思いつかなかった方法が、コロナ禍に生まれました。しかし、人間は楽な方に流される生き物で、やらなくても良いとなればすぐに元に戻るでしょう。しかし、変化することで困っている人が助かるなら、少し大変でもやるべきでしょう。変化することで新しい可能性が広がるなら、頑張って変えるべきでしょう。

エンデミック移行後に、コロナ禍に得た新たな知見を生かして、日本は良い方向に変わることができるのでしょうか。

私たち一人一人の気持ち次第だと思います。

 


メディア学部 吉岡 英樹

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略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在は聴覚障害支援を専門としており、メディア専門演習「聴覚障害理解とコミュニケーション支援」、聴覚障害支援メディア研究室 を担当している。


 

プロジェクト演習「SDGs佐渡」の本格始動!

2021年12月17日 (金) 投稿者: メディア社会コース

前期のブログでご紹介した通り、今年度からプロジェクト演習「SDGs佐渡」が始まりました。詳細はこちらのブログをご確認ください。

プロジェクト演習「SDGs佐渡」がスタート。
http://blog.media.teu.ac.jp/2021/06/post-8a6293.html

7月に佐渡の方々とオンライン交流会を実施するために、前期の授業ではSDGsや佐渡のことを学びました。Zoomで話し合ったり、感染状況が落ち着いている時は写真のように集まって話し合いをしてきました。

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写真:SDGsについて学ぶ演習の様子

感染拡大さえなければ8月下旬に佐渡へ行き、トキの保全活動について見学をしたり、ビオトープ作りのお手伝いをしたり、雑草の除去をお手伝いしたりということを考えていました。しかし、残念ながら8月はこれまで以上の感染拡大となり佐渡行きを断念しました。

9月から後期の授業が遠隔で始まりましたが、大学全体が対面授業に切り替わりました。学生を連れて佐渡を訪問できるとすると、次の長期休暇となる3月ごろです。さすがに冬は雪の影響も考えられますし、行けたとしても活動が限られてしまいます。

では、3月に佐渡に行ったとして何が出来るのか、、、、。

妄想だけしていても始まりませんから、11月初めに教員2名と希望する学生1名で急遽佐渡に行く事にしました!佐渡の岩首という集落と連携をしているのですが、私たちの提案をご快諾いただき、1泊だけの弾丸ツアーが実現したのです。私は8年前に岩首を訪問しましたが、久しぶりの棚田と海の絶景はやはり圧巻でした。言うまでもなく、海の幸やお米が美味い!早く学生を連れてきたいという思いが、一層高まりました。

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写真:11月初めに訪れた佐渡市岩首の棚田と海

夜もひたすら話をして、気づけば深夜2時。話は尽きません。Zoomで話しているのとは当然異なりますね。メディア学部の学生が何をすれば良いのかという方向はいくつか見えました。

ちなみに、「SDGs佐渡」というプロジェクト名を付けましたが、あまり深い意味は考えていませんでした。ただ、SDGsが必ず関係するだろうということと、フィールドが佐渡に決まっていたので、その2つを合わせたのです。今このようにプロジェクトが始まってみて、改めて実感していることがあります。

それは、佐渡の生活は昔ながらの習慣などが続いており持続可能である一方で、東京のような都会の暮らしは便利ではあるけど持続していると環境や自分自身への負担が大きくなってしまうということです。つまり、佐渡は持続可能、東京は持続不可能な状態であると言えます。ただし、佐渡は超高齢化社会であるため、環境はあるのに人がいなくなってしまうという課題に直面しているのです。移住する人が増えれば人口は増えるでしょうか、そう簡単なことではないでしょう。そこで、我々のような関係人口を増やすことで、大切にその環境を継続できるような活動につながると良いと感じています。

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写真:宿泊した岩首談議所の落ち葉掃除をしている様子

出発前に宿泊した談議所の落ち葉をみんなで掃除しました。

 


メディア学部 吉岡 英樹

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略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在は聴覚障害支援を専門としており、メディア専門演習「聴覚障害理解とコミュニケーション支援」、聴覚障害支援メディア研究室 を担当している。


 

コロナ禍2年目となった学会発表

2021年12月16日 (木) 投稿者: メディア社会コース

今年は日本LD学会で自主シンポジウムに登壇者として参加しました。登壇と言っても、発表動画を制作しオンデマンドで公開されます。学会当日はzoomで質疑応答の対応をしました。

日本LD学会 第30回大会
http://conference.wdc-jp.com/jald/2021/

【J09】発達障害と誤解されやすい聴覚障害発見のためのヒント -Auditory Nueropathyに着目して-

私の他に言語聴覚士の先生2名と耳鼻咽喉科の先生1名の合計4名で企画しました。私は全員を知っていますが、お互いに面識の無かった方もいらっしゃいます。そんな中、オンラインによる打ち合わせだけで、発表準備を進めて来ました。私も全員知っていると言っても、対面でお会いした事のない方もいらっしゃいます。しかし、今回のテーマにはこの4名が不可欠なのです。おそらく、どの学会でも取り上げてこなかった、特別なテーマになったと自負しています。

発表動画の制作手順は以下の通りです。

1)自主シンポジウムの企画についてオンラインで打ち合わせ

2)各自が自分の発表動画を制作

3)一部はZoomで対談形式で収録

4)全ての動画を編集でつなげて完成

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写真:学会発表動画の編集システム

やはり、オンラインの打ち合わせだけでは、お互いの意思疎通を図る上で多少の齟齬があったと思いますが、動画の編集を繰り返し行い確認することで、その溝を埋めることができたと思います。コロナ禍でなければ、実際にお会いすることが出来ない方々とシンポジウムを企画しようという発想にならなかったでしょうから、今回このような機械が生まれて大変嬉しく思います。

学会当日のZoomには80名を超える方がいらっしゃり、質問やご意見も沢山いただきました。オンラインだと気軽に参加できるというメリットがあると思います。

明日は、今年度から新しく開講したプロジェクト演習「SDGs佐渡」をご紹介します。

 


メディア学部 吉岡 英樹

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略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在は聴覚障害支援を専門としており、メディア専門演習「聴覚障害理解とコミュニケーション支援」、聴覚障害支援メディア研究室 を担当している。


 

コロナ禍2年目となった大学の授業(講義篇/リアルタイム字幕)

2021年12月15日 (水) 投稿者: メディア社会コース

私は聴覚障害支援の研究をしているため、リアルタイム字幕変換を可能とする「UDトーク」というアプリを使っています。数年前から使用しているが、AIを使っているからか年々精度が上がっているのを実感している。

UDトークの詳細はホームページをご確認ください。
https://udtalk.jp/

昨年の遠隔授業でも使用したところ、私が話している内容がより理解できることや、聞き逃した箇所に戻って確認できることから、ぜひ利用したいという学生が多くいました。そこで、対面授業に戻った今期も出来る限りリアルタイム字幕変換を活用することにしました。

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写真:UDトークと専用マイク

私が主に使っているのは、iPhoneとBluetoothマイクの組み合わせです。UDトークは株式会社アドバンスト・メディアの高精度日本語音声認識エンジン「AmiVoice(アミボイス)」を採用しています。英語の場合はGoogleのエンジンを使うようですが、日本語はやはり日本製のエンジンの方が認識率が上がります。マイクは、同社が開発したもので、このマイクを使った方がさらに認識率が上がります。

しかし、Zoomをやりながらリアルタイム字幕変換をして、さらに教室のスピーカから声を出す場合、全部で3つのマイクを使うことになります。下の写真のようにハンドマイク、イヤフォンマイク、Bluetoothマイクを使えば良いのですが、なんだか大袈裟な気がしてきました。

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写真:ハンドマイク、UDトーク用マイク、Zoom配信用イヤフォンマイク

そこで、現在システムを改良中です。

Bluetoothマイク→ノートパソコン→Zoom

Zoom配信チェック用iPad→iRig Stream→UDトーク

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写真:UDトークとiRig Stream

これでマイクが2つになり、少しスッキリしました。配信後の音声を字幕変換しているので少し遅延がありますが、この仕組みであればメリットもあります。これまで、Zoomで参加したゲストの声や再生している動画の声を字幕変換することが出来ませんでしたが、それらが可能になります。

やってみないと分からないことが多いので、もう少し実験を繰り返してみたいと思います。

明日は、これまたオンラインでの実施が多くなった学会発表についてお話します。


メディア学部 吉岡 英樹

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略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在は聴覚障害支援を専門としており、メディア専門演習「聴覚障害理解とコミュニケーション支援」、聴覚障害支援メディア研究室 を担当している。


 

コロナ禍2年目となった大学の授業(講義篇/ハイフレックス授業)

2021年12月14日 (火) 投稿者: メディア社会コース

今期の1年次向け講義科目「音楽産業入門」は昨年同様に約170名が受講しており、ハイフレックス(対面授業を同時配信する方法)で行っています。昨年は、研究室に配信システムを設置して、大教室の大きなスクリーンでライブビューイングする方法で実施しました。大教室には技術スタッフの方が1名いらっしゃるので、映像や音響のチェックを一緒にしながら進めることができました。感染状況を心配する学生も多く、1割程度の学生が教室から受講し、9割の学生が遠隔で受講しました。

今年は全く様子が異なります。大学の方針が対面に変わりましたので、9割強が対面で受講し、体調に不安がある学生など1割弱が遠隔で受講しています。

教室からハイフレックスで、しかも私一人のオペレーションでどのように実施するか悩みましたが、大きなトラブルもなく実施できています。どんなシステムなのかご紹介します。

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写真:ハイフレックスで実施している講義科目「音楽産業入門」の様子

今年は研究室のある研究棟Cから一番離れた片柳研究所棟で授業を実施するため、機材を最小限にする必要があります。しかし、昨年の遠隔授業により授業の進め方を大きく変えて、学生からの評判がとても良かった点については維持したいというこだわりがあります。

<こだわりポイント>
・Zoomにゲスト参加している人の画面がどのように見えているのか確認したい

・私が話している事をリアルタイムに字幕変換したい

・学生全員とチャットでやりとりしたい

・最後の15分くらいを使ってゲスト(Zoom参加)と話したい

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写真:ハイフレックス授業のシステム

仕組みとしては、上の写真のようにノートパソコン1台、iPad mini 1台、スマホ1台、そして新たに購入したiPadとスマホを設置するスタンドとなっています。とてもシンプルですが、昨年確立した授業方法を維持することができています。

ノートパソコンのカメラを使うと下から見上げている画像になってしまうので、少し高い位置にある配信チェック用のiPad miniのカメラをオンにしています。マイクはノートパソコンに接続したイヤフォンマイクを使います。HDMI接続して教室のスクリーンに投影されており、音も一緒にスピーカから出力されるため、イヤフォンの音を聞く必要はありません。

動画を再生する際に、教室とZoomの両方に音が流れているかの確認が難しいので、教室にいるSAに確認してもらいながら進めています。昨年もそうでしたが、映像はすぐに確認が出来るのですが、やはり音の確認が少しやっかいだなと感じます。

明日は、リアルタイム字幕の方法について解説します。


メディア学部 吉岡 英樹

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略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在は聴覚障害支援を専門としており、メディア専門演習「聴覚障害理解とコミュニケーション支援」、聴覚障害支援メディア研究室 を担当している。


 

コロナ禍2年目となった大学の授業(演習篇)

2021年12月13日 (月) 投稿者: メディア社会コース

昨年度の前期は基本的に遠隔授業を行い、後期は対面授業も少しできましたが、冬に感染拡大がありまた遠隔授業に戻りました。今年度前期は対面授業で始まったものの、その後感染拡大があり遠隔授業に戻りました。

しかし、今年の後期はこれまでとかなり異なります。最初の数週間だけ遠隔授業でしたが、その後順調に対面授業を続けることができています。昨年入学した学生も、今年入学した学生も、ここまで対面授業を続けて受講している期間はありませんでした。同じ授業を受講している学生と対面のコミュニケーションをとり、休憩時間には雑談もして、ようやく大学生らしい生活を送ることが出来ているのではないかと思います。

私は、久しぶりの対面授業に少し戸惑いがありました。Zoomで学生に話しかけたり、画面を共有したり、チャットで呼びかけたり、ブレイクアウトしたりということにようやく慣れたのですが、対面だと当然少しことなります。私が感じているそれぞれの特徴をまとめます。

<対面授業の良いところ>
・学生の顔が見えるため、沈黙していても理解してうなずいているか、疑問があり首を傾げているかなど、仕草を見て話す内容を変えたり、授業の速度を変えたりすることができる。

・グループワークをする時のグループ分けが容易である。また、他のグループの話し声も聞こえるため、それをヒントに話を進めることも可能である。また、漏れ聞こえて来る話から、全体に向けてアドバイスをすることもできる。

・休み時間や授業の後に周りの学生と雑談ができる。

<遠隔授業の良いところ>
感染状況に関わらず授業を実施できる。 

少し体調が悪くても出席できる。

・教室の広さや音響設備の影響なく、先生の声が聞こえる。

・教室のプロジェクターの大きさや座席の位置に関係なく、スライドや動画を常に同じ環境見ることができる。

・大人数でもグループ分けをして静かな環境で話し合いができる。

・チャットで気軽に質問できる。

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このように、対面ならではの良さは実感しているものの、授業を進める細かなテクニックとしては、遠隔授業の方が優れている点も多くあると考えています。特に、教室の設備や空間に影響を受ける要素についてはこれまで困ってはいませんでしたが、Zoomのような遠隔会議システムの登場により授業の進め方が変わった部分もあり、良い部分をどのように対面授業でも実施できるのか検討する必要があります。

下の写真は、聴覚障害支援の演習で手話を学んでいる様子です。遠隔授業でも何とか出来ていましたが、対面の方がさらに楽しく学べると感じました。

明日は、大教室で実施している講義科目についてお話します。

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写真:メディア専門演習「聴覚障害理解とコミュニケーション支援」で手話を学んでいる様子

 


メディア学部 吉岡 英樹

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略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在は聴覚障害支援を専門としており、メディア専門演習「聴覚障害理解とコミュニケーション支援」、聴覚障害支援メディア研究室 を担当している。


 

初音ミクのネギとインターネットミームの話

2021年12月12日 (日) 投稿者: メディア技術コース

助教の戀津です。

本日はニコニコ動画がオープンから15周年ということで、色んな所で話題を見かけます。
オープン当時私は大学生で、2007年の初音ミク発売以降の盛り上がりをよく覚えています。
当時ハマった地球防衛軍3が最近Nintendo Switch向けに出たので、当時を懐かしみながら楽しんでいます。

しばらく追いかけられていないので最近の印象はわからないのですが、初音ミクと言えばネギを持っている姿が多く描かれていますね。
発端としてはこちらの動画ですね。初音ミクの発売が2007年の8月31日でこの動画の投稿が9月4日なので、最初期の投稿作です。
この動画が非常に多く再生され、ネギのイメージがついたという様子ですね。

なぜこの動画でネギを持っているかというと、歌われているIevan Polkkaという曲のイメージが引き継がれたためです。
この曲に合わせ、BLEACHの井上織姫というキャラがネギを振り回している動画が海外で流行しており、それに合わせてこの動画でもネギを持たせた形です。

ここで面白いのは、そもそも元の曲にはネギのイメージはもちろんありませんし、井上織姫にも別にネギのイメージはない点です。
ただアニメのある回のある一瞬の動きを切り取ったものが流行した結果、後から曲にイメージがつき、それを引用した動画が流行した結果初音ミク自身にネギのイメージが引き継がれました。

この流れが全て公式あるいは版権元とは無関係に、ネットユーザーによるn次創作の形で形成されています。(後に公式側もこのイメージを使用していたりもするようですが)
このようにインターネット上で文化やイメージが発生し、それが引き継がれていく様子をインターネット・ミームと言います。
文化が遺伝子を持つように変化しながら人から人へ伝播していく様子を指す言葉としてミームがあり、それのインターネット版というわけですね。

ミクといえばネギというイメージは、まさにこのインターネットミームが実感できるわかりやすい例ですね。

プロ演「企業・団体のプロモーション技法」の学生の作品が八王子の人気食肉スーパーの肉の富士屋の店頭を飾りました。

2021年12月11日 (土) 投稿者: メディア技術コース

「健康メディアデザイン」という新しいメディア学の研究テーマに取り組んでいる健康メディアデザイン研究室の千種(ちぐさ)です。人体を健康メディアとしてとらえメディアを活用して自らの健康をデザインするための研究を行っている研究室です。

今回は、以前ブログでも何度も紹介している「企業・団体のプロモーション技法」についてのエピソードを紹介させてください。最近の2件は以下にあります。

2021年8月のオープンキャンパスで使用したポスターをプロ演「企業・団体のプロモーション技法」で制作しました。
http://blog.media.teu.ac.jp/2021/08/post-c5ccd6.html

2021年9月に実施される東京都の創業セミナーのオンラインイベントのポスターをプロ演「企業・団体のプロモーション技法」で制作しました。
http://blog.media.teu.ac.jp/2021/08/post-d326fd.html

この授業は、中小企業やボランティア団体のニーズであるプロモーション法としての名刺制作・ポスター制作・店頭のポップ制作などを行なっている授業です。

この内容がユニークです。100分間1コマでクライアントからの依頼を10分程度の説明で始めて、70分間で制作完了し、最後の20分間で専門家によるデザインレビューを全員の作品について実施するものです。つまり100分間一本勝負というところです。現在十数名の履修者がいるので、1つのクライアントからの発注に対して、70分後には履修者の数、つまり十数点のデザイン案が提示される訳です。そして学生は、デザインレビューで指摘された修正点およびクライアントからの修正依頼を反映してデザインを完成させます。

今回は、千種の友人で八王子の高級和牛を取り扱っていて、市内レストランにも卸、確かな味で評判、美味しい揚げたてメンチかつで評判の「肉の富士屋」の社長である今井氏にクライアントを請けていただくよう依頼し、採用作品の学生には高級和牛5千円相当品をプレゼントするという交渉を成立させていました。

そして授業前に、素材となる文章、価格表、写真、ロゴなどを用意していただき、授業時間開始時には、直接、クライアントの今井氏からどのようなポスターを作成して欲しいか説明していただきました。今回は、クリスマス商戦に使用する店頭に張り出すA3横のポップを依頼されました。その70分後およびデザインレビューを経て完成したポスターを今井氏に提示し、最終選考の作品を1点のみ選んでもらいました。今井氏の選考理由は「商品写真が大きくしっかりとデザインされていて、商品名も価格も見やすく、カラーバランス面でも一番気に入りました」とのことでした。

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実際に選ばれたのは、東京工科大学メディア学部2年の江尻直輝さんの作品でした。彼はこの後期に初めてこのプロジェクト演習を履修しました。選ばれた際に、授賞式は肉の富士屋店頭で実施し、記念写真も複数点撮影していただきました。受賞後の江尻さんのコメントは「写真撮っていただいた感想ですが、自分の作成したポスターが店頭に貼りだされていることを非常にうれしく感じました。また、これからの作品制作に対するモチベーションにもつながりました。」とのことでした。

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こういった、①学生のデザインスキルの向上、②実際に社会で使用される生々しい事例、③数多くの学生間のデザインから1点のみが選考される学生間競争、④作品にプロジェクト演習名・氏名を入れ、学生個人のポートフォリオを充実、これを毎週繰り返すことにより、毎週受講学生全員のレベルが向上しています。

デザインハウス社長でもある演習講師の早川氏によると「このスタイルは去年後期から実施していますので、複数学期履修した学生の思考レベルおよび技術レベルはデザインナーとして社会でも通用する程度まで達していますし、今期初参加の学生でもみるみるレベルアップしていて講師をしていて楽しい」とのことでした。欲を言えば写真撮影の時には息を止めてマスクを外して写真を撮っていただきたかったです(笑)

以上、毎週が楽しみなプロジェクト演習でした。

授業点検

2021年12月10日 (金) 投稿者: メディア技術コース

皆さん、こんにちは。

東京工科大学では「授業点検」を実施しています。これは、ある先生の授業一回分を同じ学部の他の複数の先生が授業に出席して点検するものです。教育力の向上のために教授法、授業内容、学生への姿勢などに関し複数のチェック項目について採点します。授業後には、点検を受けた教員も出席して意見交換会が行われます。どの教員も数年ごとに担当科目の授業で点検を受けます。点検者としては、1つの授業に複数の教員が参加するため、毎年いくつかの授業点検に参加することになります。

先日、私もある先生の授業に点検者として参加しました。教室の一番後ろに点検者の席が設けられ、そこで授業を聞きます。チェック項目についてのメモを取りながら、当然、授業にも聞き入ることになります。点検をしていると、先生方がぞれぞれに工夫を凝らして授業を行っていることが良くわかります。教員間でお互いにこのような刺激を受け自己の授業の改善に役立てることも授業点検の目的の一つです。

教室の一番後ろに座っていると受講している学生さんたちの様子もよくわかります。少し話が続くと眠そうにしている学生が出てきます。講義をしている先生は単に一人で話しているだけではなく、学生の意見を聞いたり、適切な間隔で、手を動かす演習的な作業を取り入れたりしています。

点検を受ける身としてはやはり毎回緊張します。その授業回だけに特別なことをしているわけではないのですが、予定していた演習的要素がうまく実施できなかったり、トラブルが発生したり、あるいは早口になってしまったりします。いつもなら、トラブルにも対応して授業時間ちょうどで予定の内容を終えられるようにできるのですが、うまくできなかったりします。

今年の授業では、日本に入国できない留学生や病欠の学生に対応するため、授業をしながらZoom配信を行い、それを録画している先生も見受けられました。私もやっていますが、一人でやるのは慣れても結構大変です。メディア学部では、このようなハイブリッド型の授業に対応するための研究もおこなわれています。今後はこのような授業形態も一般化していくことでしょう。そうすると点検の仕方も変わっていくのかもしれません。

(メディア学部 寺澤卓也)

PCとの格闘

2021年12月 9日 (木) 投稿者: メディア技術コース

皆さん、こんにちは。

10月末にプロジェクト演習「IoTプロトタイピング演習」の紹介をしました。その時は、対面演習ができるようになり、はんだ付けの練習をしたことを書きました。そして、次はPCの分解と組み立てをやる予定としていましたが、実際、11月に入ってそれを実施した時のことを書こうと思います。

東京工科大学の学生は全員ノートPCを持っています。デスクトップPCについては、自宅に持っている人もいますが、多くの学生(下級生)にとっては、大学設置のものを演習授業等の際に使ったことがあるだけです。さすがに自分が使っているノートPCを分解するわけにはいきません。万一の場合、授業を受けられなくなりますし、保険も効かなくなります。そもそもノートPC内部は薄い本体の中に構成パーツが詰まっているので初めてPCの中を見る人にとって分解や組み立てはハードルが高すぎます。そこで、研究室でかつて使用していて古くなり故障したままになっているデスクトップPCを使って実習を行いました。

この実習の目的は、現代のPCが内部はどのように構成されているのかを理解することです。IoTの演習では使うのはマイコンボードであり、小さなワンボードになっているマイコンボードではわかりにくいコンピュータの構成を知ってもらうことは理解の幅を広げてくれます。マザーボードや電源装置はどのようになっており、CPUやメモリはどこに刺さっているのか、HDDはどれかなど、言葉では聞いたことがあるものの実物を見たことがない受講生にそれぞれの役割や歴史を説明します。PCが出す騒音はファンの音がほとんどですが、なぜ、本体内にファンがいくつもあるのかなども説明します。

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最後は元通りにするため、あらかじめ写真を撮って、ネジをなくさないように容器に入れながら分解を始めます。組み立ては、マザーボードの型番を手掛かりにスマートフォンでマニュアルを探してそれを見ながら、作業します。最初にとっておいた写真も助けになります。最終的には、全員、PCを元通りに組み立てることができ、起動画面(いわゆるBIOS画面)を表示させるところまでは確認できました。

今後はクラウドサービスが発展し、デスクトップPCを使う機会は減るのかもしれません。メモリやグラフィックスカードを増設・交換したりというのは、少し前まで研究室ではよく行っていました。クラウドの仮想マシンでは、最初にメニューから構成を選んで起動すれば、高性能な環境が簡単に手に入ります。しかし、すべてが仮想の世界になってしまうと、実感を持った理解というのは難しくなるように思います。故障したPCもしばらくは保管しておこうと思います。

手に入るうちに、フロッピーディスクを買っておくか...

(メディア学部 寺澤卓也)

プロジェクト演習中間発表会

2021年12月 8日 (水) 投稿者: メディア技術コース

皆さん、こんにちは。

プロジェクト演習「実践的プログラミング入門」はプログラミングは初めてという人を対象に、Unityを使ったゲーム制作を通してプログラミングを学ぶ演習です。Unityはゲーム制作のほか様々な用途に使用されている開発環境でゲームエンジンでもあります。少し前のことになりますが、11月半ばの第8回の授業で、それまでの学習成果の発表会が行われました。

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受講生は、一人ずつ、これまで学んできたことをベースに制作中のゲームについて説明し、現状のデモを行いました。演習講師の藤森先生とTAの2人からもコメントをもらい、授業後半の回を使って各自のゲームの完成を目指します。年明けの最終回には成果発表会を予定しています。

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TAの笠松さんはUnityでのゲーム制作経験が豊富で、過去に作ったゲームのデモをしてくれました。受講生の皆さんにとって大きな刺激になったと思います。最終発表会が楽しみです。

(メディア学部 寺澤卓也)

音楽ゲームの自動生成(総集編)

2021年12月 7日 (火) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

電子情報通信学会和文論文誌の最新号に、当研究室OBの福永さんが第1著者の「キー音を用いたリズムアクションゲームのための譜面自動生成システムの開発」という論文が掲載されました(Vol.J104-D, No.12, pp.808-817)。これは、機械学習を使って音楽ゲームのデータを自動生成しようという研究で、自分が気に入った曲をいつでも音楽ゲームに変換して遊べるようになることを目指したものです。これまでにも、こちらの記事こちらの記事こちらの記事などで紹介してきましたが、ひととおりの研究がまとまったので、その集大成として執筆したのが今回の論文です。

この論文、去年の3月に書き始めて、夏には最初のバージョンを投稿したのですが、そこから紆余曲折があり、1年以上たってようやく掲載に至りました。その間、査読者の要求に対応するための苦労もありましたが、おかげで分析がより緻密になったり、具体例が増えたりして、結果的に良い論文になったのではないかと思います。

うちの研究室でも、この研究の続きをやりたいという人が時々いるのですが、そんなときも、「まずはこの論文を読んでみて」と渡せば済みます。そういう意味でも、成果を論文としてまとめておくのは重要なことですね。

「語り」の音声データ(その2)

2021年12月 6日 (月) 投稿者: メディア技術コース

メディア学部の大淵です。

人が言葉を発する状況は様々ですが、私の研究室では、同じ技術コースの榎本研究室と共同で、「語り」というスタイルの音声について研究を進めています。「嬉しかったこと」「悲しかったこと」など、過去の具体的な出来事を思い浮かべてもらい、それについて詳しく語るというのが「語り」です。英語ではStorytellingといいます。気持ちを伝える手段として、あるいは自分の感情を整理する手段として、「語り」が有効であることがいろんな研究で示されています。

我々の研究室は音声分析が得意なので、この「語り」の音声データを集めて、様々な分析をすることにしました。まず最初にたくさんのデータを集めるところも、立派な研究テーマです。さらに集めたデータの解析にも着手しています。このあたりについては、準備的な段階で一度このブログにも書きましたが、ある程度きちんと結果がまとまったので、Oriental COCOSDA 2021という国際会議で発表することにしました。この学会は、音声データの収集と評価に特化した学会で、オリエンタルと付いていることからもわかるように、アジア系の様々な言語の研究者が集まる学会です。コロナ禍が無ければシンガポールに行っての発表のはずでしたが、最近の例に漏れずオンライン開催となりました。

今回の発表で面白かったのは、発表者一人当たり15分の持ち時間のうち、10分が事前に収録した動画の再生に充てられ、残り5分で質疑応答が行われたということです。発表部分については十分な練習ができ、なおかつ発表者と聴衆のインタラクティブ性も保たれ、なかなか良いやり方だなと思いました。

発表者の大石さんは大学院の修士2年生で、これから来年の2月に向けて修士論文の執筆を進めていきます。学会での経験も活かして、良い論文を書いてくれると期待しています。

専門演習「空間インタラクティブコンテンツ」2021後期 (2)

2021年12月 5日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース

コンテンツコースの椿です。こんにちは。

専門演習「空間インタラクティブコンテンツ」では,今週は中間課題で制作した作品の発表会をしました。
中間課題として,3週間で各自で作品を考え,制作して頂きました。その中から1つをご紹介します。

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洋服に骨と歯車のCGを投影した作品です。歯車は心臓を表していて,鼓動のように回転しています。

無機的なものである歯車を,あえて人間という有機的なものの中で見せ,際立たせたいという意図があるそうです。
プロジェクションマッピングによって,意図がうまく実現されていました。
今後も,作品をご紹介していきたいと思います。

 

授業紹介:1980年代のハードシーケンサーへのデータ入力[実践編]

2021年12月 4日 (土) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部の伊藤(謙)です。

前回の「準備編」に引き続き、今回は「実践編」として実際の楽曲のデータ入力をご紹介しましょう。曲は、バッハ作曲「インヴェンション 第1番」で、ト音記号のパートの第2小節までの入力を課題としました。

下の写真は、一昨日(12/2)の先端メディア学/ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」での様子です。
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写真の手前は2年生でMC-300(1988年発売。前回授業ではMC-500を使用しましたが、今回不調のため機材を変更)を、奥の2人は1年生でMC-4を使って入力を行います。どちらも鍵盤を使った入力が可能ですが、MC-4のほうは本当の「打ち込み」を体験してもらうべくテンキーでの入力としました。この入力では、楽譜に書かれている音符の「音高」と「音の長さ」の数値化が不可欠です。そこで1年生2人には音符を数値化する宿題を出していたのですが、下の写真のようにしっかりと書き込んできてくれました。
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それぞれの音符の下に数字が並んでいるのがおわかりいただけると思います。上の数字(24, 26, 28, 29…)が「音高」、下の数字(30,60など)が「音の長さ」を示します。

それでは、この日のMC-4とMC-300の入力の様子をご覧ください。


【動画:その1】MC-4 の入力(音高のみ)とデータチェック[1:18]
入力後に再生して音高を確認しています。入力ミスの音がありますが、これはあとの作業で修正します。

【動画:その2】MC-4 の入力(音高+音の長さ)とデータチェック[0:09]
ひとまず第2小節まで入力が完了しました。前回授業での練習のおかげで早く入力が済み、ここまでかかった時間は20分ほどです。

【動画:その3】MC-4 の入力(第3〜6小節の入力作業)[1:07]
時間に余裕があったので、第3小節以降も入力することにしました。音高の数値を楽譜に書き込むことなく、マニュアルに掲載されている対応図の数値を読み上げて入力しています。

【動画:その4】MC-4 のデータチェック[0:21]
第6小節まで入力が完了しました(楽譜よりも1オクターヴ高くなっているのは、シンセサイザーの設定によるものです)。このあとカセットテープにデータを保存しました。保存されているのは「音そのもの」ではなく「データ」で、再生すると「ピーヒョロヒョロ〜」という音がします。

【動画:その5】MC-4 へのデータの読み込み準備[0:16]
次はカセットテープの保存データを本体に読み込み作業に移ります。読み込みの作業に向けて一旦電源を落とします。電源を切ると作業で作った本体のデータは全て消えてしまうので、カセットテープ内のデータがまさに「命綱」です。(当時の音楽制作はこうしたデータ管理の不安と隣り合わせでした)

【動画:その6】MC-4 へのデータの読み込み[1:05]
カセットテープに保存したデータをロードしましたが、エラーが出て読み込むことができませんでした(涙)。先週の授業では読み込めたのに…。

【動画:その7】MC-4 へのデータの読み込み(再トライ)[0:25]
もう1本のカセットテープに保存したデータからのロードも試みましたが、やはりエラーが出てしまい駄目でした。その後、何度かおこなったロード作業もうまくいかず、これ以降、MC-4の再生ボタンで音が鳴ることはありませんでした…

【動画:その8】MC-300 の入力[0:34]
こちらはMC-300の入力の様子です。鍵盤を使って音高を入力しています。テンキーよりもはるかに入力が楽ですね。MC-4のようにテンキーのみで入力することもできますし、メトロノームに合わせてリアルタイムに入力することもできます。
ちなみに、鍵盤からMC-300に入力データを送るには、1本のMIDIケーブルで繋げればOKです(ここでは受信用にもう1本接続しています)。一方、MC-4は「CV」と「GATE」という2つの電圧制御の信号をシンセサイザーなどの電子機器とやりとりするので、2本のケーブルが必要です。「CV」は「音高」を、「GATE」は「発音のON/OFFのタイミング」をコントロールします。先の【動画:その1】「CV」の入力が終わった段階【動画:その2】「GATE」の入力が終わった段階とも言えます。

【動画:その9】MC-300 の入力[0:34]
「TIE」(タイ)ボタンを使って、設定した基本音価(ここでは16分音符)よりも長く鳴る音を入力します。(右側の「REST」は「休符」を入れるときに使うボタンです)

【動画:その10】MC-300 の入力[0:13]
本体中央の「α-DIAL」というジョグダイヤルを回して音高の確認をしています。このジョグダイヤルは音高の確認だけでなく、入力データの細かい編集作業にも使います。こうしたインターフェースの違いからも音楽制作の変遷を辿ることができますね。

【動画:その11】MC-300 のデータチェック[0:21]
こちらも第6小節まで入力が完了しました!

【動画:その12】MC-300 のデータ保存の準備[0:29]
MC-300で作成したデータはフロッピーディスクに保存できます。空のフロッピーディスクをMC-300に入れて、フロッピーディスクのイニシャライズ(初期化)を行うことで、保存用ディスクとして使えるようになります。MC-300はMC-4と異なり、電源を落としても本体内部のメモリにデータが記録されるのでその点は便利ですが、本体のメモリ容量に限りがありますし、万一のためにフロッピーディスクに保存しておくほうが安心ですね。
私は高校時代、校内コンサートの本番で、ハードシーケンサーMSQ-700(1984年発売。準備編の最初の画像に写っているMSQ-700が当時実際に使用していた機材です)の再生ボタンを演奏開始に合わせて押したところ、「ピッ!」という甲高い音とともにデータが一瞬で消えた経験があります。当然その曲は演奏できず、バンドメンバーたちからかなり怒られました(今となってはそれも懐かしい思い出です)。このとき、データ保存の大切さを初めて痛感しましたね。

【動画:その13】MC-300 へのデータの読み込みと再生[1:30]
フロッピーディスクに保存したデータを本体に読み込んでみましょう。先ほどのフロッピーディスクは保存用としてだけでなく、MC-300にシーケンサーとしての機能をもたせるためのシステムディスクとしても使えるようフォーマットしたので(MC-300は本体があってもシステムディスクが無いと何もできないのです)、電源を入れてフロッピーディスクからシステムデータ、そのあと「LOAD」ボタンを押してデータを本体に読み込みます。そして無事に再生できました!(拍手)



本来であれば、どちらも第7小節以降と、ヘ音記号のパートも含めて楽曲全体の入力を完成させたいところですが、今回はここでタイムアップです。

MC-4の入力データが消えてしまって落胆の色を隠せない1年生2人から「もう1回、入力に挑戦したい!」と強い要望があったので、来週の授業で再度、MC-4を扱うことになりました。万全を期すため、カセットレコーダーの電池を交換し、新しいカセットテープを用意して準備を整えたいと思います。

また、MC-300の入力を終えた2年生は、次回授業でドラムマシンの入力に挑戦します。これまで紹介したハードシーケンサー同様、私が所有する機材で、RX5(1986年発売)というドラムマシンです。
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先端メディア学/ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」では通常の講義やディスカッションのほかに、このような過去の機材の操作を体験する場を設けています。実体験を通して、PCやタブレットを用いた現在の音楽制作に至る歴史や手法の変遷をより深く理解できますし、そうした方法で作られた過去の音楽作品に対する見方も変わることでしょう。「先端」に至るプロセス(過去)を知ることで、学生たちが今後の展望に向けての幅広い視野が得られるよう、私も努力していきたいと思います。


(メディア学部 伊藤謙一郎)

シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その35後編

2021年12月 3日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。


プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品の35本目「用心棒」について、どこに注目すべきか述べていきます。


今回取り上げる「用心棒」は1961年に公開された日本の時代劇映画です。まだモノクロ映像の時代に撮影された作品ですが、その完成度から世界中で高い評価を得て、日本の映画監督・黒澤明の名前は一気に知れ渡りました。


この作品でシナリオライターとして注目すべきは「映画シナリオに不可欠な機能をこの当時既に満たしていた点」です。


シナリオの歴史は映画の撮影が発明された少し後から始まっており、最初は撮影の段取りを書いたメモ程度だったものが、やがて劇作などストーリー性のある映像を撮影するための仕様書、設計書に発展し、より適した書式が整えられていきましたが、今に至るまでの時間を多く見積もってもせいぜい100年ほどの歴史しかありません。


海外では、映画がビジネスとして大きな市場を形成していく事になったことで、より完成度の高いシナリオを執筆するための研究が進んでいくのですが、その研究成果が日本に伝わるのはだいぶ後のことです。日本で映画が撮影されるようになった当時は「映画を撮影するためには脚本(シナリオ)が必要」ぐらいの認識しかありません。とにかく一本の映画としてまとめることはできても、見終えた観客が支払った代金に見合った楽しみと満足を得られるとは言い難い作品がほとんどででした。


そんな時代が続いた日本で、黒澤明監督は「用心棒」を完全な娯楽作品として楽しめる映画として作りました。撮影された映像の斬新さもさることながら、シナリオの面から見て特筆すべきは、そのストーリーです。


のちにアメリカのハリウッドでは、神話や民話の内容を複数の機能と順序で分類して映画シナリオのストーリーに取り入れることで、映画を幅広い観客に楽しませる手法が広まることになり、その代表作が「スター・ウォーズ」なのですが、この「スター・ウォーズ」を作ったジョージ・ルーカス監督が特に影響を受けたとされるのが黒澤明監督の作品であり「用心棒」もその一つです。


東京工科大学メディア学部でのシナリオ研究で「映像作品において満足を得るためには3幕構成13機能が必要』と定義していますが、この研究や前述したハリウッドの先行研究の成果が世に出る前から、「用心棒」はその要件をクリアしていたことになります。そして時系列上からも明らかですが黒澤明監督は、それら条件を満たそうと思って映画をつくったわけではなく、あくまで自分たちが目標として掲げた「娯楽映画」を作ろうとしただけです。


映画「用心棒」が世界で得た高い評価は、黒澤明監督の圧倒的な才能があればこそのものです。しかし当時の日本では、おそらく全てが手探りと挑戦の連続であり、簡単にこの映画を作ることができたわけではないでしょう。


これからシナリオを書くシナリオライターの皆さんは、そんな黒澤明監督の実績を手本にすることが出来るというメリットを最大限に活用するためにも、一度「用心棒」を見てみて欲しいと思います。

シナリオアナリシスでよくある質問(おすすめの映画)その35前編

2021年12月 2日 (木) 投稿者: メディアコンテンツコース

みなさん、こんにちは。メディア学部実験助手の菅野です。


今回も「プロのシナリオライターを目指すなら見ておいたほうが良い作品」を紹介します。


前編とのなるこの記事は、あらすじのまとめが中心です。後編ではその内容をもとに注目すべきポイントを述べますので、そちらも読んでいただけると嬉しいです。


取り上げる映画は次のタイトルです。


『用心棒(1961)』


<監督>

黒澤明


<脚本>


菊島隆三

黒澤明


<あらすじ>


桑畑に囲まれ風吹きすさぶ宿場町に、放り投げた枝で行き先を決めてやって来た侍がいた。その名をきかれて「桑畑三十郎」と答えた彼の名が本名か偽名かはわからないが、とても腕の立つ侍なのは間違いなかった。


三十郎が訪れたその時、宿場町では2つの勢力が縄張り争いを繰り広げている真っ最中だった。かたや博打場を仕切る清兵衛一味、かたや清兵衛に反目して独立した丑寅の一味。血で血を洗う争いによって街は荒れ果て、景気が良いのは犠牲者のための棺桶を作る桶屋だけだった。


この状況を知った三十郎は自身を用心棒として売り込むべく、まずは清兵衛の元へ向かうと、丑寅の子分3人を切り捨てて見せて50両で契約を結んだ。しかし、この報酬が高すぎると渋った清兵衛の女房おりんが、支払い直前に切り捨てるつもりだと知った三十郎は、清兵衛一味と共に大通りでの丑寅一味に対したところで前金を清兵衛に突き返して戦線を離脱。


引き返せなくなった両陣営は小競り合いをするも、役人が視察に来るとの報が知らされて停戦となった。これにより、清兵衛と丑寅はなんとか優位に立とうと、三十郎を自分の用心棒に引き込もうと動き始めた。都合よくまた契約しようとする清兵衛の女房おりんに対して、丑寅は清兵衛一味の報酬を上回る60両を提示し、すぐにでも自分のところに来てほしいと迫る。


丑寅は、視察に来ていた役人を追い払うため、隣街で部下に騒ぎを起こす殺人を命じていた。そして役人が居なくなり次第、清兵衛一味に攻撃を仕掛けるつもりだったのだ。三十郎はすぐには返事をせず、ようやく思惑通りになってきたかと思いきや、丑寅一味に有力者の卯之助が戻ってきたことで風向きが変わる。卯之助は自分が戻った丑寅一味であれば清兵衛一味に勝てるとの算段から、両陣営の和睦を画策したのである。


三十郎の目論見は外れてしまった。しかし、和睦にむけて一方的に解雇された丑寅一味の子分の中に、隣街で騒ぎを起こした子分二人がいたことに気づいた三十郎はこの二人を捕らえ、清兵衛一味に引き渡した。この二人を役人に引き渡せば、丑寅の失脚を狙えるとふんだ清兵衛は和睦の取りやめを決めた。


三十郎はその情報を手土産に丑寅一味のもとに向かい、再び自身を売り込んだ。するとこれを知った卯之助は直ちに清兵衛のもとにいる子分二人を殺して口封じした上に、清兵衛の息子・与一郎まで捕らえて帰ったが、これに屈するわけにはいかない清兵衛一味は、丑寅一味の後ろ盾である徳右衛門の愛妾おぬいを人質にし、両陣営は人質交換をすることになった。


人質交換は何とか成立したが、徳右衛門の愛妾おぬいは、丑寅の企みによる賭場の借金の肩代わりで夫と子供から引き離された女性だった。その事実に憤慨した三十郎は丑寅の用心棒としておぬいの監禁先を訪れ、監視役切り伏せると夫と子供に引き合わせて逃した上、それが清兵衛一味の仕業であると見せかけて両陣営の対立を煽った。これにより両勢力はいよいよ激しく争いあうようになる。


三十郎の真の目的は、清兵衛一味と丑寅一味が互いに潰し合うことにあり、ようやくその目的は達成されつつあった。しかし、おぬいの夫が良かれと思ってよこした三十郎へのお礼の手紙が、卯之助に露見したことで三十郎は捕らえられ厳しい拷問を受ける。徳右衛門はおぬいに執着しており、三十郎だけがその行方を知っていると思っていたからだった。


三十郎は立つこともできないほど痛めつけられたが、見張りの隙をついて監禁蔵から脱出。清兵衛の陣営に匿われたふりをして、人の寄り付かない墓場近くの小屋に身を隠して回復を待った。


もはやなりふりをかまっていられなくなった丑寅と卯之助によって、とうとう清兵衛の一味は惨殺され、大勢は決したかに見えたが、依然として三十郎の行方は知れず落ち着かない丑寅と卯之助の前に、三十郎はついに姿を現した。あれほど大勢いた丑寅の一味は、もはや丑寅と卯之助を含めても10人に満たなかった。


三十郎はピストルをもって立ちはだかった卯之助を、隠し持った包丁の投擲で封じて切り捨てると、またたく間に丑寅と子分たちを斬り伏せた。これで宿場町に平穏をもたらした三十郎は、住人たちに感謝されることもなく「あばよ」とだけ告げて去っていくのだった。


・・・次回は、この作品でシナリオライターとしてどこに注目すべきか、について述べていきます。どうぞお楽しみに。

今っぽくない演習授業で思い悩むこと

2021年12月 1日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース

メディア学部には音楽・美術に興味がある学生もたくさん集まります。そのため、音楽関連・美術関連の授業や演習もいろいろとあります。その中の一つとしてプロダクトデザイン演習があります。本学には本格的にデザインぶついてを学ぶデザイン学部がありますが、メディア学部ではメディア学の視点からのプロセス重視・理由重視でプロダクトデザインについて考察する授業と演習があります。この写真は2021/11/30, 1限のある教室の様子です。各自のテーマについて何故かを大事にしながらアイデアを出し、具現化のためのアイデアスケッチを描き、加工が容易な材料を用いてプロダクトとしての成立可能性をスタディしているところです。学部を問わずPC関連機材を使う演習が多い中、今っぽくない風景ですね。このスタディでの確認後は、3Dモデラーや3Dプリンタへと向かう今風の作業へと進むわけですが・・・。

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私見ではありますが、この風景を観ていると、デザインプロセスにおける一番の重要ポイントはやはりアイデアスケッチによる具現化探索と簡易模型での具現化へのスタディにあるような気がしています。一方、実験・観察・制作の道具が進化しつつある今、それを使いこなす手段の修得もしっかりしないと製品供給という目的は果たせません。たぶんAI等を適切に使いこなすデザイナーが優れたデザインを創出する時代に入ってきたのでしょうね。

メディア学部 萩原祐志

 

 

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